中澤希公「昨日、巡り合おうとしなくても」展が青森県立美術館で2026年1月16(金)・17(土)・18(日)日に開催
令和7年度文化庁メディア芸術育成支援事業に採択された展示として、2025年に青森県で行ったフィールドワークをもとに制作された新作個展

2026年1月16日(金)〜18日(日)の3日間、青森県立美術館にて中澤希公「昨日、巡り合おうとしなくても」展を開催します。東京藝術⼤学⼤学院に所属する中澤希公は14歳のときに⺟親を乳がんで亡くした経験をもとに、同様の経験をした⼈から亡き⺟への⼿紙をオンラインで募集する「死んだ⺟の⽇展」を、5⽉の⺟の⽇に合わせて2022年から毎年開催。これまでに約2,000通の⼿紙が集まり、多くの⼈の共感を呼んできました。
人との別れや物質の消失、記憶の薄れ──私たちは日々、死別だけでなく様々な喪失を経験しながら生きています。本展は、自身が経験した喪失の記憶を手繰り寄せては離れ、あるいは向き合うことで、日常生活のなかで共に生きていくための場所です。喪失とどう生きていくか? 泡のように生まれては消える記憶や感情と向き合い、その小さな呼吸たちに耳をすませることで、あなたのなかにある応えに少しだけ近づくことができるのではないでしょうか。
本展は、令和7年度文化庁メディア芸術育成支援事業に採択された展示として、2025年に青森県で行ったフィールドワークをもとに制作された新作個展です。青森の文化や風景、対話のなかで練られた本作を、ぜひご鑑賞ください。
■開催概要
展覧会名:中澤希公「昨日、巡り合おうとしなくても」
場所:青森県立美術館 コミュニティギャラリーA(青森市安田字近野185)
⽇時:2026年1月16 ⽇(金)〜18日(日) 09:30〜17:00
※9:30〜12:00,13:00〜17:00は作家在廊
参加料:無料
キュレーション:⽥尾圭⼀郎
空間エンジニア:桑原健
空間デザイナー:紀平陸
グラフィックデザイナー:張伊琳
翻訳:佐藤小百合
リサーチ補助:栗林志音・古井茉香・吉田悠馬
支援:令和7年度文化庁メディア芸術育成支援事業、株式会社共栄
協力:青森県いたこ巫技伝承保存協会
■アーティスト・ステイトメント
ときに、道の途中で、
過去の悲しみが、ふと浮かび上がる。
ときには、自分より早く流れていく雲を見て。
この空間は、忙しない日々のなかで置き去りにしてきた喪失と、
そっと再会するための場所でありたい。
歩くこと、見ること、立ち止まること。
その小さな行為の中で、記憶と感情が、ほんの少しやわらぐことを願っています。
■プロフィール
中澤希公(なかざわ・きく)
アーティスト。2002年、岩⼿県⽣まれ。慶應義塾⼤学環境情報学部を卒業後、東京藝術⼤学⼤学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻に進学。現在、修⼠1年⽣。2025年度より、世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズに選出。14歳の時に⺟親を亡くした経験から、死別の喪失体験をコンセプトにした作品やプロジェクトを発表。これまでに200⼈以上の死別経験者にインタビューを実施し、その経験をもとに企画した「死んだ⺟の⽇展」や「葬想式」で、2022年および2023年の「GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD」で優秀賞を受賞した。「死んだ⺟の⽇展」では2,000通を超える天国の母親への⼿紙をオンライン上に集め、朝⽇新聞やハフポストに掲載され社会的にも注⽬を集めた。2024年9⽉より、ロンドン芸術⼤学(Central Saint Martins)の4D FINE ARTコースに留学。2025年3月、慶應義塾大学の卒業設計「さようならの散歩道-遺された⼦供が亡き親との「絆」を再考する場の設計-」で、槇⽂彦・伊藤滋賞/SFC学会⾦賞を受賞。主な展示に、「死んだ⺟の⽇展」(2022〜25年)、「死んだけどあのね展」(渋⾕スクランブルスクエア、2021年)、「棺桶写真館」(渋⾕ 100BANCH、2021年)、「Wait for me, see you again」(Grove Gallery[ロンドン]、2024年)、「DIS:SOLVE とくとかとうとか」展(2025年)。

※参考過去作品

またね、いってきます、のつづき。
2025年
石鹸、水、木材、ポンプ、チューブ、ガラス、石、Aruduino
サイズ可変
青森県に残るイタコ文化や日本三大霊場・恐山でのリサーチを基点に、喪失を抱える人々が死者の気配や記憶に触れる新たな儀式的空間を創出。呼吸のリズムによって生まれ、儚く消える泡を媒介に、「応答なき死」とともに生きるあり方を提示する。

肌をつたって Along the skin
焼かれたセメントは冷たく硬いが、時間とともにヒビを重ね、微細な変化を見せる。これは、人が火葬され新たな姿となる過程や、死者と残された人との関係性の変容を象徴している。セメントの冷たさは、亡くなった人の不在や冷たさを想起させ、同時に記憶や思いの痕跡を映し出す。
2025年
パネルにセメント、釉薬、ジェッソ
H910×W1454

私はさようならって言いたい。 How Should I Say Goodbye?
本作では、物理的にも心の上でも遠ざかった死者の記憶を、泡の呼吸によって浮かび上がらせた作品。Arduinoを用い、呼吸のリズムに合わせて泡が生まれるようプログラムされている。泡はかたちを変えながら現れては消え、留まることがない。死別を経験した作者自身のみならず、誰もが自らのタイミングで「さようなら」と告げられるように。
2025年
石鹸、ビニール、木材、ポンプ、チューブ、ガラス、石、Aruduino
H100cm×W200cm×D400cm

ごちそうさまのかけら
日常的に家族として繰り返される食事と、その終わりの所作に着目した作品。母が母らしくいる時間は、記録として残されることが少なく、アルバムの中にもほとんど存在しない。無意識のうちに呼吸をするような、記録的ではない時間こそが、生活の大部分を占めている。特別な出来事ではなく、日々の生活の中に埋もれてきた時間や行為に目を向けることを試みている。
2025年
皿に箸、石鹸、ステンレス、ポンプ、水、チューブ、磁石
サイズ可変
【本件に関するお問い合せ先】
中澤希公 Mail:kiku.canvas@gmail.com
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