「Mikkeキュレーターズ・コンペ」受賞者発表 / Mikke Galleryではキュレーター沓名美和氏による展覧会「迷宮への介⼊」を10月5日から開催
キュレーターコンペ受賞者は斯波雅子、緑川雄太郎、黄志逍・張瑩、李静文、泉二啓太(敬称略)の5名に決定
Mikke キュレーターズ・コンペティションは、アート/アーティストの魅力を最大化する「キュレーション」という行為にスポットライトを当て、 新進気鋭のキュレーター育成、その先にアーティストが活躍できるフィールド全体の活性化を実現することを目的に、展示を企画するキュレーターを国内外から募集し、受賞者には専門家によるアドバイス、展覧会開催に伴う費用の支援金による継続的なサポートを行います。アカデミックな観点のみならず、社会への影響力や持続可能性を審査基準に設定し、審査員として多様な分野の第一線で活躍する方々をお迎えすることで、新たな角度からキュレーション/アートの価値を照らしだすことを目指しています。
第一回となる本年は「キュレーションとは?」という問いを軸に「実験と拡張」 というテーマで開催し、厳正なる審査のもと、5名の受賞者を決定しました。今後、各受賞者による展覧会を開催予定です。
【受賞者】
斯波 雅子
緑川 雄太郎
黄志逍、張瑩
李 静文
泉二 啓太
【審査員による総評】
沓名美和氏(一般社団法人Open Art Lab代表、現代美術史家、キュレーター、ディレクター)
Mikke キュレーターズ・コンペティションは、時代の中で変化している『キュレーション』という行為にフォーカスし、キュレーションやキュレーターのあり方と意義を考え、社会との接点となる場として始まりました。
実際、世界で活躍されているキュレーターから、普段はキュレーションに関わっていなかい方まで沢山の応募が寄せられたことを喜ばしく思っています。
アートの業界のセオリーに拘泥せず、アートとそれ以外の世界の二軸が融合するコンペはあまり例が無く、貴重な取り組みであり、今後も継続して行きたいと考えています。
今回の賞は主に3つ(1:大賞(2) 2:若手(2) 3:他領域(1))を重視して選ばれています。
応募では私自身見てみたいと思える展示や知らない領域の展示プランを多く出していただき、その中には自身でファンドレージングしてでもやりたいと書いてくださった方もおり、改めてこのような意欲的な言葉に感謝いたします。今回は選考に残らなかったもののなかでも興味深いものが多く、今後に期待していきたいです。
杉山央氏(新領域株式会社ART + TECH プロデューサー)
審査会を終え、改めて『キュレーションとは何か』を問うMikkeキュレーターズ・コンペティションの意義を深く感じています。キュレーションとは、アートを新たな角度から照らし出し、その価値を再解釈する行為であり、同時にアートの可能性を広げる試みでもあると私は考えています。審査会では、熱のこもった議論が展開されました。応募作品の多くが非常に高い水準に達していたことを物語っています。
特に印象的だったのは、テーマの多様性と展示手法における実験的・挑戦的なアプローチです。これまでにない視点や手法を持ち込み、私自身が「観てみたい」と強く思える企画がいくつもありました。既存の枠を超えたアイデアの数々には驚かされ、まるでアートの新しい扉が開かれたような感覚を覚えました。
このコンペティションを通じて、実現に至る展覧会を非常に楽しみにしています。また、惜しくも入選しなかった企画の中にも、多くの素晴らしい提案があったことを強調したいです。第二回、そしてその先に続くさらなるコンペの開催を願うとともに、Mikkeギャラリーが今後もアートの発展に寄与していくことを心より期待しています。
中野信子氏(脳科学者)
キュレーションという用語の定義にはやや揺れがあり、その行為がもたらす帰結や現実的な運用面も含めて評価する新しいコンペティションが日本に誕生したことをまずは喜びたいと思います。その一回目に審査員として関わらせていただき、たいへん光栄なことであると受け止めています。短い告知期間でしたが多くの方が応募くださり、またそれぞれに練られた質の高い内容で、その中から限られた方々を選ばなければならないのは非常に難しい決断でもありました。今回惜しくも選に漏れてしまった方も次回以降ぜひリベンジしていただきたいと思います。これからの発展がとても楽しみです。
永山祐子氏(建築家)
第一回のコンペ開催にも関わらず、レベルの高い応募が多く驚かされた。今まであまりなかったキュレーターへのコンペという特殊性もあったのではないかと思う。それだけ求められていた賞なのではないかと実感した。今回、応募者のキャリアも提案の内容も多種多様であった点も印象深かった。選ばれた提案の展覧会が今からとても楽しみだ。
福武英明氏(福武財団理事長)
キュレーションに焦点を当てた珍しいコンペと言うだけでなく、タイトな募集期間なども含め、どれだけ関心を持って頂けるかは少し不安な点もあったが、驚くべき反響だった。そして様々なバックグランドの方々から応募があった事や、ユニークな審査員の皆さんの個性もあり、無理を言って受賞枠を1つ増やして頂く事になった。
受賞された皆さんの展覧会を心から楽しみにしているのと、良い意味で我々審査委員を裏切るような、大どんでん返しな表現もちょっと期待しています。
山本浩貴氏(文化研究者)
この度、Mikkeキュレーターズ・コンペティションに審査員として関わることができたことを嬉しく思います。短い募集期間にもかかわらず、たいへん多くの方々がユニークな企画案を提出してくださいました。どの案も完成度が高く魅力的なものでしたが、何よりもその多様性——いわゆるジャンルや、その切り口から世代に至るまで——に驚かされました。審査では多彩な視点を大切にしながらも、それぞれのプランにおいて実験性と現実性(その実現可能性や、あるいは持続可能性)を両立させることができているかを重視しました。両者はしばしば対立するものだと考えられがちですが、けっして両立不可能なものではないと考えます。日本の現代アート界において特異な位置を占める、このユニークなコンペティションが今後も継続されていくことを望みます。
Mikke Gallery展覧会/キュレーター沓名美和氏による展覧会「迷宮への介⼊」開催
この度、Mikke Galleryではこけら落とし企画の第二弾として、キュレーターの沓名美和氏による「迷宮への介⼊」展を開催します。 本展では、「現実に起こった不条理と喪失の記憶」に対して様々なアプローチをとる3名のアーティストおよび一つのプロジェクトを取り上げ、彼らの作品が共存し相互に作用していく様相を展示いたします。
アーティスト
池⽥杏莉
安井鷹之介
Rediscover project
YAO Qingmei
Curator's Statement
沓名美和
喪失はある⽇、⾜⾳もなくやってくる。
幼い頃から形成された価値観やイデオロギー、変わることなどないと思っていた⽇常⽣活や⾒慣れた⾵景が、唐突に齎される出来事によって無惨に変形させられる不条理 を私たちは避けることができない。
ここに展⽰されるのは、現実に起こった不条理と喪失の記憶だ。育ってきた環境も⽂化も背景も異なる 3⼈のアーティストの作品が、ひとつの空間の中で互いに影響し重なり合う様⼦に⽬を凝らしてほしい。
迷宮は不条理に翻弄される⼈々の姿を彫刻や絵画で表現するアーティスト、安井鷹之介の作品から始まる。そこに池⽥杏莉の廃墟的空間が広がっていく。祖⺟の遺品や思い出の品のテクスチャーを収集し、実際のものを覆ってしまう作品はまるで記憶の標本のように切実だ。最後の空間にあるのは Yao qingminの映像作品だ。元解放軍⽂化団員の⼥性ソプラノ歌⼿が愛国歌を歌う映像が流れるが、その彼⼥の歌はどれだけ歌っても途中で必ず遮断され 最初に戻ってしまう。会場をよくみてみると能登半島地震の被災地で割れた九⾕焼や輪島塗、珠洲焼などを収集し企画するRediscover project から⼀部作品が紹介されている。
彼らが⾒つめる不条理や喪失、後悔は果たして私たちにとってメディアの向こう側のドラマだろうか。ウクライナの戦争をニュースで⾒ながら、温かな家の中でお茶を飲むような?そのようなものではなく、どうか、この迷宮を歩いてみてほしい。異なる物語が交差するとき、誰もがもっている不条理と喪失の記憶の扉に気がつくはずだから。
Curator
沓名美和 Miwa Kutsuna
現代美術史家、キュレーター、ディレクター。多摩美術大学客員教授、魯迅美術学院現代美術学科教授、清華大学日本研究所訪問学者、一般社団法人 実験芸術研究機構代表理事、REBIRTH ASIA代表、ボアオ文化産業フォーラム日本理事。多摩美術大学、韓国弘益大学大学院卒業。中国清華大学にて博士号を取得。現在は清華大学日本研究所にて東アジア文化芸術の専門家として外交行事にも携わる。2021年富士吉田市「織と気配」キュレーション。2022年上海のPower longMuseumでのキュレーション。2022年から日本の現代美術を紹介する日本テレビの番組『The Art House』で専門家としてレギュラーをおこなっています。中国魯迅美術学院では、中国の美大としては初めて「ものを作らないことに引き込む」というテーマで環境とアートについて講義を行っている。
池田杏莉 Anri Ikeda
1997年、福岡県生まれ。 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
パリ国立高等美術学校に交換留学 。千葉県を拠点に活動。人々に使い古された古着や家具といった物や、
皮膚の型の収集 。また、その物に関する記憶について、インタビューを通して「それぞれのかたりて」をテーマに彫刻や、インスタレーション、パフォーマンスを発表。
使い古されていくにつれて、色褪せ、歪んでいく衣類や家具。
それらは、人々の身体の 癖や匂いといった特徴に寄り添い 、身体性を帯びていく 。また 、皮膚は時間が経つにつれて、剝がれ、少しずつ生え変わり、絶えず 私達の 体内外で、身体を消費させながら、毎日、毎時、毎分と、その都度変化し、誕生と死別を繰り返している 。
池田は、その身体と物との間にできる必然的な関係性と、自身の「身体を喪失する」経験から、喪失した存在と対峙する空間の中で、私達に何を語り、想起、想像をさせるのか、見つめている。
A TOM ART AWARD 2022 ソノアイダ賞 、アーティスト イン レジデンス ソノアイダ 新有楽町に参加 。
安井 鷹之介 Takanosuke Yasui
1993 年 愛知県生まれ。 東京芸術大学彫刻科 卒業
主な個展
2024年「HOE」Roppongi hills A/D GALLERY 東京
2023年「IN THIS DAY AND AGE | 現時代」GalleryA8T 仙台
2022年「漁村の壁画」MAHO KUBOTA GALLERY 東京
2021年「THE PLASTER AGE」MAHO KUBOTA GALLERY 東京
2020年「OK Plastic」MEDEL GALLERY SHU 東京
【常設 壁画】
2023年 "GOLDEN TWILLGHIT | 黎明" 石巻市雄勝町防潮堤 海岸線の美術館
"BIG CATCH | 名振のおめつき" 石巻市雄勝町防潮堤 海岸
"GOLDEN CAVE | 黄金窟" 石巻市立雄勝小中学校
2022年 “highlight" 石巻市立雄勝小中学校
“THEORIA” 石巻市雄勝町防潮堤 海岸線の美術館
“A Fisherman” 石巻市雄勝町防潮堤 海岸線の美術館
主なグループ展
2024年「micro atopos」THEO ソウル
2022年「Under Current」上海宝龍美術館 上海
2020年「TOKYO2X2X」MAHO KUBOTA GALLERY 東京
主なコレクション
JAPIGOZZI コレクション、スマイルズコレクション、桶田コレクション、家入一真コレクション
YAO Qingmei
1982年 中国浙江省温州市生まれ
2005年 中国浙江海洋大学 経営学(マーケティング)学士号取得
2011年 フランス、リモージュ=オーブッソン国立美術学校 美術学士号(DNAP)取得
2013年 フランス、ヴィラ・アルソン国立美術学校 美術修士号(DNSEP)取得
現在、パリと温州を拠点に活動
主な受賞歴
2022年 アジアン・カルチュラル・カウンシルニューヨークフェローシップ(ニューヨーク、アメリカ)
2022年 イル・ド・フランス地域文化局 個人創作フェローシップ(フランス)
2018年 第68回パリ・ジュヌ・クレアシオン賞(フランス、パリ)
2017年 ポルシェ「ヤング・チャイニーズ・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」(中国、上海)
主な個展
2023年 「Yao Qingmei: Mole」ウェストバンド美術館(中国、上海)
2021年 「Yao Qingmei: The Burrow」マジシャンスペース(中国、北京)
2019年 「Alienation. Who finishes first?」グラーツ(スイス)
2018年 「La commerce du parole」アトリエ・ブラン(フランス、ヴィルフランシュ・ド・リューグ)
Rediscover project
Rediscover Projectは、能登半島地震後に立ち上がった「Stand with NOTO」プロジェクトを基盤とし、輪島塗の職人や珠洲焼の職人、九谷焼の工房と共に設立したアートプロジェクトです。 廃棄される可能性のある予定だった規格外の伝統工芸品や、震災で生じた陶磁器片に新たな価値を見出し、九谷焼や輪島塗といった異なる伝統工芸を融合し、新たなアート表現としての可能性を追求しています。 2024年ミラノサローネ出展、2024年11月から金沢21世紀美術館での展示を予定し、伝統と革新が共存する作品を発信。真の多様性を再発見する取り組みを行なっています。
展覧会概要
「迷宮への介⼊」
会期:2024年10月5日(土)-11月3日(日)
オープニングレセプション:2024年10月5日(土)13:00-15:00
アーティスト:池⽥杏莉 、安井鷹之介、Rediscover project、YAO Qingmei
キュレーター:沓名美和
開場時間:11:00-19:00
会場:Mikke Gallery(東京都新宿区四谷1丁目4 四谷駅前ビル 5F)
協力:鏑木由多加、MAHO KUBOTA GALLERY、株式会社TODOROKI
Mikke Gallery
東京都新宿区四谷1丁目4 四谷駅前ビル 5F
開場時間:11:00-19:00
休廊日:火・水曜日
Mikke Window
東京都新宿区四谷1丁目4 四谷駅前ビル 1F
開場時間:6:30 - 21:30
Web:https://mikke-gallery.com
Mail:info@mikke-gallery.com
Instagram:@mikke_yotsuya
[プレスに関するお問い合わせ]
担当:櫻井 press@mikke-gallery.com
すべての画像