5万人を超える回答 アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)診断

日本労働組合総連合会

連合は、誰もが多様性を認め合い、互いに支え合うことのできる職場・社会の実現をめざす取り組みの第一歩として、2020年6月10日~11月11日、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)診断をGoogleアンケートで実施しました。
回答者数は50,871名と、連合が行った各種調査の中では近年まれにみる回答者数となり、アンコンシャス・バイアスに関する関心の高さが浮き彫りとなりました。

■​結果のポイント

◆ 連合が行った調査等で過去最多の5万人が回答
◆ 日常や職場で95.5%の人がアンコンシャス・バイアスを認識
◆ 男性5.9件、女性5.0件と男性の方がアンコンシャス・バイアスを認識
◆ 多くの人がアンコンシャス・バイアスを認識した設問
①「『親が単身赴任中』というと、父親を想像する」
②「介護しながら働くのは難しいと思う」
③「体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う」
◆ 男女差が大きかった設問
・LGBTに関するアンコンシャス・バイアスは男性が女性の2倍以上
・「体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う」で
男性56.6%に対し、女性32.5%と24.1ポイントの開き
◆ 仕事との両立に課題
・「育児中の社員・職員に負荷の高い業務は無理と思ってしまう」3人に1人
・「介護をしながら働くのは難しいと思う」過半数
・障がいや治療に関するアンコンシャス・バイアスは男女で認識に開き
◆ 「パートタイマーは、主婦が家計補助のために働いている」3人に1人
◆ 「普通は〇〇だ」「それって常識だ」と思うことがある人は約半数
◆ 若年層と中高年層のアンコンシャス・バイアスの認識はほぼ同じ



調査概要

【調査タイトル】アンコンシャス・バイアス診断
【内容】日常、職場の中でのアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)に関するアンケート
【監修】一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事 守屋 智敬
【集計期間】2020年6月10日~11月11日
【調査方法】Googleアンケート
【対象】連合本部、構成組織、地方連合会、単組の役職員、組合員、その他一般
【有効回答者数】50,871名


設問項目
Q設問を見て自分に思い当たるものにチェックをしてください(複数選択可)<計20問>
□ 「親が単身赴任中」というと、父親を想像する(母親を想像しない)
□ 体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う
□ お茶出し、受付対応、事務職、保育士というと、女性を思い浮かべる
□ DV(ドメスティック・バイオレンス)と聞くと男性が暴力をはたらいていると想像する(女性を想像しない)
□ LGBTの人は一部の職業に偏っていて、普通の職場にはいないと思う
□ LGBTであると聞くと、戸惑いを感じてしまう
□ こどもが病気になったときは母親が休んだほうがいいと思う
□ 育児中の社員・職員に負荷の高い業務は無理と思ってしまう
□ 介護しながら働くのは難しいと思う
□ 病気治療しながら働いている人をみると、仕事をやめて治療に専念した方が良いと思う
□ 障がいのある人は、簡単な仕事しかできない、あるいは働くのが難しいだろうと思う
□ 非正規雇用で働く人は、自分で望んで、その働き方を選択していると思う
□ パートタイマーは、「主婦が家計補助のために働いている」というイメージがある
□ 外国人労働者は日本の企業文化にあうのか、つい心配になる
□ 外国人労働者をみると、出稼ぎなど、一時的な滞在者だと思う
□ 定時で帰る人は、やる気がないと思う
□ 上司より先に部下が帰るのは失礼だと思う
□ 「普通は〇〇だ」「それって常識だ」と思うことがある
□ 年配(高齢者)の人は頭が堅く、多様な働き方への融通が利かないと思ってしまう
□ 「多様性」と聞くと、全ての違いを、なんでも受け入れなければならないことだと思う


調査結果
≪属性≫

 


≪アンコンシャス・バイアスの認識≫
■アンコンシャス・バイアスを認識した数
1つ以上でも設問(アンコンシャス・バイアス)を認識したことがある人は95.5%以上となりました。最も多かった件数は4件(11.0%)でしたが、1人当たりの平均件数は5.7件で、性別での平均件数は男性5.9件、女性5.0件と、男性の方が約1件アンコンシャス・バイアスを認識した件数が多い結果となりました。

 



■設問ごとの認識率
アンコンシャス・バイアスを認識した設問で、最も多かったのが「『親が単身赴任中』というと、父親を想像する(母親を想像しない)」(33,729名、全体の66.3%が回答)、次に「介護しながら働くのは難しいと思う」(29,694名、全体の58.4%が回答)、続いて「体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う」(26,186名、全体の51.5%が回答)となりました。

逆に回答者が少なかった設問は「定時で帰る人は、やる気がないと思う」(1,438名、全体の2.8が回答)、「LGBTの人は一部の職業に偏っていて、普通の職場にはいないと思う」(2,169名、全体の4.3%が回答)、「上司より先に部下が帰るのは失礼だと思う」(2,633名、全体の5.0%が回答)となりました。


≪性別ごとの結果≫
■ジェンダーに関するアンコンシャス・バイアス
ジェンダーに関するアンコンシャス・バイアスは、どの設問も高い回答率となりました。男女ともに最も多かったのが「『親が単身赴任中』というと、父親を想像する(母親を想像しない)」でした。

一方で男女差が最も大きかった設問は「体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う」で男性56.6%に対し、女性32.5%と24.1ポイントの開きがありました。

また、LGBTに関するアンコンシャス・バイアスを認識した人は男性が女性の2倍以上となりました。



■仕事との両立に関するアンコンシャス・バイアス
子育てに関するアンコンシャス・バイアスについては、男女ともに「育児中の社員・職員に負荷の高い業務は無理と思ってしまう」と認識した人が3人に1人と多い結果になりました。

「介護をしながら働くのは難しいと思う」との認識は過半数を超え、障がいや治療に関するアンコンシャス・バイアスは少ないものの、男女で認識に開きがありました。



■非正規雇用に関するアンコンシャス・バイアス
「パートタイマーは、主婦が家計補助のために働いているというイメージがある」との認識が3人に1人で、男性の方が若干多い結果となりました。



■外国人労働者に関するアンコンシャス・バイアス
「外国人労働者は日本の企業文化にあうのか、つい心配になる」との設問については男性が4人に1人、女性が5人に1人回答する結果となりました。

また、「外国人労働者をみると、出稼ぎなど、一時的な滞在者だと思う」との設問についても男性の方が5ポイント以上多く回答しました。



■働き方に関するアンコンシャス・バイアス
「定時で帰る人は、やる気がないと思う」、「上司より先に部下が帰るのは失礼だと思う」の設問については少ない回答率となりました。


■多様性に関するアンコンシャス・バイアス
「普通は〇〇だ」「それって常識だ」と思うことがあると回答した人は約半数におよびました。また、「年配(高齢者)の人は頭が堅く、多様な働き方への融通が利かないと思ってしまう」との回答も3割にのぼりました。


≪年代層の結果≫
「年配(高齢者)の人は頭が堅く、多様な働き方への融通が利かないと思ってしまう」との回答が多いものの、実際には若年層(10代~30代)の方が中高年層(40代以上)より多い割合で回答したアンコンシャス・バイアスに関する設問は20項目のうち10項目ありました。

また、一人あたりの平均件数も若年層5.8件、中高年層5.6件とほぼ同じとなりました。



■​人や組織に影響する様々なアンコンシャス・バイアス

アンコンシャス・バイアスの影響は、主に「決めつけ」や「押しつけ」の言動となってあらわれ、職場やそれ以外の人間関係にも影響を及ぼすことがあります。

 「“普通”そうだ 、“たいてい”こうだ」という価値観の決めつけ
 「どうせダメ、きっとムリ ・そんなことできるわけない 」などの能力の決めつけ言葉
 「そんなはずはない 、こうに決まっている」 などの解釈の押しつけ言葉
 「こうある“べき”だ 、こうでないとダメだ」という理想の押しつけ言葉

 

職場での問題例 人間関係
人間関係が悪化する
組織風土が悪くなる
風通しのいい対話がなくなる
ハラスメントがうまれる
コンプライアンス違反がおこる
イノベーションがうまれにくい
ダイバーシティ(多様性)が推進されない
職場の雰囲気がギスギスする
やる気がなくなる
自分を過大評価/過小評価する
ネガティブになりがちになる
イライラが増える
言い訳が増える
挑戦できなくなる
成⾧の機会を失う遠慮がちになる

 

アンコンシャス・バイアスは日常にあふれていて、誰にでもあるものです。ただ、あることそのものが悪いわけではなく、問題なのは、気づかないうちに、「決めつけ」たり、「押しつけ」たりしてしまうことです。

職場にあふれている「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み・偏見)」に気づくこと、それが連合のめざす、真の多様性ある職場への第一歩だと考えています。
 

 

■連合の取り組みについて 連合アクション2020

「気づこう、アンコンシャス・バイアス~真の多様性ある職場を~」
連合は、性別・年齢・国籍・障がいの有無・就労形態などにかかわらず、誰もが多様性を認め合い。
お互いに支えあうことのできる職場、社会の実現をめざしています。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/action/diversity/

 


■有識者コメント 「アンコンシャス・バイアスの意識が大きな一歩」
監修:一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事 守屋 智敬

“真の多様性ある職場づくり”をめざして、アンコンシャス・バイアスを切り口としたアンケートを連合が実施し、5万人を超える回答結果が得えられたことは、関心事の高さを示すとともに、「一人ひとりが自分の無意識の思い込みや偏見があるかどうかに、まずは“気づく”という機会の大切さを広めた」という点において、大変意義深く、うれしく思います。

回答いただいた50,871名のうち95.5%にあたる方が、今回の設問にあったアンコンシャス・バイアスを一つでも認知する結果となったことは、アンコンシャス・バイアスは誰にでもあって、私たちは、何かしらの影響を受けている可能性があるともいえるでしょう。アンコンシャス・バイアスは、あることそのものが悪いわけではなく、押しつけや決めつけの言動となって表れた時に、問題となるため注意が必要です。

アンケート結果の中で、最も回答率の高かった「親が単身赴任中というと父親を想像する(母親を想像しない)」については、単身赴任者に男性が多いという事実(*)が、回答結果に影響を及ぼしているかもしれません。一方で、マイノリティに目をむけると、「なんで母親なのに、単身赴任なの?子どもがかわいそう」といったひと言に、傷ついている人もいるかもしれません。真の多様性ある職場づくりに大切なことは、「これまでに見聞きしてきた100人はそうでも、101人目は違うかもしれない」といったように、101人目に思いを寄せられるかどうかです。

今回のアンケート結果公表にあたっては、「回答率の高い/低い」を評価したり、「あてはまる項目数が多い/少ない」の良し悪しを診断したりすることは目的としていません。一人ひとりが、「自分自身にも、無意識の思い込みや偏見がないだろうか?」と向き合うとともに、今回の20の設問項目をきっかけとして、「自分自身の他の様々な言動にアンコンシャス・バイアスがあるかもしれない」ということを意識するきっかけに繋がることを切に願います。「私は、どれもあてはまらなかったから大丈夫」ではなく、「これらの設問には、たまたまあてはまらなかったけれど、職場や日常において、もしかしたら、私にも、無意識の思い込みや偏見があるかもしれない」ということに、思いを寄せるきっかけとしていただければと思います。

コロナ禍を境目として、私たちの「あたり前」は大きく変わりました。働き方、仕事の仕方、マネジメント、商談、会議や出張のあり方などにおいても、「これはムリ」や「これが普通」といった様々なアンコンシャス・バイアスも、現在進行形で、上書きされています。アンコンシャス・バイアスに気づき、モノの見方が変わり、様々な働き方、あり方、生き方を認め合うことが、多様性ある職場づくりには不可欠です。

「100人が同じでも、101人目は違うかもしれない」「100回の結果が同じでも、101回目は違うかもしれない」「一人ひとり、その時々と向き合おう」といったように、一人ひとりが、「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み・偏見)」を意識することが、大きな一歩となり、真の多様性ある職場へと近づきます。「これって、私のアンコンシャス・バイアスかも?」が、共通言語(合言葉)となり、一人ひとりがイキイキとする社会に一歩でも二歩でも近づいていくことを、ともにめざしてまいります。
 

 (*)参考:「独立行政法人労働政策研究・研修機構」によるJILPT 資料シリーズ No.179企業における転勤の実態に関するヒアリング調査において、男性の単身赴任者割合が女性より高いと推計

 

連合コメント 「コロナ禍の今を、多様性に気づく大きな契機に!」
連合総合運動推進局 総合局長 山根木 晴久

今回なぜ、「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)」を切り口にしたアンケートを実施したのか、連合がめざす「多様性が尊重される社会」その実現に向けた第一歩が「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)」への「気づき」だと考えたからです。

ちょっとした思い込みと考えることでも、それによって多様性が尊重されない状況になってしまっている。日常や職場に溢れている誰もが持っている、時に弊害をもたらす様々なバイアス、その存在に気づき、自分を変えることができれば、職場や社会、未来も変えられるかもしれない。“多様性を認め合うことを一緒に考えてみよう”と、広く社会に向けて発信しました。

働くうえでの多様性に関わる視点から問いかけ、自分自身と向き合ってもらえることができたならとの想いがありました。今回の診断で50,871名の方に回答頂いたことは、多くの人たちの「気づき」に繋げることができたのではないかと受け止めます。

時代や環境の中で重ねてきた経験や見聞きしたことが、無意識のうちに自分の中で常識化されてきた。多様性の尊重は頭では理解できるものの、何をどうしたら分からないという方もいると思います。この診断で認識したアンコンシャス・バイアスの項目についての意識を変えることだけでも、職場や社会を変えることに繋がると考えます。コロナ禍にあって、仕事や働き方、生活の変化を求められている今こそ、アンコンシャス・バイアスを重要なキーとすることで、モノの見方を変えるチャンス、多様性に気づくチャンス、さらにはwith/afterコロナ時代を乗り越えるチャンスにしていくことができると私たちは捉えています。

本日、回答結果を公表しますが、結果そのものが問題だとか、決めつけや押しつけにならず、誰にでもあることとして、お互いに認知し行動に変えていくきっかけになることを切に願いつつ、性別・年齢 国籍・障がいの有無・就労形態などにかかわらず、誰もが多様性を認め合い、お互いに支え合うことのできる職場、社会の実現をめざして、今回の診断を今後の取り組みに活かしていきたいと考えます。

■連合について

連合(日本労働組合総連合会)は、1989年に結成された日本の労働組合のナショナル・センター(中央労働団体)です。加盟組合員は約700万人。すべての働く人たちのために、雇用と暮らしを守る取り組みを進めています。

連合ホームページはこちら
https://www.jtuc-rengo.or.jp/

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芳野 友子
上場
未上場
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-
設立
1987年11月