【イベントレポート】スポーツエコシステム推進協議会 設立記念イベント
2022年4月19日(火)、スポーツエコシステム推進協議会の設立記念イベントを開催。
同協議会は、DX時代におけるスポーツ産業の振興と収入源の多様化および資金循環の拡大に寄与するため、 2022年1月31日に設立。スポーツ産業を起点として、教育や福祉、 地域振興などの社会課題を解決し、 新たなエコシステムの形成を図ることを目的としている。現在、理事企業が41社、一般会員企業が18社あり、毎月会員社数が10社ほど増えている。
日本のスポーツは、すでに海外のスポーツベッティングの対象となっており、総額は5~6兆円規模となっている。現在、この金額は日本へ循環していない。スポーツコンテンツやデータが、無料で海外に流出している現状がある。この状況の対策を考え、どのように海外からの資金循環を実現していくのかを官民で連携し、検討していくべきだと同協会は考えている。
続いて、自由民主党 スポーツ立国調査会 スポーツビジネス小委員長 片山さつき参院議員による挨拶があった。
経済産業省商務 サービス審議官 畠山陽二郎氏からは、スポーツDXへの期待が語られた。
本イベントでは、3つのトークセッションがおこなわれた。1つ目のトークセッションが「グローバルで進むスポーツDXのメガトレンド」。
はじめに、浅野氏からスポーツDXに関する状況が説明された。
続いて、海外から見たスポーツDXのメガトレンドについて佐藤氏が語り、セッションがはじまった。
もう1つのメガトレンドが、スポーツベッティングです。私はアメリカに住んでいるので、スポーツベッティングの拡大を目にしてきました。多くの州で合法化されています。今年に入り、ニューヨークでも合法化されました。これからは日常生活の中に、スポーツベッティングが入り込んでくると思います。
佐藤氏:私の周囲では、合法の州にまで行き、スポーツベッティングしている方もいます。州によっては、オンラインベッティングが合法化されていて手軽です。否が応でも、若者に普及していくだろうなと感じます。
丹羽氏:太田さんは、アスリートに近い立場から日本のスポーツ業界をどのように変えていけばいいと思いますか?
丹羽氏:スポーツ業界では、エコシステムとしてお金が回っているわけではなく、寄付をする、応援するといった一方向な話が多い気がします。どの程度、エコシステムの考え方がスポーツ業界や団体に認識されているのでしょうか?
太田氏:認識されていないと思います。誰かの我慢で成り立っているのが現状です。多くの競技団体で理事は無給ですし、学校の先生も部活動で休日に活動しています。サステナブルでないので、この現状はよくありません。
本来得られるはずだった対価をしっかりと支払っていくために、どこがネックになっているのかをしっかりと考える必要があります。
浅野氏:「我慢こそ美徳」といった意見も出てくると思いますが、議論が進んでいけばと考えています。佐藤さんと太田さんが考えるメガトレンドの中で、この考えを日本に届けたいというものはありますか?
佐藤氏:アスリートがビジネスへ積極的に参画しています。現役のスター選手がビジネスに投資したり、自分でビジネスを立ち上げたりしています。選手自身が大きなプラットフォームです。発信力も非常にあるので、若い人たちが見習って、自分たちでも新しいビジネスを創出していく。このような意識の循環がおこなわれている気がします。
太田氏:グローバルで発信力のあるアスリートと、どれだけコネクションが持てるか。これが大事です。日本のスポーツは「国内にいる、そのスポーツのファン」といった限られた層に向けられています。市場規模を考えると、グローバルに向けてグランドデザインから考えたほうがいいと思います。
丹羽氏:ここからトピックを切り替えたいと思います。スポーツベッティングのポテンシャルについてどのように考えているか、浅野さんからお聞かせください。
浅野氏:いろいろな動機でスポーツを見る人が増えると思います。チームや選手について、深く考えるようになるのではないでしょうか。ベッティングを通じて、スポーツに対する見かた自体が変わっていくと思います。
佐藤氏:そうだと思います。お客さんがドキドキ、ハラハラして見られるようになる。エンゲージメントの1つです。
太田氏:ベッティングには、大きな可能性があります。ベッティングがないと「プレーのクオリティ」だけに目が行きます。そうすると、世界最高のリーグやチームばかり見られます。でもベッティングがあれば、プレーのクオリティだけに依存しません。これは重要なポイントです。さらにベッティングによって資金が循環すれば、選手を獲得してチームが強くなっていきます。
浅野氏:日本ではスポーツベッティングは禁止されていますが、すでに日本のスポーツは海外でベッティングの対象になっています。正当な対価をどう得ていくのか、大きな設計のもとで考えなければいけません。
太田氏:当然、スポーツベッティングにも起こりうる問題点があります。そこをしっかり考え、良いところと悪いところを出していく必要があると思います。
本イベント2つ目のトークセッションは「地域とスポーツの未来」。モデレーターの木村氏による進行でセッションがスタートした。
木村氏:スポーツが大きな役割を果たしていることは、皆さんもご理解されていると思います。いまの話の中にもありましたが「地域におけるスポーツの課題」について、加藤様からお話しいただけますか。
加藤氏:スポーツの実施率をどのように上げていくかは、大きな課題です。神戸市の場合は実施率が低く、その中でも30代・40代といった働き盛りの方々の実施率が低いです。これをどう上げるかが課題になります。もう1つの課題が施設です。1970年代・80年代くらいの高度成長期に作られた施設が多いので、古くなってきています。改修するにもお金がかかるといった課題があります。
菊地氏:われわれがお預かりしているスタジアムも竣工から20年経っています。素晴らしいスタジアムではあるものの、老朽化が進んでいる状況です。うまくDXを活用してクラブ収益を上げることで、スタジアム改修にもチャレンジしたいと思っています。
今井氏:地域といっても大きなところもあれば、小さなところもあります。それぞれの地域に合った形でスポーツ振興を進めるときに、ポイントになると思っていることがあります。それは、自治体の首長がスポーツに対して熱い思いがあり、理解があることです。これがあると、一気にスポーツを軸にしたまちづくりが進むという例をいくつも見てきました。
首長の皆様にスポーツが持つ力をしっかりお伝えしながら、国としてどのような支援ができるかメッセージを出していきたいと考えています。
木村氏:地域とスポーツが発展していくために、DXがキーワードになります。実際に取り組まれているヴィッセル神戸さんの事例や施策について、菊地様、お話しいただけますでしょうか。
菊地氏:ヴィッセル神戸のホームスタジアムは、完全キャッシュレスで現金が使えない状況ですし、チケットレスも推進しています。地元の企業や大学と連携して、スタジアムの混雑緩和に関する実証実験もおこなっています。コロナ禍でお客さんをスタジアムに入れられなかったので、オンライン交流会をおこなったりしました。スタジアムやクラブのリソースを使ってもらって、地域の発展に役立てればと思っています。
本イベント最後のトークセッションは「スポーツリーグと新しいエコシステムの可能性」。久保田氏の進行でセッションがスタートした。
2つ目は視聴です。地上波放送が減っている中で、配信などの新しい視聴スタイルが進んでいます。3つ目がファンエンゲージメントです。デジタルを活用することで、日常から接点を作れると考えています。
4つ目が地域に根づいた活動です。スポーツを通じて地域の方々に元気になってもらいたいと考えています。5つ目は普及・育成です。部活動の地域移行のような取り組みなどです。こうしたエコシステムをより大きくしていくためには、コンテンツパワーとアリーナとスポーツDXが重要になります。
久保田氏:すでにB.LEAGUEはいろいろな取り組みをされていますが、今後何をしようと考えているのでしょうか?
佐野氏:アリーナ自体のDXをクラブチームが中心となり、地域の方々と進めていくと思います。お客さまがアリーナに来場する前から、いかに利便性高くできるかが大事です。また試合後のことも考えなければなりません。試合が終わると皆さん同時に帰るので、駅に行くまでにものすごく時間がかかってしまいます。
海外のスタジアムでは、出口までにかかる時間を席ごとに伝えて、ワンドリンクのクーポンを配布しています。レストランで時間を過ごしてもらって、混雑が解消されたら連絡するサービスがあるんです。こうすれば、試合が終わってからもスタジアムやアリーナを楽しんでもらえます。
久保田氏:ありがとうございます。続いて岡島さんにうかがいます。日本女子プロサッカーリーグは、2020年にスタートした新しいリーグです。企業との連携をどう進めていこうと考えていますか?
久保田氏:岡島さんは本日、アメリカからご参加いただいています。アメリカでのスポーツベッティングやファンタジースポーツの盛り上がりについては、どう感じていますか?
岡島氏:私には25歳の息子がいまして、ファンタジースポーツをやっています。5-10ドルくらいの少額でも十分楽しめるそうです。高校や大学の友達の7割くらいがスポーツベッティングやファンタジースポーツをやっていると聞きました。これらによって、自分が好きなチーム以外の試合も真剣に見るようになったそうです。手軽に少額からできるので、日本でも人気が出るのではないでしょうか。
久保田氏:早川さんが代表を務める琉球アスティーダでは、プロスポーツクラブとして日本で初めて上場をしたり、バルの運営をしたり、さまざまな企業との連携をされています。早川さんの中でスポーツクラブやスポーツを中心としたエコシステムづくりについて、どうお考えでしょうか?
早川氏:いままでのスポーツチームの収益体系は、チケット、ファンクラブ、スポンサーによって支えられていました。しかし、私たちはスポーツというのはマーケティングツールとして有用であるという結論に達しました。そのため、BtoCを対象にしたマーケティング会社として成長しようと決めました。アスティーダフェスというイベントもおこないました。スポーツ✕観光✕テクノロジー✕食という掛け算思考で、観光閑散期に人が集まる仕組みです。このようなエコシステムとして、資金が循環する取り組みを沖縄でおこなっています。
久保田氏:掛け算思考でいろいろとされていますが、今後取り組もうとされていることはありますか?
早川氏:卓球だけではなく、枠を超えてさまざまなスポーツと協力していきたいと考えています。子どもたちにたくさんのスポーツを体験してもらい、いろいろなプロスポーツ選手を見てもらう。このような、ほかの競技との掛け算思考で進めていきます。スポーツ競技同士で戦うのではなくて、共に生きていくことが重要だと考えています。
来賓挨拶
室伏広治 スポーツ庁長官による挨拶
自由民主党 デジタル社会推進本部 NFT政策検討プロジェクトチーム座長の平将明衆議院議員による挨拶
自由民主党 遠藤利明選挙対策委員長による挨拶
自由民主党 スポーツ立国調査会 スポーツDXプロジェクトチーム座長の牧原秀樹衆院議員による挨拶
自由民主党 スポーツ立国調査会 スポーツビジネス小委員会 スポーツDXプロジェクトチーム事務局長の朝日健太郎参院議員による挨拶
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