持続可能な航空燃料(SAF)を普及させる産学連携コンソーシアム「J-BAS」を創設
ソルガムを用いたバイオエタノール製造の社会実装を目指す
一般社団法人日本産業機械工業会(以下「当会」)は、SAF(Sustainable Aviation Fuel)の供給拡大とカーボンニュートラル社会の実現に向け、ソルガムを原料とした安価なバイオエタノール国産製造プロセスの構築を目的とする産学連携コンソーシアム「J-BAS(Japan Bio Alcohol from Sorghum」を創設したことをお知らせします。

1.J-BAS創設の背景
現在、航空業界は世界的な脱炭素化の潮流の中にあります。国際民間航空機関(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)は、2050年までに二酸化炭素排出量を2005年比で半減させるという高い目標を掲げています。
この実現には、2030年までに使用燃料の10%をSAFへ移行することが不可欠であり、日本政府(国土交通省)も「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」という明確な目標を策定しました。
しかし、2020年時点の世界のSAF供給量は、ジェット燃料全体のわずか 0.03% にとどまっており、需給ギャップは依然として極めて大きい状況です。このギャップを埋めるためには、革新的な製造技術と安定的な国産供給体制の基盤づくりが喫緊の課題となっています
2.J-BASのミッション:ものづくりの視点でバイオエタノール製造を再構築
J-BASは、従来のバイオエタノール製造プロセスを「ものづくり」の視点から再構築し、プラント実証や商用化につながる技術開発の確立に注力します。具体的には、以下の2つを重点領域として取り組みます。
① エンジニアリング技術の統合
原料粉砕・輸送、熱回収、反応制御、膜分離、蒸留、そしてプラント構築に関わる国産の産業機械技術をパッケージ化し、最適な製造プロセスの確立に向けて総合的に検討します。
② 製造プロセス全体の最適化によるコスト低減
単一の技術開発にとどまらず、製造プロセス全体を一つのシステムとして最適化することで、国産バイオエタノールの低コスト化を目指します。
その他、J-BASでは、エンジニアリングの統合および製造プロセス全体の最適化を検討します。あわせて、国産酵素の活用、原料作物としてのソルガムの特性の整理、将来の実証・商用化を見据えたスケール検討などについても、技術開発を支える補完的な要素として検討を進めます。これらの詳細については、今後の検討状況に応じて整理し、適宜情報発信していく予定です。
なお、プラント実証や商用化は、将来的に別組織・別フェーズでの実施を想定しており、J-BASはその基盤となる技術開発を担います。
3.今後の展望
J-BASは、基礎研究から実証フェーズにつながる技術的要素の確立を産学連携で推進し、将来的な商用化に向けた準備段階を支えます。本コンソーシアムは、当工業会所属の主要産業機械メーカーに加え、バイオテクノロジーやプロセス工学を専門とする複数の大学研究室が参画し、日本の新たなバイオエタノール産業の基盤形成に貢献していきます。
今後の活動拡大に向け、本取組に賛同いただける関連団体および製造企業の参画を広く募集します。
以上
J-BAS に関するQ&A 集
1. J-BAS の概要・位置づけ
Q1.J-BAS とはどのような組織ですか?
A.
J-BAS(Japan Bio Alcohol from Sorghum)は、ソルガム由来バイオエタノール製造プロセスの技術確立を目的とする産学連携コンソーシアムです。
一般社団法人日本産業機械工業会を中心に、国内の産業機械メーカーおよび大学研究室が参画し、
• 製造プロセスの最適化
• 工程統合
• 国産技術のパッケージ化
に取り組んでいます。
Q2.J-BAS が取り組む範囲は「技術開発のみ」とのことですが、プラント実証や商用化は誰が行うのですか?
A.
J-BAS は、バイオエタノール製造技術の確立・最適化に特化した取り組みです。
実証プラントの建設や商用化については、将来的に別組織または企業主体のコンソーシアムで実施されることを想定しています。J-BAS は、その前段となる技術基盤の構築を担います。
Q3.J-BAS の活動期間はどの程度を想定していますか?
A.
現時点では、3〜5 年程度でバイオエタノール製造プロセスの技術確立を完了することを目標としています。実証・商用化は、その後の別フェーズとして新たな事業体へ引き継がれる想定です。
Q4.今後のスケジュールはどうなっていますか?
A.
バイオエタノール製造プロセスの技術確立・最適化を段階的に進めます。
各工程の性能評価やコスト分析を実施し、将来の実証フェーズに引き継ぎ可能な技術
の確立を目指します。
2. SAF・社会的背景
Q5.SAF(持続可能な航空燃料)とJ-BAS の関係を教えてください。
A.
SAF は航空分野の脱炭素化に不可欠ですが、世界的に供給量が不足しています。
J-BAS が開発する国産バイオエタノール製造技術は、ATJ 方式(Alcohol-to-Jet)などを通じて将来的にSAF 化が可能であり、国内SAF 供給拡大の基盤づくりに貢献します。
Q6.SAF の供給不足はどれほど深刻なのですか?
A.
2020 年時点でのSAF 世界供給量は、ジェット燃料全体の**約0.03%に過ぎません。
一方、ICAO やIATA は2050 年に向けた大幅削減目標を掲げており、日本政府も2030年にSAF 導入10%**を目標としています。この需給ギャップを埋めるためには、国産による大規模生産体制の確立が不可欠です。
3. 原料(ソルガム)について
Q7.なぜ原料として「ソルガム」を採用したのですか?
A.
ソルガムは、乾燥や塩害などの環境ストレスに比較的強く、食料との競合も少ない作物です。
国内での栽培拡大も見込めることから、安定的な国産バイオマス原料として適していると判断しました。なお、将来的にはソルガム以外の原料も検討対象とする予定です。
Q8.ソルガムはどのように調達することを考えていますか?
A.
J-BAS では、以下の主体との連携による国内調達を想定しています。
• 地域の農家・営農組織
• 農業法人
• 将来的には自治体等
J-BAS 自身が農業事業を行うものではありませんが、安定調達が可能な原料条件を前提とした技術設計を行い、将来の実証・商用フェーズへの円滑な移行を目指します。
4. 技術開発の特徴
Q9.J-BAS が進める「ものづくりの視点での再構築」とは何ですか?
A.
バイオエタノール製造を、
「原料処理 → 発酵 → 分離 → 濃縮 → 回収 → ユーティリティ最適化」
といった工場全体のシステムとして捉え、統合的に最適化する考え方です。
国産産業機械技術を活用し、製造コスト低減と高効率プロセスの確立を目指します。
Q10.J-BAS の技術開発によって、なぜ製造コストが下がるのですか?
A.
J-BAS では、原料処理、発酵、分離・濃縮、エネルギー消費、設備投資といった要素を統合プロセスとして最適化します。
具体的には、
• 工程間の熱回収・エネルギー循環の高度化
• 原料処理(粉砕・搬送)の高効率化
• 国産酵母による発酵の高効率化
• 膜分離+蒸留の最適組合せ
• 国産産業機械の最適配置によるCAPEX 低減
などにより、総合的なコスト低減を図ります。
5. 酵素・プロセス技術
Q11.プロセス技術で重要となる酵素技術とは何ですか?
A.
ソルガムを効率的に糖化するためには、
• セルラーゼ
• ヘミセルラーゼ
• アミラーゼ
など複数の酵素が必要です。
現状では海外大手メーカーが市場を占めており、国産酵素の活用は限定的です。
Q12.なぜ国産酵素はこれまで使われてこなかったのですか?
A.
主な理由は、
1. 海外メーカーのスケールメリットと価格競争力
2. 国内酵素メーカーが食品用途中心であること
3. 工業用途向け大量生産設備の不足
などです。
J-BAS では、国産酵素を活用可能とする技術開発にも取り組みます。
Q13.現在一般的に使われているのはどの国の酵素ですか?
A.
主にアメリカ、デンマーク、中国などの海外メーカー製工業用酵素が使用されています。
6. コスト・将来展開
Q14.目標とする製造コストはどの程度ですか?
A.
長期目標として、100 円/ℓ 以下をターゲットとしています。
海外ATJ 向けバイオエタノール(150〜250 円/ℓ 相当)と比較しても、国産SAF の競争力向上に大きく寄与します。
Q15.プラント実証や商用化に進むためには何が必要ですか?
A.
• 事業主体の確立
• 実証プラント建設と資金確保
• ATJ までのサプライチェーン構築
• 原料供給協定
• 政策支援
• 航空会社・燃料供給者との連携
などが必要です。
J-BAS はこのうち技術基盤構築を担当します。
7. 参画・運営について
Q16.現在、どのような企業・団体が参画していますか?
A.
日本産業機械工業会・化学機械部会の会員企業および大学研究室が参画しています。
契約上、現時点で個社名の公開は控えています。
Q17.J-BAS への参加条件は何ですか?
A.
日本産業機械工業会・化学機械部会への入会が条件となります。
詳細はJ-BAS 事務局までお問い合わせください。
Q18.J-BAS に参画するメリットは何ですか?
A.
製造工程全体を見据えた技術開発に関与でき、将来の実証・商用化やSAF 関連産業への展開につながる点です。
Q19.どの大学・研究機関が参加していますか?
A.
複数のバイオテクノロジー・プロセス工学系研究室から関心・問い合わせをいただいています。
正式名称は体制確定後に公表予定です。
Q20.事業資金はどのように確保していますか?
A.
現在は日本産業機械工業会・化学機械部会で運営しており、将来的には公的助成金等の活用も検討しています。
【お問い合わせ先】
一般社団法人日本産業機械工業会
J-BAS 事務局
TEL:03-3434-3730
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