馬祖ビエンナーレ(馬祖国際芸術島)9月開幕 台湾最大規模島巡りアートフェス 会期は73日間 国内外55組のアーティスト
日本人アーティスト柳幸典さん、木村崇人さんが現地制作
連江県、文化総会主催の台湾最大規模島巡りアートフェス「馬祖ビエンナーレ(馬祖国際芸術島)」。第3回となる今年は「拍楸 —あなたの海、わたしの陸」をテーマに、9月5日から11月16日まで過去最長の73日間にわたり開催します。台湾、日本、韓国、香港、マレーシア、オーストラリア、アメリカ、スペイン、カナダの9つの国・地域から55組のアーティストが参加し、南竿、北竿、西莒、東莒、東引の5つの島々にて50点を超える新作を含む75点を展示します。また10以上のパフォーマンスを予定しています。

本展の見どころ
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台湾最大規模の島巡りアートフェス、過去最長会期で南竿、北竿、西莒、東莒、東引の5つの島々を横断
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9つの国や地域のアーティストが参加し、50点以上の新作を発表
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発電所、軍事拠点、新聞社、古民家、体育館、かつての映画館、バスなどが会場に
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日本のアーティスト、柳幸典さん、木村崇人さん、アーティストユニット米谷健+ジュリア、狩野朋子さん+中坪多恵子さんが初参加
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限定コラボ商品:老酒のお茶の煮卵、ソフトクリーム、ラテ、限定ビール、コーリャン記念酒、iPASS特別デザインカードなど
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全エリア全作品が無料でご鑑賞いただけます。(一部作品、プログラムは要事前予約)
キュレーションテーマ:拍楸 – あなたの海、わたしの陸
閩東語である「拍楸」(pha-jiu)は、馬祖の島々で代々受け継がれてきた伝統的な漁法を意味します。毎年8〜9月に村中の男性たちが十数日かけて沖へ出て、力を合わせて竹の杭を海底に打ち込み、漁網を固定し、来年の豊作に向けた基盤を築きます。
ビエンナーレは現代の「拍楸」として、馬祖で漁業が黄金時代だった頃の「ひとつの網の目が一人を養い、漁師の一枚の網が島全体を支えた」という記憶に呼応。隔年で開催することで、村、世代、産業、部門を超えた島の力を結集し、アートを通じて人と人を結び、未来へ広がる文化の大網を編み上げます。
「拍楸」は単なる伝統技術ではなく、馬祖が世界へ開かれ、対話を始める文化言語でもあります。「あなたの海、わたしの陸」は、自己と他者、地域と世界との関係を問い直す契機となります。ビエンナーレの隅々から、馬祖の日常と未来の可能性を再発見します。
▋軍事拠点の再生:26、53、77拠点、初の全面公開
南竿に位置する26、53、77拠点が再生工事を終え、初めて全面的に公開されます。これにより、軍事拠点の再生と開放の力が余すところなく示されることとなります。各拠点の再生を手掛けた建築家たちは、それぞれ異なる空間運営の戦略を用いて、拠点を食と芸術の空間、ピアノバー、美術館などへと転化しました。アートが歴史、空間、そして未来への想像をつなぐ媒介となっています。

▋新作について
【南竿】

柳幸典(日本)《Project God-zilla – Healthy Islands Happy Matsu》|旧体育館
作品は、核の警告色である黄色の廃棄燃料ドラム缶で構成され、中央の眼球の「虹彩」部分に広島の原爆や太平洋での核実験の映像が投影されます。さらに、台電が提供した廃棄変電箱や電柱、体育館の相撲用マット、漁船などが組み合わされ、地域の集体的経験を世界的な地政学的関係の中にあるエネルギー災害史との対話へと導きます。本展は体育館が取り壊され改築される前の最後の一般公開となります。作品を通じて場を変容させ独自の空間体験を創出し、新たな景観記憶を形成します。

朱威龍(マレーシア)《Fishing Dream》|山隴澳口
風力によって動く大型ランドスケープ作品は、馬祖の漁村のイメージを再構築し、かつて漁師たちが海流に応じて、海と共に生きてきた記憶を映し出します。

米谷健+ジュリア《Web of Life》(日本、オーストラリア)|山隴リハーサルルーム
釣り糸を編み込んで巨大な網状の装置を構築し、あらゆる生命が密接に結びついていることを象徴し、また人類と海の相互依存関係を表します。

林銓居《5000 Chrysanthemums》|77拠点
林銓居さんは坑道において《5000 Chrysanthemums》を展示しています。数千本の陶製の黄菊が床一面に敷き詰められ、消音器に覆われた砲台トーチカを照らし出します。これは1949年以降戦地において犠牲となった無数の青春と生命を象徴しています。

李佩珊《NOBODY’S PAWN, WE ARE…》|26拠点
想像力豊かな囲碁の意匠によって単純化された地政学的な観点に抗い、複雑に折り重なる馬祖の歴史に敬意を表します。4郷5島で行われた住民参加型ワークショップを通じて囲碁模様の花瓶に絵付けを行いました。かつての軍事拠点を馬祖の感情や記憶、思いやりを託す文化的な器へと変容させています。

狩野朋子、中坪多恵子(日本)《Letters from Matsu》|53拠点
馬祖の歴史、自然景観、そして兵士の手紙を通じて、参加者にこの島とのつながりを感じてもらいます。キュレーター洪榆橙さんが立ち上げた軍旅書簡収集プロジェクト。アーティストは書簡の物語を読み解く中で着想を得て、古羊皮紙の転写技法とポストカード・記念スタンプのデザインを融合させました。過去または未来の自分へ手紙を書くことができます。

陳益輝《Build a Nest》|珠螺海湾長堤
南竿珠螺海湾長堤には、馬祖の彫刻家、陳益輝さんの大型ランドスケープ作品《Build a Nest》が設置されています。かつての軌条砦という戦地の言葉を、馬祖の人々が不安定な中で安住と生活の営みを模索する想像へと転換しています。

甘銘源《Glow of the Basket, Shadows of Bamboo》|鉄板澳口
「拍楸」は馬祖の重要な伝統漁法として、4郷5島で異なる実践知が育まれてきました。アーティストはフィールドワークと現地でのインタビューを通じ、「竹籠」と「杭」の意象を融合させ、この漁法が海に広がる巨大な空間スケールを表現しました。オレンジ色の旗は「蝦皮窓」の意象から転化され、産業が光り輝いていた頃の栄光を表現しています。

康雅筑《Unraveling and Weaving the Way Back》|牛角集落 半月型ガラス小屋
「拍楸」のテーマに応え、漁網の「網目」は漁獲の道具であるだけではなく、漁村の各家庭で飢えをしのぐ人々の象徴でもあります。アーティストは牛角澳の河口で作品を展示し、地域住民に漁網の編み込み作業に参加してもらうことで、漁村における生産活動において不可欠な労働力としての女性の役割に焦点を当てるとともに、彼女たちの編み込みの知恵が、集落の網目同士をつなぐ関係性のネットワークを支えていることを示しました。

辛綺《Confined in Light: Yima Kitchen》|依嬤の店
アーティストは参加者を、イメージ、閩東語の言葉と音声を通して、戦地政務時代の「灯火管制」の下で馬祖の人々がさまざまな年代に経験した出来事へと誘います。作品は食卓の上に現れ、忘れかけていた記憶を呼び覚まします。

Juan Zamora (スペイン)《The Dream Pavilion》|復興路涼亭
アーティストは潜在意識の夢の場を作り上げ、地元の伝統的信仰における「祈夢」の儀式に呼応しました。参加者は海島の風景を遠望しながら、海と共に夢を見て眠る空間的な体験ができます。
【北竿】
劉致宏《Tide & Time》《Pickled & Steeped》|橋仔五間排
《Tide & Time》は草縄編み技術によって潮汐、日光、水中の浮遊イメージを繋ぎ合わせ、拍楸文化における物質的言語と手仕事の痕跡を探求します。《Pickled & Steeped》は魚醤や塩蔵の文化を転換し、海の記憶を味覚のシンボルとして提示します。今回の作品は日光、潮汐、水中に浮かぶ印象と連動し、漁法、知恵、労働と技芸の時空間を作り出します。


HORSE《The Time Traveler》/阮義忠《Matsu Beigan 1979》|発電所
CNNやAFPにも取り上げられた、北竿において最も前線的かつ歴史的な緊張感を帯びる空間「軍魂発電所」が、今年も再び一般公開されます。台電のパブリックアート事業として複数のアーティストを招き、1975年に馬祖へ電力が供給されてから半世紀の時代の記憶に応答します。YI.ng Lighting Design Consultantによる《 Glory of Jun Hun (military spirit)》、王榆鈞さんによるサウンドスケープ《After the Kerosene Lamps: Roaring and Air-raid Shelters》が発電所の心臓部を再鼓動させます。
HORSEが統括する《The Time Traveler》では、9月から11月の週末にかけて11組のダンサーによる44回の現地パフォーマンスが行われ、観客を時の流れへと誘います。また、発電所1階では写真家・阮義忠さんの作品投影《Matsu Beigan 1979》が上映され、往年の北竿の栄光を映し出します。


張立人《FM81.11》 倪祥《I Am Right_ Side Story – [Needs a Beating]》|40拠点
同じく台湾電力パブリックアート事業による作品が北竿40拠点に展示されています。張立人さんは《FM81.11》延長完全版で戦地を再訪しました。倪祥さんの《I Am Right_ Side Story – [Needs a Beating]》は荒唐無稽な視点で戦備の日常を振り返ります。



林聖峰《Sparkling Abundance》|后沃聚落
高低に配置された酒がめを使い、閩東の家屋にまつわる物語や自家醸造の記憶に呼応。海の景観から軍事拠点、さらに集落の家屋へと連なる后沃の空間的な道筋を紡ぎます。

陳敬寶《Ordinary Household》|坂里集落
馬祖出身の海外在住写真家・陳敬宝さんが北竿に帰郷し、参加者と共に長い帰郷の旅へと誘います。坂里集落で最新シリーズ《Ordinary Household》を展示し、8組の地元長老たちの肖像を通じて、日常でありながら非凡な環境の姿を繊細に描き出します。

陳以軒《Weathering Lithography》|后沃集落
実験的な写真作品を通じ、島の気候や風化の痕跡をとらえ、それらを時間の映像言語として表現します。
【東莒】

木村崇人(日本)《A Day to Become Clouds with Two Islands》|猛澳港務ビル
アーティストは、東莒と香川県男木島の住民を招き、青写真技法による凧を制作しました。空へ舞い上がる凧は台湾と日本の夢と祝福を乗せ、国境を越えた美しい友情を象徴します。
【西莒】

陳界仁《Empire’s Borders II - Western Enterprises, Inc.》|西莒中正堂
西莒の「Western Enterprises, Inc.」の進駐から、後期における米軍顧問団の南竿駐留に至る歴史的背景がメインテーマの作品です。かつて前線の映画館であった西莒中正堂において、半フィクションの自伝的な「父を探す旅」を通じ、冷戦期「Western Enterprises, Inc.」の寓意的な現場を再訪します。

Pierre & Marie(カナダ)《Big Other》|中正門、青帆集落旧事務所、ガソリンスタンド側、西坵村入口、田沃集落老人活動センター
巨大で印象的な目を用いて環境建築を作り替え、建物にまるで生命が宿ったかのような光景を作り出します。その「見られている」ような不思議な感覚が参加者を包み込み、島嶼の境界と他者との関係について改めて考えさせられます。
【東引】

林美玲《Glimmering Memory》|東引郷倉庫
夜船に乗って東引に渡り、馬祖出身の林美玲さんによる《Glimmering Memory》は、漁船が港に戻る際に見える、途中に点在する古い家々の灯りと影を表現しています。
▋バスとフェリーのアートプロジェクト
新台馬フェリーの航行中、海上から聴覚による旅が始まります。黄心健さんチームがプロデュースし、アーティスト、林強さんとRyan J Raffaと共同制作したサウンド作品《Sound of the Beyond》を聞くことができます。
さらに、南竿と北竿にはそれぞれ一台ずつ「黄魚バス」が走行。イラストレーター鄒駿昇さんがデザインした《Where Time Tastes the Sea》が島々を駆け巡り移動するアートの媒体となっています。車体に描かれた黄魚が島を一周して走り抜ける姿は、日常の「バスを追いかける」光景すら、海のリズムや島の風情を帯びたものに変えてしまいます。

▋13のパフォーマンスアート、3か月にわたり開催
パフォーマンスアートについては、優人神鼓、舞蹈空間、簧格音楽、馬祖戲劇団、北角星戲劇団などによる《馬祖・こころの記録7 拍楸》、さらに文化部庄頭劇場、紙風車劇団、財団法人台北愛楽文教基金会、台北首督バレエ団が公演します。
▋ビエンナーレ公式ツアー、南竿と北竿の芸術風景を巡ります
第3回馬祖ビエンナーレでは初の公式日帰りツアーを開催します。馬祖全域で唯一の公式ツアーとして、南竿と北竿の作品スポットを巡り、ビエンナーレの革新的な風景を探求します。詳細は、お申し込みページをご覧ください。https://reurl.cc/9n7kNv
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南竿ツアー出発日:9/13、9/27、10/11、10/25、11/8
エリア:53拠点、77拠点、山隴リハーサル場、山隴旧体育館など6ヶ所の新作展示エリア等
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北竿ツアー出発日:9/14、9/28、10/12、10/26、11/2、11/9
エリア:北竿発電所、40拠点、芹壁、坂里や后沃集落等展示エリア
▋ ブランドとのコラボレーション、生活の中のビエンナーレを体感
馬祖ビエンナーレは今回、ファミリーマート、タイフーブルーイング、iPASS、ChicTrip、yoxi、iRent、そして馬祖の人々が誇る馬祖コーリャン酒など、多彩なブランドとコラボレーションします。これらのコラボレーションを通じて実際に訪れたことがなくても、日常生活の中でビエンナーレを感じていただけます。



【第3回馬祖ビエンナーレ開催概要】
▼名称:馬祖ビエンナーレ(馬祖国際芸術島)
▼テーマ:拍楸 —あなたの海、わたしの陸
▼日時:2025年9月5日(金)~11月16日(日)
▼会場:連江見馬祖列島(南竿、北竿、東莒、西莒、東引,5つの島々)
▼主催:連江県、文化総会
▼総合プロデュース:吳漢中(社計有限公司)
▼総合ディレクター:程詩郁(左腦創意)
▼総合運営:劉慧婷(白日夢創意)
▼入場:無料(一部事前予約制)
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