IHHの間接子会社NTK 、第一三共に対する損害賠償請求額を約10倍に 〜200億円から約2,000億円に増額〜
世界最大級の病院グループのひとつであるIHH Healthcare Berhad(本社:マレーシア、以下「IHH」)の間接子会社Northern TK Venture Pte Ltd.(本社:シンガポール、以下「NTK」)は、第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「第一三共」)に対して東京地方裁判所に提起している損害賠償請求訴訟において、訴えの内容を変更し、第一三共に対して請求する損害賠償額を約10倍に増額する申立てを行ったことを、マレーシアおよびシンガポールの2つの証券取引所において発表しました。
これにより、NTKが第一三共に対して請求する損害賠償額は、当初の200億円(約6億3,400万リンギット)※1から、約2,000億円(約57億リンギット)※2へと増額されました。
本訴訟は、NTKによるFortis Healthcare Limited(以下「FHL」)およびその子会社であるFortis Malar Hospitals Limited(以下「FMHL」)の公開買付(以下まとめて「公開買付」)による株式取得の完遂を第一三共が妨害したとして、NTKがこれによる損害賠償の支払い等を、東京地方裁判所で求めているものです。
損害賠償請求額の変更の背景
IHHが2023年11月14日付で発表した声明文(以下「2023年11月14日付声明文」)に記載のとおり、NTKは当初、第一三共に対し、損害賠償として200億円(約6億3,400万リンギット)※1に加え、これに対する年利3%の遅延利息の支払い等を求めていました。
その後、NTKは、2025年2月6日付の準備書面とともに、NTKが任命した外部専門家であるオズボーン・パートナーズによって作成された専門家報告書(以下「OP報告書」)を東京地方裁判所に提出しました。 OP報告書には、第一三共が公開買付を妨害せず、公開買付が当初の予定通り実施されていた場合の3つの仮説シナリオに基づく損害の分析と算定が含まれています。
OP報告書によると、NTKが第一三共に対して求める賠償額は、前提とされる仮説シナリオによって異なり、最小額で42.4億インドルピー(約2億リンギット、約78億円)※2から、最大額で1,093億インドルピー(約57億リンギット、約1,998億円)※2の範囲となり、この最大額は、2023年11月14日付声明文で示された当初の200億円を大幅に上回る金額です。
NTKは、OP報告書の3つの仮説シナリオに基づく賠償額に、名誉・信用毀損によってNTKが被った損失に対する賠償額を加えた、約2,000億円(約57億リンギット)※2を、新たな損害賠償額として算出しました。この修正後の金額には、請求する利息の金額は含まれていません。
なお、第一三共による不法行為が現在も継続中であり、NTKに対して引き続き損害を与えていることなどから、NTKは訴えの変更の申立書の中で、第一三共に対する損害賠償請求額を今後も変更する権利を留保しています。
本件に関する重要な進展があった場合には、IHHおよびNTKより改めて発表します。
次回の東京地方裁判所における弁論準備手続期日(非公開)は、2025年7月11日に予定されています。
※1 2023年10月16日時点のマレーシア国立銀行(Bank Negara Malaysia)のウェブサイトに掲載された正午時点の仲値レート(JPY100: RM3.1702)に基づき、端数処理を適用しています。
※2 2024年12月31日時点のマレーシア国立銀行(Bank Negara Malaysia)のウェブサイトに掲載された正午時点の仲値レート(JPY100: RM2.8572、INR100: RM5.2226)に基づき、端数処理を適用しています。
訴訟に至った経緯
2018年、IHHはFHLが実施した投資誘致の入札プロセスにおいて落札者となりました。FHLから株式の発行を受けた際、NTKは、インド法上、FHLの一般株主に対する公開買付を実施することが必要とされています。NTKの本訴訟における主張は、NTKがインド法上要求されている公開買付を実施しようとしたところ、第一三共が公開買付の実施を不当に妨害し買収の完了を阻止したことで、NTKは多大な損害を被ったというものです。
2018年12月、NTKによる公開買付の完了前に、第一三共はIHHおよびNTKに通知することなく、一方的にインド最高裁判所から暫定現状維持命令(暫定命令)を取得しました。NTKの本訴訟における主張は、第一三共によるこれらの行為により、NTKの公開買付が進まないことになったというものです。
第一三共は、インドの製薬会社ランバクシー・ラボラトリーズの買収によって生じた損害に関する賠償金の回収をめぐり、長年にわたりシン兄弟と紛争状態にありました。第一三共には、シン兄弟に対する請求権に関連して、シン兄弟との間で、デリー高等裁判所およびインド最高裁判所において、進行中の法的手続がありました。IHHおよびNTKは、シン兄弟とは何らの関係もありませんが、第一三共は、シン兄弟がIHHおよびNTKと何らかの関係があったかのように憶測していました。第一三共の憶測に反し、NTKによるFHLへの投資(すなわちFHL株式31.1%の引受け)および公開買付は、実際にはシン兄弟とは何らの関係もありませんでした。
2022年9月、インド最高裁判所は、この暫定命令を維持しない最終判決を下しました。これは、公開買付を進めることができたことを意味していました。しかし、NTKが公開買付を進めようとする意図があることを把握した第一三共は、インド証券取引委員会(SEBI)に対して、「第一三共によるシン兄弟への損害賠償の回収手続が係属中であるデリー高等裁判所の許可を得ることなく公開買付を進めることを許可した場合には、SEBIに対する裁判所侮辱手続を開始する」ことを通知しました。NTKまたはIHHは、デリー高等裁判所における第一三共による法的手続の当事者ではなく、これらの法的手続は、NTKのFHIに対する投資にも公開買付にも関連していません。NTKは、本日に至るまで、公開買付の手続を進めることができなくなっています。
公開買付の実施のため義務づけられた無利息の預託金は、本訴訟提訴時の為替レートで約602億円に上ります。NTKの本訴訟における主張は、この預託金が、第一三共の行為により引き続き塩漬けになったというものです。また、NTKは、公開買付で買収が完了していれば得たであろうFHLの株価上昇や持株比率に伴う配当金などの損害を被っています。
IHHとNTKのインドにおける取り組み
IHHとNTKによるインドへの投資
2000年以降、インドの医療環境は、経済成長、技術の進歩、政策改革によって大きく変化しました。都市化と所得の増加により、特に都市部において質の高い医療に対する需要が増加しました。糖尿病や心臓病などの生活習慣病の罹患率が高まったことも追い風となり、成長中の中産階級はより良い医療サービスを求めるようになりました。民間医療提供者の急速な拡大は、情報に精通した健康意識の高い人々の期待に応えるために、効率的でアクセスしやすく、患者中心の質の高い医療が必要であることを浮き彫りにしました。
こうした状況を背景に、IHHグループ(後にIHHグループの一部となる事業体を含む「IHHグループ」)は2002年以降、インドにおいて投資を行ってきましたが、2017年から2018年頃の時点ではインドにおける深い基盤を持っておらず、同国でのプレゼンスを拡大し、インドのヘルスケア市場における主要なプレイヤーへの成長する機会を模索していました。2018年7月、資金難に陥っていたFHLを買収するための入札に成功したあと、IHHとNTKはFHLの31.1%の株式を約400億インドルピー(当時の為替レートで約627億円)で引き受けることに成功しました。これにより、IHHはインドで2番目に大きな民間病院ネットワークを持つFHLの株主となり、インドをマレーシア、シンガポール、トルコと並ぶ主要4市場の一つにするという戦略目標に向けて前進しました。IHHとNTKによる医療エコシステムの拡大は、インドにおける高品質な医療サービスへの急速な需要増加への対応を助けるものです。また、インドをグループ全体の事業戦略における重要市場と位置づけるIHHおよびNTKの姿勢を反映しています。
FHLの再建とIHHネットワークの拡大
FHLの株式の優先的割り当て以来、IHHはNTKを通じて約400億インドルピーの一次資本をFHLに注入し、従業員の給与支払い遅延などで苦境に立たされていたFHLを、現在では28の病院からなる強力な医療ネットワークに立て直しました。さらに、Gleneagles Hospitalsの6つの病院とAgilus Diagnostics傘下の400以上の検査施設を合わせて、IHHはインド国内で最も広範な医療ネットワークの一つを有する、全国規模の民間医療事業者です。このネットワークは、総合的な医療サービスを幅広く提供し、優れた臨床で高い評価を得ています。FHLを通じたIHHのインドへの投資は、「Healthy India」の構築と国内医療拠点の強化といったインド政府の国家的重点施策とも軌を一にしています。インドでは、慢性疾患や生活習慣病の増加が顕著で、国民の所得と保険加入率の上昇に伴い、質の高い医療サービスへの需要は今後さらに増加することが見込まれます。
IHHのインドにおける長期戦略は、一貫した設備投資(CAPEX)による持続可能な拡大と成長です。FHLには、既存の土地とインフラを活用した既存施設を拡張するための強力なパイプラインがあります。これにより、1病床あたりの資本支出を比較的低く抑えながら、迅速な病床の増加が可能になります。IHHは、自社の強力な実行力、病院運営の専門知識、強固な財政基盤、そして強力なコーポレート・ガバナンスを活用することで、FHLの成長見通しを促進することができます。また、グループ全体での調達、業務プロセスの効率化によるコスト削減、主に既存施設の拡張による資本支出の最適化、専門治療分野における統合提供によるクロス・セリングの機会、IHHの統一ブランドによるブランド効果および共同マーケティング戦略によるブランド・ベネフィットなどのシナジー効果を生み出すことも可能です。
IHHおよびNTKの想い
IHHは、インドの人々の健康を支えるため、インドにおける医療サービスの提供を強化することをコミットしています。前述の第一三共に関わる事象は、インドの未解決の医療ニーズに最適な機敏性と規模で対応するIHHの可能性を制限しており、インドのコミュニティに不利益をもたらしています。IHHは、この不幸な状況が迅速に解決され、インドの人々へのサービス拡充を継続できることを切に願っています。
IHH HealthcareおよびNorthern TK Venturesについて
IHH Healthcareは、アジアおよびヨーロッパを中心とした10カ国で140以上の医療施設を運営する、世界最大級のヘルスケアネットワークです。その中には、80以上の病院、クリニック、外来医療センターが含まれます。病院事業に加えて、IHHは検査・診断分野にも強みを持ち、筆頭株主である三井物産株式会社の病院・医療サービス事業において中核を担っています。日本において、IHHはグループ会社であるRLife REITを通じて介護施設への投資を行っています。 Northern TK Venturesは、IHHのインドにおける事業を手掛ける間接子会社です。
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