彼は大唐より来た——中国の琴奏者・史雲龍氏、東京・根津美術館で千年の古韻を奏でる
4月20日、東京・根津美術館にて、千年の時を超える音楽の饗宴が開催されました。中国・虞山派古琴家の史雲龍(し うんりゅう)氏を特別に招聘し、「虞山物語」と題するコンサートで満席の聴衆に「琴を通して唐代を感じる」芸術の境地を披露しました。

中国から伝わる古楽器「古琴」は、三千年にわたり受け継がれてきました。書道や茶道と同様に、心身を修める「修身の道」として位置付けられ、中国の歴代の文人や修行者たちは琴を通じて道を求めました。孔子は琴によって徳を養うことを重んじ、大唐時代の詩人・李白も多くの琴詩を遺しています。また、空海大师は唐に渡り、長安の青龍寺において恵果和尚から梵唄と琴道の融合法を学び、高野山開創に際しては、琴の音を用いて真言修行を助けたと伝えられています。

根津美術館の講堂では、史雲龍(し うんりゅう)氏が赤い唐服に身を包み、まるで李白を彷彿とさせる佇まいで登場しました。氏は手書きの琴学に関する文章を広げながら、観客に語りかけます。照明は一人、一面の琴、一冊の書に静かに集中し、古琴にまつわる物語がゆったりと語られる中、やがて空間を満たすように、奥深くも生き生きとした琴の音色が響き渡りました。その琴声には、歴史の重みと文化の躍動感が見事に表現されていました。

会場には、茶道や漆芸などの伝統文化を愛好する方々や名匠たちが多数来場しており、彼らは息を呑み、琴の音に身と心を委ね、時空を超えて大唐時代の文化の力と精神性を体感していました。
公演終了後、ある日本人観客は感動のあまりこう語りました。「史先生の琴の音色に触れ、大唐の繁栄した光景が目の前に広がるようでした。その壮大さと深遠さに心を奪われました。」
また、かつて鎌倉の一条惠観山荘で史先生の演奏を聴いたことがある観客たちは、今回と当時を比較し、こう述べました。「同じ曲『酒狂』でも、鎌倉での演奏は奔放で自由な印象だったのに対し、今回は一音一音が心を静かに鎮め、騒がしかった心が自然と落ち着いていきました。今回は静かに酒を嗜むような、ほろ酔い加減が絶妙な演奏でした。史先生の奏でる琴の音は本当に生き生きとしていて、次回はどのような世界を見せてくれるのか、今から楽しみです。未知なる期待が膨らみます。」
さらに別の観客は、次のように感想を述べました。「『流水』が奏でられたとき、本当に水が流れてくるかのように感じました。講堂全体に水が静かに広がっていき、心がその流れに合わせてゆったりと揺れました。その瞬間、まるで別世界にいるかのような、極めて純粋で静謐な空間が生まれ、心が洗われるような感覚を覚えました。まさに大唐から来た琴師だと感じました。」
隣にいた観客も思わず、「彼は大唐から来たのだ!」と声を上げていました。

史雲龍(し うんりゅう)氏は公演終了後、次のように語りました。「大道は同じ源を持ち、琴道は美しい精神の時空を創造します。これは国境を超えたものであり、人類共通の精神的財産となるでしょう。大唐を振り返れば、かつて古琴芸術は文明の風と共に四方に広がっていきました。今日においてこそ、千年を超えて受け継がれた琴の響きを、現代において新たな生命力をもって蘇らせるべきだと考えます。」

今回の音楽会は、チケット発売開始と同時に即完売し、その後も追加席や追加公演を求める声が相次ぎました。主催者側は少数ながら追加席を設けるなど対応に努めましたが、琴を愛する多くの方々の熱意に応えるには至りませんでした。残念ながら史先生のスケジュールの都合もあり、今回は追加公演を実現できませんでしたが、次回の招聘に向けた準備がすでに進められています。
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