障害・病の当事者や研究者、介助の現場で生み出される声をアーカイブして書籍化する出版社、「TSUCHIYA PUBLISHING(ツチヤパブリッシング)」が始動。
重度障害をお持ちの方(以下、重度障害者)に対して、全国約40都道府県で24時間体制のサポート事業を行う株式会社土屋(本拠地:岡山県井原市)は、障害・病の当事者や研究者、介助の現場で生み出される声をアーカイブして発信する出版社として、あらたに「TSUCHIYA PUBLISHING(ツチヤパブリッシング)」を設立しました。
■小さな声を採集する
土屋パブリッシングでは、いままで光のあたりにくかった障害・病の当事者や研究者、介助の現場で生み出される声を「ひかるこえアーカイビング」として採集。採集した声を電子書籍にして出版します。
電子書籍は紙の書籍と異なり、音声読み上げ(TTS)や文字サイズ変更などが可能。視覚障害の方や、ページをめくるのが困難な寝たきりや上肢障害の方、発達障害の方、また老眼など高齢者の方にとって、アクセシビリティの高いメディアです。今後はナレーターによる肉声でコンテンツを聞くことができるオーディオブックの出版も準備しており、さらにアクセシビリティを高める取り組みを進めていきます。
設立に合わせ、安積遊歩さんの「このからだが平和をつくる」、田中恵美子さんの「出会いの障害学」の2冊を同時に販売開始します。
土屋パブリッシングURL:https://t-publishing.jp/
■TSUCHIYA PUBLISHING編集長 大山景子によるごあいさつ
〝いのちに、ふれる〟
土屋パブリッシングは全国で重度訪問介護サービスを提供する株式会社土屋のなかに、日本でも数少ない、電子書籍専門の出版社として誕生しました。
重度訪問介護とは、重度の障害や病を持つ方のパートナーとして、その方らしい生活を共につくっていく仕事です。クライアントのいのちに寄り添い、いのちの声を聴く。そんなそれぞれの暮らしの場、また臨床の場がわたしたちの舞台です。ことばを発することが困難な身体、メディアにふれること自体が困難な身体もあります。そのなかでことばをつむぎ、うけとり、交感するということがどういうことなのか、わたしたちは知ることができました。
土屋パブリッシングのロゴは朝露をモチーフとしました。ヘレンケラーは喜びの隠喩として朝露―“dewdrops”の比喩をたびたび使います。「幸福を求める人たちがほんの一瞬でも立ち止まって考えてみれば、足元の草々ほどに、花々の上できらめく朝露ほどに、自分が体験できる喜びは無数にあることがわかるはずです。」
夜に結晶した涙のようなしずくが、新しい朝の光を浴びて七色に輝く瞬間。それは、個の想いが、たくさんの新しい意味を帯びて生まれかわる、出版の意義―風景といえるかもしれません。また、朝露は和歌の世界で、はかないもの、いのちにたとえられました。それぞれの水滴は“わたし”という一瞬の現象の美しさをきらめかせながら、大きな水へと還ってゆきます。
わたしたちは、障害や病の当事者、研究者など、介助の場で生まれた声を採集する「ひかるこえアーカイビング」をたちあげました。
※ひかるこえアーカイビング | TSUCHIYA PUBLISHING (https://t-publishing.jp/archiving/)
また、「inochi lab.+」という、わたしたちのWell Being(よく生きる)を考えるメディアを発信します。
※inochi lab.+(いのちらぼ・プラス) | TSUCHIYA PUBLISHING (https://t-publishing.jp/inochilab/)
わたしたちのミッションは「いのちに、ふれる」です。わたしとあなたのあわいに生まれる―意味よりも早い、あたたかい体温の場にわたしたちはいます。認知症ケアの技法「ユマニチュード」の、介助の技術に「飛行機が着陸するようにふれる」というものがあります。つかむように、暴力的に介入する介助の仕方を、認知症のお年寄りは怖がります。ゆっくり、着陸するようにふれる、ということ。そこに隠喩的な響きを感じないではいられません。他者にふれるということは、私たちの文明のすべてをもって、注意深く投企されていくような旅なのだと思うのです。
いま、となりあう人に手をのばす。その臨床の仕草からすべてをはじめるべきだ。そんな気がしてなりません。人文科学、アート、福祉etc.すべての学びを結ぶプラットフォームとして。万学の意味を臨床の、いのちの水際で問い直し、いのちを真ん中に抱いて。
わたしたちははじめます。
編集長(Chief editor) 大山景子
1978年生まれ。
慶応義塾大学文学部哲学科倫理学専攻卒業。
多摩美術大学大学院芸術学研究科修士課程修了。
編集者として出版社勤務していた2012年春、大きな交通事故被害にあう。回復の過程で重度訪問介護の仕事に出会う。
■書籍のユニバーサルデザインを追求
2019年6月、読書に困難を伴う方の環境を改善するための法律「読書バリアフリー法」が成立しました。読書に困難を伴う人の数は全人口の1割以上といわれており(情報通信学会より)、ここに加齢による老眼なども加えるとかなりの方が、いまだ不整備なメディア環境の中に置かれています。電子書籍、オーディオブックなど、よりアクセシビリティの高いメディア発信にむけて、出版社としての取り組みを進めていきます。
■同時発売を行う2冊の詳細
- 安積遊歩(あさか ゆうほ) 「このからだが平和をつくる 重度訪問介護への招待状」
重度訪問介護の制度が確立するまで、障害者の介護は家族によって行われることがほとんどでした。24時間目の離せない介護が続く中で、家族が体調不良や介護鬱になったり、家庭崩壊してしまったりする例も数多く見られました。また、障害を持っていても地域に出て、自立した生活をしたいという当事者の切実な思いは、自立生活運動として高まりを見せました。そんな状況を受け、つくられた「重度訪問介護」の制度は、世界でも稀有なものであり、当事者運動の功績であるといっても過言ではありません。
そんな障害者の自立生活運動をリードしてきた安積遊歩氏が、差別や戦争などの愚かな人間の行為に抗するものとして、障害当事者と介助者が共に支え合う現場の実感から、ケアに関わる心の真髄をみつめます。
URL:https://t-publishing.jp/book1/
- 田中恵美子「出会いの障害学ー多様な生を旅する Discover Another World」
構成は5章からなっており、第1章と第2章は“普通の会社員”だった田中氏が障害のある人と出会い、障害学の研究者を志すまで。第3章はALSに罹患した人々と出会い、彼らの人生に触れる中で、圧倒的に足りていない介護体制の実態を追い、また病を得て生きることの意味を考えます。第4章は災害時に弱者となりやすい障害のある人たちが置かれている状況を知り、知的障害のある女性とその子どもの災害死を追い、進んでいないインクルーシブ防災の現在を見つめます。そして第5章は、障害がないとされる人も感じている生きづらさへの解を、障害を生む社会の側に求め、社会を変える希望をどうつないでいくかを考察します。全体を通し、自立生活運動、ALSなど人工呼吸器ユーザー、知的障害、インクルーシブ防災、自閉症と、「障害」に関わる広いテーマが網羅されています。
当事者との出会いから始まった研究は、綿密な取材によって成り立っています。多様ないきいきとした生が、どういう「障害」を生きたかー出会いに貫かれたルポルタージュとなっています。
URL:https://t-publishing.jp/book2/
■「TSUCHIYA PUBLISHING」の詳細
・事業名 :TSUCHIYA PUBLISHING(ツチヤ パブリッシング)
・所在地 :岡山県井原市井原町192-2 久安セントラルビル2F
・代表者 :大山景子
・HP :https://t-publishing.jp/
■株式会社土屋の詳細
・会社名 :株式会社土屋
・所在地 :岡山県井原市井原町192-2 久安セントラルビル2F
・代表取締役:高浜 敏之
・HP :https://tcy.co.jp/
・従業員数 :1340名
・設立 :2020年8月
・事業内容 :
障害福祉サービス事業及び地域生活支援事業、
介護保険法に基づく居宅サービス事業、
講演会及び講習会等の企画・開催及び運営事業、研修事業、
訪問看護事業
【本件に関するお問い合わせ先】
PR:楠橋(くすはし)TEL:080-2988-0468 / Email:ako.kusuhashi@gmail.com
すべての画像