《Anywhere Door(エニウェア・ドア)》

建築家山之内淡による、国際的な「つながり」をテーマにした分散型の建築インスタレーション作品。Time Space Existence公式招聘作品としてヴェネチアで発表を皮切りに日本3箇所で展示が公開。

Tan Yamanouchi & AWGL

*《Anywhere Door》イタリア・ヴェネチアでの写真。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展期間中に開催される European Cultural Centre 主催の Time Space Existence 公式招聘作品としてマリナレッサ庭園にて発表。(写真:田中克昌)
*《Anywhere Door》北鎌倉・臨済宗大本山 円覚寺での写真。文化庁から許可を得て、鎌倉市文化財課立ち会いのもと、少なくとも江戸時代頃から一度も掘削されていない山門のある広場に枕木で仮設基礎をつくり設置された。(写真:田中克昌)
*《Anywhere Door》木更津・KURKKU FIELDS での写真。常設作品として園内に展示されることになった。鉄筋コンクリー ト基礎をつくり設置された。作品への近づきやすさや園内での見え方も考慮された。背後には緑が生い茂る。(写真:田中克昌)
*《Anywhere Door》前橋・白井屋ホテルでの写真。常設作品としてヘリテージタワー内に展示されることになった。4箇所で唯一の屋内設置作品。床仕上面と自然につながるよう工夫し作品と一体化した脚部を設計し設置された。(写真:田中克昌)
*《Anywhere Door》プロジェクト公式 website のトップ画面。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展期間中開催される Time Space Existence 屋外会場のマリナレッサ庭園(イタリア、ヴェネチア)で撮影した動画を背景動画で埋め込んでいる。

《Anywhere Door》プロジェクト公式 website: https://anyhweredoor.awgl-inc.com/

1. 作品概要

 建築家、山之内淡(やまのうちたん)による作品《Anywhere Door》は、山之内自身が思いをはせる世界の4箇所に展示されています。2025年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展期間中に開催される European Cultural Centre 主催 Time Space Existence への公式招聘を皮切りに、インスタレーションがはじまりました。 2025年5月10日(土)から 2025年11月23日(日)までの198日間、「Urgency to Repair, Regenerate, and Reuse」をテーマに掲げた 2025 年度の Time Space Existence 公式招聘作品として、屋外会場である Marinaressa Gardens(イタリア、ヴェネチア)に展示されているほか、北鎌倉の円覚寺、木更津の KURKKU FIELDS、そして前橋の白井屋ホテルの4箇所に設置されています。日本の文化と職人の誇るクラフトマンシップを伝える屋外建築インスタレーションでもあります。1枚の扉を介して、鑑賞者が扉の向こう側の自然や建築、文化的背景、そして人とのつながりを模索しています。

 <展示場所(4箇所)>

マリナレッサ庭園 (イタリア、ヴェネチア) 

臨済宗大本山 円覚寺 (神奈川県鎌倉市) 

KURKKU FIELDS (千葉県木更津市) 

白井屋ホテル (群馬県前橋市) 

<建築家による作品主旨> 

屋外建築インスタレーション《Anywhere Door(エニウェア・ドア)》。ドアの佇む背景には、空や大地や海や森が広がっています。「ドア」という、地球上の多くの人々が日常的に触れている小さな建築を、ランドスケープの中で美しく、同時に触れて楽しい作品として創造します。ドアを屋外に設置する表現を通して、具体的な情報・ モノ・コトが光の速さで繋がる現代において、繋がることそのものを否定することなく、繋がることの根源的な喜びを、目の前の大地や空はどこまでも繋がっている事実の中で、鑑賞者に考えてもらうことを意図しています。「ひとつの作品が、場所や文化によって全く違う見え方をする。」その反応の違いや重なりを意識的に織り込んだ中央集権的ではない分散型・ネットワーク型の作品でもあります。 

『あなたと同じ、世界のどこかに。』

人も自然も含めた “繋がり” への根源的な喜び / 幸福を称える作品です。 

山之内 淡

2. 作品意匠

*《Anywhere Door》イタリア・ヴェネチアでの写真。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展期間中に開催される European Cultural Centre 主催の Time Space Existence 公式招聘作品としてマリナレッサ庭園にて発表。(写真:田中克昌)

《Anywhere Door》の意匠は、日本人らしい繊細さと日本のクラフトマンシップを伝えること、作品のメッセージに沿った幻想性 / 寓話性を伝えることを目指し設計されました。素材には、扉本体・扉枠ともにすべてステンレス鋼を採用しています。

扉枠は直径38mmのステンレス丸パイプを外皮としてステンレス丸パイプの2重構造とし、扉本体の端部は R 加工として、扉と枠が一点で接する収まりとしています。扉が回転するヒンジ部分は切り込みを入れ外皮がそのまま回転する意匠とし、扉枠は平滑に収めています。また、ビスは1本も使用せず、溶接のみで組み立てを行っています。仕上げはステンレスヘアラインを残しつつ、5色使用した塗装を職人の手作業で施しています。

どこか精神世界に通じるような、見たことがありそうで、見たことがない。繊細さの積み重ねによって、この世ならざる空気感を感じ取っていただけるような、そんな意匠を目指しました。

*作品の着想を得た日本の伝統寺院の山門の写真。北鎌倉にある浄智寺『たからの庭』への入口。(写真:山之内淡)

また、《Anywhere Door》は、日本の伝統寺院の “山門” における柔らかな境界性から着想を得ています。境界の向こう側に、精神的な広がりや物理的な奥行き、時間や距離の跳躍を感じ取る日本伝統の考え方から着想を得ました。

加えて、ドアが風景の中にポツンと立つイメージ、ドアの向こう側のどこかと “つながる” イメージは、これまで日本の漫画やアニメーションの中で、繰り返し、数多くの物語に描かれてきた象徴的モチーフのひとつです。 例えば、日本のアニメーション映画監督・新海誠氏による長編アニメーション作品『すずめの戸締まり』は最近の最もわかりやすい事例といえると思います。

このように、《Anywhere Door》は、日本の伝統と、日本の漫画やアニメ―ションといった日本の現代ポップカルチャーの交差点に誕生しています。

3. 各展示場所の詳細

<マリナレッサ庭園(イタリア、ヴェネチア)>

ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展期間中に開催される European Cultural Centre 主催 Time Space Existence の公式招聘作品として、《Anywhere Door》は屋外会場であるマリナレッサ庭園(Marinaressa Gardens)に出展 / 展示されています。「Urgency to Repair, Regenerate, and Reuse」をテーマに掲げた2025年度のTime Space Existence の会場には、2025年5月10日(土)から 2025年11月23日(日)までの198日間、世界各国から招聘された建築家の作品やパネルが並びます。その中で、日本人建築家として、日本の文化と職人の誇るクラフトマンシップを立体作品を通して伝えます。世界の名だたる出展作品と並ぶ《Anywhere Door》。その存在感と日本文化が織りなす表現を現地ヴェネチアでぜひご体感ください。

アクセス: マリナレッサ庭園 , Riva dei Sette Martiri, 30122 Venezia VE, イタリア 

展示期間:2025年5月10日 (土) ~ 11月23日 (日) 

Time Space Existence 公式 website: https://timespaceexistence.com/

・マリナレッサ庭園 における設計のポイント

主催者である European Cultural Centre の施工によって設置されました。マリナレッサ庭園では、掘削が許されないため、木製のプラットフォームを地面に設置し、ドアを固定しました。縦横1800mmの大きさの木製プラットフォームの上に、園内の風景と自然につながるように盛土を行い、天然の芝生で覆いました。

*《Anywhere Door》イタリア・ヴェネチアでの写真。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展期間中に開催される European Cultural Centre 主催の Time Space Existence 公式招聘作品としてマリナレッサ庭園にて発表。(写真:田中克昌)

<臨済宗大本山 円覚寺 (神奈川県鎌倉市)>

古都鎌倉に佇む、臨済宗円覚寺派の本山「円覚寺」。1282年に開創された禅寺である円覚寺は、《Anywhere Door》の着想を得た特別な場所でもあります。 今回、円覚寺の境内にて、象徴的な大きな山門のある広場での展示が実現しました。歴史深い空間に突如現れる《Anywhere Door》。《Anywhere Door》のテーマである日本の歴史や伝統と、現代的な POP カルチャーの交差点、を体現した展示になっています。その佇まいが生み出す、神秘的でゆるやかな境界の表現をぜひ体験してください。

アクセス:神奈川県鎌倉市山ノ内 409 

展示期間:2025年7月~12月 

臨済宗大本山 円覚寺 公式 website: https://www.engakuji.or.jp/

・臨済宗大本山 円覚寺 における設計のポイント

文化財のため文化庁から許可を得て、鎌倉市文化財課の立ち会いのもと、円覚寺に馴染みの深い造園業者の施工によって設置されました。円覚寺の山門のある広場は、少なくとも江戸時代頃から一度も試掘も含めて掘削されておらず、記録としても価値のあるものになりました。掘削深さと掘削範囲を最小限に留めるよう工夫する目的で、防腐処理された厚さ70mmの枕木を井の字に組み、仮設基礎をつくり、ドアを固定しました。

*《Anywhere Door》北鎌倉・臨済宗大本山円覚寺での写真。文化庁から許可を得て、鎌倉市文化財課立ち会いのもと、 少なくとも江戸時代頃から一度も掘削されていない山門のある広場に枕木で仮設基礎をつくり設置された。(写真:田中克昌)

<KURKKU FIELDS (千葉県木更津市)>

木更津の広大な30haの敷地で、農業・食・アートを軸に美味しさと心地よさを提供する オーガニックファーム「KURKKU FIELDS」。 未来へとつながるサステナブルな力を生み出すこの場所と、《Anywhere Door》の『あなたと 同じ、世界のどこかに。』というコンセプトが共鳴し、場内のクリエイティブ・パークでの常設展示が実現。果てしなく広がる KURKKU FIELDS の大地に、新たなアート作品として登場する《Anywhere Door》。子どもから大人まで、作品を通して未来へとつながる感覚をぜひ体験してください。

アクセス:千葉県木更津市矢那2503 

展示期間:2025年7月~12月(常設) 

KURKKU FIELDS 公式 website: https://kurkkufields.jp/

・KURKKU FIELDS における設計のポイント

常設での屋外展示となることから、鉄筋コンクリート基礎が施工され、ドアを固定しました。KURKKU FIELDS という場所の持つ素晴らしさのひとつが子どもから大人まで楽しみ学べることであると感じたことから、遊具と屋外アート作品の中間のような存在になれるよう工夫して、見通しの良い開けた場所でかつ気軽に近づけるような設置場所を選定しました。背後には緑が広がっており、100年後も風景とともにあるような作品となるよう園内の様々な場所からの見え方も同時に考慮しています。

*《Anywhere Door》木更津・KURKKU FIELDS での写真。常設作品として園内に展示されることになった。鉄筋コンクリー ト基礎をつくり設置された。作品への近づきやすさや園内での見え方も考慮された。背後には緑が生い茂る。(写真:田中克昌)

<白井屋ホテル (群馬県前橋市)>

創業 300 年の歴史を誇る老舗旅館を再生したアートホテル「白井屋ホテル 」。「アートデスティネーション」をコンセプトに掲げ五感を刺激するインスピレーションに満ちた「白井屋ホテル」を彩る新たなアート作品として、《Anywhere Door》の展示が実現しました。ヘリテージタワー内に常設作品として設置され、4箇所ある展示場所として唯一の屋内作品となりました。世界的クリエイターの作品に囲まれた空間に、新たに登場する《Anywhere Door》をぜひ体験してください。

アクセス:群馬県前橋市本町2丁目2-15 

展示期間:2025年7月~(常設) 

白井屋ホテル 公式 website: https://www.shiroiya.com/

・白井屋ホテル における設計のポイント

《Anywhere Door》4箇所のうち、唯一の屋内作品となることから、床の仕上面のカーペットと自然に作品がつながるよう工夫して、曲面状に立ち上げる脚部を設計 / 制作しました。白井屋ホテルのヘリテージタワーは、屋内空間ではあるものの、都市的な体感とスケールを持つ美しい街のような空間だと思います。そんな「街」の一部 になりつつ、この場所から出発したり辿り着いたりするような物語を感じられる設置場所を選定しました。

*《Anywhere Door》前橋・白井屋ホテルでの写真。常設作品としてヘリテージタワー内に展示されることになった。4箇所で唯一の屋内設置作品。床仕上面と自然につながるよう工夫し作品と一体化した脚部を設計し設置された。(写真:田中克昌)

4. 各種情報

<プロジェクト協賛・協力>

《Anywhere Door》は、本プロジェクトに共感いただいた多くのパートナーの協力によって実現しました。

<企画・設計・制作クレジット>

Anywehre Door 企画/プロデュース:Tan Yamanouchi & AWGL 

Anywehre Door 設計:山之内 淡(Tan Yamanouchi & AWGL) 

制作:伴田 茂(有限会社伴田鉄工所) 

塗装:斗光 裕一(有限会社大成塗装電気製作所) 

Anywehre Door 公式 website 制作: 

Creative Director:山之内 淡(Tan Yamanouchi & AWGL)  

Art Director:大橋 謙譲(株式会社 CHERRY)  

Copywriter:片岡 良子(株式会社 CHERRY)  

Design Engineer:柳原 健人(PRESET)  

Photographer:田中 克昌

5. 建築家コメント

European Cultural Centre から2025年度の Time Space Existence 公式招聘の招聘状を受け取った際に、思い描いたことが2つあります。ひとつが、これまで素晴らしい建築家が展示を行ってきた歴史ある Marinaressa Gardens で建築インスタレーション作品を制作 / 出展することです。ふたつめが、ヴェネチアのみに留まらず、国境を越えて展開する、一連の建築作品、ネットワーク型の建築プロジェクトとして企画 / 製作・プロデュースをすることでした。「世界はつながっている」体感を得られ、繋がりについて今一度考えられる、そんな作品を設計したいと強く思いました。《Anywhere Door》は、本プロジェクトに共感いただいた多くの方々の協力 / 支援によって実現しています。

ですが、初めから繋がりがあった方は多くありません。自分の話に耳を傾けてくださった方々にこの場を借りて心より御礼申し上げます。私は、一度建築の外の業界を経験してから、建築家として出発しています。外から建築の世界を見るどこか “外様” の感覚を持っているからこそ、より強く、「建築にしかできないこと」「建築家が果たすべきこと」をしたいと考えるのではないかと思います。

そして次の世代の方々が後に続いていってくれることを願っています。 

山之内 淡

<建築家プロフィール>

山之内 淡(やまのうち たん)

1986年生まれ。北海道札幌市出身。Tan Yamanouchi & AWGL(株式会社AWGL一級建築士事務所)代表取締役兼代表建築家。慶應義塾大学大学院修士課程修了。建築をつくって終わらせるのではなく、「建築家の立場から、建築を伝える力」を身につけることを目指し、株式会社博報堂に入社。2018年、建築家として活動を開始し鎌倉・東京・札幌を拠点とする建築設計事務所を設立。日本古来の思想 「人・モノ・動植物のすべてに神さま(魂)が宿る」という考え方に由来した独自の建築思想 “Architecture of Ghost” を基に、建築の種類を問わず多種多様な建築設計を行う。同時に、建築家の職能を拡張することを目指し、“More than an Architect” をビジョンに掲げ、建築設計・ブランディング・広告PRまで一気通貫して行う、新たな建築家としてのワークスタイルを具体的な実例を通して提案している。主な受賞歴として、日本建築設計学会より【 Architects of the Year 2017 】を受賞。2022年には、World Architecture Communityの主宰する国際建築賞【 WA Awards (43cycle) 】受賞等。

公式 website: https://awgl-inc.com/ 

Instgram: https://www.instagram.com/tanyamanouchi/

<お問い合わせ先>

 取材・メディア掲載に関するお問い合わせ: info@awgl-inc.com

画像 DL: https://www.dropbox.com/scl/fo/8m0pxgn6jph3pb388hz3y/AAP81BLfF-r47gPO2-DyUGc?rlkey=kh2rsl898qly48ckidkex237v&dl=0

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


会社概要

URL
https://awgl-inc.com/
業種
サービス業
本社所在地
神奈川県鎌倉市山ノ内197-51
電話番号
-
代表者名
山之内淡
上場
未上場
資本金
500万円
設立
2017年12月