力石和也、トレーナー人生の軌跡を語る。 パーソナルトレーニングの新たなスタンダード を築くための思いが明らかに。
R-TRUCKの代表トレーナーが、12年のキャリアを経てたどり着いた「やらないこと」の哲学と、次世代トレーナー育成への展望を語ります。
R-TRUCK 代表トレーナー / 東京リゾート&スポーツ専門学校 非常勤講師 力石 和也
トレーナー歴 12 年。力石和也さんは、パーソナルトレーニングジム「R-TRUCK」を経営しながら、東京リゾート&スポーツ専門学校でこれからトレーナーになる学生を教えています。
R-TRUCK のサイトを開くと、少し変わった一覧が目に入り、「やらないこと」として、極端な食事制限、過度な追い込みトレーニング、画一的なプログラム、強引な勧誘が挙げられており、できることではなく、やらないことが書いてあります。
12 年かけてそこにたどり着くまでに何があったのか、本記事では力石和也さんの取組みをインタビューさせて頂きたいと思います。

— 冒頭に、なぜ今回インタビューを受けていただけたのでしょうか?
そうですね、あまり自分自身が前に出てメディアに出ることは、ウチのような規模ですと組織を作る上では必要無いと考えていましたが、ちょっと考えが変わりました。
学生時代のクラスメイトだったボディビルダーが YouTube やメディア、書籍などで活躍しているのをみて感化されたというか、その姿をみて、僕自身はまだ何者でもないかもしれませんが、12 年間トレーナーとして歩んできた形を何かしらの形で残したいと考えました。
また、今の自分自身の考えを整理する意味や今日お話しすることの中にも今後考えが変わらないことと変えなければいけないことがあると思いますが、10 年後、20 年後に現在地を振り返る為にも良い機会になるかと思いインタビューを受けました。
いま、やっている二つの仕事
— いま、どんな仕事をされているんですか?
大きく二つあります。一つは、自分の事業として R-TRUCK(パーソナルジム)の経営とトレーニング指導。もう一つは、専門学校の非常勤講師として、これからトレーナーになる学生に教えることです。日中は現場に立って、週に一度は学校に行く、という形ですね。
— 講師をすることになった経緯はなんですか?
講師をすることになったきっかけは、母校である横浜リゾスポとのつながりでした。卒業後も学校や先生方と関わる機会があり、その中で講師のお話をいただいたことが始まりです。
その様なお話しをいただいた時に、学生当時の自分を思い返しました。
僕は決して優等生タイプではなかったのですが、在学中は先生方に何度も背中を押していただきました。だからこそ、今度は僕が教える側として、自分がこれまで現場で経験してきたことを生徒たちに還元し、生徒自身が成長やレベルアップしていけるようにサポートしていきたいと考え、講師を引き受けました。
また、教える側に立つことで、現場で感覚的にやっていたことが改めて見えてきて、自分自身の指導内容を点検する機会にもなっています。言葉にできないことは生徒には教えられないので、自分の指導を言語化することが必要になり、それが自身にとっても良い振り返りになっています。

— そもそもトレーナーの道に進んだきっかけは何だったんですか?
学生時代に野球をやっていて、身体造りの為にフィットネスクラブに行くことが多くありました。そこでトレーナーさんに正しい動き方や力の出し方を教えてもらった際に、こんな面白い仕事があるのかと中学 3 年生の時に感じたことがトレーニングとの出会いでしたね。
また、「専門学校で、運動生理学や解剖学、栄養学を学んだことですね。」と言い切りたかったですが、とにかく筋トレが好きで、身体も大きくしたい気持ちが強く、プロレスラーのような勇敢で逞しい身体に憧れていました。
— 卒業後は都内の複数の施設で指導されていますよね。どんな経験をされましたか?
会社経験で言えば 3 社ほど経験してきました。専門職な業界なのでとにかくマニュアルよりも自分なりに考えて働いていましたよ。「どうしたらもっと良いトレーニングが提供できるのか」を考え、色んな先輩トレーナーから毎日良いところを必死に盗んでいましたね。
当時、お客様のトレーニングを 1 日に 10 人近く担当しており、圧倒的な人数を見られたことはとても良い経験でした。「人によって、身体はこんなに違うのか」ということを頭ではなく目で覚えられました。
— これまでで、いちばんうまくいかなかった経験を挙げるとしたらどういったことでしょうか?
20 歳くらいのトレーナー駆け出しの頃に担当した「3 ヶ月で 15 キロ落としたい」というお客様との経験です。目標通りに体重が落ちて、そのときは喜んでもらえました。でも、半年後にお会いしたらほぼ元の体重に戻っていて、しかも「またあれをやらないと戻らないんですね…」と言われたんです。
あれは完全に自分の失敗でした。落とし方は教えたけれど、続け方を教えていなかったと気付きました。
— その経験から変えたことはなんでしょうか?
言葉の使い方とお客様への伝え方を変えました。「3 ヶ月後にどうなりたいか」も大切ですが、先々のことを踏まえたうえで何がベストなのかを天秤に掛けて常に伝えるようにしています。
例えば、「10 キロ痩せたい!」と言うお客様に対して、「なにで 10 キロ痩せたいのか?」と必ず聞くようにしています。その 10 キロは、水分量なのか、筋肉なのか、余計な脂肪なのかってことですね。
やっぱりみんな余分な脂肪を一番に落としたいと考えるはずです。だからこそ、10 キロという数字に拘るのではなく、いかに余分な脂肪だけを極論落とせるか、その方法が重要なんですよね。その過程で 10 キロと言う数字があるだけで、その為には何が必要で、何が不必要なのかを、そこはハッキリと明確にして伝えるようにしています。
自分でやると決めるまで
— 2018 年からは、2 つのパーソナルジムの立ち上げに参加されていますね。どんな経験でしたか?
指導する側から、お店をつくる側に回ったのは初めての経験でした。
2 つのジムの立ち上げを通して、トレーニングを教えるだけでなく、お客様にどう来てもらうか、どんなサービスにするかといったお客様へのサービスのあり方を考えることができました。また、トレーニングジムの店舗内装や導入する設備の選定、料金体系の設計等のパーソナルジムの事業運営に必要なことを一通り学ぶことができました。
この 2 つ立ち上げ経験から、事業の立ち上げ方が一通り分かった一方で、「自分ならもっとこうしたい」という部分もはっきりしてきました。どんなお客様に来てもらいたいのか、どんな空間にしたいのか、トレーニングをどう提供したいのか。そういう自分なりの理想が少しずつ見えてきた時期でした。
— 2021 年に R-TRUCK を始められます。サイトの「やらないこと」4 つは、いつ決めたんですか?
開業のときです。あれは自分への約束みたいなものでした。多くの人に運動は必要不可欠だと思っているので、「強引な勧誘」・「長期契約の押し付け」は絶対にしない/させないことを決めました。
結婚式場などで「今日決めていただければ〜」とか「口コミ書いてくれたら、いくら割引しますよ」などをよく耳にするのですが、「なぜいま決めないとダメなんだろう」と感じていました。それが一時の買い物であればその時の勢いが大切になることは分かりますが、トレーニングはお客様の大切な時間と身体を預けていただくと考えると、色んなジムを比較し、条件やトレーナーを見て判断したいのが自然だと考えています。そのため、「ココでお願いします」とお客様から言ってもらえるように、「強引な勧誘」・「長期契約の押し付け」は絶対にしないと決めています。
特に、パーソナルトレーニングはジムの利益 < 顧客の体験が重要であると僕自身現場にいて常々思っています。そのため、お客様自身で納得して通ってもらうことが結果的に長く通っていただくことに繋がり、お客様にもジムにも双方に良いことがあるんですよね。
— 独立するとき、いちばん怖かったのは何でしたか?
「事業がうまくいくかどうか」ではなく、「一人になると、やり方が少しずつズレていっても気づけないこと」です。
だからこそ、創業時の考えを mission、vision、value にまとめて、ブレないようにやっていくための指針とし始めに決めました。スタッフにも必ず目を通して理解して働いてもらっています。
今は、信頼できるスタッフと毎日話し合い、みんなでズレを修正して即実践に移せる環境があるので、サービスやトレーニングが日々良いものに生まれています。
— 世の中でのパーソナルトレーニングの受け取られ方と、現場で見ている実際とで、ズレを感じることはありますか?
お客様と話していて多いのが、「きついほど効く」と思われていることです。
しかし、実際には逆で、「続けられる強度がいちばん効きます。」結果が出ているお客様は、いちばん地味なことをいちばん長く続けている方ですね。

— 力石さんがトレーナーを始めた際と、変わったなと思う瞬間はなんでしょうか?
それで言ったら、お客様のトレーニングに対する基礎知識が遥かに向上したことですかね。昔は基礎代謝計算やカロリー、ダイエット方法の手法などを一から説明することが当たり前でしたが、トレーニング自体が流行った影響なのか、その辺りを理解されているお客様が増えました。そういった方には、どう動かすかを一緒に考える時間が増え、双方にとって良い時間の使い方ができていると思います。
— いまの業界の課題を挙げるとしたら、どんなことでしょうか?
僕は、「情報の多さ」と「評価のされ方」だと思います。
正しい情報も、間違った情報も、同じような強さで流れてくる時代だと考えています。だからこそ、これから何かを始めたいと思った人ほど、「結局、何を信じればいいのか」「どこを選べばいいのか」が分からなくなっているように感じます。
ジムやトレーナーも増えており、選択肢自体が増えたことはすごく良いことだと思いますが、選択肢の多さ故に選ぶということが難しくなっていると思います。トレーニングを始める方には「ここなら信頼できる」と思えるジムやトレーナーを見つけてほしいと考えており、ネットの情報や口コミだけで決めるのではなく、実際に色々なジムの体験に行ってみて、自分の目で見て、感じて、自分自身にあったジムを見つけてほしいです。
これから
— 5 年後、10 年後、フィットネス業界はどうなっていると思いますか?
現代社会で運動の重要性が下がることはないので、フィットネス業界自体の需要や存在価値も、この先変わらないと思います。
一方で、「ただ痩せるための場所」としてのジムは、情報はアプリで事足りるしジム以外の手段も増えているので、需要が減っていくと考えています。
— その中で必要とされるトレーナー・ジムには、何が必要と考えていますか?
あくまで僕の感覚にはなりますが、残るジムはトレーナーの資質や指導技術を担保しているジムだと思います。なぜなら、お客様への価値提供には均一な情報やトレーニング提供では他サービスに勝てないからです。
トレーナーの価値は、お客様一人一人に合わせたトレーニングを提供できることであり、そこが生命線だと考えています。そのためにはトレーナー自身が、お客様のことを考えに考え抜いたサービス/トレーニングを提供することが必要だと思っています。
— 事業として、次にやりたいことはなんですか?
いいトレーナーを育てて、新しい店舗をつくること/いいトレーナーを育てて、より多くのお客様に R-TRUCK のサービスを届けることです。
全ての方のフィットネスライフをサポートすることは僕の力では限界がありますし、トレーナーも担当できる人数には限界があります。そのため、「量」を稼ぐのではなく、「質」にこだわっていきたいです。Mission Vision Value でも掲げている通り、お客様に対してしっかりと価値を提供することが一番だと考えているので、R-TRUCK ではしっかりとスタッフが育ってから次の店舗を出すと決めています。店舗を増やしてからトレーナーを育てるという順序ではないです。実際、R-TRUCK ではお客様の前に立つまでに研修を 6 ヶ月間実施しています。
お客様からも「次の店舗出さないんですか?」と聞かれるのですが、そのタイミングが来たらで良いと考えています。仕組みやマニュアルが出来たからと焦って店舗を増やしても、トレーナーは属人性の高い職であるため、スタッフの技術や組織としての統率には限界があります。上手くいっている時期はどんどんスタッフを増やしても良いのですが、縮小が必要になった際にスタッフを路頭に迷わせてしまうことは避けたいです。
新店舗の出店が遅くなり、店舗周辺にパーソナルジムが増えても問題ありません。むしろパーソナルジムが増えてくれるほど、ウチのトレーニングと他のジムとの違いを感じていただけると思っています。そのためにも、「いいトレーナーを育てて、新しい店舗をつくる」、この順序が重要だと考えています。
— どんな人と一緒に働いていきたいですか?
しっかりと自分で考えて行動、言動に移せる人ですかね。やり方を強制しても先々意味がないですからね。間違ってても良いから、自分自身が考えていることを実践できる/自分が持っている今のベストを出してくれるような人と働きたいです。そういう人は会話を通して 1 つの助言で修正出来てどんどん良いトレーナーに育っていきますから。
— 最後に、これから挑戦してみたいことや、力石さんの今後のトレーナー人生がどのようなものになっていくのか、進んでいくのか教えていただけますか?
先々のことは分かりませんが、きっと 10 年後も現役バリバリのトレーナーであることは間違いないと思います。なぜなら、昔から見ているお客様は生涯僕が担当したいですし、そのお客様が運動を続けられる場所を残すことが自分の役目であり、トレーニングジムを作った最大の務めだと考えています。
一方で、いまの業種に派生した「世のため人のためになること」には色々と挑戦してみたいとも考えています。

力石 和也(りきいし かずや)
生年:1994 年生まれ
出身:神奈川県
会社:株式会社 R-TRUCK 代表取締役(会社設立 2021 年)
事業内容:パーソナルトレーナー
保有資格:JATI-ATI (※トレーニング指導者資格)
活動拠点:大森山王/京急蒲田
そのほか:東京リゾート&スポーツ専門学校 非常勤講師
Instagram:@r-truck2021
Web サイト:https://www.r-truck2021.com
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