アルパカ免疫により得られた抗体巨大ライブラリから、トリプルネガティブ乳がん特異的な抗体を統計学的手法で発掘

トリプルネガティブ乳がんの診断と治療を解決するための新規バイオマーカーを報告:抗体ビッグデータと数理解析の成果

株式会社COGNANO

 COGNANO, Inc.(京都)、COGNANOUS, Inc.(デラウェア)、および Biorhodes, Inc. (京都)のチームは、トリプルネガティブ乳がん (TNBC) に特異的なバイオマーカー抗体を発見したと発表しました。 乳がんは、2022 年のアメリカ人女性の死亡原因の第 2 位でした。これまで3 つのホルモン受容体の発見により、多くの患者の予後が改善され余命が延長しました。 しかし、受容体発現が低い患者はTNBCと診断され、依然として最悪の予後を示しています。著者らは、免疫されたアルパカからの抗体遺伝子データベースを使用した計算アプローチにより、TNBC がん細胞を示す複数の抗体を得ました。 この結果は、TNBC 治療に適した複数の標的分子が新たに発見されたことも意味します。 著者らは、COGNANOのアルゴリズムが、Unmet Medical Needsを解決するための治療標的を発見できると述べています。
 この成果は、2023年2月23日にbioRxivにプレプリント公開されました。

Fig. 1. TNBC89バイオマーカー(赤) が、エストロゲン受容体(緑)の発現が低い浸潤性乳管癌を染めている。Fig. 1. TNBC89バイオマーカー(赤) が、エストロゲン受容体(緑)の発現が低い浸潤性乳管癌を染めている。

Fig. 2. TNBC47バイオマーカー(赤) が、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(Her2, 緑)が発現していない浸潤性乳管癌を染めている。Fig. 2. TNBC47バイオマーカー(赤) が、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(Her2, 緑)が発現していない浸潤性乳管癌を染めている。

The research was published on the bioRxiv preprint server on February 23, 2023.
Title: Statistical mining of triple-negative breast cancer-specific nanobodies among large libraries from immunized alpacas.
Authors: Ryota Maeda, Hiroyuki Yamazaki, Ryoga Kobayashi, Seishiro Yamamoto, Kazuki Kasai, Akihiro Imura* (*Correspondence author)
DOI: 10.1101/2023.02.23.529685
URL: https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.02.23.529685v1

1. 背景
 過去40年間、標的分子探索の努力が実を結び、Her2、EGFR、PD1-L、OX40などの画期的な創薬標的分子が発見されました。 現在、創薬エンジニアリングである「ADC:抗体薬物複合体」や「CAR-T」などを用いて、標的分子に対し薬を到達させる「分子標的薬」が主流となっています。 一方で、膵臓がんや胆管がんなど、いまだに有効な治療薬がないタイプもあり、アンメットメディカルニーズと呼ばれています。 その中で最も恐ろしいのはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)で、Her2やホルモン受容体などの既知のバイオマーカーの発現が低く、乳がんの15%を占める集団です。COGNANOチーム( https://www.cognano.co.jp/ )は、TNBCにおける治療標的の候補分子を発見しようと試みました。私たちの体は、少なくとも数十万種類のタンパク質を発現しています。多数のタンパク質の中からがん細胞だけに発現する希少な分子を探索するには、巨大なデータベースと探索力を必要とします。それを満たすには、生物が持つ免疫機構は最高のシステムと考えられます。 現時点では、生物の免疫システムがもつ巨大な探査力は、ウェットでもインシリコでも再現できません。

2. 方法と結果
 ラクダ科の動物であるアルパカに 10 種類以上の TNBC 細胞株を免疫し、抗体産生細胞を継続的に収集し、単一ドメイン抗体の遺伝情報ライブラリーを確立しました。 次に、ファージミドに抗体遺伝子を発現させ、バイオパニングにより、各細胞株への親和性に従ってソートされたデジタルデータベースを構築しました。 TNBC細胞株に有意な親和性を示す抗体群(クラスターと呼ばれる)を候補として実体化し、実際の患者組織切片でその有効性を確認しました。 その結果、TNBC患者の組織中に悪性と考えられる細胞を発見することができました。この抗体と新規バイオマーカーを使用すれば、TNBCに対する分子標的薬を迅速かつ容易に開発することが可能になります。

3.影響と効果
  • TNBCがんを診断できるバイオマーカーの発見
  • TNBCがんを治療できる治療標的分子の発見
  • CAR-T、ADCなどの工学に基づく新規治療法の開発
  • 新規バイオマーカー探索するための統計的アルゴリズムの樹立

4. 展望
 Ablynx社が開発したVHH創薬は、Sanofi社によってリリースされ、すでに多くの患者を救っています。最近では、COGNANO社を含む多くのVHH開発チームがSARS-CoV2の治療薬を提案し、優れたスペックを示していることも知られています。COGNANO社は、がん細胞を認識する抗体をコードする巨大遺伝子ライブラリーを構築することにより、データベースから希少なTNBCバイオマーカーを特定しました。この成果は、数学的処理によるマイニングの技術に基づいています。TNBC以外の対象疾患にも応用可能な技術であり、未知の標的分子を同定し、抗体創薬への迅速な移行を可能にするプラットフォームの発明です。今後は膵臓癌、胆管癌、神経膠芽腫、未分化甲状腺癌、肉腫などが開発ターゲットとなり、チームは年間2~3件のペースで、新しい疾患の標的分子バイオマーカーを発掘すると宣言しています。

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会社概要

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URL
https://www.cognano.co.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
京都府京都市左京区上高野東山64-101
電話番号
-
代表者名
伊村明浩
上場
未上場
資本金
3900万円
設立
2014年10月