大学発ベンチャー、イノフィス社とマッスルスーツを用いたリハビリ法を共同実証しました
~コロナ禍でのADL低下と理学・作業療法士不足の懸念に対する打ち手として~
介護施設等を運営する株式会社メグラス(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:飛田拓哉、以下「メグラス」)は、株式会社イノフィス(本社:東京都新宿区、代表取締役:折原 大吾、以下「イノフィス」)と、イノフィス社の「マッスルスーツEvery」を活用した介護施設内でのリハビリテーション方法に関する共同実証を行いました。
コロナ禍の介護施設では、行動制限からのADL(日常生活動作)低下が課題となる中、将来的には理学・作業療法士のリソース不足も懸念される介護業界においては、入居者様のリハビリテーションをいかに自動化・仕組み化していくかが重要です。メグラスでは、そうした課題に対する新たな試みとして、「マッスルスーツEvery」を活用したリハビリテーションの実証評価に乗り出しました。
「マッスルスーツEvery」は、本来は作業員の腰への負担軽減のために開発されたものでしたが、負荷を軽減するための機能である「空気圧」をトレーニングの負荷として逆手に活用したリハビリテーションをメグラスにて実証評価いたしました。入居者様4名が行った評価では、ADL指標の一つである安定した自立歩行につながる「連続腿上げ回数」にて、4名の平均伸び率が380%を記録し、明らかな改善が見られました。その他の指標を用いた評価でも数値の向上が見られ、「マッスルスーツEvery」のリハビリテーションツールとしての効能を見出すことができました。
本共同実証を通して、「マッスルスーツEvery」の新たな可能性を探るとともに、介護業界のリハビリテーションにおける新たな兆しとなることを期待します。
【コロナ禍の介護施設における、大幅な活動制限】
新型コロナウイルス感染症の拡大により、メグラスが運営する介護施設内でも外出禁止や面会制限、マッサージなど訪問系のサービスの停止が余儀なくされ、入居者様の活動範囲が大幅に限られました。
広島大学が2020年に実施した研究による(※1)と、調査対象である入所系医療・介護施設のうち 32.5%が新型コロナウイルス感染症によって運営状況に大きな変化があったと回答しており、ほぼ全ての施設が入所者の日常的な活動に制限が生じたと回答しました(調査対象:入所系医療・介護施設 945 施設および介護支援専門員 751 名)。また、感染拡大下における認知症者への影響の有無について尋ねたところ、行動心理症状の出現・悪化、認知機能の低下、身体活動量の低下、ADLの低下等が挙げられたといいます。
メグラスが運営する介護施設内においてもADL低下事例が多く見られ、リハビリテーションの重要性を改めて実感させられるきっかけとなりました。
※1:広島大学「【研究成果】新型コロナウイルス感染症の拡大により、認知症の人の症状悪化と家族の介護負担増の実態が明らかに ~ 全国945施設・介護支援専門員751人のオンライン調査結果 ~/ https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/59484」(2020年8月4日)
【高まる介護需要に対する、理学・作業療法士不足への懸念】
介護施設において、入居者様のADL向上にむけたリハビリテーションを行うのは、主に理学療法士・作業療法士です。
厚生労働省が2019年に発表したデータによる(※2)と、介護施設における理学療法士・作業療法士の需要数は、2018年と比較して2025年に約1.25倍、2040年には約1.52倍となることが見込まれています。理学療法士・作業療法士の有資格者総数は増加傾向にあるものの、介護施設に従事する理学療法士は有資格者全体の8%(※3)、作業療法士は有資格者全体の17%(※4)にとどまっています。従って、今後の介護サービス受給者の急激な増加に対して、理学療法士・作業療法士の介護業界への人材流動を伴わなければ、介護現場において理学療法士・作業療法士のリソース不足によりリハビリテーションが満足に実施出来ないことが懸念され、その結果入居者様のADL低下に繋がってしまいます。したがって、これからの介護施設においては、入居者様のリハビリテーションをいかに自動化・仕組み化していくかが重要となります。
※2: 厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について/https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000499144.pdf」(2019年4月5日)
※3:公益社団法人日本理学療法士協会「国民の皆さま向けサイト/https://www.japanpt.or.jp/activity/data/」(2021年3月)
※4:日本作業療法士協会誌 第102号「2019 年度 日本作業療法士協会会員統計資料/https://www.jaot.or.jp/files/page/jimukyoku/kaiintoukei2019.pdf」(2020年9月)
【新たな打ち手として、マッスルスーツでの実証評価を開始】
そこでメグラスは、東京理科大学発のベンチャー企業であるイノフィス社と連携し、イノフィス社が手がけるマッスルスーツを活用することでより手軽で効果的なリハビリテーションを実現できないか実証評価を開始することといたしました。
マッスルスーツは、アシストスーツ(運動を助けたり、身体への負荷を軽減したりするための着用装置)の一種です。実証当初は、高齢者のリハビリテーション用モデルである「マッスルスーツ機能訓練モデル」を導入する予定でした。「マッスルスーツ機能訓練モデル」は、コンプレッサから供給される空気によって身体の動きを能動的にアシストする、自立度の低い方向けのモデルです。
一方で、メグラスが運営する介護施設においては自立度の高い入居者様が多くを占めることから、「マッスルスーツ機能訓練モデル」ではなく「マッスルスーツEvery」を導入することにしました。「マッスルスーツEvery」は、介護や農業、製造業等の現場にて、作業者の腰への負担軽減のために開発されたモデルです。そのため、身体の動きを能動的にアシストするのではなく、装着者の動きにあくまで自然に追随する仕様となっています。メグラスは、「マッスルスーツEvery」が重いものを持ち上げるために本来発動する空気圧をトレーニングの負荷として逆手に活用することで、効果的なリハビリテーションを行うことが出来るのではないかと考えました。また、「マッスルスーツEvery」であれば注入する空気圧によって自由に負荷を調節することも出来ます。
さらに、「マッスルスーツ機能訓練モデル」と比べて、「マッスルスーツEvery」はコンプレッサが無い分着脱しやすかったことから、理学療法士・作業療法士が不在であっても介護士だけでより簡便にリハビリテーションが実施出来ることが分かりました。こうした、理学療法士・作業療法士を介さずともリハビリテーションが実施できる環境の構築を目指し、「マッスルスーツEvery」を用いたリハビリテーション方法についてイノフィス社と共同実証を行うことになりました。本来、作業員向けのモデルである「マッスルスーツEvery」を高齢者のリハビリテーションに活用するという試みは、イノフィス社としても初めてのことです。
【実証評価の結果、対象4名全員の下肢機能が向上】
21年7月から11月にかけて、メグラスが運営する介護施設の入居者様4名に対して、「マッスルスーツEvery」を用いたリハビリテーションの実証評価を行いました。その結果、4名全員に明らかな筋力アップと下股機能の向上が見られました。
「マッスルスーツEvery」を活用したリハビリテーションとしては、主にスクワットと腿上げを行いましたが、スクワットではお尻と太ももを中心に下半身全体(大腿四頭筋やハムストリング)を鍛えることができ、それによって立ち座りが安定します。また、腿上げでは太もも付け根の腸腰筋と太もも前側の大腿四頭筋、お尻の臀筋を鍛えることができ、それによって歩行動作の安定、バランス力の向上、転倒の予防が期待できます。これらの筋肉が強化されたことで、下股機能が向上したと考えられます。
以下のグラフは、各評価方法における結果データの平均値を表したものです。「SS5(立ち座りを5回繰り返し、それにかかる時間を測定する検査)」と「TUG(椅子から立ち上がる→3m先のコーンで旋回する→戻ってきて再度椅子に座るのにかかる時間を測定する検査)」ではリハビリテーション実施前に比べ時間の短縮が、「開眼片脚立位(目を開けた状態で片脚立ちで姿勢を保ち、持続できる時間を測定する検査)」ではリハビリテーション実施前に比べ時間の延長が、「連続スクワット回数」「連続腿上げ回数」ではリハビリテーション実施前に比べ回数の増加がみられ、全評価方法にて運動能力の向上に関する効果が現れたことが分かります。
評価の詳細に関しては、以下のリンクからご覧ください。
評価方法と結果データ(https://prtimes.jp/a/?f=d78454-20220201-061a6956e78b30097116f6a4971cc4af.pdf)
【手軽で効果的な、新リハビリ法としての提案】
今回の実証評価を通して、対象である入居者様全員の下股機能向上が出来たことに加え、以下のような成果がみられました。
- 身体機能が徐々に改善することによる、生活に対するモチベーションの向上
- 評価の結果データを意識し記憶しようとすることによる、認知機能の向上
- 運動をすることによる、不眠の改善
本共同実証を通して、メグラスとイノフィス社は、作業員向けの「マッスルスーツEvery」をリハビリテーションに活用するという新たな可能性を見出すことができ、イノフィス社においては本結果を今後の適用範囲の拡大に生かしていくこととなります。理学療法士・作業療法士がいない介護施設に在籍する介護士や、在宅介護をされているご家族様にとって、手軽で効果的なリハビリテーションを実践した本事例が参考となることを期待します。
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