知財で目覚ましい取組をしたスタートアップやスタートアップ支援者を表彰 第5回「IP BASE AWARD」授賞式
スタートアップをはじめとする10企業・団体を発表
■「IP BASE AWARD」概要
スタートアップの知財活動・知財支援活動を奨励することで、スタートアップによる知財活用、スタートアップ支援者による知財支援、スタートアップ知財エコシステムへの取り組みを後押しします。また、優れた活動、取組を表彰することで、今後成長するスタートアップ、知財専門家の手本とできるようにします。
第5回IP BASE AWARDは、スタートアップ部門、スタートアップ支援者部門の2部門から構成され、エントリーの中から選考委員会による審査を経て、各グランプリ(スタートアップ部門:1者、スタートアップ支援者部門:最大で2者)が選出されます。
■各部門の審査基準について
○スタートアップ部門
対象:戦略的な知財権の取得、活用などを積極的に実施している、未上場かつ設立10年以内のスタートアップ
審査基準:
着実な知財活動(出願件数、知財ポートフォリオ、社内体制整備等)を基礎として、他企業の模範となる、優れた知財戦略の構築や知財に関する取組・活動を行っているスタートアップを評価する。
○スタートアップ支援者部門
対象:スタートアップ支援に意欲的に取り組み、その支援によりスタートアップ知財エコシステムの活性化に貢献している個人、組織(弁理士、弁護士、VC、投資家、アクセラレーター、インキュベーター、スタートアップへの取組をしている企業、研究機関関係者、大学関係者等)
審査基準:
スタートアップ支援の実績に基づいて、スタートアップに特化した方法やスタートアップの将来的な発展を促すような方法でスタートアップの知財支援を行っていて、他の支援者の規範となり、スタートアップ知財エコシステムの活性化に貢献する個人、組織(弁理士、弁護士、VC、投資家、アクセラレーター、インキュベーター、スタートアップへの取組をしている企業、研究機関関係者、大学関係者等)を評価する。
■第5回「IP BASE AWARD」グランプリ受賞者紹介
【スタートアップ部門】
▶︎東京ロボティクス株式会社
2015年設立の早稲田大学発のロボティクススタートアップ。力制御可能なロボットアームや双腕ロボットの開発から、近年は力制御可能な全身人型ロボットを開発するとともに、最先端ロボットに必要な3次元カメラや画像認識・機械学習、遠隔操作など研究領域を拡大している。社会実装事業も加速しており、多くの大手企業と共同開発および実証実験を進める。
受賞理由:
知財権やノウハウ管理による開発成果の保護を確実に固めた上で、さらに契約等のビジネス活用で積極的に展開している点、また複数事業のそれぞれに整合する知財方針の構築およびその実行力が高く評価された。アーリーステージながら、大企業とのアライアンスにおける権利帰属の工夫、事業戦略と知財戦略の連動は他のスタートアップの模範となる。
【スタートアップ支援者部門】
▶︎川名 弘志 氏(KDDI 株式会社 総務本部 シニアエキスパート(知的財産戦略担当))
1993年に第二電電(現、KDDI)入社。2006年弁理士登録、2015年4月~2022年3月まで知的財産室長、同年4月から現職。KDDIの知財部門責任者として、出資先スタートアップの支援を開始し、知財活動の範囲を出資先にまで拡大させた。成長支援をしてその後に大きな成果をともに得る伴走者としての姿勢を一貫している。
受賞理由:
KDDIが展開するオープンイノベーション・プラットフォームにおける知財支援の責任者としてベンチャーファーストな実務を構築、多くの後続企業に影響を与えた点が高く評価された。大企業に所属しながら、自社の利益の貢献だけでなく、全体への利益を考えた活動は業界のベストプラクティスとして模範となっている。
▶︎増島 雅和 氏(弁護士・弁理士 森・濱田松本法律事務所)
資金調達と金融業へのコンサルティングを主力に、エコシステム型ビジネスモデル普及のための法制度・実務インフラの確立を目指す。スタートアップ単体の知財支援だけでなく、大企業とのオープンイノベーションとライセンス、大学との共同研究・ライセンスに重点をおき、個別案件にとどまらず、政府の政策立案支援にまでさかのぼって知財に関する取り組みを実践している。
受賞理由:
プロボノ活動も含めた圧倒的なスタートアップ支援数、また政策立案までの関与も含めて、スタートアップ・知財双方の業界へ高く貢献している。経営・事業目線からの「知のマネタイズ」にこそ、最もインパクトがあり企業価値への貢献があるという考えのもと多数の支援を実施。またデータ等の知財権以外の要素を含む知財支援実務などが高く評価された。
■第5回「IP BASE AWARD」奨励賞受賞者
部門ごとに設けられた評価観点において高い評価を獲得し、将来的にグランプリを獲得できると期待される者に対し授与。
【スタートアップ部門】
▶︎アスエネ株式会社
導入社数4,000社超のCO2排出量見える化・削減クラウド「アスエネ」は、AI-OCRを活用したScope1-3までの算出やCFP算定、削減・オフセット、環境データ管理、報告が可能。 さらに、ESG評価クラウド「アスエネESG」、カーボンクレジット取引所「Carbon EX」を通じ、サステナビリティ経営をワンストップで支援。
受賞理由:
競争と共創とのバランスが難しいGX領域において、創業時からオープン&クローズを意識した知財ポートフォリオを構築。標準化のためのオープン化と競合に対するクローズド化が、アジアやアメリカへの海外展開を含めた事業成長の大きな鍵になると評価された。
▶︎エイターリンク株式会社
ワイヤレス給電によって配線のない“デジタル世界”の実現を目指す、米・スタンフォード大学発のスタートアップ企業。独自のワイヤレス給電技術を用いてFA領域、ビルマネジメント領域、バイオメディカル領域、さらに物流、リテールといった各領域にて社会実装を進めている。
受賞理由:
アーリーステージながら、海外出願も含めて意欲的な取り組みを展開。グローバルでの標準化が重要かつ知財紛争も多い標準規格に関連する領域において、事業における知財戦略の位置づけを十分に理解しながら活動を進めている点が評価された。
▶︎コネクテッドロボティクス株式会社
食産業向けロボットシステムを開発・提供するスタートアップ。そばやたこ焼きなどを調理するロボットをはじめ、不定形な食品を扱うロボットを開発し、実際の店舗や工場に導入した実績を持つ。食産業における人手不足や低生産性、過酷な労働条件といった課題の解決を目指す。
受賞理由:
競合他社の製品開発を先読みし自社の知財ポートフォリオを補強するなど、競争優位性の構築にうまく特許を活用。参入障壁構築のみならずライセンシングなども視野に入れ、企業価値向上のための知財化を推進している点が評価された。
▶︎株式会社CureApp
医師が患者に処方する「治療アプリ」を研究開発・製造販売する2014年設立の医療スタートアップ。2020年、禁煙治療領域において世界初の薬事承認取得および保険適用となった。続いて、高血圧症領域においても2022年に世界初の薬事承認取得および保険適用。その他、複数の疾患に対する治療アプリの開発を進めている。また、民間法人向けの健康増進サービス「ascure」(アスキュア)も運営。
受賞理由:
企業の成長に伴って知財活動を変化させており、事業展開に連動させ知財戦略が練られている点、またエビデンスをもって保険収載される治療アプリという先進的領域において、医療領域での知財戦略とITソフト領域での知財戦略を融合させた知財活動が評価された。
【スタートアップ支援者部門】
▶︎飯塚 健 氏(弁理士 飯塚国際特許事務所/ 株式会社 Unicorn IP Advisory)
大手電機メーカーにて知財業務に従事後、弁理士としてスタートアップ企業に対する国内外における知財支援業務に従事。知財戦略の策定から実行支援、訴訟支援まで幅広い経験を有する。専門は、機械学習とロボット。
受賞理由:
企業での知財業務経験を生かしたスタートアップ支援を行う他、海外での講演活動やコンサルティング会社設立などにも取り組む。知財実務のみならず、戦略立案、組織、体制構築まで踏み込んだ幅広い支援が評価された。
▶︎加島 広基 氏(弁理士 日本橋知的財産総合事務所)
株式会社クボタでの機械製品の品質向上・開発経験を生かし、DXやAI等、最新技術を活用した企業を中心に支援。コロナ禍以降、YouTubeなどのSNSを広く活用し、独自企画による知財コンテンツの情報発信や専門家コミュニティの形成に努める。
受賞理由:
YouTube等のメディアでの活発な発信や、若手のコミュニティハブとしての役割でスタートアップ知財エコシステム形成に貢献。またバックグラウンドを生かしAIやDXに関わる最新技術を活用した数多くのITスタートアップ支援実績が評価された。
▶︎森岡 智昭 氏(弁理士 さくら国際特許法律事務所)
愛知県内を拠点に各地の中小・スタートアップ企業の知財戦略支援に尽力。大企業・中小企業・スタートアップ企業による共存共栄と共創のための「IPエコシステム」構築の貢献に努める。
受賞理由:
大手企業での知財業務・マネジメント経験を生かし、中部地区を中心にスタートアップ支援を牽引している。事業と知財の繋ぎ込みにフォーカスを当て、地方スタートアップの知財活性に取り組む点が評価された。
■IP BASEとは
特許庁は、「知財って重要そうだけど、まず何をすればいいか分からない」「誰に相談すれば良いのか分からない」といったスタートアップの声に応えるべく、“スタートアップがまず見るサイト”、“知財専門家とつながるサイト”として、知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」を2018年12月に開設しました。
スタートアップに不可欠な知財戦略に関する基礎知識や支援施策、イベントなどの最新情報を集約し、スタートアップ関係者(スタートアップやベンチャーキャピタル、アクセラレーターなど)と、知財専門家(弁理士や弁護士など)の双方が参加するスタートアップ知財コミュニティの「基地」となることを目指して、運営しています。
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