量子コンピュータを用いた有機材料の光学特性の精密制御を目指した共同研究契約を三菱ケミカルと締結
量子コンピュータのアルゴリズムとアプリケーション開発を行う株式会社QunaSys(本社:東京都文京区、代表取締役:楊 天任、以下QunaSys)は、この度三菱ケミカル株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和賀 昌之、以下 三菱ケミカル)と共同研究に関する契約を締結し、量子コンピュータ活用研究を開始したことを発表します。
■ 本共同研究につい
本共同研究では、有機材料の光学特性の精密制御を目指し、量子コンピュータを用いた量子化学計算手法の実証研究を行います。
既存の計算機(古典コンピュータ)で行われていた光化学反応解析手法では、計算量が膨大になりすぎて研究対象の分子の光学特性を高精度で計算することが難しいという問題がありました。量子コンピュータは、現在のコンピュータとは全く異なる原理で動き、数年以内に実現するであろう200量子ビット程度の中規模なデバイスでも、今まで不可能であった計算を可能にします。特に量子的な効果が強い光化学反応の解析は最も有望なアプリケーションの一つだと考えられています。
本共同研究では、QunaSysが開発したアルゴリズム(励起状態計算手法: https://arxiv.org/pdf/1810.09434.pdf , 分子のエネルギー微分計算手法: https://arxiv.org/pdf/1905.04054.pdf)や世界で公開されている論文をベースに、光吸収スペクトル等の材料設計に必須である物理量を計算する実証研究を行い、古典コンピュータによる計算手法との比較も行います。
開発にあたっては、QunaSysが管理する高速な量子コンピュータのシミュレータであるオープンソースソフトウェアQulacs(https://github.com/qulacs/qulacs)や開発を行っている量子化学計算ライブラリQulacs Plusの他、クラウドで公開されている小規模な量子コンピュータの実機を用います。
■ 量子コンピュータについて
量子コンピュータは、現在のコンピュータとは全く異なる原理で動き、スーパーコンピュータを用いても現実的な時間で解けない複雑ないくつかの問題を高速に解くことが可能であると証明されています。1980年代に提案されて以降量子コンピュータは長らく”夢の技術”とされてきましたが、近年その実現が急速に現実味を帯びてきており、世界各国で熾烈な開発競争が繰り広げられています。(詳しくは、弊社が運営するQmediaの記事”量子コンピュータの現在とこれから https://www.qmedia.jp/nisq-era-john-preskill/ "をご覧ください。)
この数年で実現されると考えられている量子コンピュータはNISQデバイスと呼ばれ、誤り訂正機能がないこと・サイズが中程度(数百量子ビット程度)であることが特徴です。NISQデバイスは、現在の古典コンピュータよりも高速であること(量子加速)が厳密には証明されていないものの、量子化学計算などの分野での応用が期待されています。特に量子効果が強い光化学に関する反応の解析が有望視されており、有機発光材料の発光特性や有機太陽光電池の吸光特性の設計、光安定性の高い分子の設計などが期待されています。
■ 株式会社QunaSysについて
株式会社QunaSysは量子コンピュータのアルゴリズムとアプリケーション開発を行っています。量子コンピュータの新しい使い方・アルゴリズムを提案発表している他、量子コンピュータを活用するツールの開発を行っております。詳細情報については、QunaSysホームページ(https://qunasys.com/)をご覧ください。また、量子技術に関するメディアQmedia (https://www.qmedia.jp/) の運営や無料の量子コンピュータ勉強教材Quantum Native Dojo(https://dojo.qulacs.org)、さらに量子アルゴリズムの比較サイトQuantaggle(https://quantaggle.com)を公開しております。
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