食事が変われば介護が変わる ~在宅介護者1,000名を対象に介護の実態を調査~ 一番の楽しみは「食べること」、実態は8割以上が「食べられない」
要介護度が高まるにつれて減る「常食」の割合、要介護5ではわずか17%
1,000名を対象に、介護の実態を調査しましたのでご報告いたします。
調査は臨床栄養と緩和医療の第一人者である藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座 東口 髙志教授の監修のもと、2013年9月13日~9月17日にインターネット調査を実施いたしました。
調査では、食事が、栄養摂取はもちろんのこと「在宅介護においては介護する人とされる人の癒しになる可能性があること」、しかし「実態は満足のいくような食事の提供・摂取がなされておらず『負の連鎖』に陥っているご家庭が多いこと」が分かりました。
本調査の結果を受け、当社では、東口教授の提唱する「感食介護(かんしょくかいご)」(「食から介護を応援する」という新しい介護の考え方、後述)に賛同・応援して参ります。
【調査結果サマリ】
- 一日最大9時間の介護時間、期間が長くなるにつれて深刻になる在宅介護
入浴の介助やリハビリなどの力や専門性を必要とする介護を除き、各介護において介護サービスを利用する割合は少なく、一日最大9時間の介護時間で在宅介護は「介護につきっきり」という実態。また介護が長期化するにつれて要介護度は高まり、時に虐待的な対応をしてしまい自責の念にかられた経験のある介護者は半数にのぼる。
- 一番の楽しみは「食べること」(62%)、食事の充実が介護を癒しに導く
要介護者の一番の楽しみは「食べること」で、要介護者が笑顔を見せるのも「何かを食べているとき」。一方の介護者も各介護の中で「食事」に一番注力しており、要介護者が「食事を食べてくれたとき」に報われ、喜びを感じている。
- 介護度が高まるにつれ変化する食事、要介護5では常食はわずか17%
要介護度が高まるにつれて常食(家族と同じ食事)の割合が減り、要介護5ではわずかに17%と8割以上の人が「食べられない」状況。同時に、介護者においては、要介護度が高まるにつれて食事にまつわる介護をストレスと感じる割合が高まる。家族の食事とは別に、要介護者のために特別に調理をしている人は16%と少なく、多くが見た目や味のよく分からない食事のために要介護者が「食べない・拒否する」といった状況が起きている。
【詳細】
- 一日最大9時間の介護時間、期間が長くなるにつれて深刻になる在宅介護
ほとんどの介護は自分たちで行うことが多い
在宅介護において、「誰がどんな介護を行っているか」を尋ねたところ、主に介護サービスを利用するのは入浴介助(46%)やリハビリ(33%)のように力や専門性を必要とするもので、その他の介護については、介護サービスを利用しているのはせいぜい1~2割で、ほとんど家庭内で介護をしていることが分かりました。
それぞれの介護にかけている時間を尋ねた(※1)ところ、「話し相手」(59分)、「散歩などの外出」(54分)に次いで「食事の介助」(54分)、「食事の準備(52分)」が長くなっています。全ての介護について、かけている時間を足し上げると、一日当たり最大で540.2分=9時間の介護時間となり、介護の種類が増えるほど「自宅では要介護者につきっきり」という実態が見られます。
※1:各介護にかけている時間(「0分」の回答を除く平均値[分])
話し相手 59.4
散歩など外出(の付添) 54.3
食事(の介助) 53.9
食事の準備(被介護者用) 52.0
リハビリ 49.3
点滴などの管理 47.3
トイレ・排泄(の介助) 43.9
入浴(の介助) 43.2
起床・就寝/体位変換 36.3
清拭/身体整容(の介助) 34.7
着替え(の介助) 34.1
服薬(の介助) 31.7
期間が長くなるにつれて深刻になる
今回の調査対象者においては、介護期間は1年未満という人から15年以上という長期間の人まで幅広い回答がありましたが、要介護度が高い人ほど長期間の介護となっており(要介護5では4人に1人が10年以上の在宅介護)、裏を返せば介護期間が長くなるにつれて介護の度合いが高まり、深刻度が増していると考えられます。
介護度が高まれば虐待的な対応で自責
このような在宅介護の現状において、介護者が抱えるストレスはかなりのものであると思われます。イライラが募り、要介護者に対してついつい冷たく当たったり、時には思わず手が出てしまったりということで、「負い目を感じた(自責の念にかられた)ことがある」という人は60%と過半数にのぼります。
この割合は要介護度が高まるにつれて高くなる傾向があり(要介護4,5の場合約7割)、長期化に伴いどんどん介護が深刻化していく中で余裕がなくなり、思ったように介護できずに要介護者との関係も悪化し、さらに要介護度が高くなってしまうといった、いわば介護における「負の連鎖」が起こっていると見ることができます。
- 一番の楽しみは「食べること」(62%)、食事の充実が介護を癒しに導く
最も注力しているのは食事の準備
介護の中でも最も注力していることを尋ねたところ、「食事の準備」という回答が最も多く19.1%、また「食事の介助」(12.5%)と合わせると3割以上の人が食事を重視していることが分かりました。
次いで多いのは「トイレ・排泄の介助」(17.6%)「話し相手」(14.5%)となっています。
食事を食べてくれたときが嬉しい
要介護度が高まるにつれて深刻度の増す在宅介護ですが、介護者が注力している食事に関して、「介護をしていて良かったと思うこと」があるかを尋ねたところ、「食事をしっかり食べてくれたとき」「楽しそうに食事をしていたとき」にそう思うと答えた人がそれぞれ19.5%、29.8%となりました。またこの割合は要介護度が高くなるにつれて高くなり、要介護度5ではそれぞれ28.0%、36.5%となります。
食べたとき、話しかけたときに笑顔
要介護者の反応としても、「笑顔を見せる」のは「話し相手をしたとき」(50.7%)に次いで「何かを食べるとき」(41.2%)が高く、「感謝された」のは「何かを食べるとき」(29.2%)と「話し相手をしたとき」(26.2%)が最も高くなり、食事とコミュニケーションが要介護者にとって特別な時間であると考えられます。また、実際に要介護者に対して「楽しいと思うとき」を尋ねた(※2)ところ、「食べるとき」を挙げる人が62.2%、次いで「誰かと話しているとき」が多い結果となりました。
介護において食事の時間を充実させることは、同様に重要なコミュニケーションを充実させ、介護する人と介護される人の双方にとって癒される時間が増えることであると言えます。
※2それぞれ複数回答、「要介護者自身が楽しいと思うとき」は回答可能な方(n=756)のみ介護者が代理で回答
- 介護度が高まるにつれ変化する食事、要介護5では常食はわずか17%
要介護度が高まるほど食事の介助が深刻に
しかし実際には、介護者にとって食事は相応のストレスがあります。「最もストレスを感じる」介護として「食事の準備」「食事の介助」と回答した人は合わせて16.9%となり、内訳としては要介護度が低いときは「食事の準備」という回答が、要介護度が高くなると「食事の介助」という回答が多くなります。
「食事の介助」については、「食事を食べない・拒否する」「食事を上手に食べられない」という回答が、要介護度が高まるにつれて高くなり、要介護5ではそれぞれ28.0%、38.0%となります。
要介護度が高まるにつれ常食が食べられなくなる
食事の内容については、43%の人が家族と同じもの(常食)を食べていますが、要介護度が高まるにつれて常食の割合は減り、要介護5では常食の人はわずか2割以下にとどまります。
常食以外の人については、一部の人は家族の食事とは別に、要介護者のために食事を用意しています(常食以外の食事を食べている人の27.4%)が、多くは家族と同じ食事を細かく刻んだり、ミキサーでさらに刻んだりして提供(同51.4%)しています。残念ながら刻んだりミキサーにかけたりした食事は見た目も味も「何を食べているか分からない」ようなものになりがちなため、上記のように要介護者の「食事を食べない・拒否する」といった反応、そして十分な栄養が摂取できない状況を生んでいます。
- 負の連鎖を断ち切る「感食介護」と摂食回復支援食「あいーと®」
要介護者にとって楽しみである会話もままならない現状の食事では、満足度も摂取できる栄養も低く要介護度が高まり、さらに要介護者との触れ合いが困難になるという「負の連鎖」に陥っていると考えられます。この現状を打開する方策として、東口教授は食から介護を応援する「感食介護(かんしょくかいご)」を提唱しています。
「感食介護」とは、食の持つ力「食力」を活かして、介護される人の症状改善やQOLの向上、また介護する人の負担の軽減を図り、そして介護する人と介護される人の間のコミュニケーションを豊かにするという、新しい介護の考え方です。
当社では「感食介護」を叶える食事として、摂食回復支援食「あいーと®」を製造・販売しています。「あいーと®」は独自の技術により、食材本来の形・色・味をそのままに、舌でくずせるやわらかさに仕上げることで、口腔に問題を抱えている方に食べる楽しみと活き活きとした生活を提供する食事です。調理は蒸し器または電子レンジで温めるだけの手軽さで、また栄養面ではおかず2品とごはん1品を1食の目安として、3食でおよそ950~1300kcalのエネルギーを無理なく摂取できる設計となっています。
【調査概要】
対象者:在宅介護を行っている人(全国、性年代を問わない)
サンプル数:1,000名
実施日:2013年9月13日~9月17日
調査方法:インターネット調査
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