【調査】今春開始した「日本版ライドシェア」の制度理解34.9%、新たに法整備を検討中の「海外型ライドシェア」への不安6割、海外へのデータ送信には8割が不安
交運労協がタクシー利用者に「タクシーとライドシェアに関する1000名意識調査」を実施。月1回以上乗車ユーザの57.6%がタクシー配車アプリを利用、「アプリでタクシー利用しやすくなった」82.9%。
陸・海・空における人や物の移動に関わる、交通・運輸・観光などの産業で働く約60万人が加盟する労働組合である全日本交通運輸産業労働組合協議会(以下、交運労協)は、2024年11月に首都圏在住のタクシー利用者を対象に実施した、「タクシーとライドシェアに関する1000名意識調査」の報告書をまとめましたのでお知らせ致します。
■交運労協サイト「タクシーとライドシェアに関する1000名意識調査」リリース
https://www.itf-jc.jp/action/5221/
2024年4月から日本版ライドシェアが解禁されましたが、一方で、「移動の足不足の解消」を理由に、タクシー事業者以外に対しても参入を認める海外型ライドシェア全面解禁に向けた議論が行われています。そこで本調査では、20代~60代の首都圏に在住の月1回以上タクシーを利用する1,053名のユーザーから、タクシー不足を感じる状況、タクシー配車アプリの活用状況、日本版ライドシェアに対する理解度、現在政府で導入を検討中のタクシー事業者以外が運営するライドシェアに対する意見を聞きました。また、参考として月1回未満のユーザーからの声も集めました。
新法制定議論は、昨年から「タクシーが不足しており呼びにくい状況の改善」を目的として行われてきました。しかし、2024年の今現在で日常的にタクシーを利用している利用者からは、配車アプリの活用により呼びにくさは着実に改善していることが回答から分かりました。一方で、状況改善に向けた現行法の「日本版ライドシェア」の制度や特徴の本質的な理解度は低く、タクシー事業者による改善への取組みの認知も低いことが分かりました。法整備を検討中のライドシェア(ライドシェア全面解禁)に対しては6割が不安を感じており、法整備の議論については安全性や公平性の観点から慎重な議論を求めています。
●調査概要
・調査対象:首都圏(一都三県)在住でタクシーを月1回以上利用する20代~60代の男女1,053名
・調査手法: インターネット調査 ・調査期間:2024年11月
グラフや自由回答など詳細をまとめた調査結果報告書は交運労協のHPよりご覧いただけます。
https://www.itf-jc.jp/action/5221/
~~調査結果のハイライト~~
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タクシー日常利用者の半数以上は配車アプリを活用
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以前タクシーを捕まえにくかった状況も、配車アプリ利用を通じて8割が改善を実感
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公共交通である現状のタクシーサービスに87.8%が満足
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タクシー事業の運転手の増加や若返り、出庫時間調整などの改善活動に対する認知は低い
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「日本版ライドシェア」の名称は認知はされているが、「ドライバーが自家用車を持ち込む」以外の「タクシー事業者による運行管理・保険・車両点検」などの特徴理解が依然として低い
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法整備を検討中のライドシェア(ライドシェア全面解禁)に対しては「利用者として守られていないと感じる」「みんなが安心して利用できると思わない」人が6割以上、データの海外送信への不安は8割以上
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法整備議論に対して、「政治主導の迅速な導入」に比べ、「安全性・公平性の観点から慎重な議論」を望む声が4倍となった
~調査結果の総括~
1. タクシー日常利用者の半数以上は配車アプリを活用
タクシー利用者の57.6%がタクシー配車アプリを利用しており、うち98.2%が配車に利用していることからもアプリによって利便性が向上していることが伺える。
また、全体で見ても、タクシーを捕まえる手段としては1位「アプリでの呼び出し(40.6%)」、2位「流しを捕まえる(26.0%)」、3位「タクシー乗り場に行く(16.4%)」となった。ここで参考として、月1回未満利用の低頻度利用者を見た場合1位「タクシー乗り場に行く(29.4%)」、2位「アプリを利用する(27.5%)」、3位「流しを捕まえる(23.8%)」となり、約1/3はアプリを利用していることが分かった。
一方で、配車アプリを利用しない理由としては1位「必要性を感じない(34.5%)」、2位「迎車費用が掛かる(26.0%)」、3位「アプリに個人情報を登録したくない(20.2%)」となった。これは利用頻度の低い参考回答群でも同じ傾向がみられたことから、議論の前提としてアプリベースでサービス提供を行う海外型ライドシェアが「タクシーが不足しており呼びにくい状況の改善」に繋がるのかという検証の必要性が示唆された。
2. 以前タクシーを捕まえにくかった状況も、配車アプリ利用を通じて8割が改善を実感
タクシーの捕まりにくさを頻繁に感じているのは14.7%、時々感じているのは54.4%。ただし捕まりにくさを感じる状況は「悪天候」「交通量が少ない」「早朝・終電時・終電後の時間帯」など限定的である。また、タクシーが捕まりにくい状況であっても、タクシー配車アプリによって利用しやすくなったと感じている人が82.2%。アプリによりタクシー不足、利用のしづらさはある程度解消されている。
3. 公共交通である現状のタクシーサービスに87.8%が満足
タクシー利用者の87.8%が公共交通としてのタクシーサービスの現状に満足を示した。また、タクシーサービスで重視されている価値として「24時間呼べない時間帯が無い(72.7%)」に次いで、「運転技能教育(59.5%)」や「料金体系の分かりやすさ(58.9%)」、「ドライバーの身元の確かさ(54.8%)」が挙げられており、これまでの制度やタクシー事業者が公共交通として積み上てきた運行体制が評価されていることがわかった。
4. タクシー事業の運転手の増加や若返り、出庫時間調整などの改善活動に対する認知は低い
しかし一方で、タクシー業界として取り組んでいる「人材確保のための時短ママドライバーなど柔軟な働き方の採用」、「ドライバーの待遇改善を目的とした運賃改定」、「通勤時間の需要への対応を目的とした朝の出庫時間の調整」などの改善施策や公共交通としての「犯罪防止や捜査協力など地域の見守り」などの認知は約2割に留まっている。また同じく業界改善の取組み成果である「首都圏ドライバー就業者の増加や若返り」の認知は2割に留まっている。タクシーサービスの改善状況が十分に周知されないまま「ドライバー不足」というイメージが先行している様子がうかがえる。
5. 「日本版ライドシェア」の名称は認知はされているが、「ドライバーが自家用車を持ち込む」以外の「タクシー事業者による運行管理・保険・車両点検」などの特徴理解が依然として低い
「日本版ライドシェア」は言葉として74.1%が認知していたものの、制度理解については34.9%に留まった。さらに、制度の各特長について知っているかをたずねたところ、「ドライバーの自家用車利用」は52.9%が知っていたが、次点の身元保証や品質に繋がる「タクシー会社とドライバーが雇用契約を行い研修を受ける」の認知は37.1%にとどまった。
さらに、タクシーの提供価値として関心の高い「運賃はタクシーと同等」30.9%、ライドシェアのドライバーの運行管理や健康管理、車両整備など安全運行に関わる取り組みの認知は2割台に留まり、トラブル時の「保険はタクシー会社が付保する」の理解も20.8%であったことから、「日本版ライドシェア」の正しい認知向上の必要性を示す結果となった。
6. 法整備を検討中のライドシェア(海外型ライドシェア全面解禁)に対しては「利用者として守られていないと感じる」「みんなが安心して利用できると思わない」人が6割以上
タクシー利用者は、法整備を検討中の海外型ライドシェアの特長に対して、「ドライバーの身元保証」「トラブルは当事者同士で対応」「ドライバーの運行管理」をはじめとした、海外型ライドシェアの特長に関してはそれぞれ6割以上が何らかの不安を示した。また、海外のプラットフォーム事業者の提供するサービスでは、「自分の移動情報やカード情報のデータが、日本の法律が適用されない海外のサーバーに送信されること」について82.5%が不安を感じると答えた。
また、海外型ライドシェアが日本で実現された場合、6割以上が「利用者として守られていると感じない」と回答し、同じく6割以上が「自身や家族、高齢者、身体障碍者といった交通弱者などみんなが安心して使えるサービスだとは思わない」と回答した。予想されるトラブルで不安や問題に感じる項目は、1位「交通事故発生時の補償や交渉(91.7%)」、2位「ドライバーによるわいせつ・盗撮行為(90.1%)」、3位「ユーザーに不明瞭な運賃(89.0%)」などが挙げられた。
7. 法整備に対しては政治主導の迅速な導入に比べ、安全性・公平性の観点から慎重な議論を望む声が4倍となった
法整備を検討中の海外型ライドシェアの議論のあるべき姿として、1位に「安全性や公平性の観点から慎重に検討して欲しい(61.8%)」が挙げられ、最下位の「政治主導で迅速に導入して欲しい(15.1%)」に比べて約4倍となった。このほか「消費者に開かれた議論」や「適切な公共交通の専門家を交えた議論」も4割が支持し、安全にかかわる公共交通であることから、実態に即した適切な議論のプロセスを望む声が多いことが示された。
タクシー利用者の中で外国でのライドシェア利用経験は約2割となった。しかし、日本でも報道があった、邦人に対する「在米国日本領事館から行われたライドシェア利用に関する注意喚起」の認知は6.5%に留まった。さらに、米国のライドシェアでの性被害の実態は5.3%の認知に留まり、ストーカーや盗撮の控訴が起きていることへの認知は7.4%、「アプリ上で車いす障碍者に過大な料金請求」や「盲導犬同乗者への差別や乗車拒否」など、公共交通としての適格性を問われるトラブル実態に対する認知は5%を割り込む結果となり、外国におけるライドシェアのネガティブな実態については十分に認知されていないことが伺える。法整備議論を行うにあたっては、その実態に関しての立体的な情報を十分に伝えていく必要性が改めて浮き彫りとなった。
~~~調査データピックアップ~~~
●タクシーの利用状況
タクシー配車アプリをインストールしており、活用しているのは57.6%
アプリ利用者の98.2%が配車でアプリを使用
タクシーを呼ぶ時に最もよく使う手段
1位「アプリで予約する・呼ぶ」40.6%
2位「流しを捕まえる」26.0%
3位「タクシー乗り場に行く」16.4%
タクシー配車アプリを利用しない人の利用しない理由
1位 「必要性を感じない」(34.5%)
2位 「アプリの迎車に費用がかかる」(26.0%)
3位 「アプリに個人情報を登録したくない」(20.2%)
タクシーが捕まりにくいと「頻繁に感じる人」は14.7%
タクシーに捕まりにくさを「感じない」は30.9%
ただし、捕まりにくいと感じるシチュエーションは「雨天、酷暑、積雪など天候が悪い時」「交通量の少ない道路」「早朝・終電時、終電後の時間帯」など限定的である。
タクシーを捕まえるのにタクシー配車アプリを利用している人の82.9%が
「捕まりにくいと感じるシチュエーションでも利用しやすくなった」と感じている
●日本版ライドシェアの認知・理解状況
74.1%が「日本版ライドシェア」の言葉を認知、制度理解は
しかし「ドライバーが保有する自家用車を使用する」こと以外の特徴は
十分に理解されていない。
特徴について、ドライバーの健康管理、運行管理、車両点検、保険をタクシー会社が行うことは
全体の1/3程度の認知にとどまる。
●法整備を検討中のライドシェアへの不安
1位「ドライバーの身元を保証する仕組みがない」(79.6%)
2位「トラブル時の対応は原則ドライバーと乗客自身で解決を図る」(78.1%)
3位「ドライバーの労働時間の管理やアルコール検査は自己管理(77.9%)
また、個人情報が海外のサーバーに送信されることには8割以上が不安を感じている。
●法整備を検討中のライドシェアで予想されるトラブルへの不安
1位「交通事故が発生した時の保証や交渉」(91.7%)
2位「ドライバーによるわいせつ・盗撮行為」(90.1%)
3位「ユーザーに不明瞭な運賃」(89.0%)
特に女性は「ドライバーによるわいせつ・盗撮行為」「ドライバーによる暴行・障害事件ストーカー行為」について強く不安を感じており、身元が保証されないことに起因するトラブルへの不安が大きい。
●法整備を検討中のライドシェアに対する評価
利用者として守られていないと考える人が60.8%
みんなが安心して使えるサービスだと思わない人が61.9%
しかし、安心して使えるサービスと回答した理由には、サービスを経験した国の制度と日本で法整備を検討中の海外型ライドシェアを混同している声や、タクシー事業者の取組みによる運転手増加や日本版ライドシェア制度の対応範囲の認知不足による「海外型ライドシェア」への賛同の声、さらに、あくまでより厳しい制度を前提とした場合の賛同の声などが多く見受けられた。
●現在行われている法改正の議論に対する意見
1位「安全性や公平性の観点から慎重に検討してほしい」(61.8%)
●公共交通としての日本のタクシーサービス 満足度 87.8%
首都圏におけるタクシードライバーの若返り 「知らない」(77.9%)
首都圏におけるタクシードライバー数の増加 「知らない」82.8%
●主要なグラフの抜粋●
<タクシー配車アプリの利用状況>
<外国におけるライドシェアトラブルの理解状況>
<法整備を検討中のライドシェアサービスへの不安>
<法整備を検討中のライドシェアサービスの評価>
<日本のタクシーサービスの課題>
●全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協) https://www.itf-jc.jp/
交運労協は1987年10月8日に東京で結成総会を開催し、2017年10月に結成30周年を迎えました。現在18構成組織、組合員は約60万人です。日本における陸・海・空の交通運輸・観光サービス産業で働く労働者の大産業別組織です。交運労協はナショナルセンターである「連合」とも密接な連携を行っています。また、世界の交通運輸労働者と連帯するためITF(国際運輸労連)に加盟しています。
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