動物との共生を考える連絡会とワイルド・ウェルフェア、野生動物の飼養管理の見直しを求める

野生動物の飼育と触れ合いにかかわるリスクを浮き彫りにした意見書を公開

動物との共生を考える連絡会

2023年11月15日、動物との共生を考える連絡会とワイルド・ウェルフェア(Wild Welfare)は、意見書「展示動物を含む野生動物の飼養管理に関する課題について」を公開しました。

日本においては、動物園、水族館や動物カフェなど、動物を展示することを業としている「展示業」が全国で3,000以上登録されており、このような展示施設の多くは野生動物を飼育しています。この膨大な数字は、様々な生活水準のもとで飼養管理されている野生動物たちが何百万頭もいる可能性があることを示しているのです。そして、こういった施設の中には、野生動物を触ったり、餌を与えたりするような過剰なふれあいなどを実施しているところも多々あり※1、野生動物の福祉が懸念されたり、人と動物双方の健康上のリスクを生んでいる現状があります。この意見書は、野生動物の福祉や、上記のような状況がはらむ様々なリスクに関する専門家の見解や提言をまとめたものです。


◆野生動物の飼養管理がはらむ課題


日本における野生動物の飼養管理の現状には、様々な課題があります。例えば、野生動物の需要により希少な動物の違法な取引が横行している現状や、飼養管理下にある野生動物に適切な生活環境が提供されていないなどの動物福祉上の課題が挙げられます。また、このような課題に関連して、人獣共通感染症や野生動物の行動管理の難しさに起因する事故など、人間の健康や安全を脅かすリスクも決して無視できないものです。こういった野生動物にかかわる事故は、施設関係者のみならず施設来園者も危険にさらしかねません。

このような課題を解決する対策案として、意見書では、野生動物の展示業を許可制にし、こういった野生動物を扱う業者により厳密な定義を設ける、野生動物にかかわる業者がその飼養管理のための適切な知識を有していることをチェックする制度を導入する、一般がペットとして飼育できる野生動物の一覧(ホワイト・リスト)を作成し、リストに掲載されていない種を飼育不可にするなど、野生動物の飼養管理にかかわるより厳しい規制が提案されています。


◆これからの取り組み


この意見書を受けて、動物との共生を考える連絡会はワイルド・ウェルフェアと共同で、次回の動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)の改正に向けて、意見書にて提案された対策の一つである飼育できる野生動物のホワイト・リストの作成を求め、一般家庭での野生動物の飼育の制限を目指します。たくさんの種がいる中、一般のペットとして「飼育不可の野生種」を列挙するような規則ではいたちごっこになってしまう恐れがあります。したがって、動物との共生を考える連絡会とワイルド・ウェルフェアは、ホワイト・リスト、すなわち一般飼育可能な種を列挙し、それ以外の種の飼育を原則禁止する形で野生動物の飼育を効果的に規制することを求めます。

動物との共生を考える連絡会とワイルド・ウェルフェアは、一般家庭における野生動物の飼育を規制することが、意見書で浮き彫りにされている様々な課題に対応するための第一歩であると考えます。まず、野生種をその生理生態に見合った形で適切に飼育するためには、生活環境、適切な食事や健康管理などを含む様々な要素を揃える必要があり、これらを一般家庭で提供することは極めて難しいと考えます。動物たちのこういったニーズを満たすことができない状況は、その動物たちの福祉を侵害することにつながります。

また、新型コロナウィルスによって引き起こされたパンデミックが指し示すように、野生種はまだまだたくさんの未知の病原体を保有しているという専門家の意見も多く、人間の公衆衛生上の観点からも懸念されるべきです。一般家庭におけるペットとしての野生動物の飼育は、人間と密に接触する状態に野生動物を置くことになるため、飼育を制限する必要があると考えます。

さらに、一般の消費者の間で様々な野生動物の需要が増えれば、利益を求めてそういった野生動物を販売する者も増えることが予想されます。一般消費者の需要が増えれば、希少動物などの輸入も促進されてしまい、さらには非合法的な輸入にも拍車がかかってしまうことも懸念されます。このような野生動物の過度な商取引や密猟・密輸は、野生動物を絶滅の危機に追いやる要因ともなり、自然環境の保全からも悪影響を及ぼす恐れがあると考えます。

この意見書は、飼養管理下にある野生動物たちの福祉はもちろん、人間社会の安心・安全をも脅かす多岐にわたる課題を浮き彫りにするものです。意見書の内容は、人間と動物双方のためにも、野生動物の飼養管理や人間との接触のあり方について早急に対策を講じる必要性があることを示すものと言えます。

なお、動物との共生を考える連絡会とワイルド・ウェルフェアは、意見書を動物愛護法を管轄する環境省自然環境局の動物愛護管理室にも提出しました。今後も各方面の関係者に働きかけ、人間と動物双方にとってより安全でやさしい社会を目指して活動していく所存です。


意見書「展示動物を含む野生動物の飼養管理に関する課題について」はこちら ( https://www.dokyoren.com/231115/ ) からダウンロードできます。


注釈

※1 2018年「日本動物園水族館協会非加盟の動物展示施設における来園者と動物のインターラークションに関する報告書」


◆法人概要

動物との共生を考える連絡会

動物との共生を考える連絡会は、「人と動物が共に幸せに暮らせる社会づくりを目指す」という趣旨に賛同した団体・法人・個人の連合体であり、「動物の愛護および管理に関する法律」を国民に周知し、同時にこの法律をより良いものに改正するために、管轄官庁や行政自治体、国会議員などへのロビー活動などを行う連合体です。ウェブサイト –  https://www.dokyoren.com/

代表者: 青木貢一


Wild Welfare (ワイルド・ウェルフェア)

ワイルド・ウェルフェアは、飼育管理下にある野生動物の福祉を改善することに取り組む国際団体です。動物園、水族館、サンクチュアリ等々の野生動物飼育施設や動物福祉団体と協働し、飼育管理下にある野生動物が直面する重大な課題に対する長期的かつ持続可能な解決策に向けた取り組みを展開しています。

「我々の抱くビジョンは、飼育管理下にある野生動物すべてが、生き生きと豊かな生活を送れる世の中である。」ウェブサイト -  https://wildwelfare.org/

Wild Welfare is a global organisation committed to improving animal welfare for captive wild animals. By working together with animal welfare organisations and captive wildlife facilities, including zoos, aquariums and sanctuaries, we achieve long-term and sustainable solutions to the most critical issues facing wild animals in captivity.

“Our vision is a world where every captive wild animal is able to thrive and live a good life”.

Visit us at: https://wildwelfare.org/

代表者: サイモン・マーシュ(Simon Marsh)・ジョージーナ・グローブス(Georgina Groves)

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会社概要

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財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都町田市玉川学園7-8-1
電話番号
042-723-2755
代表者名
青木貢一
上場
未上場
資本金
-
設立
1997年10月