1,000人の利用実態調査からみえた、業務システムが使いにくい原因と解決策

システムの種類や企業の規模、業種によって最適な解決策は異なるものの、ユーザー中心のアプローチを取ることが成功への近道

株式会社ベイジ

業務システムとSaaSのデザインに強い制作会社ベイジ(東京都世田谷区/代表・枌谷力)が、業務システムの利用者約1000名を対象に業務システムの利用実態に関する調査を実施しました。

近年、多くの企業が業務効率化のために様々な業務システム/SaaSを導入しています。しかし、わざわざ時間とお金と大きな労力をかけて導入したシステムが使いにくく、期待した効果が得られないケースも少なくありません。

本記事では、ベイジが独自に行った業務システムの利用実態調査を基に、業務システムが使いにくい理由とその弊害、そして解決策について、調査結果を基に詳しく解説します。

1分で要約

  • 業務システム導入が広がる一方で、操作の複雑さが原因で効果を十分に発揮できないケースが多発。

  • 調査では51.9%のユーザーが「満足」と答えたが、動作の遅さや操作のしづらさに不満を感じる人も多い。

  • 主な課題は直感的に操作できない複雑なUI、動作の遅延、カスタマイズの煩雑さ。これが業務効率を著しく下げる原因となっている。

  • データ連携不足がシステムの効果を減少させ、エラー多発が業務の停滞を引き起こすことも報告されている。

  • これにより、従業員のストレスが増大し、データの有効活用も阻まれ、業務パフォーマンス全体が低下している。

  • 解決策としては、UIの改善やシステム応答速度の向上、柔軟なカスタマイズ機能の導入、APIを通じたシステム間のデータ連携強化が挙げられる。

  • システム導入時には、ユーザーの意見を反映しながら、段階的な導入と十分なテストが必要不可欠。

  • トレーニングやサポート体制を整えることで、利用者がストレスなくスムーズにシステムを活用できるようにすることが重要。

  • セキュリティ対策も重視する必要があり、操作ミスやデータ漏洩リスクへの対処が求められる。

  • これらの改善を実施することで、従業員のモチベーションと生産性の向上を促し、企業全体の競争力を強化する効果が期待できる。

調査概要

年齢

20~69歳

属性

日常で何らかの業務システム(社内システム)を利用している方

サンプル数

1,033人(全国)

実施時期

2024年1月29日(月)~2月3日(土)

本記事で紹介する調査は、調査会社を通じて2024年2月に実施したものです。調査方法はインターネットリサーチで、財務・会計・経理、法務・労務、営業・顧客管理、販売管理、人事、給与、マーケティング、カスタマーサポート、生産管理・在庫管理、コラボレーション、コミュニケーションツールの11種類の業務システムについて、それぞれ約94サンプルずつ均等に割り付けて回収されています。

1. 業務システムは使いにくいのか?

調査結果によると、全体の約半数51.9%のユーザーが「業務システムに満足している」と回答していました。残り半数の内訳をみると「どちらともえいない」が36.8%、明確に「満足していない」と回答した人は11.3%程度で、事前の想像に反して使いにくいと明確な意思表示をした方は多くありませんでした。

一方で、その解答とは別に「使いにくいと感じる点は具体的にどんな内容か?」と質問をすると、かなり多くの解答が自由記述のコメントも含めて集まりました。

理由1 操作の複雑さ

多くのシステムで、操作方法が複雑であると「使いにくい」と感じることが指摘されています。特に以下の点が問題となっています。

  • 直感的に操作できない

  • メニューが分かりにくい

  • 操作手順やクリック数が多い

調査結果によると、システムを「使いこなせている」(「使いこなせている」+「やや使いこなせている」)の割合は全体で57.4%となっており、使いやすさの値と近似しています。しかし内訳を細かく見るとシステムによって差はあり、販売管理システムでは71.3%と高い一方、法務・労務システムでは45.7%と低くなっています。

理由2 システムの動作速度

調査ではシステムの動作速度に関する不満が全体の10.0%を占め、不満点の中で最も高い割合となっています。そのため便利な機能や使いやすいUIをどれだけ整えていても、業務を効率よく行うことを目的に使用するの業務システムでは応答速度が遅いことは致命的な不満につながるといえます。

理由3 カスタマイズの難しさ

多くのシステムで、ユーザーのニーズに合わせたカスタマイズが難しいという問題が指摘されています。システムによっては、会社の事情に合わせた設定の最適化をする必要があります。しかしカスタマイズ設定自体の難しさと、ニーズに合わせたカスタマイズ機能自体の不足の双方が問題になっています。

一方でカスタマイズ性が高かったとしても、ユーザーが機能を十分に使いこなせない可能性もあります。

マーケティングやUXデザインの文脈で頻繁に語られる内容でもありますが「ユーザーが欲しい」という機能は必須なのか・あればうれしいだけなのか。ユーザーの声を聴くことは大事ではありますが、それをそのまま鵜呑みにしても、まったく機能が使われないというケースもあります。「カスタマイズ性が高い」というコメントも、あくまで「そうした声もある」という程度に受け止めるのが現実的にはよいかもしれません。

理由4 データの活用と連携の問題

調査では、システム間の連携の悪さが不満点の4位(8.1%)となっており、多くの企業で複数のシステムを利用している現状が反映されています。特にエンタープライズ系の大規模組織では、すでに導入している基幹システムとの連携がシステム導入時における要件の1つになることもあります。

これは既存システムのデータベースをうまく活用できれば導入時の負担を抑えられることに加え、システム利用時の業務効率自体もゼロから情報を入力する必要がなくなるため、効率化することが容易になるためと考えられます。実際にシステムの利用者が多いエンタープライズ型の組織ほど、その傾向は顕著になると私たちも過去の支援経験から感じます。

理由5 エラーや不具合の多さ

頻繁にエラーが発生する、エラーメッセージが分かりにくい、エラーの解決方法が分からないといったシステムのエラーや不具合も、使いにくさの大きな要因となっています。

マーケティングシステムでは「エラーの解消に手間がかかる」また「エラーを起こさないように気を付けていると時間がかかる」という指摘があり、業務の遅滞につながっているようです。調査結果では、エラー・不具合やバグの多さが不満点の6位(7.6%)となっており、多くのユーザーがこの問題に直面していることがわかります。

参考:入力フォームにおけるエラーデザイン

2. 使いにくいシステムの弊害

弊害1 業務効率の低下

調査結果によると、59.7%のユーザーがシステムに対する満足度が仕事へのモチベーションに影響すると回答しています。特にカスタマーサポートシステムのユーザーでは、この割合が69.1%と高くなっています。

また、システムに対する満足度は全体で55.5%が非常に満足・満足(5段階中上位2つ)となっていますが、内訳をみるとシステムの種類ごとに差が生じています。例えば、コミュニケーションツールの満足度は74.5%と高い一方、カスタマーサポートシステムは46.8%と低くなっています。

弊害2 従業員のストレス増加

調査結果では、システムの使いやすさについて、全体の51.9%が「使いやすい」(設問に対して「使いやすい」「やや使いやすい」と回答した人を定義)と回答しています。しかし、11.3%が「使いにくい」(「やや使いにくい」+「使いにくい」)と回答しており、これらのユーザーにとっては業務システムの使用が日々のストレス要因となっている可能性があります。

弊害3 データ活用の機会損失

調査では、蓄積したデータを活用しにくいことが不満点の11位(5.8%)となっており、データ活用の重要性が高まる中で、この点が課題となっていることがわかります。データ活用には、分析データのダッシュボードが活用されることが多く、ただデータを表示するだけではなく、改善ポイントを発見できるなど次のアクションを決定する判断軸になるようなデータが表示されていると機会損失を防ぐことができます。誰が何のためにデータを活用したいのかを念頭に置き、情報の取捨選択がしやすい体験を提供することで、こうした機会損失を防止できると考えます。

弊害4 セキュリティリスクの増加

セキュリティ対策への不安は不満点の16位(4.8%)となっています。セキュリティ対策の重要性が高まる中、この点への配慮も必要です。実際にわたしたちが大手企業や公的機関の案件を過去に手掛けた際には、セキュリティリスクを発生しにくいようにする要望を多くいただきました。

UIデザインやUXデザインにより、業務システム・ウェブアプリケーションの操作性の向上、必要情報入力のステップ数の効率化などが目的化することが多いですが、その一方で使いやすくなったことによるリスク(情報漏洩)への対策も忘れてはいけません。対象となる業務システムの利用者や人数にあわせて、リスク対策の重要度も変わることは認識しておいた方がよいでしょう。

3. 使いにくさを解決する方法

解決策1 ユーザーインターフェースの改善

ユーザーが操作する際には、事前の学習や説明を入念に行わずとも、自然な感覚で使えるようなユーザーインターフェースを設計することが重要です。

  • 迷わず目的にアクセスできる明確なナビゲーション

  • 必要最小限の操作ステップ

  • 視認性の高い画面デザイン

解決策2 パフォーマンスの最適化

  • データベースの最適化

  • 処理の並列化

  • キャッシュの有効活用

販売管理システムのユーザーからは「処理速度が早ければ早いほどいい」という声も挙がり、パフォーマンスの改善が強く求められています。調査では、システムの満足点として「動きが早い(システムの応答時間が早い)」が14.7%で8位となっており、この点の改善が満足度向上につながることがわかります。パフォーマンスの最適化はユーザーの満足度に加えて、生産性の向上にも役立ちます。

解決策3 カスタマイズ機能の拡充

ユーザーや企業のニーズに合わせてシステムをカスタマイズできる機能を提供することが重要です。

  • ユーザーによるカスタマイズ機能

  • テンプレートの提供

  • 柔軟なワークフロー設定

マーケティングシステムのユーザーからは「カスタマイズがもっと簡単にできるようになってほしい」という要望があり、この点の改善が求められています。カスタマイズしなくてもすぐに利用開始できるためのデフォルト設定と、任意のタイミングでカスタマイズができる柔軟さを持ち合わせることで利用者にとってより使いやすいシステムになるでしょう。

調査結果では、システムの満足点として「カスタマイズが可能」が9.0%で17位となっており、この機能の拡充が満足度向上につながる可能性があります。

解決策4 データ連携と活用の強化

システム間のデータ連携を強化し、蓄積されたデータを効果的に活用できるようにすることが重要です。

  • API連携の強化

  • データ分析ツールの提供

  • 柔軟な検索・抽出機能

営業・顧客管理システムのユーザーからは「他のシステムと連携して効率の良い営業ができるようにしてほしい」という声が挙がっています。調査では、システムの満足点として「システム間の連携が良い」が10.6%で15位となっており、この点の改善が満足度向上につながる可能性があります。

解決策5 エラー処理とサポートの改善

エラーの発生を最小限に抑え、発生時の対応を改善することが重要です。

  • エラーメッセージの明確化

  • 自動エラー回復機能

  • 充実したヘルプ機能とサポート体制

  • ヒントやサジェスチョンの提供

エラーには修正可能な軽微なものと、起こしてはならない重大なものがあります。システムごとのエラーの影響範囲や重要性、復旧の難易度、ビジネスへのインパクトを基準にエラー設計をする必要があります。

財務・会計・経理システムのユーザーからは「確実に申告手続きでもミスがないようなチェック機能」を求める声があり、エラー防止機能の重要性が指摘されています。調査結果では、システムの満足点として「エラー・不具合やバグが少ない」が13.0%で10位となっており、この点の改善が満足度向上につながることがわかります。

本記事では、システム別の特徴と改善ポイントもご紹介しております。ぜひご参照ください。

ベイジはこうした調査データなど、一般的なシステムの改善方針を自社のナレッジとして蓄積しています。セオリーを踏まえながら、御社システム独自の課題をリサーチで検証し、改善方針をご提案します。

◆ナレッジ

▼本調査記事

1,000人の利用実態調査からみえた、業務システムが使いにくい原因と解決策

▼業務システムとSaaSのUIを考えるメディア

ベイジのUIラボ

▼YouTubeチャンネル

ベイジTV

◆会社概要

▼ベイジについて

ベイジは業務システムとSaaSのデザインに強い制作会社です。経営課題をロジカルにブレイクダウンし、ビジネスと向き合った本質的なUIデザインを提供します。

特長① 業務システム/SaaSのUIデザインに特化した約50ステップの改善ワークフロー

特長② 人間中心設計(HCD)の専門資格を保有したプロフェッショナルが在籍

特長③ 官公庁、金融、人材、消費財など、各種業界・業務での豊富な実績

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業種
情報通信
本社所在地
東京都世田谷区代田6-6-1 TOKYU REIT下北沢スクエア 3F
電話番号
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代表者名
枌谷力
上場
未上場
資本金
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設立
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