サプライチェーン間のデータ連携による食品ロス削減に関する実証実験を開始
~ID-POSを活用した需要予測と食品流通上の製造・卸・小売間でのデータ連携で売り上げ向上と食品ロス削減の両立を目指す~
2024年1月22日
今村商事株式会社(以下「今村商事」)、株式会社日本総合研究所(以下「日本総研」)、株式会社スーパー細川(以下「スーパー細川」)、株式会社九州シジシー(以下「九州シジシー」)、旭食品株式会社(以下「旭食品」)、九一庵食品協業組合(以下「九一庵」)、フジミツ株式会社(以下「フジミツ」)は、ID-POSを起点とした需要予測の結果を食品流通上の製造・卸・小売間で連携することによって、食品ロス対策およびサプライチェーンの効率化、そして各社の売り上げ向上への効果を検証する実証実験(以下「本実証実験」)を行います。
本実証実験では、顧客情報を含むID-POSデータを用いた需要予測を行うことによって、小売業・卸売業の発注精度がどの程度向上するのかを検証します。加えて、需要予測データを製造業と連携させることで、過剰生産を抑止するための生産計画の可能性についての検証も行います。
本実証実験は、経済産業省委託事業「令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化及び食品ロス削減の事例創出」(注1)に採択され、2024年1月22日(月)から2024年2月23日(金)まで、大分県・福岡県内で実施します。
■背景
国内で年間523万トン(2021年度)が発生している食品ロスのうち、企業などが排出する事業系の食品ロスは半数以上の279万トンに上ります(注2)。2015年度以降、減少を続けてきた事業系の食品ロス量は2021年度になって微増に転じており、2030年にSDGsを達成させるには食品ロス量を削減させる一層の施策が必要となっています。
事業系の食品ロス発生の主な要因の一つに挙げられるのは、サプライチェーンの最下流である最終顧客と直接接点を持つ小売業者において、正確な需要予測が出来ていないことです。需要予測システムを導入していない中小の小売業者では、担当者の経験による属人的な運用に頼らざるを得ないことが多く、また、商品の動きのみを捉えるPOSデータを利用した既存の需要予測システムの予測精度には限界があるのも事実です。
そして、流通データを製造・卸・小売にわたるサプライチェーン全体で共有していないことも、事業系の食品ロスが発生している大きな要因の一つとなっています。例えば、製造業者は、卸売業者を経由して小売業者に納品された製品の在庫状況や次回の受注計画を知らされていません。そのため、機会ロスを恐れて安全在庫を多めに見積もることになり、本来の需要以上の過剰生産を行い、過剰在庫を引き起こしてしまうことが多いのが実態です。
過剰生産を削減できれば、製造業者の在庫削減も実現し、小売業者にはより新鮮かつ賞味期限の長い製品が納品されます。小売業者は賞味期限の近い製品に対する値引きといった販促活動を抑えられるなど、過剰生産の削減はサプライチェーン全体にとって大きなメリットがあります。
■本実証実験の要点と期待する効果
本実証実験は、最終顧客の本来の需要を高い精度で予測し、その結果を製造・卸・小売間でデータ連携を行うことで、サプライチェーンの上流からも早期に見えるようにする仕組みの構築を目指して実施するものです。賞味期限が短く、食品ロスの発生が生じやすいとされている和日配(豆腐・練り物など)を対象として行う本実証実験の要点および期待する効果は、以下の3点です。
①ID-POSを活用した需要予測による卸売業・小売業の発注精度向上
本実証実験の需要予測では、小売業者が保有するID-POSを活用します。ID-POSでは、「何が・いつ・どこで買われたか」という商品についてのPOSデータに、購買履歴を含めた顧客情報を紐づけることが可能です。このID-POSデータを活用すれば、例えば、「商品Xは商品Yと一緒に買う人が多い」といったことまで分かるため、商品Xの需要予測に商品Yの購買データを活用することも可能となり、発注精度の向上を図ることが期待できます。
本実証実験では、ID-POSデータを活用してサプライチェーンの中心のポジションである卸売業が需要予測を行い、卸売業者・小売業者の発注業務に役立てます。本実証実験前後における発注・在庫数や廃棄率、粗利などの増減を検証するとともに、需要予測の効果的な活用ポイントや導入課題などについて整理します。
②需要予測のサプライチェーン間での早期共有と生産計画の精度向上
本実証実験では、卸売業者が保有するID-POSを用いた需要予測データをサプライチェーン間で共有することによる、過剰在庫の抑止効果や生産計画の精度向上の可能性についても検証します。また、製造・卸・小売それぞれのシステムをつなぐ方法や商習慣の在り方などについても検証します。
また、製造業者での納品リードタイムを緩和することで、見込みではなく実際の発注量に近しい量の生産を行うことによる、過剰生産の削減についての検証も行います。現在の商慣習では、適正な発注量を把握することが難しい、納品日の前日にも発注を受けており、精度の低い見込み生産の温床となっています。本実証実験では、対象製品の一部について、需要予測に基づいた発注量を、納品日の2日前に製造業者に共有します。
なお、本実証実験では実際の発注データの連携を行いますが、それによる生産量の変更は行わず、机上データで可能性を検証します。
■本実証実験の具体的な流れ
まず小売業者であるスーパー細川のポイントカードからID-POSデータを取得し、卸売業者である九州シジシーおよび旭食品に共有します。次に卸売業者は共有されたID-POSデータを基に需要予測を行います。その後、卸売業者から製造業者である九一庵およびフジミツ、そしてスーパー細川へ需要予測データの共有を行います。スーパー細川では受け取った需要予測データを基に発注量を決定し、卸売業者・製造業者に共有を行います。
■実施概要
実施場所: スーパー細川全3店(大分県・福岡県)
実施期間: 2024年1月22日(月)~2024年2月23日(金) 計33日間
■各社役割分担
<小売業者>
スーパー細川(本社: 大分県中津市、代表取締役: 細川唯)
・ID-POSデータの取得及び各社への共有、需要予測結果を基にした製品発注
<卸売業者>
九州シジシー(本社: 福岡県福岡市、代表取締役: 杉村哲)
旭食品(本社: 高知県南国市、代表取締役: 竹内孝久)
・ID-POSデータを用いた需要予測、各社への需要予測結果の共有
<製造業者>
九一庵(本社: 宮崎県日向市、代表取締役: 高木大)
フジミツ(本社: 山口県長門市、代表取締役: 藤田雅史)
・需要予測結果を基にした生産計画の立案
<プロジェクト管理・システム開発等>
今村商事(本社: 東京都港区、代表取締役社長: 今村修一郎)
・本実証実験のシステム設計と運用設計支援
日本総研(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教)
・本実証実験の全体設計・推進・効果検証
■今後の予定
本実証実験の成果については、後日発表する予定です。
各参画企業は、本実証実験の結果を検証した上で、サプライチェーンの効率化および食品ロス削減に役立つサービスの開発と社会実装に向けた活動を推進します。
(注1)令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化及び食品ロス削減の事例創出
IoT技術やデータの活用によって、店舗運営やサプライチェーンを効率化させながら生産性の向上を図るとともに、新たな付加価値を創出していくことが、社会的な役割の大きい流通・物流業の持続可能な成長にとって重要となってきています。そうした中、本事業は、IoT技術やデータを活用することで、サプライチェーン全体の効率化や社会課題である食品ロス削減に資する事例を創出することを目的として行われます。
本事業を経済産業省より受託している日本総研は、本事業において食品製造業、小売業やその他協力企業各社とともに、上記背景および目的に基づき、ID-POSを活用した需要予測とデータ連携による食品ロス削減を目指します。
(注2)日本の食品ロスの状況(2021年度)
https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/230609.html
※「最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに」(農林水産省プレスリリース/2023年6月9日)より
■本件に関するお問い合わせ先
今村商事株式会社 林 Tel 080-3314-6063
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