COVID-19流行時における喘息入院の激減

米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)学会誌に掲載

株式会社データック

大規模診療データベースを用いた分析で、COVID-19流行時、喘息による入院が減少したことが明らかになったので、お知らせします。本研究は、東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学教室の宮脇敦士助教のチーム、メディカル・データ・ビジョン株式会社取締役 中村正樹氏、および株式会社データック代表取締役 二宮英樹が共同で行いました。本研究の論文は10月13日付で米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)の公式学会誌である、The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice に掲載されました。

【弊社代表取締役 二宮のコメント】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し、社会には大きな影響が及びました。医療面、経済面で暗いニュースが流れる中、ある領域においてはポジティブな変化もあったという結果が出ました。

本研究は緊急事態宣言下において、宮脇敦士先生、中村正樹様と企画をスタートしました。医療データに携わる身として社会に貢献したいという想いを共有し、今回の成果に繋がりました。

私たちが日々大切にしているのは、蓄積されてきた医療データを最大限活用するということです。臨床に携わる医師からは、病院の医事会計データであるレセプトデータ・DPCデータの研究に対する疑義を唱えられることもあります。確かにアウトカム指標は限定的で、その他にも様々な制約もありますが、一方で既存の大規模データベースだからこそ、 できる研究もあります。制約を理解しながら、既存データでできることをやり尽くしたいです。その延長線上に、より良質なリアルワールドデータの創出があると信じています。

また、臨床現場の気づきやクエスチョンと、大規模データと、臨床疫学者を有機的に繋げながら取り組むことが大切です。残念ながら現状では、それぞれの間に距離を感じます。私たちはこういった事例を積み重ねながら、臨床家・データ提供者・データエンジニア・臨床疫学者のチームで日本のリアルワールドデータ・リアルワールドエビデンスに貢献していきます。

【発表の概要】
気管や肺に感染するウイルスは一般に喘息を悪化させることが知られています。新形コロナウイルス感染症(COVID-19)も同様に喘息のコントロールを増悪させると考えられ、医療関係者の間では、COVID-19流行当初、喘息の入院が増加する可能性が危惧されていました。ただ、その後の欧米の報告では、喘息による救急外来受診や入院が逆に減少したという報告も出てきていました。しかしながら、これらの報告は、小規模な研究であり、この傾向が他の地域でも当てはまるかどうか、大規模なデータベースを使用した研究が待たれていました。そこで、本研究では、メディカル・データ・ビジョンの保有する大規模診療データベースを用い、2017年1月〜2020年5月の喘息を主病名(最も医療資源を投入した病名)に持つ入院の週毎の推移を、継続的に観察された全国272のDPC病院に対し調べています。

その結果、例年春先(第9週=3月上旬以降)から初夏にかけて、喘息の入院は増加する傾向にあるにもかかわらず、今年は逆に減少する傾向にあることが認められました(図)。年と週によるトレンドを統計学的に調整した分析では、2020年第9週以降の喘息による平均入院数は、2017年から2019年の同時期と比較して0.45倍(95%信頼区間 0.37-0.55; p<0.001)になっていました。この傾向は18歳未満の子ども、成人共に認められました。

COVID-19の流行自体が喘息のコントロールを悪化させた可能性は残りますが、それ以上に、感染症の予防行動やマスク着用によるアレルゲン(花粉など)への暴露の減少などが、社会全体でみたときに喘息発作を低減させたと考えられます。本研究において認められた劇的な喘息による入院の減少は、私達個人や社会が生活様式を変えるだけで、喘息による入院の大部分を防げる可能性があることを示唆しています。喘息の良好なコントロールのために、予防行動や生活環境への配慮の重要性が再認識させられます。

本研究は、2020年10月13日付で、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)の公式機関誌である、The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice に掲載されました。

【書誌情報】Abe, K., Miyawaki, A.*, Nakamura, M., Ninomiya, H., Kobayashi, Y. (2020) Trends in Hospitalizations for Asthma During the COVID-19 Outbreak in Japan. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice
URL: https://doi.org/10.1016/j.jaip.2020.09.060
*Corresponding Author

 

 (本文より[一部改変] (本文より[一部改変]


【本件に関するお問い合わせ先】
本リリース記事について:二宮英樹(株式会社データック) staff@datack.jp
研究内容について:宮脇敦士(東京大学) amiyawaki-tky@umin.ac.jp

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医療・病院医薬・製薬
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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都千代田区飯田橋1丁目8-9-707
電話番号
-
代表者名
二宮英樹
上場
未上場
資本金
800万円
設立
2018年08月