【調査レポート】「電解水透析療法」を受けた慢性腎臓病患者は、1年後の生命予後のリスクが低減していることが明らかに。2,483名を対象とした大規模長期実態調査の結果を公表
~透析治療に“電解水素水”を応用した「電解水透析療法」が、患者の栄養状態改善に寄与することを確認。電解水透析治療患者は、粗死亡率や死因が通常透析患者と異なる可能性も示唆~

報道関係各位 2025年3月5日
一般社団法人 電解水透析研究会
一般社団法人電解水透析研究会(理事長:中山昌明)は、電解水透析治療を受けている慢性腎臓病患者(登録2,483名)の5年間の実態調査の結果を日本透析医学会が発行している「透析会誌」に投稿し、2月28日に掲載されました。日本透析医学会が開発した1年後の生命予後に関する栄養学的リスク評価法で評価したところ、登録時高リスク群(100%)は、3年目には高リスク群割合が44.7%へ減少し、残りの55.3%は中~低リスクまでリスクが低減していました(図)。 また、日本透析医学会が毎年公表している日本全体の透析患者の粗死亡率や死因と比較すると、電解水透析治療患者は異なる傾向にあることがわかりました。
【調査の背景】
日本の血液透析療法は世界でトップクラスの治療成績を誇っています。しかしながら、血液透析を受け始めてからの余命は受けていないヒトに比べ半分程度であることから、治療方法のさらなる改良が取り組まれています。そのような中、2005年以降産学官連携※1により共同研究開発されてきたのが電解水透析療法※2です。これまでの研究成果の代表例として、電解水透析(161名)または通常透析(148名)を受けている患者の5年間の前向き観察調査を行い、総死亡と心脳血管障害の複合発生リスクを比較し、電解水透析療法を受けていた患者はそのリスクが通常透析に比べ41%低減した結果が得られ、2018年にScientific Reports誌1)に掲載されました。それまでに学術情報も蓄積したこともあり、電解水透析療法を導入する施設も増え、患者数も1,000人以上と増えました。そこで2018年12月から実態調査を開始しました。
※1:2005年から国立大学法人東北大学と株式会社日本トリムが共同研究開始。2013年~2015年JST(独立行政法人科学技術振興機構)平成24年度第2回復興促進プログラムと福島県平成24年度ふくしま医療福祉機器開発事業、他
※2:血液透析に必要な透析液を調製するための水を電解分解し、水素分子(H2)を含む透析液(電解水透析液)で血液透析を行う治療方法。
1):Scientific Reports. 2018 Jan 10;8(1)254
【主な結果】
(1)1年後の生命予後に関する栄養学的リスク※3の有意な低減
日本透析医学会で評価方法が開発・公開された後、栄養学的リスク評価を開始し、3年目まで継続してとれた626名分のデータを解析しました。登録時高リスク群(100%)は、3年目には高リスク群割合が44.7%へ減少し、残りの55.3%は中~低リスクまでリスクが低減していました。また、リスクレベル毎の評価では、高リスク群は1年目 11.3±0.42年目 7.8±3.23年目 8.4±3.2、中リスク群は1年目 8.2±0.42年目 6.9±3.13年目 5.9±2.4へと有意に低減していました(平均値±標準偏差)。
※3:1年後の生命予後に関する栄養学的リスク(NRI-JH: nutritional risk index for Japanese hemodialysis patients)。患者のBMI(body mass index)、血清アルブミン値、血清クレアチニン値、血清総コレステロール値からそれぞれのスコア値を出し、その合計点をもとに評価する。合計点0~7点:低リスク,8~10点:中リスク,11~12点:高リスク
(2)年間粗死亡率※4と死因が日本全体の透析患者のデータと異なる可能性
電解水透析を受けていた患者の年間粗死亡率は、2018年末5.1%、2019年末5.3%、2020年末4.9%、2021年末4.2%、2022年末5.0%でした。また、死因の中で心不全が13.3%でした。日本透析医学会が毎年行っている全数調査結果「わが国の慢性透析療法の現況 (2022年12月31日現在)」2)と比較して、電解水透析患者で年間粗死亡率や死因が異なっている可能性が示唆されました。ただし、単純比較はできないため、今後、通常透析患者を対照群とした比較研究が期待されます。
<参考情報(日本透析医学会全数調査結果)>:
2018年末から2022年末の年間粗死亡率は9.9~11.0%2)
2018年末から2022年末の死亡原因割合で心不全は21.0~23.5%2)
※4:粗死亡率:{死亡数/(前年患者数+調査年患者数)÷2} ×100%
2) 日本透析医学会誌.2023; 56(12): 473-536
【論文掲載先URL】: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/58/2/58_93/_pdf/-char/ja
【今回の調査を通じて】
電解水透析療法は、透析患者の栄養状態を改善することが明らかとなりました。その改善度合いは、1年後の生命予後のリスクも低減していると考えらえます。 血液透析を受け始めてからの余命は受けていないヒトに比べ半分程度である課題に対して、電解水透析療法は、解決策の一つになる可能性があります。
【調査概要】
調査対象:日本国内で電解水透析療法を受けている患者
調査期間:2018年12月31日から2022年12月31日まで
調査方法:期間中の12月31日時点の電解水透析患者データを調査票で収集し、統計解析した。
倫理審査委員会承認:聖路加国際病院、研究名:電解水血液透析治療を受けている国内患者の実態把握:横断観察研究. 整理番号18-RZ013、承認日2018年05月23日
調査費:公益財団法人 日本腎臓財団
【一般社団法人電解水透析研究会について】
水の電気分解により生成される陰極水の血液透析への応用の科学的・医学的妥当性を評価し、広く普及させることを目的として、2010年に設立。事務局:〒104-0045東京都中央区築地3丁目8-5聖路加国際大学2号館2F(中山研究室内) URL: https://www.ew-hd.org/
【報道関係の方からのお問合せ先】
一般社団法人 電解水透析研究会 事務局長 樺山繁 https://ew-hd.org/script/mailform/office/
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