オリジナルマインド「第11回 ものづくり文化展」の受賞作品を発表
人類社会の新たな豊かさの発見と創造をめざして
「ものづくり文化展」は、株式会社オリジナルマインドが2011年から毎年開催している「メカトロニクス作品コンテスト」。審査委員に、芸術ユニット「明和電機」の土佐信道氏と、オリジナルマインド社長の中村一を迎え、第11回となる今回は、52点の応募をいただきました。
■ 受賞者および受賞作品
最優秀賞
制作者:したーじゅ
「機械式時計(自動巻き)」
優秀賞
制作者:中山 桃歌
「SEE MEDICINE」
土佐信道賞
制作者:てらおか現象
「ニャセットテープ」
中村一賞
制作者:鈴木 完吾
「機械式7セグ時計」
入選
制作者:勝田 哲司
「ミュージック・ダービー」
入選
制作者:中島 慎太郎
「#ANYCAP ~ボトルキャップから生まれたキーボード~」
入選
制作者:小川 寛昌
「卓上ワイヤカット放電加工機の製作」
入選
制作者:大江戸テクニカ
「カセットテープDJ装置」
受賞作品の詳細はこちら。
https://www.originalmind.co.jp/cultural_exhibition2021/2021/#list
■ 審査員総評
土佐 信道(明和電機 代表取締役社長)
入選した作品を眺めていると、そこには思わずクスっと笑ってしまうアイデアや、なるほどなあ、と感心してしまうアイデアがありました。それはアイデアの向こう側に、皆さん人間味が見えたからだと思います。そんな中、最優秀賞を受賞したしたーじゅさんの作品は、アイディアというよりも、ひたすら手を動かして作るという部分に感動する作品でした。
ものづくりにはまず、何を作るか?という発想アイデアがとても大事ですが、時には純粋にモノを作り上げる執念のようなものが人を感動させるのをだなあと、あらためて感じました。
中村 一(株式会社オリジナルマインド社長)
最近、「スマホ脳」という本を知りました。世界的なベストセラーになった本だそうです。著者で精神科医のハンセン氏は、「スマホの便利さに溺れていると脳が蝕まれていく」と言います。私も以前から、スマホは継続する力や、深く追及する力を低下させてしまうのではないかと感じていたので、この本に共感するところがたくさんありました。たぶん私だけではなく、多くの人がスマホの使用に何らかの危機感を感じていたのでしょう。だからこそベストセラーになったのではないでしょうか。
そういえば以前、かなり難易度の高いものづくりをしている人から、「あまりネットは見ない」という話を聞いたことがあります。同じようなものを作っている人がどのようにして作品を作っているかといったことをほとんど調べないと言うのです。
その時はとても意外に感じました。何かを作るときには、他の人を参考にするのが当たり前だと思っていたからです。しかしこの本を知ってからは、それは確かに技術面では大切ではあるのですが、「継続」という面ではあまりよくない場合があると思うようになりました。というのは、他の人が上手に作っているところを見ると、すぐにそのレベルに到達しようとして焦りを感じ、ショートカットしようとしてしまう。しかしそれでは当然うまくいかず、挫折につながってしまいやすいのではないか。
京セラの創業者として有名な稲森和夫さんの著書に「生き方」という本があります。その中で稲盛さんは、「夢を現実に変え、思いを成就させる人材は、決して優秀で利発な人材ではなく、平凡で鈍な人材である」というようなことが書いてありました。「優秀な人は、その才知ゆえになまじ先が見えるから、つい、今日一日をじっくり生きる亀の歩みを厭い、脱兎のごとく最短距離を行こうとする。しかし、功を焦るあまり、思わぬところで足をとられることも少なくない。」と語っています。
昨今では、ものづくりに限らず、その分野の達人の卓越した技術を、スマホを覗けばすぐに見つけることができます。でも、それと同じことをやろうとしたとき、無意識だから気が付きにくいことですが、すぐに辿り着こうとして焦ってしまうのだと思います。その結果、いつの間にか、何でもかんでもインスタント的に、ショートカット的に済まそうという気持ちになってしまっているのではないでしょうか。それどころか、最初の一歩さえ、踏み出すことをやめてしまっているかも知れません。
そんな中で、今回のものづくり文化展にご応募いただいた作品を拝見すると、長く険しい道のりを歩き通したからこそ完成できた作品ばかりで、私はその作り手たちに「たくましさ」を感じ、とても嬉しくなりました。ましてや、ものづくり文化展の応募作品は「動くもの」が多い。頭に思い描いたイメージを、実際に動くものとして完成させることができる応募者の方々は、本当にたくましい作り手なのです。
ただその一方で、もしかしたらこのような作り手は今後減っていくかもしれないという危機感を持っています。インスタント的に、ショートカット的に簡単にできるものであれば手を付けるが、あまりに長い道のりを必要とするものづくりをする人は減るかもしれないという危機感です。
そんなことを感じていた時に、なんとなくYouTubeを見ていたら、「街録ch」というチャンネルで、タレントの中山秀征さんが、最近のテレビ番組の傾向について、「瞬発的なもの、あるいは情報的なものはあるけれど、作りものがなくなってきている」と語っていました。その「作りもの」というのは、稽古をしてやる番組や、コントでもリハーサルをして組み立ててやる番組というように、ちゃんと練習して作ってできる番組のことだと言います。私はそれを聞いて、さきほどのようなことが、ものづくりだけではなく、芸能の世界でも同様に起きているのかも知れないと思いました。
膨大な情報に囲まれるうちに、何でもかんでもインスタント的に、ショートカット的に済ませたくなるムードの中で、長い道のりを必要とするものづくりや、研ぎ澄まされた感性が必要なものづくりは、今後減っていってしまうかもしれない。そうだとしたら、とてもさみしいと私は思いました。
でもその一方で、そういうことができる人や作品の価値はどんどん上がっていくのではないか、そして、そのニーズに応えることができるのは、私たち「小さなつくり手」なのではないか、と思いました。
私たちは以前から、単に性能が高い、機能が豊富といったことだけでは、もう人々の心を満たすことはできない時代になってきたと感じています。作品の中に情緒が感じられたり、世界観が感じられたり、というように人々の心を豊かにするものが今後は求められていくでしょう。
そうしたものは、インスタント的でショートカット的な方法では作れるはずがありません。だから私たちもみなさんと一緒に、たくましく、長い道のりを着実に歩みながら、そのニーズに応えるような、人々の心を豊かにするようなものを作っていきたい。今回ご応募くださった、たくましい作り手の方々を見て、あらためてそう思いました。
■ ものづくり文化展について
私たちには今、生きるために必要なものは充分に揃っている。しかし、何のために生きるのか。どんな意味があるのか。それに答えてくれるものが何もない。
私たち小さなつくり手に求められているのは、それに答えるような文化的豊かさを感じさせるものを生み出すことではないか。
ものづくり文化展は、文化的豊かさを生み出すつくり手を募り、審査を通じて、人類社会の新たな豊かさの発見と創造をめざします。
■ お問い合わせ先
広報窓口:こちらよりご連絡下さい。
https://www.originalmind.co.jp/contact/index.php
すべての画像