兵機海運株式会社の株式取得の目的について

堂島汽船株式会社

1.兵機海運株式会社の株式買付けの目的について

  • 株式会社富洋海運の完全子会社である堂島汽船株式会社(2社をあわせて「富洋海運グループ」といいます。)は、2024年10月18日に兵機海運株式会社の株式に対する公開買付けを開始しました。株式取得の目的は、兵機海運との早期の資本業務提携に向けた、発言力を強化することでした。

  • 当該公開買付けでは、公開買付け後に議決権ベースで19%(上限)に相当する兵機海運株式の獲得を目指し、買付け株式数が上限に満たなかった場合には、公開買付け後も上限に満たなかった範囲で追加で取得する意向を表明しておりました。2024年12月5日の公開買付期間の終了後、富洋海運グループは市場内での株式の買付けを行っておりますが、公開買付届出書にて示した意向に沿ったものとなります。

  • 兵機海運株式取得の目的は、公開買付け開始時に提出した公開買付届出書に記載の内容から変更がなく、そのため、本資料は新たな目的を表明するものではございません。本資料は公開買付届出書に記載済みの内容に沿って、資本業務提携に関する考えについて、兵機海運株主をはじめとした関係者の皆様に改めてご説明を差し上げる主旨でございます。

  • なお、富洋海運グループは兵機海運様より経営情報の開示は受けていないため、公開情報のみに基づいた分析を行っております。

2.改善に取り組みたい、兵機海運を取り巻く課題

① 収益機会の逸失

  • 特に2020年以降の4年間に渡り、外航事業ブームで多くの海運会社が利益を積み上げた中、外航船の保有が1隻のみであった兵機海運様は、外部から船舶を借り受けるコストが上昇し、外航事業から大きな利益を積み上げられなかったことが財務諸表から推察されます。

  • 高収益を上げられるはずであった領域での収益機会を複数年に渡って逃したことからの学びがあるべきで、今後の成長機会を見定めた上で経営資源を割り振っていくには、海外事業の強化を含めた事業戦略を持つことが企業価値向上の観点からは重要であると考えます。

② 成長戦略の必要性

  • 過去の業績から拝見するに、既存ビジネスの構造では収益性の改善が難しいように見受けられます。事業成長を実現させるには、最低限競合と同程度の収益性を目指すべく、競合に先んじたビジネス展開への挑戦が必要と考えております。

  • 船舶の建造価格が高騰しており、内航事業では老齢船を代替して採算を保つことが容易ではない中で、現状維持という最低限の責務を果たすにも戦略が必要と考えます。

  • 上場企業として企業価値向上を促進するためには、兵庫県を中心とした限られた地域での商圏にとどまるのではなく、それ以外の領域にも目を向けることが必要であると考えます。これにより、既存の関西圏でのビジネスや取引先との関係を維持しつつも、新たな収益の確保ができるものと思料しております。

3.マーケットの示唆

① 同業他社との現状対比

  • 成長性について、兵機海運様の2015年3月期から2024年3月期までの売上高の年平均成長率(CAGR)は年率0.6%(138億円⇒146億円)とほぼ横ばいの推移であり、事業の拡大が見られない状況です。

  • 収益性についても、海運事業を主たる事業とされているところ、同業他社比で見劣りをしております。現状の商圏の拡張では収益構造が変わらないため、利益率の改善には限界があると考えます。

  • 近年、資本効率を意識した経営管理の指標として、ROIC(投下資本利益率)に焦点が当たっております。兵機海運様のROICを試算したところ3%台にあり、利益率の水準としてはより高めていく余地があるかと拝察しております。

② 海運ビジネスでは、市況の動きに機動的に対応できる態勢が不可欠

  • 海運市況には景気サイクルがあると言われています。リーマンショック以降、2019年までダウンサイクルにありましたが、その間に次のアップサイクルに備えた打ち手に欠いたため、2020年以降のコロナ禍による物流網の混乱を契機とした運賃・用船料高騰を通じた収益機会を逃したことがうかがわれます。日本市場は世界市場の一部であり、国内ビジネスであっても、世界動向を把握した上での経営推進が必要となります。

  • また、原材料や人件費等の高騰により造船価格は高止まりしております。内航海運において14歳以上の老齢船が7割近くを占める(出典:国土交通省海事局)と言われる中、現在の収益構造では、老齢船の入れ替えの投資において採算を成立させることが容易ではございません。その観点からも、既存ビジネスを維持するための収益多様化の策として、現在のビジネスの座組みを越えて目を向ける必要があると考えております。

③ 現状維持ではビジネスの縮小に直面

  • 兵機海運様の主な貨物取扱い拠点である姫路港において、貨物取扱量は減少傾向にございます(出典:兵庫県)。兵機海運様の永続的な企業価値向上の道筋を考えた場合、現状の収益構造の延長線上でのビジネス推進には成長性に限界があると考えております。既存の取引先に依拠するのではなく、新たな商圏を開拓していく取り組みが必要と思われます。

  • 大和工業様からの売上が3割近くを占め、有価証券報告書において長年にわたり、特定の取引先(高売上比率先)の動向が事業等のリスクとして述べられております。富洋海運グループからの提案は、現状の閉塞感を打破する策であると共に売上集中リスクの低減という重要な経営テーマにも自ずと対処できるものであり、更に兵機海運様の事業ポートフォリオ形成上の矛盾もございません。

4.企業価値向上への道筋 ~ 両社の強みを掛け合わせ、新領域を梃子として成長戦略を推進

  • 既存の取引先の皆様との関係上、取引条件の改善には一定の難易度が伴うものと推察しております。また、兵機海運様と大和工業様は2024年12月17日に資本提携および業務提携の覚書を締結されており、日本国内の事業の強化を謳っておりますが、今後の日本国内のに荷動きに大きな増加はなく事業マーケットの拡大も期待できないものと認識しております。当該発表で意図している連携強化により、大和工業様の物流を請け負う他社の商圏が兵機海運様に代替されるようなことがあれば、既存の商圏に身を置く関係者の方々に負の影響が出るのではないかと懸念しております。

  • その一方、富洋海運グループとの業務提携は新たな収益の確保となり、既存の商圏は維持しつつ、兵機海運様の企業価値向上を自ずと実現できると考えております。これまでに兵機海運様に対しては、提案書、公開買付届出書、対質問回答報告書並びにご面談等でお伝えしてきました通り、兵機海運様の内航、陸運及び港運での強みと、富洋海運グループの外航海運での強みを掛け合わせ、両者の海上輸送、船員育成をはじめとしたノウハウの相互作用を実現していきたいと考えております。

  • また、富洋海運グループにて連携案の一つとして考えている脱炭素領域は、兵機海運様の主要顧客である鉄鋼業においても重要なテーマであると理解しております。詳細な計画は秘匿性が高いことから、兵機海運様に提示済みの内容を本資料にて再掲示することは控えさせていただきますが、一般論として、脱炭素関連で日本にマーケットが発生しうることは多くの専門家により示唆されております。

5.富洋海運グループとしてもたらせる価値の再整理

  • 国際的な海運会社・荷主企業との取引:兵機海運様の取引先に見劣りせず、かつ重なりもないと認識しております。

  • 高度な安全基準が求められる石油タンカーの管理を通じた、各種船型の船舶管理ノウハウ:海事ルールは頻繁にアップデートされ、海運会社として船舶の安全運航には多くの経営リソースを割く必要がございます。既に兵機海運様の船舶管理の水準は高いものであると拝察しておりますが、国際的な海事ルールに精通した富洋海運グループと連携することで、国際基準を意識した、内航事業において差別化できる品質の船舶管理を継続していけるものと考えております。

  • 船員育成のノウハウ:内航事業において船員の確保は業界全体での課題と認識しております。日本に本社を置く富洋海運グループとしても、この課題は是非とも価値貢献をしたい領域であり、外航事業におけるノウハウを内航事業に転用して、兵機海運様と船員育成環境を広げていくことで、内航事業全体への貢献ができるものと考えております。

  • 海事クラスターへの積極関与:業界組織への参加、情報発信等を通じて業界内の接点を多く持っております。兵機海運様にない繋がりも少なくないと思われますので、富洋海運グループのネットワークをご活用いただけます。以下、例の一部です。

  • スタートアップ企業への投資:脱炭素は実現すべき社会課題であると認識しております。ゲームチェンジャーとなりうるスタートアップ企業へ投資を行い、事業連携することで社会貢献を実現したいと考えております。富洋海運グループがこれまでの投資や業界参加で積み上げてきたネットワークをご活用いただきつつ、新たなビジネスの形成をしていくと共に、鉄鋼業でも重要課題とされる脱炭素展開について、価値貢献を共にしていきたいと考えております。

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会社概要

堂島汽船株式会社

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URL
-
業種
倉庫・運輸関連業
本社所在地
大阪府大阪市北区堂島2-3-8
電話番号
03-6341-0891
代表者名
久保大介
上場
未上場
資本金
-
設立
2024年09月