【イベントレポート】全国からこどもの居場所づくりに関わる多様な団体が集い意見交換、こども家庭庁「こどもの居場所づくりオールミーティング」を9月25日(木)に初開催

~居場所づくりの重要性を共有し、地域全体での取り組みを呼びかけ~ 地域・行政と連携し、こども主体で育む“真の居場所”のあり方を議論

こども家庭庁

 こども家庭庁は、こどもまんなかの居場所づくりの機運を高めるべく『こどもの居場所づくりオールミーティング』を2025年9月25日(木)に渋谷区児童青少年センターフレンズ本町にて開催しました。当日は全国のこどもの居場所づくりに関わる多様なプレイヤーが集まり、地域に広がる多様なこどもの居場所紹介ムービーを視聴したのち、居場所づくりについてディスカッションを行いました。

 こども家庭庁は、「こどもの居場所づくりに関する指針」において、こどもが安心して過ごせる居場所の存在が、こどもの孤独や孤立を防ぎ、心身ともに健やかに成長するために不可欠であると位置づけています。こうした背景のもと、居場所づくりの重要性を広く共有し、地域全体で取り組みを推進するため、今回初めて、多様な関係者や支援団体、自治体などが一堂に会する「こどもの居場所づくりオールミーティング」を開催しました。

 当日はオンラインも含め約300人が参加し、「こどもの居場所づくり」をテーマに議論が行われました。各団体のセッションでは、「居場所づくりにおいて自分達はなにができるのか」への問いや、居場所を作るうえで重要なことについて、さまざまな視点から意見が交わされ、議論が深まる場となりました。

<第1部セッション>

 第1部セッションでは、こどもの居場所を運営する多様なプレイヤーを中心に、「こどもの居場所を作るうえで重要視していること」をテーマに、各団体の取り組みと考え方が共有されました。議論は『不完全さ』というキーワードを軸に展開され、地域とともにいかに居場所を形づくるか深掘りされました。

●完璧ではなく、不完全だからこそ続く居場所

 子育てネットひまわり・有澤氏は団体の特徴として「不完全さ」を挙げ、miraito・上田氏も「不完全な状態からスタートした」と活動の原点を振り返りました。文教大学准教授・青山氏からは「不完全さの質が大事であり、質が悪ければ消滅してしまうこともある」との指摘があり、TOKYO PLAY・嶋村氏は「不便益をあえてコーディネートすることで、不完全さが保障されていく」とコメントしました。これらの意見から、完璧な居場所を一方的に与えるのではなく、不完全を前提に互いに役割を見出し、共に変化し続ける姿勢が重要であるとの認識が共有されました。

●「Be-Do-Be」の循環と児童館の実践

 京都市たかつかさ児童館・溝口氏は、児童館の役割として「こどもが自由に過ごし、自分で決められる空間づくり」を紹介しました。ここから、「Do(行動する)からBe(存在する)」ではなく、認めてもらえるから頑張るという「BeからDo」へとつながる考え方も紹介され、「ただ居る(Be)」を受け入れ、そこから自然な行動(Do)は生まれる「Be-Do-Be」のサイクルを大切にすべきという意見もあがりました。一方で、TOKYO PLAY・神林氏は、「居場所にたどり着くまでの心理的ハードルが高い。『どうせ自分たちの居場所なんてない、小さい子の場所だろ』とあきらめてしまっているこどもが少なくない」と現状の課題を指摘。これに対して溝口氏は児童館での経験を踏まえ、「門前で出迎えるなど、入り口での工夫が必要」と述べ、アクセスのハードルを下げることの重要性を示しました。

●“空間に来られる子だけ”にとどまらない支援を

 第3の家族・奥村氏は、オンラインコミュニティの取組を紹介し、「家庭環境や人間関係に悩む若者にとって、ただ吐き出せる場があること自体が大きな変化につながる」と語りました。元利用者で現在運営にも関わっているセリカ氏は本コミュニティについて「投稿がジャッジされない点が良い。自分のありのままの気持ちを発信できて居心地がいい」と体験を語りました。

 こうした声を踏まえ、「支援が“その場に来られる子のための居場所”にとどまっていないか」という危機感も提示されました。家庭の事情、経済的事情によって居場所に来ることすら難しいこども達の存在を踏まえ、「大人の都合で線を引かないこと」がこどもたちにとって一歩を踏み出しやすい環境を作るうえで重要だと強調されました。さらに、こどもの本心に耳を傾ける感度の重要性についても言及がありました。

 議論の最後には、「行政がすべてをまかなうことはできない」という現実も共有されました。こども家庭庁・安里より、支援の持続には、行政と民間が連携し、地域の大人がこどもの声を誠実に受け止める姿勢が不可欠と述べました。

<第2部セッション>

 第2部のセッションでは、第1部の議論を受け、こどもの居場所を後方支援するプレイヤーを中心に「居場所の役割は何か」や「居場所の存在自体を発信することの重要性」について意見が交わされました。参加者からは、地域社会における人と人との関係性や、こども自身の主体性をどう確保するかについて、率直な意見や問題提起が展開されました。

●「居場所」の固定観念を超え、多様な選択肢をもつこと

 とよなかESDネットワーク・上村氏は、第1部を振り返り「やっぱり人が核だ」と述べ、行政が進める取組が本当に正しいのか、不安を感じているという側面も語りました。特に「居場所」という言葉が「困難を抱えた人だけのもの」と捉えられがちな現状に触れ、意味や受け止め方を変えていく必要性と難しさが示されました。また、第3の家族の活動に共感した参加者からは「自殺を減らし、ウェルビーイングを増やすためにこそ、“居場所”が果たせる役割があるのではないか」という問いも投げかけられました。

 妙高市・岡田氏は「新たに用意するのではなく、高校生が普段から集まる場所に市の若手職員が出向いて一緒に活動することで、そこが居場所となっている」と市独自の取組を紹介。さらに、高浜市・榊原氏は「ビュッフェのように、居場所にも多様な選択肢を用意することが大切」という考えが共有され、ひとつの場所で全員を救えるわけではないからこそ、多様な選択肢を提供する街でありたい」と強調しました。

●NPO・行政・地域の役割

 上村氏は、行政と地域の活動をつなぐ「コーディネーター」としての役割を強調。「活動を辞めることも選択肢として、コーディネートする」「苦しい状況で活動を続けても“こどもまんなか”にはならない」と語り、活動に伴走することの重要性を指摘しました。

 一方で、行政の立ち位置として、徳島県・國見氏は、地域のつながりが希薄化する中、交流の場づくりの観点から「地域が地域の形のまま、つながりそのものを育むことが大事」と述べ、地域資源を活かした持続的な寄り添い方を示しました。

●若者自身が担う“居場所づくり”の視点

 参加者からは「こどもの声を聞くといっても一方通行で終わり、意思決定にこどもが関われる構造が必要」との意見も出され、運営主体と当事者参加のバランスについての課題も提示されました。

 18歳のセリカ氏は、「大人がこどもを巻き込んで活動すると言いつつも、結局運営の中心は大人。そこに矛盾を感じる」と指摘し、形式的に声を聞くだけではなく、意思決定や価値判断の場にこども達を参加させるべきだと提起しました。この意見を受け、発信だけではなく「居場所を誰がどう作るのか」が重要になってくると述べられました。

 また、まだ居場所を見つけられていないこども達に対して、「いま直接繋がっていなくてもいつでも繋がれる場所があるというメッセージを伝えることが大切」という意見がありました。孤立しそうになったとき、安心して戻れる場所の存在こそが、本来の居場所の意味ではないかという問いが提示されました。さらに、他の参加者からも「居場所=引きこもりや不登校など困難を抱えたこども達のための場」という固定的なイメージが強い現状があるなかで、「誰もが気軽に来れる居場所であることをしっかり発信していくことも重要」との見解も共有されました。

<こども家庭庁からのコメント>

 最後には、清原 慶子氏(こども家庭庁参与、杏林大学客員教授、前三鷹市長)が感想と、ディスカッション内で特に印象的だったことを3つ語りました。

 まず1つ目に「居場所の“居”という字には、そこに“いる”ことの大切さ、そして“いい”と思える瞬間の無限の広がりが込められていると感じました。皆さんの実践は、まさに“生きる場所”をつくる営みです。」と話し、“行きにくい場所” “苦しい場所”から“楽しい場所” “面白い場所”へと変化を支えているのは、居場所をつくる人々の思いと工夫に他なりません。本日改めて居場所の可能性を感じました。」とコメントしました。

 また、2つ目に決して「完璧な支援をしよう」と無理していないことも伝わったと語り、居場所には「余白」や「戸惑い」があること自体が大切であり、こども自身が居場所を意味づけていくプロセスこそ重要なのだと話しました。

 最後に、「続けるためには“やめ方”も含めてデザインが必要で続けることを目的とするのではなく、時には、潔く「やめる」ことも必要。しかし、つくる段階では妥協せず育てていくことが大切です」と結び、会は幕を閉じました。

<会場の様子>

 参加者がフィッシュボウル形式でディスカッションを行い、「こどもの居場所づくり」をテーマに議論が行われました。各参加者それぞれが思う自分たちの活動の“自慢”を堂々と語る様子や議論が進むなかで積極的に声を上げる参加者も増え、こども達にとって「本当に意味のある居場所はなにか」を考える貴重な機会となりました。

〈アーカイブ配信〉

 本イベントの様子は、アーカイブ配信でご視聴いただけます。 https://youtu.be/ZrLTjPJB5EM

■「こどもの居場所づくりオールミーティング」開催概要

開催日時 :2025年9月25日(木)13:00~15:00(受付12:30~)

会場   :渋谷区児童青少年センターフレンズ本町(東京都渋谷区本町6丁目6-2)

プログラム

13:00~  :オープニング・動画公開

13:15~  :第1部セッション・こどもの居場所を運営する多様なプレイヤー

      :第2部セッション・こどもの居場所を後方支援するプレイヤー

14:50~  :クロージング

14:55~  :記念撮影

15:00   :終了

主催   :こども家庭庁

協力   :認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

登壇者  :(敬称略)

ファシリテーター:湯浅 誠(東京大学特任教授・日本福祉大学客員教授、むすびえ公共政策アドバイザー)

<第1部セッション>

・安里賀奈子(こども家庭庁成育環境課長)

・青山鉄兵(文教大学准教授)

・有澤陽子(特定非営利活動法人子育てネットひまわり代表理事)

・神林俊一(一般社団法人TOKYO PLAYプロジェクトマネージャー)

・上田彩果(特定非営利活動法人 miraito理事長)

・溝口晋太朗(社会福祉法人京都保育センターたかつかさ児童館長)

・奥村春香(特定非営利活動法人第3の家族理事長)

<第2部セッション>

・安里賀奈子(こども家庭庁成育環境課)

・青山鉄兵(文教大学准教授)

・榊原勇介(高浜市福祉部共生推進グループ主事)

・岡田 豊(妙高市企画政策課長)

・國見あゆみ(徳島県こども未来部こども家庭支援課ひとり親家庭・居場所づくり担当係長)

・上村有里(特定非営利法人とよなかESDネットワーク事務局長)

■「こどもの居場所づくりオールミーティング」とは

こども家庭庁は「こどもまんなか社会」の実現に向けて、こども・若者のみなさんの声を聴き、反映し、こどもや若者の視点に立った政策を実現します。そして、社会全体でこどもや子育て中の方々を応援していく気運を高めるための「こどもまんなかアクション」を推進しています。今回、こどもまんなかアクションの一環として、初めて開催する「こどもの居場所づくりオールミーティング」は、全国のこどもまんなか応援サポーターたちと、居場所づくりの重要性を広く共有し、地域全体で取り組みを推進するため、こどもまんなかの居場所づくりの機運を高めることを目的に開催します。

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会社概要

こども家庭庁

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URL
https://www.cfa.go.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都千代田区霞が関3-2-5
電話番号
-
代表者名
渡辺 由美子
上場
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資本金
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設立
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