第3回 環境シンポジウム「小田原城はなぜそこにあるのか〜流域視点の脈を見抜いた先人の智恵を探る〜」(主催:一般財団法人杜の財団、風土再生学会)
小田原城にみられる都市計画の智恵、西湘地域における環境課題を踏まえ、「大地の再生®」手法とその裏付けとなる学際的視点から、現代の都市開発問題への具体的対策を探る。
「流域生態系(風土)と人の営みをめぐって」
― 激甚化する「災害」に直面し、私たちが生き抜く術(すべ)は? ―
上流域の奥山、中流域の里山、そして下流にある人口密度の高い都市部はそれぞれ、本来の生態系機能の崩壊に直面しています。毎年のように起きる豪雨、土砂崩れなどの生活リスクに直面して、「なにかおかしいな」「自分の力ではどうにもならない」と不安と恐怖を感じる市民の感情に、行政や企業は具体的かつ恒久的な処方箋を提示できているでしょうか。
一般財団法人杜の財団 代表理事である矢野智徳が提唱する「大地の再生®」は、空気と水の循環が滞り、各流域本来の生態系機能が失われていることが、災害の激甚化の大きな要因になっていることを突き止め、独自の環境改善技法で昨年秋に特許を取得しました。「大地の再生®」が提唱する手法は、私たち一人一人に、加速度的に深刻化する環境問題に対して具体的に、主体的にできることがあるということを力強く訴えるものです。
また、風土再生学会は、風土とその再生にかかわる課題を自然科学、社会科学、人の流れを包摂する総合科学の立場から解決しようとする団体です。また風土再生学会は、「大地の再生®」が提唱する手法を科学的に裏付け、市民による環境再生活動の意義と価値を社会に発信するため、本シンポジウムを杜の財団と共同主催いたします。

市民自らが地域独特の生態系(風土)を保全・育成・活用し、「流域社会」(※1)として一体となって取り組むことにより防災・減災対策も十分に可能であることを、本シンポジウムを通して訴えてまいります。
(※1)「流域社会」とは、生態系(風土)の恵みを活かし、人々が互いに連携して生活を営む場。
ー なぜ、小田原なのか? ー
小田原は首都圏の西の要に位置し、江戸城をつくった家康にも影響を与えたと考えられます。その象徴が、小田原城の地形を利用した大外郭と「水脈」を整えた街づくりです。これが、歴史的遺産としての先人の智恵といえます。一方、「大地の再生®」の手法では、大地の空気と水の通り道を「脈」と呼んで最重要視します。「脈」が詰まることで地盤が不安定化し土砂崩壊を誘発します。しかし、「脈」を通すことで、大地の空気と水、そのほか有機物の循環機能が、自然の自己回復力によって再生します。このことを日本各地の現場で実感してきました。
小田原の地形に沿った「水脈」整備から読み取れる先人の智恵、そして「大地の再生®」が提唱する空気と水の「脈」機能回復に共通してみられる視点と技術は、災害列島・日本において自然の「脈」機能に即した土木的手法こそ人々の生活の安全と安心が保証できるということを、数百年の時を超えて私たちに投げかけています。令和の日本社会の都市づくりに対してひとつの根本的な処方箋を提示し、これからの日本を生き抜き、次世代につなげたいと考えています。この度のシンポジウムでは、杜の財団と風土再生学会が現場から学術へとつなぐ「大地の再生®」の効果実証を礎に、現代の小田原、すなわち西湘地域が抱える環境課題、都市づくりの課題に対しての視点と処方箋を提示していきます。
ー 小田原の風土と環境課題 ー
火山性の箱根、造山運動で出来た丹沢山系とそれに連なる大磯丘陵、その中央を二分するように流れる酒匂川…。それぞれのエリアの生態系と植生は、多様性に満ちています。そのような環境で育まれた文化・歴史を見直すとともに、西湘・小田原地域の自然と人の営みの変遷をたどっていきます。そこには、現代生活にも応用可能な智恵が隠されており、今や失われた自然と人がともに憩う場を再び甦らせることができる可能性を示唆しています。


ー わたしたちが生きられる場 とは…? ー
開催日1日目となる3月22日には、フィールドワークとして小田原城郭を巡り、自然遺産としての小田原の風土とそこに共存・共栄する歴史遺産としての小田原城の姿を 「地質」・「歴史」・「脈」の三つの複合的観点から解き明かしていきます。
さらに、小田原城址公園 二の丸広場にて、「一夜城植栽」ワークショップを「大地の再生®」の職人らが行い、人の都合だけによらない、自然の「脈」機能を活かした有機的な空間づくり、庭園づくりを提示します。
その周囲には、西湘地域を「流域社会」として実感し、受け継いできた風土を再確認しながら、その風土の恵みに感謝する祭りとしての「西湘おだわら風土再生マルシェ」を展開いたします。自然の産物、植生、文化を上流域・中流域・下流域に分けて象徴的に展示し、22日の二の丸公園の風景を西湘地域の風土そのものを体現する場とし、流域生態系(風土)と人の営みの共存の可能性をひとつの風景として道行く皆様にお見せすることを目指します。

この「一夜城植栽」と「西湘おだわら風土再生マルシェ」は、かつての日本列島では当たり前に存在していた、健全な姿での「流域生態系」・「流域社会」・「流域経済」・「流域文化」を小田原城址公園 二の丸広場にて立体的に再現する試みです。地域産業の空洞化が進み、首都圏においてさえも街や都市が消滅する未来像が描かれる中、「流域」こそが人と自然を有機的につなぎ、海・山・川の恵みが実生活とのダイナミズムを生み、その帰結として街の賑わいが生まれるという、懐かしく、そして新しい地域社会のあり方を表現します。
「脈」「流域」という視点から、そして小田原という街から見える、自然と人の営みが共存・共栄するための実用的な処方箋は、これからを生き抜く私たち、そして次世代の道標となります。日本列島の流域生態系(風土)と日々の暮らし、そして街づくりがお互いに連動していることを、この小田原から皆様とともに考察していきたいと考えています。


■主催:一般財団法人杜の財団、風土再生学会
■協賛:認定NPOみんなでお城をつくる会
■後援:小田原市教育委員会
《シンポジウム開催概要》
■日時:2024年3月22日(土)、23日(日)
■会場:22日 小田原城、小田原城址公園 二の丸広場
23日 神奈川県小田原合同庁舎2F会議室
■開催方法:現地参加のみ
■参加申込み方法:
下記リンクよりご確認ください。
https://morinozaidansympo2503odawara.peatix.com/view
■主催:一般財団法人杜の財団、風土再生学会
■協賛:認定NPOみんなでお城をつくる会
■後援:小田原市教育委員会
2025年3月22日(土)プログラム
■ フィールドワーク「地質×歴史×脈」で巡る小田原城(有料)
開催時間:9:00〜15:00
場所:小田原城址公園 二の丸広場内にて集合予定
定員:30名限定
案内人:田代道彌、堀信行、矢野智徳
※シンポジウムのテーマを体感的にとらえるものとして開催するため、2日目のシンポジウムにも参加されることをご参加の前提条件とします。
■一夜城植栽(入場無料)
開催時間:10:00〜15:00
場所:小田原城址公園 二の丸広場
■西湘おだわら風土再生マルシェ (入場無料)
開催時間:同上
場所: 同上
2025年3月23日(日) プログラム
■ 環境シンポジウム(有料)
場所:神奈川県小田原合同庁舎2F会議室
受付:10:00-10:20
<午前の部> 10:20-12:10
小田原の美しい海浜を呼び戻したい―市民として何ができるかー (鈴木博晶)
先人の治水に学ぶ ~酒匂川のかすみ提に見るしなやかな発想を現代に応用する~ (露木順一)
地誌学の視点から小田原・西相模流域の歴史を考察する(岩越松男)
<午後の部> 13:10-17:40
小田原城の地勢に見る流域生態系(風土)の脈循環の要 -災害、減災防災と風土再生への応用- (矢野智徳)
土壌・大地・地球-有機物がつなぐ流域の生態系- (粟生田忠雄)
小田原城はなぜそこにあるのか:「風土の三角形」視点からの一考察 (堀信行)
パネルディスカッション(質疑応答含む)
<閉会挨拶、集合写真> 17:40-18:00
【登壇者 一覧】
・田代道彌(小田原の城と緑を考える会 会長、小田原市文化財保護委員、元・神奈川県自然環境保全審議会委員)
・鈴木博晶(鈴廣かまぼこ株式会社 代表取締役)
・露木順一(元・神奈川県開成町町長、神奈川大学非常勤講師)
・岩越松男(水土社 代表、(一社)地湧の杜 代表理事、NPO新月の木国際協会 理事長、認定NPOみんなでお城をつくる会 理事・事務局長、一般財団法人杜の財団 理事)
・粟生田忠雄(風土再生学会副会長、新潟大学助教)
・堀信行(風土再生学会会長、東京都立大学名誉教授、地理学者)
・矢野智徳(一般財団法人杜の財団代表理事、造園家、環境再生医)
※上記タイムテーブル、22日フィールドワーク集合場所は変更になる可能性がございます。担当までご確認ください(担当:丹羽 080-3575-3627)。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像