EdgeXと小林製薬が広告審査のAIエージェント「ヤッキくん」を共同開発
小林製薬の知見・ノウハウを生成AIに実装。景表法・薬機法審査の精度向上と業務効率化を実現

株式会社EdgeX(本社:東京都中央区、代表取締役社長:高村健一、以下「EdgeX」)は、小林製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:豊田賀一、以下「小林製薬」)と共同で、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」)・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」)のチェック業務効率化を目的としたAIエージェント「ヤッキくん」を開発しました。本システムは、小林製薬が取り扱う日用雑貨品、スキンケア製品などの製品パッケージ/ブランドサイト/店頭POP/CMの説明文を通達・ガイドラインや、自社ルールに基づいてAIでチェックし、業務の効率化と品質の向上を同時に実現することを目的としています。
■ 共同開発の背景と目的
2024年度の国内のインターネット広告費が前年比109.6%の3兆6517億円に達し、前年より3187億円もの大幅な増加を記録する中(*1)、広告審査業務は転換点を迎えています。インターネット広告市場の拡大と合わせるように、景表法や薬機法の改正・厳格化が進んでおり、企業が審査すべき広告案件数は増加しています。規制強化により一件あたりの審査作業もより慎重かつ詳細な検証が求められるようになったことで、多くの企業で広告審査担当者の確認作業が年々増加しており業務負荷が深刻な課題となっています。
(*1) 出典:株式会社電通「2024年 日本の広告費」(2025年2月27日発表)
小林製薬の広告審査を担っている品質安全保証本部では、年間広告審査件数がここ数年で約3倍に増加し、WEB広告の審査比率も同時に約20%増加しています。これにより、情報量の多いWEB広告の審査業務が増加し、将来的な業務負担の増大が課題となっていました。また、小林製薬が取り扱う製品の特徴として、医薬品、芳香消臭剤、食品、スキンケア、衛生・家庭雑貨品まで多カテゴリかつ多品目であり、同じ品目でも成分組成が異なれば表現可能な文言が変わるという難しさがあります。広告審査においても審査対象のファイル形式は様々で、テキストから画像データまで幅広い形式をチェックすることが求められていました。
広告件数の増加による「業務量の増加」および、多カテゴリ多品目かつ多形式なデータチェックに伴う「複雑な審査」という2つの課題を同時に解決するため、DXが求められ、その解決策として景表法・薬機法AIエージェント「ヤッキくん」の導入検討とPoC(概念検証)活動が実施されました。
■ 共同開発の取り組みについて

約1年間にわたるPoC活動では、EdgeXと小林製薬でプロジェクト体制を構築し、小林製薬社内に蓄積している自社ルールやレギュレーションデータの整備から開始。構造化されたデータを「ヤッキくん」に追加学習させ、実務担当者が実際に使用。チェック精度の検証や運用課題の洗い出しを行い、定例会で課題に対するプロンプト改修やデータの再整備を迅速に改善・改良していきました。
景表法の適切な判断には、その製品の特徴・成分を正確に把握した上で広告表現が妥当かを判断する必要がありますが、「ヤッキくん」は小林製薬の製品情報を学習させたことで、景表法観点での審査業務の大幅な効率化を実現できるようになりました。今現在も、広告表現と製品情報との整合チェックから景表法観点におけるエビデンスチェックまで実施検証のPDCAを回し、一部カテゴリでは実運用が開始され、その他カテゴリでも実運用を目指し活動を継続しています。
■ 景表法・薬機法AIエージェント「ヤッキくん」とは

この度、小林製薬と共同開発したシステムは、景表法・薬機法の各種ガイドラインに加えて、取り扱う日用雑貨品、スキンケアなどの製品情報と自社ルールを追加学習させることで、複雑な審査業務や独自のルールにも対応可能な広告表現審査・チェック・フィードバックを支援するAIエージェントとなっています。
主な特徴は以下の通りです。
1/ AIによる安定した高精度チェック
2/ スピーディーな回答に、わかりやすい根拠説明
3/ 追加学習可能な賢いパートナー
4/ テキストに限らず、多様なファイル形式(PPT、Excel、Word、PDF等)・画像データまで対応
■ 本共同開発プロジェクトの今後の展望
EdgeXと小林製薬は、2026年から3カ年にわたって、年々増加する広告審査業務の効率化とチェック精度の向上を目的として、引き続き共同開発を推進していきます。2026年度以降は、品質安全保証本部に加えて製品開発を担う部門においても、制作段階での早期チェック・フィードバック機能を実現し、大幅な手戻り削減を目指します。また、効能効果や安全性を考慮した訴求力のある標榜表現の検討サポートまで、順次対応領域や対応部署を拡大し、関係部署全体への導入を実現し、小林製薬の企業ブランドや製品コンセプトにフィットした景表法・薬機法AIエージェント“なくてはこまる”ヤッキくんの開発・構築を実施していく方針です。
■ 小林製薬株式会社様より
・品質安全保証本部 表現品質G 笠嶋様(芳香消臭剤審査担当)
AIによる広告審査の効率化は、長年の課題でした。AI関連の学会や展示会で情報収集を重ねてきましたが、景品表示法の複雑な審査も効率化できるAIにはなかなか出会えませんでした。
そんな中で、EdgeX社のヤッキくんに出会い、初めてプロトタイプを試した際に、その審査結果が私たちの指摘ポイントと合致し、大きな可能性を感じ、共同開発を進めて来ました。
製品特性に応じた広告審査を実施するには、単に広告文を解析するだけでなく、製品情報と照らし合わせて判断する必要があります。製品情報は社内情報であるため、それをどうAIに学習させるか、また、長年培ってきた小林製薬の審査ノウハウをどうAIに組み込むかが重要なポイントとなります。
これらはデータ化されていないものも多く、AIのためのナレッジをゼロから作り上げる作業は質、量ともに困難なものでしたが、EdgeX社が長期にわたって伴走してくれたおかげで、このプロジェクトを成功に導くことができました。
AIを活用して真に業務効率化を行うためには、社内ノウハウ、データとの連携が必須と考えます。この点において、ヤッキくんの事例は先進的なものになったと感じています。
・品質安全保証本部 表現品質G 金村様(スキンケア審査担当)
スキンケアカテゴリーでは、景表法と薬機法の両方の知見が必要となりますが、広告審査部門の持つ専門知識は属人化しており、増加する広告審査業務に限界が来ることが予測されていました。しかし、ヤッキくんを活用することで、審査担当者の個人的な知識を、社員誰もが活用できる会社の財産に変えることができたと実感しています。
AI開発は全くの未経験でしたが、EdgeX社の丁寧なサポートのおかげで、私たちのノウハウをヤッキくんに学習させ、無事に実運用を開始することができ、心から感謝しています。
今後は、医薬品や食品カテゴリーへも展開していくことで、当社独自の効率的な広告審査の仕組みを構築し、小林製薬らしい魅力ある広告の作成により一層注力していきたいと思います。
■ 株式会社EdgeXより
・取締役兼CTO 板野智彦
小林製薬様との約1年にわたる共同開発を通じて、薬機法に加えて景表法対応という極めて高度な判断を要する領域にAIを実装できたことは、技術的に大きなブレークスルーです。特に印象的だったのは、小林製薬様が長年培われた審査ノウハウを構造化し、AIが学習可能な形に変換していくプロセスでした。多カカテゴリー・多品目の製品情報と広告表現の整合性をAIが判断するには、大規模言語モデルと企業固有のナレッジベースを統合し、高度なコンテキストエンジニアリングとヒューマンフィードバックループによる継続的な精度向上が不可欠でした。この共同開発で実現した「製品情報と連動した広告審査支援システム」は、生成AI活用の先進事例として、今後の企業内AI実装の新たなモデルケースになると確信しています。
◾️ 小林製薬株式会社について
会社名:小林製薬株式会社
所在地:大阪市中央区道修町4丁目4番10号 KDX 小林道修町ビル
代表者:代表取締役社長 豊田 賀一
URL:https://www.kobayashi.co.jp/
◾️ 株式会社EdgeXについて
EdgeXは「AI技術を活用してヘルスケア業界の構造的課題を解決し、健全な市場環境の構築を通じて社会に貢献する」ことを経営理念として掲げています。法規制遵守の複雑化と人材不足という業界の二大課題に対し、革新的なテクノロジーソリューション「ヤッキくん」を提供することで、企業の持続的な成長と消費者保護の両立を目指します。
会社名:株式会社EdgeX(エッジエックス)
所在地:東京都中央区日本橋室町1丁目11番12号 日本橋水野ビル7階
代表者:代表取締役 高村 健一
【お問い合わせ先/報道関係者様およびお客様】
株式会社EdgeX
サービスサイト:https://yakki-kun.com/
メール:info@edgex.co.jp
問い合わせフォーム:https://www.edgex.co.jp/contact
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