睡眠と熱中症の関係性における調査結果を発表
日本気象協会と睡眠コンサルティングの西川株式会社が共同調査を実施
蒸し暑い夜は、翌日の熱中症のリスクに関わる睡眠の質を下げる!
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区 会長:石川裕己、以下「日本気象協会」)は、西川株式会社(本社:東京都中央区 代表取締役社長:西川 八一行)と睡眠と熱中症の関係性について調査いたしました。世界的に見ても睡眠時間が少ないとされる日本人の睡眠環境の改善とこれからの時期に特に注意したい熱中症のリスクの軽減にむけて、健康促進の一助となるべく、調査しています。また、解析結果をもとに、睡眠に良い温熱環境を追求している専門家である東北福祉大学 感性福祉研究所の水野一枝先生にインタビューを行いました。
今年(2019年)は、5月下旬には記録的な暑さとなり、北海道佐呂間町では5月としての日本の最高気温を更新しました。6月になって一部地域で梅雨入りしましたが、梅雨の晴れ間には蒸し暑くなっています。この先、7月から8月にかけての気温は平年並の見込みで、晴れる日には厳しい暑さになることが予想されます。皆さまの夏の睡眠がより良いものとなるよう、本調査結果を是非お役立てください。
- 調査結果ダイジェスト
西川の快眠コンサルティングサービス“ねむりの相談所”が保有する睡眠データ、対応する日の熱中症救急搬送者数(消防庁)、対応する日の気象データ(気象庁)を組み合わせて統計解析を行ったところ、熱中症救急搬送者数に影響を与える要素として、日中のWBGTや前夜の夜間平均気温のほかに、中途覚醒時間、睡眠効率が影響を及ぼしている可能性があることが分かりました。
2. 夜間の平均気温が高いほど、中途覚醒時間が長く、睡眠効率が低くなる傾向を確認
中途覚醒時間が2時間以上の方々は、10分未満の方々と比べて夜間平均気温の平均値が約2℃高いことがわかりました。また、睡眠効率が65%未満の方々は、95%以上の方々と比べて夜間の平均気温が約3℃高いことがわかりました。本調査からも、夜間の暑い環境は眠りを妨げる要因となっている傾向を示すことができました。
※中途覚醒時間・・・入眠から起床までの間で途中目が覚めていた時間の合計
※睡眠効率・・・寝床に入っていた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合
※WBGT・・・アメリカで開発された暑熱環境での熱ストレスを評価する指標
- 睡眠と熱中症の関係性における調査結果レポートを公開
▼日中のWBGTと同様に、前夜の夜間平均気温が高いと熱中症搬送者数が増加する傾向に
❶【熱中症救急搬送者数と夜間睡眠の関係】
熱中症救急搬送者数の多かった日の前夜は、中途覚醒時間が長く睡眠効率が低い傾向が明らかに
▼前夜の睡眠効率が低い日ほど、熱中症の救急搬送者数は増える傾向に
熱中症救急搬送者数の多い日の前夜、各睡眠の要素はどのような傾向を示すかを検討するために、中途覚醒時間は10分ごとに、睡眠効率は5%ごとに区分して翌日の熱中症救急搬送者数の平均値を求めると、熱中症救急搬送者数が多かった日の前夜は、中途覚醒時間は長く、睡眠効率は低くなる傾向がありました 。
❷【夜間の平均気温と夜間睡眠の関係】
夜間の平均気温が高いほど、前夜の中途覚醒時間が長くなり、睡眠効率が低くなる傾向を確認
▼夜間の気温が高い日ほど、睡眠効率は小さくなる傾向に
各睡眠の要素と夜間平均気温との関係を検討するために、上記と同様に中途覚醒時間と睡眠効率を区分して夜間の平均温度の平均値を求めると、中途覚醒時間について、2時間以上のグループにおける夜間平均気温の平均値は約24℃、10分未満のグループの平均値は約22℃と約2℃の差があり、夜間の平均気温が上がるにつれて中途覚醒時間が長くなる傾向がありました。また、睡眠効率について、65%未満のグループの夜間平均気温の平均値は24.5℃、95%以上のグループでは21.5℃と3℃の差があり、夜間の平均気温が上がるにつれて睡眠効率は悪くなる傾向がありました。熱帯夜とは、夜間の最低気温が25℃を下回らない日を指していますが、熱帯夜にならない日においても、睡眠にとっては、過酷な状況である可能性が分かりました。
<解析対象>
①対象データ人数:192
②性別:男性74/女性118
③年齢:20代以下 31、30-39歳 72、40-49歳 53、50-59歳 27、60台以上 9
<出典元・解析対象データ>
・熱中症救急搬送者数:熱中症による救急搬送人員「平成28年5~9月」「平成29年5~9月」(消防庁)
・気象データ:気象観測値(東京)平成28年5~9月、平成29年5~9月(気象庁)
・睡眠要素:2018-2019に西川”ねむりの相談所”のサービスを利用したお客様のデータ
- 関係者コメント
西川株式会社 日本睡眠科学研究所 志村 洋二氏
日本睡眠科学研究所 課長
主に各大学や医療機関と寝具の違いによる睡眠の質への影響などの共同研究に携わっています。熱中症リスクは当日の最高気温や前日の夜間平均気温の他に、前日の睡眠中の中途覚醒時間や睡眠効率が関わっていることが、今回睡眠のデータを解析したことによって明らかになりました。熱中症予防として睡眠の重要性についても今回のデータとして示せたことは大変意味のあることだと考えます。
一般財団法人 日本気象協会 気象予報士 平泉 浩一
メディア・コンシューマ事業部 専任主任技師
(気象予報士・統計士・データ解析士)
各種予測情報の企画立案、開発などに従事しています。気象要素と熱中症との関係については多くの研究・調査事例がありますが、気象と睡眠・熱中症との関係についての調査事例はあまり例がなく、西川株式会社が保有する睡眠データを解析することでいくつかの統計的な傾向が明らかになったことは、とても意義深いと考えます。
- 東北福祉大学 感性福祉研究所 水野一枝先生 インタビュー
寝苦しい夜に快適な睡眠を得る方法を体の仕組みを踏まえて解説!
睡眠によい室内の温熱環境を追求している専門家。長年にわたって、夏の眠り、冬の眠り、子どもの眠り、高齢者の眠りと、様々な季節、年代の方の睡眠を様々な場所で測定し分析しています。快適な睡眠をとるためには、寝室環境を整えることや体温の調整をしっかりすることが大切です。気温や湿度が高い時期は睡眠の質が悪くなりがちですが、今回は体の仕組みを交えて、快適な睡眠を得る方法を解説します。
<プロフィール>
東北福祉大学 感性福祉研究所 特任研究員。東邦大学医学部生理学第一講座、獨協医科大学第一生理学教室、産業技術総合研究所NEDOフェローを経て現在に至る。寝室の暑さや寒さ、寝具や寝衣と睡眠に関する研究に28 年従事。日本生理人類学、日本睡眠学会評議委員。NHK『サラメシ』、 NHK BS『美と若さの新常識 カラダのヒミツ』、 NHK『あさいち』などメディア出演、著書多数。
▼「暑さ」は世代を問わず、顕著に睡眠を妨げる
皆さんご存知の通り日本は、夏は蒸し暑くなり、冬は寒くなるというふうに、季節によって環境温度が大きく変わります。それに対して日本人は冷暖房を積極的に使わない傾向があるため、睡眠時には季節による温度変化の影響を強く受けることになります。特に、暑い夜は寝苦しい経験をしたことのある方が多いと思いますが、「暑さ」は子どもから高齢者まで世代を問わず、顕著に睡眠を妨げるということがわかっています。意外にも、寝つきまでの時間は、暑いときも寒いときもそれほど差はないのですが、室温が高いままの場合、深い眠りに入りにくく、何度も目が覚めてしまい寝苦しさを感じてしまうのです。
▼「寝苦しさ対策」のカギは体温調節にあり
人は睡眠時に体の深い部分の温度(深部体温)を下げないと深い眠りに入れないことがわかっており、睡眠と体温(深部体温)との関わりは非常に密接なものといえます。深部体温を下げるためには体の表面から熱を逃がす必要がありますが、周りの気温が高いと熱を逃しにくく、深部体温が下がらないため、眠りにくくなります。また、湿度にも注意をする必要があります。多くの方が体感されている通り、私たちの体は汗をかき、それを蒸発させることによって、体から熱を逃がすのですが、湿度が高い場合は、汗が十分に蒸発できず、体の表面から熱が放出されないため、ますます睡眠の質が悪くなります。良質な睡眠のために室内温度や睡眠環境を整えるなど、暑さへの対策が必須となります。
▼夏の睡眠時はエアコンの使用が必須
先にも紹介したように、日本人は冷暖房をあまり使いたがらない傾向にありますが、夏の寝苦しさを解消するためには、睡眠時のエアコンの使用が最も効果的です。室温が29℃を超えると寝苦しくなりますので、エアコンを使用して快適な温度に調整するのが良いと思います。エアコンは、出来れば一晩中使用して欲しいと思っているのですが、どうしても抵抗のある方は、まず深部体温を下げる必要があるため、睡眠時間の前半4時間程度は使用するようにしてみてください。また、小さなお子さんや高齢者の方も、エアコンの効いた部屋で快適に寝ていただくのが良いと思います。
▼睡眠不足と健康リスク
前日の睡眠不足は、熱中症などの疾病のほかに、注意力が低下することによる事故のリスクも高まります。睡眠不足や不眠になると、生活習慣病の危険性が高まることが分かっています。また、肥満になるリスクが1.98倍、うつなどの精神疾患にかかるリスクも4倍高くなるというデータがあります。特に子供は5~11歳までの睡眠時間が少ないと21~27年後の32歳に肥満になるリスクが高くなり、親の遺伝よりも強く影響を及ぼすので注意が必要です。逆に、不眠が続いている場合は、すでに疾患を患っている可能性もあります。最近は、睡眠クリニックも多くあるので、寝不足などの悩みを抱えたときは、受診をおすすめします。
▼眠りやすくするための工夫
➊昼間に日光を浴びる
日中に高照度の光を浴びておくと、夜、暗いところでメラトニンというホルモンが分泌され、その影響によって眠気を感じやすくなります。そのため、日中は無理のない範囲で日の当たるところに出ていただくことで、夜の眠りやすさにつながります。通勤や通学、買い物、ランチなどで日を浴びるだけでも効果があると思います。
➋夕食はなるべく早い時刻にすませる
食事の直後は眠りにくいため、夕食が遅いと寝る時刻が遅くなります。量にもよりますが、夕食は早めの時刻に、就寝の3~4時間前にはすませておくのが良いでしょう。また、コーヒーをはじめ、カフェインを含むものの摂取は、夕方以降できるだけ避けていただくことも効果があると思います。
➌就寝の1~2時間前にぬるま湯に浸かる
深い眠りに入りやすく、長くするためには寝る1時間程度前にぬるま湯での入浴で体温を上げておくことが効果的です。熱いお風呂が好きな方はもう少し前に入っていただくのが良いと思います。ただ、もちろん個人差がありますので、様々な温度や時間を試していただいて、ご自身にあったタイミングに調整していただければと思います。
➍就寝時は衣類を着込まない
就寝時に服を着込む人もいますが、汗が蒸発できない状態は寝苦しさの原因となり、良質な睡眠を妨げてしまいます。就寝時着用する衣類は下着を含めても3枚程度が望ましいです。もし、寝ている間に汗をかいて寝苦しくなったときは、一度着替えてからエアコンを使用すると良いでしょう。また、お子さんの場合は、自分で衣服を着替えたりすることができないので、頭や首、背中が汗ばんでいるようであれば着替えさせてあげてください。
❺布団の中で、「眠る」以外のことはしない
寝る直前までスマートフォンを見ていると、睡眠が妨げられることは知られています。また、布団に入ってから悩んだり考えこんだりすると、寝つきが悪くなってしまいます。布団の中では、「眠る」ことを最優先するようにしましょう。もし、寝付けそうな気配がないときは、そのまま無理に眠ろうとせず、一度布団から出て、自然に眠気がくるのを待ってみるのがいいと思います。
- 睡眠指数とは?
「睡眠指数」は、 2018年12月1日より、tenki.jpで公開している指数です。
東北福祉大学の水野一枝先生と共同開発したコンテンツで、良い眠りで疲れをとるために、暖候期と寒候期の季節に応じた寝室環境づくりの啓発を目的としています。
※画像はイメージです。tenki.jpでは、日々の睡眠指数を公開しています。
▼最新の睡眠指数はこちらから
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