【水産加工事業者必見!】川上・川下との連携でサプライチェーンの可能性に挑戦

-水産加工連携等取組事例報告会の開催と新年度事業の展開-

第2回 水産加工業者等による取組事例の報告会を開催

 公益財団法人水産物安定供給推進機構は、2025年1月31日(金)、水産加工事業者を核として、漁業者、流通・小売関係者、試験研究機関等、幅広い関係者と連携してサプライチェーンの新たな可能性に挑戦する水産加工連携プラン支援事業をはじめとする水産庁による補助事業を活用した取組事例を紹介する『第2回 水産加工業者等による取組事例の報告会』を開催しました。本報告会には、会場来場者・オンライン併せて200名を超える参加がありました。

本稿では、東京海洋大学工藤貴史教授による基調講演と取組4事例を紹介します。

また、令和7年度に活用可能な補助事業を紹介します。 

本報告会は、水産庁の補助事業「令和6年度水産加工連携プラン支援事業」の一環として、本事業の周知および補助金を活用した水産加工業者等の取り組みの横展開、そして情報交換を目的として開催しました。

  1. 基調講演
    【水産加工業を取り巻く状況と補助事業(未利用・低利用資源の有効活用の取組事例)】
     東京海洋大学 海洋政策文化学部門 教授 工藤貴史

  2. 取組事例
    ①【未利用魚に秘められた無限の可能性を引き出す】
     株式会社富山ねるものコーポレーション 代表取締役 麻生大輔
     株式会社高岡鳳凰堂 代表取締役 筏井哲治
    ②【未利用魚(未利用部位)の活用事例】 
     広島魚市場株式会社 事業推進室 吉井起明
    ③【漁獲変動に合わせた加工体制の整備】
     長崎県漁業協同組合連合会 事業推進部 次長 野口恭平
    ④【漁業者による水産加工業者と連携した販売促進】
     有限会社昌徳丸 コーディネーター 福留慶

報告会の内容および説明資料は、水産物安定供給推進機構のホームページから閲覧・ダウンロードができますので、ぜひご覧ください。

基調講演:水産加工業を取り巻く状況と補助事業(未利用・低利用資源の有効活用の取組事例)

水産加工業をとりまく状況は原料・資本・市場・労働力ともに厳しい環境にあり、原料確保が困難、価格の高騰、家庭需要および外食需要の低迷、機器類の高騰、労働力においては人口減少や賃上げ等に苦慮しています。その一方で、2人以上世帯における魚介類の年間支出額について、調理食品は年々消費が増加傾向にあり、これからの水産業全体の消費は水産加工品の販売が重要な役割を担っていくと工藤教授は考えています。また「水産加工業経営実態調査」におけるアンケートを行った結果によると、水産加工業者の政策への要望には、原料確保に関する政策や設備投資に関する要望が多くなっていることから、水産加工を対象とした補助事業として、2018年から始まった連携プロジェクトや2020年から始まった魚種転換プロジェクト等は原料確保の取組みや設備投資等の細かな対応ができる事業として注目され、特に未利用資源・低利用資源の有効利用に取り組む内容が増えてきていると報告しました。

従来は水産資源であったスズキ。調理や加工可能な人材が不足すると、低利用・未利用資源となってしまう。
未利用・低利用資源の有効活用のために必要なポイントについて話す工藤教授

また、未利用・低利用資源の有効利用には【新しい価値の創造】【新しい生産システムの構築】が必要であること、さらに、新しい生産システムの構築には生産者・加工業者・販売業者が連携して取り組むことが必要で、新しい価値の創造には、その魚の特徴や成分、効能等の科学的裏付けや今後の資源状況の知見等が必要であり、これらに対応できる行政や研究機関との連携も重要になると話しました。

取組事例① 未利用魚に秘められた無限の可能性を引き出す

株式会社富山ねるものコーポレーションは、主に富山湾の水産物を加工する練り製品製造業者ですが、円安の影響等により、蒲鉾の原料であるスケトウダラの確保が難しくなっていました。一方で富山県内では、これまで漁獲されなかったシイラなどが大量に水揚げされるものの、県内で食べる文化がないため低利未利用魚となっていたことから、富山で水揚げされる低未利用魚を原料とした蒲鉾製品の開発に着手することとなりました。

取り組みについて報告する麻生氏(写真右)と筏井氏(写真左)
国産水産資源比率の拡大を目指す

また、千葉県旭市でイワシを主に取り扱う水産加工業者、株式会社いとう商店(以下、いとう商店という)は、工場稼働率を平準化したいという課題がありました。そこで、いとう商店は蒲鉾の製造工程における落とし身までの製造を、株式会社富山ねるものコーポレーションはその後の製造工程をそれぞれ担当する連携体制を整備し、練り製品製造を行うことになりました。

麻生氏、筏井氏は今後も低未利用魚原料を従来の蒲鉾製品に活用することに加え、富山県で多く消費されている調味すり身にも活用していきたいと意気込みを語りました。

取組事例② 未利用魚(未利用部位)の活用事例

広島魚市場株式会社は、近年の市場流通の急激な変化に対応するため、機能性や付加価値を高めた商品が求められていること、同社の「SDGs」宣言を商品開発を通して表現・貢献していきたいという思いで取り組んでいます。登壇者の吉井氏は商品化した例として、同社が買い取っている規格外カタクチイワシを原料としたスナック菓子「こいカル」、開発中の商品として、一般商流に乗らない傷モノやサイズの小さい牡蛎を原料としたスナック菓子を紹介しました。吉井氏は今後も地元高校生などと共同でレシピを考案し、商品化に向けて進めていくと力強く語りました。

今後の新商品開発の展望について話す吉井氏

取組事例③ 漁獲変動に合わせた加工体制の整備

長崎県漁業協同組合連合会は加工設備を持ち、長崎魚市場に水揚げされるイカや小型魚を加工し、以下リングなどの加熱調理商品を製造していましたが、漁獲量の減少により、ブリ・ヒラマサ等の大型魚へ加工魚種の転換を図り、フィレや切身製造に着手しました。その際、加工ラインの整備や品質面について生食用のマーケット需要に対応する必要が生じたことに加え、小型魚の加工原料も減少したことで加工場の稼働率が下がるなか、量販店等からの冷凍刺身商材のニーズに対応すべく、新たに凍結機を導入しました。野口氏は、魚種の変化を見据えた柔軟な加工体制の整備等が重要であると説明し、さらにこれまで扱ったことのない魚種を取扱う際、今までの原料の代替をイメージできるか、さらに商品および販売先のイメージを持つことも重要であると話しました。

長崎県産イカ類の漁獲量は約18年で80%以上減少
魚種転換のポイントについて話す野口氏

取組事例④ 漁業者による水産加工業者と連携した販売促進

有限会社昌徳丸は、鹿児島県肝付町の内之浦漁港にて約200年定置網漁業を営んでおり、漁獲物は主に市場出荷されています。漁獲物には少量多品種で未利用・低利用魚と呼ばれる魚も含まれており、それらは市場で安い金額で取引されていました。また、内之浦漁港におけるイカ類の漁獲量が減少していたこともあり、未利用・低利用魚の活用のためインターネットでの販売に着手しました。現在では近くの鮮魚店と連携し加工品と鮮魚ボックスの販売を行い、特に鮮魚ボックスについては「刺身用」「珍しい魚」「捌きやすい魚」などのお客様の要望に合わせて販売しています。福留氏は今後の展望として加工品販売のブラッシュアップ等を挙げました。

生産者による加工連携のポテンシャルについて話す福留氏

令和6年度に実施している補助事業

・水産加工連携プラン支援事業

 【事業内容】
水産加工・流通の課題を解決するための生産・加工・流通・販売を含むサプライチェーン上の関係者等による一体となった取組みを総合的に支援。

・水産物輸出加速化連携推進事業

 【事業内容】
水産物の更なる輸出拡大の加速化に向けて、生産・加工・流通・輸出等のバリューチェーン関係者が連携して重点課題の解決に資する商流・物流構築の実証の取組を支援。

お問い合わせ先

電話番号:03-3254-7044

送付先アドレス:m-project★fishfund.or.jp(★を@に置き換えてください)

公益財団法人水産物安定供給推進機構 担当 向井、橋本

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会社概要

URL
https://www.fishfund.or.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都千代田区神田東松下町 28番地5吉元ビル6階
電話番号
03-3254-7044
代表者名
石原 葵
上場
未上場
資本金
-
設立
1976年12月