核融合スタートアップの株式会社MiRESSOが、シードラウンドにて2.5億円の資金調達を実施
ベリリウムのパイロットプラント実証と事業提携を加速
“鉱物資源の安定供給を通じた核融合の社会実装への貢献”を目指すスタートアップである株式会社MiRESSO(本社:青森県三沢市、代表取締役CEO:中道勝、以下「MiRESSO」(ミレッソ)という)は、ジェネシア・ベンチャーズ(リード投資家)、JGC MIRAI Innovation Fund(日揮みらい投資事業有限責任組合/無限責任組合員:グローバル・ブレイン株式会社)、三井住友海上キャピタル株式会社の3社から合計2.5億円となる初の外部資金調達を実施しました。MiRESSOは、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、「QST」という)認定の核融合スタートアップです。
■ 資金調達の背景と目的
事業背景
核融合炉は、プラズマ状態の重水素とトリチウム(三重水素)を燃料にした核融合エネルギーを電気として取り出す発電システムですが、燃料のトリチウムは天然ではほとんど存在しないため、プラズマの周囲を取り囲むブランケットと呼ばれる機器内で、トリチウムを自己生産させる必要があります。このトリチウムを自己生産するために、核融合中性子を1個から2個に増倍させる中性子増倍材のベリリウム(Be)が、大量に必要になります。
しかしながら、ベリリウムの調達にはいくつかの大きな課題があります。ベリリウムの現状の価格は非常に高価であり、また、生産量としても、現在の世界の総生産量以上のベリリウムが、核融合原型炉1基あたりに必要なため、圧倒的に不足しております。そのため、ベリリウムを安価に安定的に確保することが、建設に向けた設計検討が進められている核融合原型炉を実現するために非常に重要な課題の一つとされております。
MiRESSOの低温精製技術
MiRESSOの代表取締役CEOである中道らは、核融合研究機関であるQSTにおいて、ベリリウムの精製コスト低減を図る研究開発を進め、化学処理とマイクロ波加熱の複合技術による新たな低温精製技術の開発に成功しました(特許出願済み)。
従来のベリリウム精製では、難溶解性であるベリリウム鉱石の溶解工程において、2,000℃の高温熱処理が必要であったことに対し、新たに開発された低温精製技術では、300℃の低温且つ常圧で、ベリリウム鉱石であるベリルを容易に溶解することができ、圧倒的な低コスト・省エネルギーでのベリリウム精製を実現可能です。
MiRESSOはこの技術により、核融合におけるベリリウム調達に関わる課題を解決し、鉱物資源の安定供給を通じて、核融合の社会実装に貢献していきます。
■ 資金調達の目的
1 ベリリウム精製のパイロット実証の加速
MiRESSOは、2023年10月に文部科学省による20億円のSBIR Phase 3補助金(核融合分野)に採択され(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000129969.html)、低温精製技術のスケールアップ実証として、2027年を目標にベリリウム生産能力1ton/年規模のパイロットプラントの建設・実証を進めております。
今回の資金調達によって、上記のパイロットプラント実証を加速化していきます。
2 チーム強化
今後の事業拡大に向け、CXOや事業開発、プラントエンジニア、研究・技術開発等の人材を採用し、チーム体制の強化を図ります。
3 技術プラットフォーム事業の開始
MiRESSOの低温精製技術は高温処理が必要な他のレアメタル・レアアース等の資源・素材の精製プロセスやリサイクルプロセスにも適用可能です。
そのため、MiRESSOの低温精製技術をプラットフォームとして、お客様が取り扱う素材と課題に応じた研究開発を行うとともに、それを実現するためのプロセスの提案、装置の導入、技術ライセンスを行う、技術プラットフォーム事業を本格的に開始していきます。
■ 代表取締役CEO中道勝からのコメント
この度、とても頼もしい投資家の皆様からご出資頂けることになり、大変嬉しく思います。今回調達した資金を基に、パイロットプラントの実証の加速化と、技術プラットフォーム事業を開始してまいります。
弊社は今後、ベリリウム事業に関心がある企業様だけでなく、技術プラットフォーム事業において企業様との提携を拡大していく予定です。また、我々の事業に共感していただき、一緒に取り組んでいただける仲間も募集しておりますので、是非お声がけください。
■ 投資家からのコメント
ジェネシア・ベンチャーズ パートナー 河合 将文氏
エネルギー及び環境問題の抜本的解決に繋がる技術として核融合への期待が高まる一方、ボトルネックの一つと懸念されているのがトリチウム生産に必要なベリリウムの供給制約です。MiRESSOの低温精製技術でこの課題を解決し、核融合の社会実装を加速します。
また、核融合発電の商用化にはまだ時間を要すると思われますが、間もなく始まる実証段階の原型炉建設に向けた核融合炉の素材提供という独自の立ち位置や、ベリリウム以外の鉱物への精製技術の応用など、比較的早期の事業化が見込まれる点もMiRESSOの魅力の一つと考えています。
本事業を通じて、将来の巨大産業で日本が世界をリードし、エネルギー安全保障や戦略物資の安定確保にも繋がることを期待しています。
日揮株式会社 未来戦略室 マネージャー 坂本 惇氏
⽇揮グループは安全・安⼼で持続可能な社会システムの実現に向けて、⾰新的な技術やビジネスモデルを有するスタートアップ企業への投資を⾏っています。当社では、QSTにおいて中道CEO等が長年にわたって研究開発された新たな低温精製技術を⾼く評価し、MiRESSOが目指すベリリウムをはじめたとした鉱物資源の安定供給の実現に大きな期待を寄せています。
今後、⽇揮グループが培ってきた非鉄金属領域などのエンジニアリング技術や各種知⾒を融合させる事で、MiRESSOと共に鉱物資源サプライチェーン構築に寄与する事を目指します。
JGC MIRAI Innovation Fund(日揮みらい投資事業有限責任組合)
無限責任組合員 グローバル・ブレイン株式会社 ディレクター 瓜本 哲也氏
核融合はエネルギー問題と環境問題を解決できるクリーンエネルギーとしてスタートアップ業界でも注目されています。その中でもMiRESSOは特定の核融合炉の方式で必要となる構成部品の材料をコストダウンすることを目指しており、核融合市場に対して稀有なアプローチをしているスタートアップであること、またベリル鉱石とアルカリ試薬の混合物を加熱するプロセスにおいて独自のノウハウを保有していることなどを評価し出資を決定させていただきました。
今後は日揮グループと共に、核融合の社会実装に貢献することを目指すMiRESSOを強力に支援していくと同時に、MiRESSOと共に脱炭素社会の実現を目指していきます。
三井住友海上キャピタル株式会社 プリンシパル 白松 昌之氏
MiRESSOの他にない、鉱物の画期的な低温精製技術に注目し、今回投資いたしました。
安全且つコストとCO₂を大幅に削減するもので、核融合炉向けのみならず、これからのサスティナブルな社会構築に向けて、必要不可欠な技術であると確信しております。
当社としましては、三井住友海上グループを挙げて積極的に支援を行ってまいります。
■ 採用情報
MiRESSOでは、CXOや事業開発、プラントエンジニア、研究・技術開発等の人材採用を積極拡大中で、一緒に働いてくれる仲間を募集しています。下記のURL又はホームページからエントリーしてください。
https://www.wantedly.com/companies/company_2852992/projects
■ 会社概要
法人名 :株式会社MiRESSO
代表者 :代表取締役CEO 中道 勝
所在地 :青森県三沢市
設立日 :2023年5月16日
事業内容:ベリリウムの製造販売事業、及び低温精製技術の技術プラットフォーム事業
なお、MiRESSOは東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(本社:東京都文京区本郷、代表取締役社長 植田浩輔)が運営する国内最大規模を誇る複数大学共催の起業支援プログラム「1stRound」の第9回支援先として採択を受けております。
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