男性不妊のカギを握る「精索静脈瘤」勉強会を開催。正しい理解と診断の重要性を共有
男性不妊治療の未来をどう変えるのか? 正しい知識と早期発見の重要性を発信

一般社団法人 日本精索静脈瘤協会は2025年5月28日、新宿の老舗レストラン「洋食 アカシア 新宿本店」にて、「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)手術」に関する勉強会を開催しました。
本協会は、男性不妊の一因である精索静脈瘤についての正しい理解と早期発見を広める啓蒙活動を行っています。
今回は、協会の活動に賛同いただいた「洋食 アカシア 新宿本店」3代目店主・鈴木祥祐氏とともに、
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不妊治療における男性側の要因の重要性
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精索静脈瘤の診断・治療法
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早期発見の意義
などについて、協会代表理事である永尾光一医師の見解や経験者を交えて語りました。
■イベント概要
日時:2025年5月28日(水曜日)
主催:一般社団法人 日本精索静脈瘤協会
場所:洋食 アカシア 新宿本店
■登壇者紹介




永尾光一(ながお・こういち)
東邦大学大森病院で男性不妊の専門医として長年勤務。現在は銀座リプロメディカルクリニック院長、一般社団法人 日本精索静脈瘤協会の理事長も務める。生殖医療専門医として、精索静脈瘤の早期診断と治療の重要性を広く啓発している。
三井桂子(みつい・けいこ)
一般社団法人 日本精索静脈瘤協会の専務理事。男性不妊に関する啓発活動に尽力し、精索静脈瘤の認知度向上を目指している。
鈴木祥祐(すずき・しょうすけ)
「洋食 アカシア 新宿本店」3代目店主。2023年に有限会社アカシアの代表取締役に就任。看板メニュー「ロールキャベツシチュー」で知られる名店の味と伝統を守り続けている。
田沢優(たざわ・ゆう)
「ピラティススタジオB&B」代表、株式会社トップキャリア代表取締役。自身の二人目不妊の経験から精索静脈瘤と向き合い、手術後に自然妊娠を経験。現在は当事者の立場から男性不妊の啓発に取り組んでいる。
■「洋食 アカシア 新宿本店」とは
会場となったのは、1963年創業の老舗洋食店「洋食 アカシア 新宿本店」。新宿駅東口からほど近い好立地にあり、名物のロールキャベツシチューをはじめとしたクラシックな洋食メニューで長年多くのファンに親しまれている。落ち着いた雰囲気の店内は、アットホームな交流や学びの場にも適しており、今回の勉強会も和やかな雰囲気の中で行われた。
■イベント内容
本勉強会では、精索静脈瘤に関する豊富な臨床経験を持つ協会理事長の永尾光一医師をはじめ、専務理事の三井桂子氏、ご自身の経験から当事者として情報発信を行う田沢優氏、そして今回の会場を提供した「洋食 アカシア 新宿本店」3代目店主・鈴木祥祐氏が登壇。
精索静脈瘤に関する正しい知識や最新の治療情報を広く伝えることを目的に、男性不妊の現状や精索静脈瘤の診断・治療法、早期発見の重要性について詳しく解説しました。

■男性不妊の現状と啓発の必要性
冒頭、三井氏より「不妊治療は女性が主体という意識が依然として強いが、男性側にも約50%の原因が存在する」ことが改めて共有されました。また、男性不妊の原因のうち約40%を占めるのが精索静脈瘤であり、正しい知識の普及が不足している現状を指摘。
さらに、「不妊治療に伴う経済損失は約3000億円規模であり、正しい情報が広がれば、不必要な不妊治療を減らし、夫婦双方の負担軽減につながるはず」と協会設立の意義と今後の活動方針について語られました。
■当事者体験談:夫婦で向き合った不妊治療と、正しい知識の重要性
続いて田沢氏より、二人目不妊での自身の経験が語られました。第一子誕生後、二人目を希望して不妊治療に取り組み、1年間にわたり人工授精や顕微授精を試みたものの成果が得られず。また妻の定期的な通院が必要で、仕事との両立が難しく、治療の継続に対して精神的・肉体的な疲労が蓄積していたといいます。
その後、永尾医師の紹介を受け、銀座リプロメディカルクリニックで診断・手術を受けることに。結果、田沢氏の精索静脈瘤が判明。手術を経て、約3ヶ月後に自然妊娠に結びつきました。
「実は陰嚢の左右差という自覚症状がありましたが、それが病気とは思わず見逃していた。正しい知識を把握していれば、夫婦ともにここまで疲弊する前に気づけたのではないか」と、正しい情報認識と早期発見の重要性を強く訴えました。
■ 精索静脈瘤の診断と、泌尿器科受診の重要性

永尾医師は、男性不妊治療における診断のあり方と、泌尿器科受診の重要性について語りました。「婦人科では男性は精液検査だけに止まり、男性側の不妊原因が見落とされるケースが多い」と永尾医師は指摘。特に精索静脈瘤は、触診と超音波検査が不可欠であり、婦人科では対応が難しいといいます。
現状では、精液検査の所見だけで治療方針が決まってしまい、たとえ女性側に異常がなくても人工授精や顕微授精に進んでしまうケースが少なくありません。
「本来であれば男性側に精索静脈瘤などの原因が潜んでいる可能性があるのに、それが見逃されたまま治療が進むことで、ご夫婦が結果の出ない治療に悩まれているケースも非常に多い」と永尾医師は現状の課題を指摘。
「早期に泌尿器科で原因が判明すれば、本来必要のない高度な不妊治療を避けられる可能性もあります」と話し、診断の入り口として泌尿器科との連携が今後さらに重要になることを強調しました。
■ 治療法と改善効果、早期対応の重要性
続いて、実際の治療法とその効果について紹介がありました。手術は約1時間程度で日帰り手術が可能であり、身体的な負担も比較的軽く抑えられるとのこと。術後には、約40%〜60%正常化するという改善データが示され、自然妊娠の期待値が大きく高まるといいます。
さらに永尾医師は、早期発見の重要性についても改めて強調しました。精索静脈瘤は進行性の疾患であり、放置すれば徐々に精子の運動能力や質が低下していくリスクがあります。加えて、男性ホルモンの低下や精子DNAへの損傷も進行するため、注意が必要です。
こうしたDNA損傷は受精卵の質に悪影響を与える可能性があり、さらに卵巣機能や流産リスクにも関わってくると指摘されました。「治療によって改善が見込めるケースは多く、患者さんご自身やご夫婦にとってより納得のいく治療選択が可能になります。まずは正しい情報を知り、選択肢を持つことが大切です。」と語り、締めくくりました。
■永尾医師からのコメント
「不妊治療は適切な医療機関での早期診断と治療が不可欠です。原因が早めに把握できれば、女性側の負担や家庭全体の治療ストレスも軽減できる。ぜひ夫婦で協力して、まずは泌尿器科に相談するところから始めてほしいと考えています。今後も日本精索静脈瘤協会として、正しい知識と選択肢がより多くの方に届くよう、啓発活動を続けてまいります。」

医師・永尾光一
プロフィール:東邦大学医学部 名誉教授/大森病院 前リプロダクションセンター長/医療法人社団マイクロ会 理事長/銀座リプロ外科 院長
■精索静脈瘤手術とは
永尾医師は、男性不妊治療専門クリニック「銀座リプロ外科」の院長を務めており、特に精索静脈瘤の診断および手術において日本における第一人者です。
男性不妊の原因として最も多いのが精索静脈瘤です。精索静脈瘤とは、精巣やその上部にある精索部 (精管、血管、神経、リンパ管などを含む膜構造)に、静脈瘤(静脈の拡張)または 静脈瘤(静脈の逆流) が認められる症状を指します。男性不妊症患者のおよそ40%が、この症状を有しているとされています。
腎臓の静脈からの血液逆流により、左精索静脈内の陰嚢上部がうっ血し、瘤(こぶ)状の腫れが発生します。このため血液が停滞し、精巣の温度が上昇して精巣機能が低下する原因となります。
■協会概要
団体名:一般社団法人 日本精索静脈瘤協会
設立:2025年4月10日
所在地:東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
代表理事:永尾光一
理事:三井桂子
理事:菅原由一
理事:山本智也
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