【新技術開発】産業用途に対応した深紫外線LED水殺菌モジュールを開発
新たに開発したモジュールは、複数の深紫外線LED1) を二次元的に並べることで(アレイ化)殺菌能力を最大化しながら、近傍に集光型のリフレクタ2) (反射鏡)を配置して、光の利用効率を高めたものです。その結果、水殺菌における性能の指標となる大腸菌は、ワンパス3)で、毎分120リットル以上の殺菌能力を確認することができました。また、塩素などの薬剤では死滅させることができないクリプトスポリジウム4) に対しては、毎分60リットルの流量で十分な殺菌ができることも確認しています。
今回開発したモジュールには、19個の紫外線LEDが使用されています。使用するLEDの個数を100個から1,000個へ増やすことで、ビルや工場での水処理、上水施設での水殺菌など、用途に応じて毎分1,000リットル5) から5,000リットルの処理設備に使用することができるようになります。
表1.殺菌性能の比較(大腸菌:99.9%殺菌能力 新開発 当社従来モジュール モジュール 殺菌性能 120L/min 10L/min 2L/min 使用LED数 19個 4個 1個 LED利用効率 6.3L 2.5L 2L (殺菌性能/LED個数) |
■新開発モジュール技術の特長
当社は、これまでにも同様の深紫外線LEDを搭載した流水殺菌モジュールを製品化6) していますが、ワンパスでの処理能力は毎分2リットルおよび毎分10リットルの小流量に対応するものでした。
今回、新たに
1)多数個のLEDをアレイ化し、殺菌効果を最大にすべく配置する新設計技術
2)LEDからの光を有効に流水に照射するために、集光型光リフレクタを導入した新技術
を用いて、従来よりも10倍以上の流水殺菌性能を発揮できることを確認いたしました。
1)LEDアレイ化7)
当社の流水殺菌モジュールの特徴は、流れる水の方向とLEDから放射される光の方向が
同じ方向を向いているところにあります。これにより、周辺の反射を利用して、断面内での光強度を均一化し、殺菌能力のムラを抑えています。多数個のLEDを用いた場合でも、面内の光の均一性が保たれるようにLEDの配置を設計することで、殺菌能力を最大化しています。
2)集光型リフレクタ
LEDから放射される光は、非常に広い角度(半値全角8):120度)に広がっています。当社では、これらの光を殺菌リアクタ9) 周辺に反射材を形成して面内均一性を高めていますが、よい反射材を用いても紫外線の反射率は低く、何回かの反射で光は弱まってしまいます。
これを改善するために、LEDの近傍に集光型のリフレクタを形成することで、見かけ上LEDの放射角度を狭くし、殺菌リアクタ内での均一性を損なうことなく、かつ、周辺反射での光損失を低減しました。これにより、LEDからの光を有効に殺菌作用に使うことが可能となり、性能向上に寄与させることができました。
■今後の展開
紫外線LEDは、小型、低電圧駆動、出力制御性、高速応答性などの特長から、工業、医療、環境など様々な分野での応用が期待されています。これまで、日機装が開発した水殺菌モジュールでは、深紫外線LEDの活用により装置の小型化を実現してきました。今回の技術開発成果は、その応用範囲を飛躍的に拡大するものであり、従来から想定されていた、サイズの問題からランプ式紫外線殺菌装置10) の搭載が困難であった様々な機器への組み込みを進展させるだけでなく、工業・産業向けのLED応用を拡大するものと予測しています。
今後、本開発技術を具体的な製品に盛り込み、各種用途に幅広く提供していく予定です。
なお、今回開発した水殺菌モジュールには、現在当社が量産している深紫外線LED(VPS171)が使用されていますが、LEDチップを高出力化することで、更に高い殺菌性能の実装が可能となります。当社は、引き続き深紫外線LEDの開発を推進し、長寿命且つ高光出力の深紫外線LEDの提供を通じて、市場ニーズにお応えしていきます。
以上
■用語の説明
1) 深紫外線LED
紫外線とは400nmよりも波長が短い光の総称です。LEDで紫外線発光を得る場合、365nmより長い波長と短い波長では主となる材料がことなり、短い波長ではAlGaNが主材料として使われます。当社は、365nmよりも短い波長のLEDを扱っており、その波長域を深紫外線と定義しています。波長域では255nm~350nmの領域を示します。
2) リフレクタ
必要な領域に光を有効に向けるための反射鏡です。LEDはランプに比べ非常に小型なので、リフレクタも小型にでき、LEDの周囲にコンパクトに付けることが可能です。
3) ワンパス
殺菌性能を表現する際に使われる用語で、装置内を1回通過(One Pass)した時の殺菌能力を示す時に使用します。一般的にはタンク中の水を殺菌する方法として、1回の処理で殺菌を行うワンパス方式と、何度も循環させて徐々に殺菌する循環方式があります。装置単体の殺菌性能を表す際には、ワンパス方式による能力表示がよく使用されます。
4) クリプトスポリジウム
水の中に含まれる耐塩素性の病原性原虫です。体内に入ると、深刻な害悪を引き起こすため、感染症法で規制されていますが、塩素などの薬剤では死滅させることができないため、紫外線殺菌で対処するのが一般的です。
5) 毎分1,000リットル
水殺菌の処理能力を表す単位として、毎分XXリットル、という呼び方と、XXトン/日という呼び方があります。2つの単位の関係は、毎分1,000リットル=1,440トン/日ですが、大流量処理の場合には、1,440トン/日で表現されるのが一般的です。
ここでは、小流量殺菌装置との関係を明確にするため、あえて、毎分1,000リットルの表記を用いました。
6) 流水殺菌モジュール製品化
流れる液体を殺菌するため専用に作られたモジュールです。日機装では、すでに、2L/min、10L/minの2種類の流水殺菌モジュールを製品化し、一般販売しています。
7) LEDのアレイ化
一個のLEDの能力には限界がありますが、多数個のLEDを並べて、あたかも一つの光源のようにして使えば、能力は無限に広がります。複数のLEDを二次元的に並べて、性能を拡張したものをLEDアレイと呼びます。この場合、どのように並べるかが効率の良し悪しに関係します。
8) 半値全角
LEDから放射される光の強度分布は、非常に広い分布をしています。その放射の広がり方を表すのに半値全角という表現を使い、光強度がピーク値の半分になる全角度を表します。半値全角:120度とはパッケージの垂直方向から±60度で、光強度がピーク値の1/2になることを表しています。
9) 殺菌リアクタ
殺菌装置の内部で光と源水が反応し実際に殺菌が行われる領域のことを殺菌リアクタと呼びます。この内部での、水の流れ状態と紫外線の強度分布が、殺菌効率に非常に大きく関係しています。
10) ランプ式紫外線殺菌装置
深紫外線LEDが開発されるまで、この領域の波長の光源には、水銀ランプが用いられてきました。しかし、ランプ内に含まれている水銀は、環境汚染の原因物質として、その利用が懸念されて続けてきました。2013年に「水銀に関する水俣条約」が制定され、2020年までに水銀含有製品の製造、および輸出入の禁止がなされる見込みです。環境負荷の高い水銀の利用を控える動きが広がっています。
http://www.nikkiso.co.jp/uploads/20160624114462.pdf
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
- 種類
- その他
- ビジネスカテゴリ
- 電気・ガス・資源・エネルギー
- ダウンロード