2021年度版の医薬品アクセスインデックス(ATMインデックス)
~貧困層に対する迅速な新薬アクセスに向けた製薬企業の体系的な動きが確認される~
2021年度版の医薬品アクセスインデックス(ATMインデックス)では、将来、医薬品やワクチンが上市された時点で貧困国がアクセスできるよう、体系的な「アクセス計画」を策定している製薬企業が8社あることが明らかになりました。2021年度のATMインデックスでは、GSKが僅差でトップを維持しました。
【オランダ・アムステルダム、2021年1月26日】本日、2021年度版のATMインデックスの分析結果が発表されました。これは、低中所得国に高負荷疾患向けの医薬品を提供する有力製薬企業20社を対象としたランキングです。今回の結果では、製薬企業による方針の変更に伴い、低所得国の人々に新薬や新ワクチンが提供されるまでの一般的な期間が短縮される可能性が明らかになりました。8社の有力製薬企業は、新薬が世界的に上市された際、必要に応じて、中低所得国が迅速にアクセスできるよう、開発パイプライン上にある候補薬を体系的にこの計画と連結させる取り組みを行っています。
臨床開発時に事前計画を策定することにより、貧困諸国における新薬アクセスのスピードを加速することができます。アクセス計画には、高負荷疾患に直面している国々で、販売承認を得た医薬品の入手を容易にするための価格設定に加えて、ジェネリック薬を製造するための事前ライセンス契約など、様々な活動を盛り込むことが可能です。
医薬品アクセス財団(Access to Medicine Foundation)のエグゼキュティブ・ディレクターを務めるジェイアスリー・K・アイヤー(Jayasree K Iyer)は次のように述べています。「あまりにも多くの人々が、研究開発パイプラインから生み出される革新的な医薬品やワクチンにアクセスできていません。製薬企業の間では、医薬品アクセスを実現する手段を根本的に変える可能性のある、体系的なアクセス計画の戦略変更が見られます。しかし、全ての新薬においてこの計画が実施されなければ、その効果は期待できません」
改善余地
体系的なアプローチは主流になりつつあるものの、最終段階にある研究開発プロジェクトの全てがアクセス計画によりサポートされているわけではありません。研究開発の優先度が高い候補薬の59%においてアクセス計画が策定されているのに対して、それ以外の疾病を標的とする、または不足している治療薬の溝を埋めるための候補薬に関しては、アクセス計画が策定されている割合は31%となっています。アクセス計画が策定されている候補薬の割合が最も多かったのはGSK(評価したプロジェクトの80%)で、その後にジョンソン・エンド・ジョンソン、ノバルティス、ファイザー、サノフィが続いています。
また、既に上市されている医薬品で、貧困層へのアクセス問題に製薬企業が対応している割合は半数にも達していません。低所得国は常に最も見過ごされる存在となっています。ガンの注射治療薬など、医療従事者による投与が必要な医薬品では、アクセス戦略を通じて低所得国に提供されている割合は13%とごく僅かです。一方、主にピルなど、自己投与が可能な医薬品に関しては、その割合は26%まで拡大します。これらの取り組みを通じて医薬品を入手している人々は各国当たりごく僅かで、その大半は適正価格戦略が占めています。
ATMインデックスは、上市までに十分な計画を練る時間を確保するために、臨床第II相試験(フェーズII)または第III相試験(フェーズIII)においてアクセス計画の策定を開始することを求めています。第II相試験で良好な結果が得られた時点で、その全プロジェクトに対してアクセス計画を体系的に策定しているGSKの取組は、良い実践例となっています。また、ファイザーは全医薬品に対して、上市の2年前の段階でアクセス計画の策定開始を義務付けています。武田薬品のデング熱ワクチン・プロジェクト向けのアクセス計画には、デング熱流行国におけるワクチン登録に対するコミットメント、任意ライセンス、階層別価格戦略などが盛り込まれています。
ファイザーが上位10社入り
ATMインデックスは、106カ国において医薬品アクセスの向上に努める世界の有力製薬企業20社を対象とした第三者によるランキングです。2021年度は、ファイザーがトップ10入りを果たし、上位3位を占めるGSK、ノバルティス、ジョンソン・エンド・ジョンソンに次ぐ4位となりました。GSKとノバルティスはほぼ同スコアで首位についています。上位4社に加えて、サノフィ(5位)、武田薬品(6位)、アストラゼネカ(7位)メルク(8位)の8社を主導にアクセス計画は進められています。体系的なアクセス計画に取り組んでいる企業は、2018年の僅か1社から、インデックス構成企業の4割まで増加しています。
今回もGSKが首位となったものの、2位との差は2018年と比べて大幅に縮小しました。GSKは的を絞った研究開発に加えて、医薬品アクセス問題を企業戦略全般に明確に盛り込んでいるという点で卓越しています。GSKはまた、低中所得国における価格設定、ライセンス供与、寄付、能力向上等の活動を含む、医薬品の提供という点においても、優れた実績を収めています。しかしながら、この分野はノバルティスが上回っており、同社は唯一、心血管向けポートフォリオを含む分析対象の医薬品全てで、低所得国において公平アクセス戦略を適用しています。ファイザーの順位は、下位から上位5位へと、最も大幅に上昇しました。アクセス戦略の優れた実績や能力向上に加えて、研究開発段階のアクセス計画が高く評価されました。
日本企業について
武田薬品は6位と、トップ10の座を保持しました。同社はガバナンスとコンプライアンスの分野で秀でており、明確な医薬品アクセス戦略は同社の企業活動の中核をなしています。同社のCEOはアクセス関連の目標を達成するための報酬制度を導入しています。同社はまた、販売承認を得た新薬へのアクセスを確実にするための計画も策定しています。同社のヘルスケアシステムの強化を目的とする取り組みは群を抜いています。
エーザイは11位につけており、医薬品の寄付に関して引き続き良好な実績を挙げています。リンパ管フィラリア症(一般的に象皮病として知られる)の撲滅に対する継続したコミットメントを示し、病気が撲滅されるまで続けることを確約しています。エーザイのCEOは同社の使命(ミッション)の一環として、顧みられない熱帯病(NTD)の撲滅に対する取り組みも行っています。エーザイの研究開発プロジェクトの4割強が、世界のヘルスコミュニティが定める重点疾患を標的としています。
アステラスは14位、第一三共は16位と、多くの分野において比較的低い実績となりました。ただし第一三共は、多くの低中所得国や低所得国において特許を行使または申請しないという強固なコミットメントにおいて進展がありました。アステラスは現在、研究開発パイプラインから排出される新薬がアクセス可能で患者が入手しやすい価格になるための戦術的な計画を策定中です。
2020年の研究開発はガンと新型コロナウイルス(新型コロナ)が支配
2018年と同様に、製薬企業の研究開発活動は主に一部の疾病に重点を置いたものとなりました。感染性疾患の中では、HIV/AIDS(エイズ)、結核症(TB)、マラリアが再度最も重要視され、2020年にはそれに新型コロナが新たに加わりました。これらの疾病は伝染性疾病のパイプラインにあるプロジェクトの過半数(198/321)を占めています。非伝染性疾病(NCDs)のパイプラインはガンが支配しており、プロジェクトの三分の二以上(461/663)を占めています。
新型コロナ患者向けの研究開発活動は、世界的な感染拡大(パンデミック)の期間を通じて注視されてきました。新型コロナ感染拡大前との比較では、新型コロナ患者向けの治験薬やワクチンのポートフォリオは拡充した一方で、エボラ出血熱、ジカ熱やSARSなど、他のパンデミック・リスクのある病原体に関するポートフォリオは空のままであることが判明しました。インデックスが確認した16の新興感染症の内10の感染症において、対象先の20社の製薬企業はパイプラインを持っていません。
2021年度のインデックスは、上市済み医薬品の公平なアクセスを向上させると共に、新薬を入手しやすくするために、製薬企業が取り組みを進めている事を評価しています。また、HIV/AIDS、結核症、マラリアなどの命取りとなる病気から、下気道感染症、下痢症、妊産婦の健康状態、ガンなどを含む、82の疾病、症状、病原体をカバーしています。これらの疾病に苦しむ8割超が低中所得国の人々です。インデックスの対象である20社の製薬企業は、世界の医薬品業界の収入の7割を占めており、医薬品の公平なアクセスを確保する上で重要な役割を担っています。
ATMインデックスについて
「医薬品アクセスインデックス」(ATMインデックス)は、世界の有力製薬企業20社を対象に、低中所得国における高負荷疾病の医薬品アクセスに対する取り組みを分析し、企業行為の3つの分野における医薬品アクセス向上にむけた企業の取り組みに基づき、企業の格付けを行います。ATMインデックスは、ベストプラクティスや進展が見られる分野を特定すると共に、いまだ重要な行動が必要とされる分野を明らかにします。ATMインデックスは、運用資産総額が14兆米ドル超となる、100社を上回る機関投資家からの支持を受けています。ATMインデックスは、英国政府(UK AID)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、オランダ外務省、ウェルカム・トラスト、およびアクサ・インベストメント・マネージャーズが資金を提供する独立非営利研究財団、医薬品アクセス財団が2年ごとに実施しています。
臨床開発時に事前計画を策定することにより、貧困諸国における新薬アクセスのスピードを加速することができます。アクセス計画には、高負荷疾患に直面している国々で、販売承認を得た医薬品の入手を容易にするための価格設定に加えて、ジェネリック薬を製造するための事前ライセンス契約など、様々な活動を盛り込むことが可能です。
医薬品アクセス財団(Access to Medicine Foundation)のエグゼキュティブ・ディレクターを務めるジェイアスリー・K・アイヤー(Jayasree K Iyer)は次のように述べています。「あまりにも多くの人々が、研究開発パイプラインから生み出される革新的な医薬品やワクチンにアクセスできていません。製薬企業の間では、医薬品アクセスを実現する手段を根本的に変える可能性のある、体系的なアクセス計画の戦略変更が見られます。しかし、全ての新薬においてこの計画が実施されなければ、その効果は期待できません」
改善余地
体系的なアプローチは主流になりつつあるものの、最終段階にある研究開発プロジェクトの全てがアクセス計画によりサポートされているわけではありません。研究開発の優先度が高い候補薬の59%においてアクセス計画が策定されているのに対して、それ以外の疾病を標的とする、または不足している治療薬の溝を埋めるための候補薬に関しては、アクセス計画が策定されている割合は31%となっています。アクセス計画が策定されている候補薬の割合が最も多かったのはGSK(評価したプロジェクトの80%)で、その後にジョンソン・エンド・ジョンソン、ノバルティス、ファイザー、サノフィが続いています。
また、既に上市されている医薬品で、貧困層へのアクセス問題に製薬企業が対応している割合は半数にも達していません。低所得国は常に最も見過ごされる存在となっています。ガンの注射治療薬など、医療従事者による投与が必要な医薬品では、アクセス戦略を通じて低所得国に提供されている割合は13%とごく僅かです。一方、主にピルなど、自己投与が可能な医薬品に関しては、その割合は26%まで拡大します。これらの取り組みを通じて医薬品を入手している人々は各国当たりごく僅かで、その大半は適正価格戦略が占めています。
ATMインデックスは、上市までに十分な計画を練る時間を確保するために、臨床第II相試験(フェーズII)または第III相試験(フェーズIII)においてアクセス計画の策定を開始することを求めています。第II相試験で良好な結果が得られた時点で、その全プロジェクトに対してアクセス計画を体系的に策定しているGSKの取組は、良い実践例となっています。また、ファイザーは全医薬品に対して、上市の2年前の段階でアクセス計画の策定開始を義務付けています。武田薬品のデング熱ワクチン・プロジェクト向けのアクセス計画には、デング熱流行国におけるワクチン登録に対するコミットメント、任意ライセンス、階層別価格戦略などが盛り込まれています。
ファイザーが上位10社入り
ATMインデックスは、106カ国において医薬品アクセスの向上に努める世界の有力製薬企業20社を対象とした第三者によるランキングです。2021年度は、ファイザーがトップ10入りを果たし、上位3位を占めるGSK、ノバルティス、ジョンソン・エンド・ジョンソンに次ぐ4位となりました。GSKとノバルティスはほぼ同スコアで首位についています。上位4社に加えて、サノフィ(5位)、武田薬品(6位)、アストラゼネカ(7位)メルク(8位)の8社を主導にアクセス計画は進められています。体系的なアクセス計画に取り組んでいる企業は、2018年の僅か1社から、インデックス構成企業の4割まで増加しています。
今回もGSKが首位となったものの、2位との差は2018年と比べて大幅に縮小しました。GSKは的を絞った研究開発に加えて、医薬品アクセス問題を企業戦略全般に明確に盛り込んでいるという点で卓越しています。GSKはまた、低中所得国における価格設定、ライセンス供与、寄付、能力向上等の活動を含む、医薬品の提供という点においても、優れた実績を収めています。しかしながら、この分野はノバルティスが上回っており、同社は唯一、心血管向けポートフォリオを含む分析対象の医薬品全てで、低所得国において公平アクセス戦略を適用しています。ファイザーの順位は、下位から上位5位へと、最も大幅に上昇しました。アクセス戦略の優れた実績や能力向上に加えて、研究開発段階のアクセス計画が高く評価されました。
日本企業について
武田薬品は6位と、トップ10の座を保持しました。同社はガバナンスとコンプライアンスの分野で秀でており、明確な医薬品アクセス戦略は同社の企業活動の中核をなしています。同社のCEOはアクセス関連の目標を達成するための報酬制度を導入しています。同社はまた、販売承認を得た新薬へのアクセスを確実にするための計画も策定しています。同社のヘルスケアシステムの強化を目的とする取り組みは群を抜いています。
エーザイは11位につけており、医薬品の寄付に関して引き続き良好な実績を挙げています。リンパ管フィラリア症(一般的に象皮病として知られる)の撲滅に対する継続したコミットメントを示し、病気が撲滅されるまで続けることを確約しています。エーザイのCEOは同社の使命(ミッション)の一環として、顧みられない熱帯病(NTD)の撲滅に対する取り組みも行っています。エーザイの研究開発プロジェクトの4割強が、世界のヘルスコミュニティが定める重点疾患を標的としています。
アステラスは14位、第一三共は16位と、多くの分野において比較的低い実績となりました。ただし第一三共は、多くの低中所得国や低所得国において特許を行使または申請しないという強固なコミットメントにおいて進展がありました。アステラスは現在、研究開発パイプラインから排出される新薬がアクセス可能で患者が入手しやすい価格になるための戦術的な計画を策定中です。
2020年の研究開発はガンと新型コロナウイルス(新型コロナ)が支配
2018年と同様に、製薬企業の研究開発活動は主に一部の疾病に重点を置いたものとなりました。感染性疾患の中では、HIV/AIDS(エイズ)、結核症(TB)、マラリアが再度最も重要視され、2020年にはそれに新型コロナが新たに加わりました。これらの疾病は伝染性疾病のパイプラインにあるプロジェクトの過半数(198/321)を占めています。非伝染性疾病(NCDs)のパイプラインはガンが支配しており、プロジェクトの三分の二以上(461/663)を占めています。
新型コロナ患者向けの研究開発活動は、世界的な感染拡大(パンデミック)の期間を通じて注視されてきました。新型コロナ感染拡大前との比較では、新型コロナ患者向けの治験薬やワクチンのポートフォリオは拡充した一方で、エボラ出血熱、ジカ熱やSARSなど、他のパンデミック・リスクのある病原体に関するポートフォリオは空のままであることが判明しました。インデックスが確認した16の新興感染症の内10の感染症において、対象先の20社の製薬企業はパイプラインを持っていません。
2021年度のインデックスは、上市済み医薬品の公平なアクセスを向上させると共に、新薬を入手しやすくするために、製薬企業が取り組みを進めている事を評価しています。また、HIV/AIDS、結核症、マラリアなどの命取りとなる病気から、下気道感染症、下痢症、妊産婦の健康状態、ガンなどを含む、82の疾病、症状、病原体をカバーしています。これらの疾病に苦しむ8割超が低中所得国の人々です。インデックスの対象である20社の製薬企業は、世界の医薬品業界の収入の7割を占めており、医薬品の公平なアクセスを確保する上で重要な役割を担っています。
ATMインデックスについて
「医薬品アクセスインデックス」(ATMインデックス)は、世界の有力製薬企業20社を対象に、低中所得国における高負荷疾病の医薬品アクセスに対する取り組みを分析し、企業行為の3つの分野における医薬品アクセス向上にむけた企業の取り組みに基づき、企業の格付けを行います。ATMインデックスは、ベストプラクティスや進展が見られる分野を特定すると共に、いまだ重要な行動が必要とされる分野を明らかにします。ATMインデックスは、運用資産総額が14兆米ドル超となる、100社を上回る機関投資家からの支持を受けています。ATMインデックスは、英国政府(UK AID)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、オランダ外務省、ウェルカム・トラスト、およびアクサ・インベストメント・マネージャーズが資金を提供する独立非営利研究財団、医薬品アクセス財団が2年ごとに実施しています。
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