【8月25日応募〆切】一般社団法人デサイロ、人文・社会科学分野の研究者向け助成プログラム「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」を開始
研究と社会の新しい接点をつくり、持続的な研究活動をサポート
※みなさまから多く反響をいただいたことから、公募期間を【8月25日】まで延長することとなりました。
立ち上げの背景
現在、「文系学部不要論」などを背景に、人文・社会科学分野のアカデミックポストの減少や、研究活動を取り巻くエコシステム整備に関する課題が指摘されています。
しかし、人文・社会科学分野の研究は「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を読み解くうえでの大きな示唆を与えてくれるはず──。そのような考えのもとで一般社団法人デサイロは設立され、人文・社会科学分野の研究者を支援するアカデミックインキュベーターとして活動を続けてきました。このたび、その活動の一環として「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」を立ち上げます。
関連記事:
・いまこそ「時代」と「社会」に応答する人文・社会科学の研究を──デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム審査委員の目線
https://desilo.substack.com/p/academic-incubator-program-discussion
・「自前の思想」が立ち現れていく学際的な場を目指して──2023年、デサイロの展望
https://desilo.substack.com/p/outlook-for-2023
・「研究」と「社会」をつなぐ“編集者”という触媒──一般社団法人デサイロ設立に寄せて
https://desilo.substack.com/p/established-general-incorporated-association
本プログラムでは、研究と社会の新しい接点づくりにとどまらず、研究者のキャリアデザインの支援にも取り組んでいきます。たとえば、一般社団法人デサイロ理事であり、本プログラムの審査委員も務める独立人類学者の磯野真穂さんは次のように指摘しています。
「アカデミア、特に人文・社会科学の世界は、研究者が大学の常勤職員であることが前提となってデザインされています。常勤職になると生活は安定し、研究費も取りやすくなるけれど、そのトラックに乗れないと生活の基盤自体が不安定になる──ずいぶんな格差社会です。」
企業内研究者としての就職や、別に本業をもちながら研究活動を続ける在野の研究者の方もいらっしゃいますが、常勤職のポスト減少が避けられないなかで、研究活動を続けていくためには、研究と社会の新しい接点をつくり、持続可能に活動を続けていくためのモデル構築が求められていくはずです。
研究者の活動分野において、一般市民向けの講座やファンクラブの開設、企業や行政の有識者リサーチへの参加、学術誌以外への寄稿や執筆など、その特性に応じた社会へのアウトリーチと、それにひもづく収益化の検討と実行を支援していければと考えています。
もちろん、社会へのアウトリーチを支援するプログラムではありますが、「社会への発信活動を主体」としているわけではありません。研究活動の支援が主体であり、その活動の過程で生まれた価値の出力先や社会との接点を、デサイロが支援していければと考えています。
研究を通じて得られた知の社会への還元や、次世代の研究者のキャリアデザインに関心がある皆さまのご応募をお待ちしております。
活動概要
本プログラムでは、総額100万円の研究助成金の給付のみならず、デサイロというプラットフォームを通じて以下の取り組みを予定しています。
1.「De-Silo Publishing」での一般書の刊行
デサイロが活用する情報発信のプラットフォームSubstackを利用し、研究テーマに基づいた連載記事を公開。その発信内容をまとめ、一般書として刊行することで、研究と社会の接続を目指します。
※連載や刊行のタイミングについての期限はありません。研究が深まり、成果として出版したいと希望されたタイミングにて、デサイロ運営メンバーの編集者が刊行をサポートします。
2.研究活動の社会へのアウトリーチ支援
デサイロの運営メンバーにより、研究活動で生まれた知のアウトリーチを支援させていただきます。一般市民向けの講座やファンクラブの開設、企業や行政の有識者リサーチへの参加、学術誌以外への寄稿や執筆など、研究者の特性に応じた知のアウトリーチと、それに伴う収益化のサポートを実施します。
例えば、市民向け講座では、ゲンロンが制作し運営する放送プラットフォーム「シラス」や、人文科学領域の研究者による講座配信を支援する「FILTR」などのサービスが登場しています。また「CAMPFIREコミュニティ」や「note」などを利用して研究・執筆活動のサポーターを集めている研究者の方もいます。研究者の方の特性に応じてこうしたプラットフォームやサービスの活用支援を行います。
3.研究会やイベントへの参加機会の提供
デサイロが運営する、多分野の研究者が集う学際的なプログラムへの参加や、他2名の採択研究者との交流/ディスカッションを通じて、研究テーマを深めていただく機会を提供します。
公募概要
【公募期間】
2023年7月4日(火)〜8月25日(金)
※公募期間を8月18日から【8月25日】まで延長することとなりました。
【募集対象】
・人文・社会科学分野における博士号取得/博士課程単位取得満期退学/博士課程在籍中のいずれかに該当する方
・博士論文の書籍化を除き、商業出版における単著の刊行経験がない方
・デサイロの活動理念に共感いただける方
※大学への所属の有無は問いません
【募集人数】
3名
※選考結果に関わらず、今後のデサイロとして人文社会科学の振興活動を進めていく上で、個別に連絡させていただく可能性があることをご了承ください。
【助成金額】
100万円
※使用用途を研究費のみに限定せず、その3割を生活費に充てることができます。
【募集方法】
こちらの応募フォームに必要事項をご記入ください。
https://forms.gle/CVk6DbbyCT5t1DNm9
【選考方法】
以下の5つの審査基準に沿って、提出いただいた研究テーマ/計画書を審査させていただきます。
1.研究と社会の接続への意欲
研究を社会にひらき、研究内容の発信にとどまらない多様な接点をつくり出そうとする意欲があるかどうか。
2.時代と社会への応答
「いま私たちはどんな時代を生きているか」を読み解く、あるいはこれから社会が直面する課題に対して示唆を与えるような研究テーマが設定されているか。
3.研究における新規性
学問の基盤に立ちながらも、該当研究分野の知見がこれまで応用されていなかった領域に生かされているか。また、研究が発展することで多様な社会との接点が生まれそうか。
4.研究方法/計画の妥当性
研究目的を達成するために、研究方法は具体的かつ適切であるか。また、研究計画は具体的かつ遂行可能なものとして設定されているか。
5.他の学問領域への波及可能性
そのテーマ/研究課題は、該当研究分野のみならず、他の学問分野とのコラボレーションや分野横断性、将来的に学際的な取り組みが可能になるものか。
【選考委員】
本プログラムでは6名の審査員により、提出いただいた研究テーマ/計画書を審査させていただきます。
安斎勇樹(株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO/東京大学大学院情報学環特任助教)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学大学院 情報学環 特任助教
東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。博士号取得後、株式会社ミミクリデザイン創業。その後、株式会社DONGURIと経営統合し、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOに就任。経営と研究を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』、『パラドックス思考:矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。
富永京子(社会学者/立命館大学産業社会学部准教授/シノドス国際社会動向研究所理事)
立命館大学産業社会学部 准教授/シノドス国際社会動向研究所 理事
1986年、北海道札幌市出身。2009年、北海道大学経済学部を卒業。2015年、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、現職。専門は社会運動論。社会学的視角から、人々の生活における政治的側面、社会運動・政治活動の文化的側面を捉える。著書に『社会運動のサブカルチャー化』(せりか書房)、『社会運動と若者』(ナカニシヤ出版)、『みんなの「わがまま」入門』(左右社)など。朝日新聞、北海道新聞でも連載中。
安田洋祐(経済学者/大阪大学大学院経済学研究科教授/Economics Design Inc.共同創業者)
大阪大学大学院経済学研究科教授/エコノミクスデザイン共同創業者
1980年東京都生まれ。2002年東京大学卒業。米国プリンストン大学へ留学して07年Ph.D.(経済学)取得。政策研究大学院大学助教授、大阪大学准教授を経て、22年7月より現職。専門はゲーム理論、マーケットデザイン、産業組織論。20年6月に株式会社エコノミクスデザインを共同で創業し、コンサルタント業務やオンライン教育サービス「ナイトスクール」を運営する。主な著書に『「2030年日本」のストーリー』(共著)、『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(編著)、『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』(共著)、『オークション・デザイン ものの値段はこう決める』(監修)など。
磯野真穂(独立人類学者/デサイロ理事)
人類学者。デサイロ理事。専門は文化人類学・医療人類学。博士(文学)。早稲田大学文化構想学部助教、国際医療福祉大学大学院准教授を経て2020年より独立。身体と社会の繋がりを考えるメディア「からだのシューレ」にてワークショップ、読書会、新しい学びの可能性を探るメディア「FILTR」にて人類学のオンライン講座を開講。著書に『他者と生きるーリスク・病い・死をめぐる人類学』(集英社新書)『なぜふつうに食べられないのか――拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界――「いのちの守り人」の人類学』(ちくま新書)、『ダイエット幻想――やせること、愛されること』(ちくまプリマ―新書)、宮野真生子との共著に『急に具合が悪くなる』(晶文社)などがある。(オフィシャルサイト:www.mahoisono.com )
久能祐子(フィランソロピスト/社会起業家/デサイロ理事)
社会起業家、フィランソロピスト。京都大学工学部で学部、修士、博士課程を修了。1982年に京都大学工学博士を取得する。バイオベンチャーの共同創業者兼CEO等として、日米で研究開発、会社経営を経験。これらの事業を通して、1994年に世界初のプロストン系緑内障治療薬を商品化に成功。その後、2006年には慢性特発性便秘症及び過敏性腸症候群治療薬-クロライドチャネルオープナーの商品化にも成功した。2012年には、新型ワクチン開発を目指すVLPセラピューティクスを、2014年には、滞在型社会起業家インキュベーターHalcyonを、2017年には、滞在型企業内起業家支援インキュベーター、フェニクシーを共同創業した。現在は、ワシントンDCで社会起業家、フィランソロピストとして活動している。京都大学理事(2022年9月30日まで)のほか、ジョンズホプキンス大学医学領域評議員、ヘンリー・L・スティムソンセンター理事、お茶の水女子大学、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の評議員も務める。
岡田弘太郎(編集者/デサイロ代表理事)
編集者。一般社団法人デサイロ代表理事。『WIRED』日本版エディター。クリエイティブ集団「PARTY」パートナー。スタートアップを中心とした複数の企業の編集パートナー。アーティストのマネジメント等も担当。研究者やアーティスト、クリエイター、起業家などの新しい価値をつくる人々と社会をつなげるための発信支援や、資金調達のモデル構築に取り組む。1994年東京生まれ。慶應義塾大学にてサービスデザインを専攻。Twitter: @ktrokd
【関連記事】
これまで研究と社会の接続に取り組んできた審査委員6名の目線から、今回のプログラム設立の背景について議論した記事も公開中です。募集を検討中の方は、下記のリンクよりぜひご一読ください。
https://desilo.substack.com/p/academic-incubator-program-discussion
【プロジェクトタイムライン】
・2023年7月4日〜8月18日 公募期間
・2023年9月下旬 採択者のみなさまへのご連絡
・2023年10月中旬 採択者の発表
・2023年10月〜2024年9月 プログラム実施期間
・2024年下旬以降 「De-Silo Publishing」での一般書刊行
※プロジェクト開始後のタイムラインは仮のものです。スケジュールの都合で前後する可能性があります。
一般社団法人デサイロ(De-Silo)について
一般社団法人デサイロ(De-Silo)は、人文・社会科学領域の研究者を支援するアカデミックインキュベーターです。 「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を研究者とともに探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を行います。財団、出版、コミュニティという3つの機能を通じて、研究資金の提供や、その知を社会に届けるサポートをしています。
■ Substack
■ Discord
https://www.instagram.com/desilo_jp/
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De-Silo事務局
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