DNAメチル化マイクロアレイと日本人レファレンスを用いたエピゲノム年齢解析の提供サービス開始
日本人の健康寿命を革新する生物学的年齢評価サービス
東京都港区、2024年5月30日 - エピクロノス株式会社(代表取締役社長:清水厚志)は、DNAメチル化マイクロアレイに基づくエピゲノム年齢測定の新サービスの提供を2024年10月に開始いたします。この新サービスは、日本人に適した生物学的老化の正確な推定を可能にし、健康寿命の延長や疾患リスクの評価に貢献することを目的としています。
弊社の代表であり、日本のバイオインフォマティクス分野の第一人者である清水は、10年以上にわたりエピゲノム研究を牽引し、2024年3月には「健康寿命をベースに日本人に特化したエピゲノム年齢の測定法」で特許(特許第7442221号)を取得しました。
この度、弊社から新たに提供されるサービスは、DNAメチル化マイクロアレイに基づく国外の複数のエピゲノム年齢測定法(Horvath、Hannum、PhenoAge、GrimAgeなどの複数の手法)を用いた老化の評価方法を日本人向けに調整したことにより、個々人の健康状態や老化プロセスをより正確かつ多角的に評価することができます。このアプローチにより、当サービスをご利用者された方は自身の生物学的年齢や年齢加速状態に基づく、より良い健康維持に向けた戦略を立てることが可能になります。
エピジェネティックな変化を利用したこれらのエピゲノム年齢測定法は、健康寿命の延長、疾患リスクの評価、老化プロセスの研究など、幅広い応用が可能です。各手法は、特定の生活習慣や臨床パラメータ、または研究領域に特化しており、使用する組織や状態に応じて最適な手法を選択することができます。
弊社は、この先進的なサービスを通じて、個人の健康管理と疾患予防に大きな貢献をすることを期待しています。今後も、我々は研究を進め、エピゲノム科学の可能性を広げていきます。
【新サービスの詳細】
【国外の主要なエピゲノム年齢測定方法】 ※開発者(敬称略)、または手法名
Horvath(ホルバス)
全身の細胞に共通するDNAメチル化パターンを基にした手法で、353のCpGサイトを分析します。これにより、様々な組織タイプに対して広範な適用性を持ち、生物学的年齢の汎用的な指標として使用されます。
Hannum(ハンナム)
血液サンプルを基にし、141のCpGサイトを分析することで、特に血液の生物学的年齢を正確に予測します。Horvathの手法に比べ、血液に特化したアプローチを採用しています。
PhenoAge(フェノエイジ)
臨床パラメータとDNAメチル化データを組み合わせた手法で、500以上のCpGサイトを分析します。疾患のリスクや寿命と強く関連しており、老化研究や公衆衛生の分野で特に注目されています。
GrimAge(グリムエイジ)
喫煙歴や血中脂質レベルなど、特定の生活習慣や臨床的特徴に基づいて開発されました。寿命や健康寿命との関連性が強いことで知られています。
Cerebellum Clock(小脳時計)
特に小脳のエピゲノム年齢を推定するために開発され、小脳特有のDNAメチル化パターンを分析します。神経科学や神経退行性疾患の研究に特に有用です。
DunedinPACE(ダニーデンペース)
エピゲノム年齢加速を測定するために開発され、健康問題や加速した老化プロセスとの関連性を評価します。長期的な健康状態や老化のプロセスに関する研究に重要な役割を果たします。
健康寿命の延長と疾患予防への貢献として今回発表されたエピゲノム年齢測定サービスは、長年にわたる岩手医科大学の研究成果と清水をはじめとするメンバーの専門知識を結集したものです。このサービスは、暦年齢ではなく生物学的年齢を知ることの重要性が高まっている現在、個人の健康状態や生活習慣をより深く理解するための強力なツールとなります。
具体的には、Horvathの手法からDunedinPACEの手法に至るまで、多岐にわたるエピゲノム年齢測定法を一度に利用できることが特徴です。これにより、ユーザーは自身の健康状態や老化プロセスに関して、より包括的で詳細な情報を得ることが可能となります。また、日本人向けに調整したエピゲノム年齢の測定法を使用することで、日本独自の環境や生活習慣が健康に及ぼす影響をより正確に把握できます。
エピクロノスは、この新しいエピゲノム年齢測定サービスを通じて、人々が自身の健康をより良く管理し、より長く健康に生きられるよう支援することを目指しています。さらに、このサービスが老化研究や公衆衛生の分野において新たな知見をもたらし、将来的には疾患の予防や治療に役立つことを期待するとともに、継続的な研究と技術開発を通じて、エピジェネティクスの可能性をさらに広げ、人々の健康と幸福に貢献していくことを約束します。
⚫︎エピクロノス株式会社について
エピクロノス株式会社は、岩手医科大学の先端的な生体情報解析技術を基盤として設立された大学発ベンチャー企業です。老化研究と健康科学の最前線で、DNAメチル化を利用した革新的な生物学的年齢の計算方法や疾患の早期発見技術の開発に取り組んでいます。人々の健康寿命の延伸と疾病の早期発見・予防に貢献することを目指し、科学的根拠に基づいた製品とサービスを提供しています。
⚫︎DNA メチル化とは
DNA を構成する塩基 A(アデニン)、C(シトシン)、G(グアニン)、T(チミン)のうち、主に C と G が並ぶ部位(CpG)の C にメチル基(-CH3)が付くこ とをいいます。発生時期の細胞の種類の決定や遺伝子発現の制御などに関与し ており、生活習慣や環境化学物質の曝露などによって後天的に変化します。
⚫︎DNAメチル化マイクロアレイとは
DNAマイクロアレイはDNAが二本鎖になることを利用した技術です。ガラスの上に区切りがあり、区切り毎に厳密に整列された数百から数百万種類の一本鎖のDNA(プローブ)が固定されています。固定されたDNAは相補になるDNA断片と対をつくるので、溶液中のRNAやDNAの検出に利用できます。DNAメチル化マイクロアレイはこの技術を利用して検体中のDNAメチル化率を測定する手法です。まずバイサルファイトという試薬により、検体に含まれるDNAのメチル化されていないシトシン(C)をウラシル(U)に変換します。このときメチル化されているシトシン(C)はそのままです。続いて、DNAメチル化マイクロアレイにバイサルファイト処理した検体を注入します。DNAメチル化マイクロアレイの中で検体に含まれるDNAはガラスの上に固定されたDNAと二本鎖になります。その後、目的のシトシン(C)がウラシル(U)に変換されているか、シトシン(C)のままかを判別できるように蛍光色素のついた塩基で処理します。このガラス上の蛍光をスキャナーで測定し、プローブの色の違いを見ることで目的の場所のDNAメチル化率が算出できます。
⚫︎DNA メチル化年齢推定法とは
DNA メチル化状態は生活習慣や環境暴露によって生涯変化し続けます。また、DNA メチル化状態の変化は長期的に蓄積する場合があることから、DNA メチル 化状態は出生後の時間変化、すなわち年齢を反映します。この特徴に注目し、 DNA メチル化状態から個人の年齢(DNA メチル化年齢またはエピゲノム年齢)を推定する方法が開発されています。従来の DNA メチル化年齢推定法は欧米人のデータに基づいて開発されてお りましたが、岩手医科大学では TMM 計画地域住民コホート調査で収集した DNA メチル化情報をもとに、日本人に特化した DNA メチル化年齢推定法を開発しました。DNA メチル化年齢は暦年齢と相関しますが、個人ごとに暦年齢よりも高い、または低い値を示す場合があります。この DNA メチル化年齢の暦年齢からの逸脱は老化状態や健康状態を反映することが示されており、健康指標としての活用が始まっています。
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