Chiptip、FPGAをKubernetesで運用するソフトウェア「vFPGA Orchestrator」を提供開始

EmotionXの完全準同型暗号(FHE)クラウドに採用。ASICプロトタイピング・5G/6G通信・耐量子暗号にも展開

Chiptip Technology株式会社

FPGAをデータセンター規模で使おうとすると、2つの壁に当たります。ひとつは運用です。FPGAはクラウドの標準的な管理の仕組みに乗らないため、回路の配布・稼働状態の監視・入れ替えを担う仕組みを自前で用意し、台数が増えてもそれを維持し続けることになります。もうひとつは性能です。ホストCPUを経由する構成では、FPGAがどれだけ速くても手前のCPUがボトルネックになってしまいます。

Chiptip Technology株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO:福田エリック、以下「Chiptip」)は、この2つを解くプラットフォームソフトウェア vFPGA Orchestrator™ の提供を開始しました。FPGAをKubernetes(クバネティス)の管理下に置き、同時にホストCPUを介さずネットワークへ直結させることで、FPGAクラウドの構築・運用を、クラウド上の一般的なソフトウェアと同じ手順・同じツールで行えるようにします。

最初の採用事例は、EmotionX株式会社(以下「EmotionX」)が構築する、完全準同型暗号(FHE)による秘密計算クラウドです。

ただし vFPGA Orchestrator が解く課題は、秘密計算に固有のものではありません。専用ハードウェアで大量の計算を処理したいが、ASICを作る数年と数十億〜数百億円がない。この課題は、5G/6G通信、耐量子暗号(PQC)、ネットワークセキュリティ機器、そしてASICプロトタイピングに共通しています。vFPGA Orchestrator は、その共通の答えになります。

Kubernetes とは何か、vFPGA とは何か

Kubernetes は、世界中のデータセンターで「どの処理をどのサーバーに任せるか」を自動的に決めているソフトウェアです。管制塔にあたる役割で、何万台の規模でも成立します。クラウド上のソフトウェアは、いまほぼ例外なくこの上で動いています。台数を増やす、エラーで止まった処理を新しく起動して入れ替える、新しいバージョンのソフトウェアに段階的にアップデートする——こうした作業が、設備の台数に関係なく同じ手順で済むのが利点です。

この管制塔が扱える対象は、これまでCPUとメモリを持つサーバー、およびその上で動くコンテナ(アプリケーションを実行環境ごと箱に詰めたもの)に限られていました。Chiptipは、FPGAをこの管制塔が直接指示できる対象になるまで作り込みました。

vFPGA は、そのときKubernetesから1つの計算資源として見えるFPGAの単位です。Kubernetesがコンテナを配置するのと同じ操作で、vFPGAを確保し、そこへ回路を載せ、入れ替えられます。運用する側から見ると、FPGAがサーバーと同じように割り当てて増やせる計算資源になるということです。

FPGAクラウドはすでにある。それでも普通の選択肢になっていない2つの理由

FPGAをクラウドで貸し出すサービス自体は、すでに大手クラウド事業者が提供しており、その上で大規模なアプリケーションも動いています。それでも、サーバーを借りるのと同じ気軽さで使われているとは言えません。理由は2つあります。

理由1:クラウドの標準的な運用系に乗っていなかった

FPGAはKubernetesが扱える対象になっていませんでした。そのためFPGAのためだけに別の管理系を用意することになり、運用する側から見れば、慣れた手順が通じない特別な設備が増えます。台数を増やすほど、この自前の仕組みを維持する手間が積み上がっていきます。

理由2:データパスがホストCPUに縛られていた

従来の構成では、FPGAはホストCPUを経由してデータを受け取ります。FPGA自体がどれだけ速くても、手前のCPUが追いつかなければそこで詰まります。この制約があるために、FPGAで加速して採算が合うワークロードはかなり限られていました。

Chiptipが取り組んだのは、デバイスの素の性能ではなくこの2点です。運用系と、データの届け方。ここが解ければ、FPGAは限られた用途の特殊な設備ではなく、クラウドの一般的な計算資源になります。

vFPGA Orchestrator で何ができるか

クラウドと同じ運用系で動かせる(理由1への答え)

配置し、監視し、入れ替える。この一連の作業を、コンテナの運用と同じ手順・同じツールで行えます。FPGA専用の管理基盤を内製する必要がありません。

ホストを経由せず、ネットワークに直結する(理由2への答え)

FPGAをネットワークへ直接つなぐ構成を、ChiptipはネットワークFPGAと呼んでいます。CPUホップ分のレイテンシがなくなり、CPUが性能のボトルネックになることもなくなります。

ここで効くのは速度そのものより、適用できるワークロードの範囲です。従来はCPUが供給できる範囲でしか効果が出ないため、FPGAを使う価値があるのは限られた処理だけでした。ボトルネックが外れると、その線引きが動きます。これまで採算が合わなかった処理までFPGAで引き受けられるようになります。ホスト側のサーバーを必要としないためノード単価も下がり、必要な台数だけ増やしていく形の計算基盤を安く組めます。

ASICプロトタイピング環境になる

自社ASICへ進む場合、その前段の検証環境としてそのまま使えます。ここで重要なのは、回路が設計どおり動くかを確かめるだけではないという点です。vFPGA Orchestrator の上では実サービスとして動かせるので、利用者に使ってもらいながら、どの機能が本当に必要とされるかを確かめられます。ASICは一度作ると後から直せません。仕様を凍結する前に市場の答えを知っておけるかどうかが、数年と多額の投資を左右します。

ASICへ移行しても運用系が切れない

FPGAでの実証を経てASICへ移行したあとも、同じプラットフォームを続けて使えます。Kubernetesによる運用の仕組みは移行の前後で変わらないため、FPGA期に積み上げた運用のノウハウをそのまま引き継げます。土台のハードウェアが入れ替わっても運用は途切れません。

これらの仕組みは、EmotionXが自社の秘密計算サービスのために築いたFPGAクラウドを、将来的に第三者にも開放していくことも可能にします。自社サービスのために買った設備が、そのまま外部へ提供できる計算資源になるということです。

vFPGA Orchestrator の基礎となる技術については、Chiptipが特許を取得しています(特許第7611613号「情報処理システム、情報処理装置、サーバ装置、プログラム、リコンフィギャラブルデバイス、又は方法」)。

最初の適用先が秘密計算である理由

今回 vFPGA Orchestrator を採用したEmotionXは、キオクシアの研究開発成果をもとに設立されたディープテック企業です。完全準同型暗号(FHE)を中核に、預けたデータの中身が事業者にも見えない暗号計算インフラの実現を目指しています。この技術を実用の速度で動かすためにFPGAによる高速化を進めており、その計算基盤の運用に vFPGA Orchestrator が使われています。

EmotionXは、FPGAで開発した回路をASIC化してさらなる性能向上を目指す研究開発を進める一方、ソフトウェア・アプリケーションも含めた社会実装を最優先に置いています。すでに開発した回路を、大規模なFPGA基盤の上で商用化したい——このニーズを叶えたのが vFPGA Orchestrator です。

FHEは、平文での計算に比べて計算量が桁違いに多くなります。専用回路による加速が、実用化の前提条件そのものになる領域です。つまり秘密計算は、この種の基盤にとって最も条件の厳しい相手です。そこで成立するなら、他の用途でも通用します。

そして繰り返しになりますが、vFPGA Orchestrator の仕組みに秘密計算固有の要素はありません。開発したハードウェア技術を、ASICの数年と数十億〜数百億円を待たずに市場へ投入したい——このニーズは、暗号処理、5G/6Gの通信設備、耐量子暗号(PQC)、ネットワークセキュリティ機器など、多くの分野に共通しています。

半導体開発の2つの壁と、Chiptipが目指すもの

ASIC開発のコストは、微細化が進むにつれて膨らみ続けています。最先端プロセスでは1製品あたり1000億円規模に達しつつあります。時間の壁も同じで、設計を始めてから完成までに数年かかり、その間にクラウドの世界は何度も方向を変えます。

この2つの壁があるために、半導体開発は資金力のある巨大企業だけが挑める領域になりました。新しい発想を持つスタートアップは、発想の良し悪しではなく資金の量で門前払いされます。Chiptipは、書き換えられるハードウェアとクラウドの運用技術を組み合わせることで、この構造を変えようとしています。

今後の展望

Chiptipは、データセンター規模でのFPGA運用に向けて vFPGA Orchestrator の実証を進めます。同じFPGAの群を複数の用途で使い回すことで、設備が遊んでいる時間を減らし、計算1回あたりのコストを下げることを目指します。

代表コメント

「チップ開発は、これまで限られた企業の特権でした。私たちはそれを変えます。

暗号を解かずに計算するという、社会的な意義が大きく、しかも計算量の面で極めて厳しい技術に正面から取り組むEmotionXと協業できることを、大変光栄に思います。資金力の限られるスタートアップでも、書き換えられるハードウェアとクラウドの運用技術を組み合わせれば、世界を変えるハードウェアに挑める。その可能性を、実際に動くプロダクトとして示せたことに大きな手応えを感じています。


秘密計算は出発点です。専用のハードウェアが必要なのに、ASICを作る時間も資金もない。この悩みはあらゆる計算分野に共通しています。どれだけ資金を持っているかではなく、どれだけ面白いアイデアを持っているかで勝負が決まる。そういう世界を、データセンター規模で実現していきます。」


Chiptip Technology株式会社 代表取締役CEO 福田エリック

EmotionXコメント

「従来、FPGAはプロトタイプのための計算基盤でした。専用半導体の開発が微細化とともに高度化するなか、FPGAが商用の計算基盤としても担える領域は広がっています。FPGAで実用のサービスを立ち上げ、必要に応じて専用半導体へ進む——その両方を同じ運用の上で回せる未来を、Chiptipとともに描いてきました。

ホイッスルをひと吹きすれば、FPGAが一斉に動き出す。Chiptipのロゴが表すとおりの vFPGA Orchestrator によって、FPGA計算機の台数に応じて暗号計算の性能を伸ばせるようになりました。


今後、データセンターにFPGA計算基盤を拡張し、計算ニーズに合わせて先端半導体の設計開発を進めていきます。また、FPGA計算資源を他者に多目的に開放し、有用に利活用していただくことも検討します。」

EmotionX株式会社 代表取締役CEO 吉水康人

FPGAクラウドの構築・運用をご検討中の方へ

Chiptipは、FPGAクラウドを構築・運用する事業者向けに vFPGA Orchestrator を提供しています。以下に該当する方は、お問い合わせください。

  • FPGAを数十台以上の規模で運用しており、管理系の内製に負担を感じている

  • ホストCPUがボトルネックになり、FPGAの性能を出しきれていない

  • ASIC開発を検討しており、その前段で実サービスとして要件を確かめたい

技術情報: https://chiptip.tech/technologies/

お問い合わせ: https://chiptip.tech/contact/ / info@chiptip.tech

用語解説

Kubernetes(クバネティス):クラウドのデータセンターで、どの処理をどのサーバーに任せるかを自動的に決めるソフトウェア。世界中のクラウド事業者が標準的に使っている。

コンテナ:アプリケーションを実行環境ごと箱に詰め、どのサーバーでも同じように動かせるようにしたもの。Kubernetesが管理する基本単位。

vFPGA:Kubernetesから1つの計算資源として扱えるようにしたFPGAの単位。コンテナを配置するのと同じ操作で確保し、回路を載せ替えられる。

秘密計算:データを暗号化したまま計算する技術。預け先にもデータの中身が見えない。今回EmotionXが用いているのは完全準同型暗号(FHE)と呼ばれる方式。

完全準同型暗号(FHE):秘密計算を実現する方式のひとつ。暗号化されたデータを復号せずに、四則演算を含む任意の演算を行える。演算の種類に制限がないことから「完全」と呼ばれる。平文での計算に比べ計算量が桁違いに大きく、実用化には専用ハードウェアによる高速化が前提になる。

会社概要

Chiptip Technology株式会社

会社名:Chiptip Technology株式会社
所在地:東京都港区六本木7丁目3番2号 ラポール乃木坂305号
代表者:代表取締役CEO 福田エリック
事業内容:FPGAクラウドを構築・運用するためのプラットフォームソフトウェア vFPGA Orchestrator の開発・提供。半導体開発を民主化し、予算の大きさではなくアイデアの大きさが未来のコンピューティングを切り拓く世界を目指す
URL:https://chiptip.tech/

EmotionX株式会社

会社名:EmotionX株式会社
所在地:東京都港区芝浦3丁目1-21 田町ステーションタワーS
代表者:代表取締役CEO 吉水康人
事業内容:キオクシアからカーブアウトして設立されたスタートアップ。FHEの高速処理技術を核に、準同型暗号計算のクラウド基盤と専用ハードウェアを開発し、防衛・宇宙・金融・ライフサイエンス・半導体など幅広い領域で、安全かつ効率的なデータ活用の実現を目指す
URL:https://www.emotionx.co.jp/

本リリースに関するお問い合わせ

Chiptip Technology株式会社
E-mail: info@chiptip.tech

vFPGA Orchestrator は Chiptip Technology株式会社の商標です。

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会社概要

Chiptip Technology株式会社

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URL
https://chiptip.tech/
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区六本木7-3-2 ラポール乃木坂305
電話番号
-
代表者名
福田エリック駿
上場
未上場
資本金
-
設立
2019年09月