海外製品の流入、後継者不足…衰退する地場産業国内生産量日本一(※)の「奈良の靴下」を世界に

倒産の危機を乗り越え、創業100周年に向けて

有限会社巽繊維工業所

2024年2月20日 11時01分

奈良県において靴下・繊維製品の製造販売を行う有限会社巽繊維工業所(所在地：奈良県橿原市／代表取締役：巽亮滋)は、2028年に創業100周年を迎えます。
一時は倒産の危機がありながらも、独自の着眼点とお客さまの声を大切にした企画開発を続け、5本指靴下「GUTS-MAN(ガッツマン)」をはじめとしたオリジナル商品を展開しております。
次の100年も社員・家族一丸となって、奈良の地場産業の活性化に寄与するとともに、国内外に向けて高機能な「奈良の靴下」の発信を行って参ります。
（※日本靴下協会2022年度版「産地別生産量推移」http://www.js-hosiery.jp/data.htmlに基づく）

<企業ホームページ>https://choku.co.jp/

創業1928年、足元からみなさまを支えています

当社は1928年に創業し、国内靴下生産量日本一での奈良県において、靴下・繊維製品の製造販売を行っています。

「お客さまの声を第一に」をモットーに商品を企画開発、5本指靴下「GUTS-MAN(ガッツマン)」は、現役の自衛隊隊員の要望に応える形で開発した当社の主力商品です。他にも、幼稚園児の保護者さまから頂いたお声を反映した「お名前刺繍入り靴下」や、夏でも着けられる薄い腹巻き「ならまき」など新商品の開発、そして海外展開等の新たなチャレンジを積極的に行っています。

現役自衛隊隊員の声から生まれた5本指靴下「GUTS-MAN」(上)、「お名前刺繍入り靴下」(左下)と薄手の腹巻き「ならまき」(右下)

最盛期から9割減、衰退する国内の靴下製造業

奈良県における靴下の生産は国内シェア6割を占め、県が誇る地場産業の一つです。

しかし、安価な海外製品の台頭による厳しい価格競争や、後継者不足の問題により、ひとつひとつの工程に職人の手作業が必要で手間がかかる国産靴下の市場規模は1991年の最盛期に対して約9割減となり、企業数も減少の一途を辿るなど厳しい状況におかれています。

＜靴下輸出入・国内生産量推移＞※生産＝日本靴下工業組合連合会調査／輸入＝財務省貿易統計より計算

「奈良の靴下」を世界のブランドに

奈良には、大手企業の下請工場として培ってきた技術やそれを支える地域資源、そして企業連携があります。

当社はこれらを土台に新しい取り組みとして、奈良県産業振興総合センターの辻坂敏之博士の研究成果や信州大学繊維学部松本陽一博士、西松豊典博士との共同研究から得られたエビデンスに基づいた製品開発や、行政とのコラボレーションなどを積極的に行っております。

また、2015年から近畿経済産業局の事業『クールジャパン』の一環『DISCOVER KANSAIプロジェクト inパリ』に選定され、現在フランスおよびアメリカでの展開を行っており、今後も益々積極的に海外での展開に力を入れて参ります。

今後も地域と連携しながら、地場産業である「奈良の靴下」を世界に通じるブランドに育て、地場産業全体の活性化を目指します。

倒産の危機を乗り越え2028年に創業100年

現代表取締役の巽亮滋は、2003年に先代である父より代表職を引き継ぎました。時代はバブル崩壊後に訪れた平成不況の真っ只中であり、それまでの事業の中心であった大口のOEM受注先企業が総じて人件費の安い海外生産へ流れ毎年20％～30％の割合で売上が減少、順調だった経営が一気に傾きます。銀行への返済が年商の何倍にも膨み、一時は自身の生命保険を負債の返済に充てることを真剣に考えてしまうほどでした。

「下請け」ではなく「顔のみえる」製品を

代表職を引き継いですぐに、限界を感じていたOEM生産から自社製品の開発・販売に舵を切りました。現在の主力商品である「GUTS-MAN(ガッツマン)」の本格的な販売開始が2004年、「お名前刺繍入り靴下」は2020年、「ならまき」が2021年、以降現在に至るまで、独自の企画と丁寧なものづくりに注力し、海外との価格競争に巻き込まれない商品開発を行っています。

私たちは、『頑張る人の足元を応援したい。』一念でものづくりを続けてきました。しかし、応援するつもりが、応援いただけるお客様・協力工場・従業員が突然増え出しました。今後も感謝の気持ちで、ものづくりを続けて参ります。

代表取締役　巽亮滋