世界のフィンテック企業の収益は過去2年間で14%と堅調なペースで増加~BCG、QED インベスターズ共同調査

市場の成熟により「成長第一」から収益性重視へ

経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、米国のベンチャーキャピタルQEDインベスターズとの共同レポート「Global Fintech: Prudence, Profits and Growth」(以下、レポート)を発表しました。世界のフィンテック企業のCEOや投資家60人以上へのインタビューに基づき、フィンテック業界をめぐる主要なテーマやトレンドについて解説しています。

【サマリー】

  • フィンテック関連の市場規模は現在の3,200億ドルから、2030年には1.5兆ドルに成長すると予測。

  • フィンテック業界の収益は堅調に成長し、過去2年間で年平均成長率(CAGR)は14%増、暗号資産や中国関連を除けば21%増。

  • 収益評価倍率は2021年の20倍から2023年には4倍に落ち込み、資金調達額は2021年比で70%減少。

  • フィンテック業界のビジネスモデルは「成長第一」から「収益性を伴う成長」へ移行し、EBITDAマージンが9%改善。

  • 今後のフィンテック業界を牽引する4つのテーマ:

    ・エンベデッドファイナンス:2030年までに市場規模は3,200億ドルに達すると予測。

    ・コネクテッドコマース:顧客データを活用しパーソナライズ広告で収益を上げる仕組み。

    ・オープンバンキング:導入は進んでいるが、銀行の競争基盤を大きく変えることはない。

    ・生成AI:カスタマーサポートやデジタルマーケティングにおける生産性向上に寄与。

フィンテック関連の市場規模は2030年には1.5兆ドルの市場規模に達すると予測

レポートでは、フィンテック関連の市場規模は現在の3,200億ドルから、2030年には1.5兆ドルに成長すると予測しています。

また、世界のフィンテック企業は堅調に収益を伸ばし続けており、過去2年間、年平均成長率(CAGR)は14%増加、暗号資産や中国関連のフィンテックを除くと同21%の成長を遂げています。一方、レベニュー・マルチプル(収益評価倍率)[注1]は高水準だった2021年の平均20倍から2023年には4倍に落ち込みました。加えて、資金調達額は2021年比で70%減少し、特に過去1年間で50%近く減少しました(図表)。

しかし、こうした低迷は短期的なものであり、現在は安定し始めていると考えられます。また、フィンテック業界の事業モデルは「成長第一」から、収益性を伴う成長を重視するモデルへと転換し始め、本業の利益率を示すEBITDAマージンは平均9%ポイント改善しています。

フィンテックの未来を形成する4つのテーマ

レポートでは、今後数年間で業界を牽引するであろう4つのトレンドを解説しています。

  • エンベデッドファイナンス(組み込み型金融):市場規模は2030年までに3,200億ドルになると推計される。当面は既存のフィンテック企業が利益の大部分を享受し続ける見込みだが、大手銀行も次第にシェアを拡大していくと予想される

  • コネクテッドコマース:コネクテッドコマースは、金融機関が詳細な顧客データを活用してパーソナライズされた広告を顧客に表示することにより、販売側から報酬を得る仕組み。銀行の中核的な収益源が圧迫され、高金利の環境下で預金の差別化が難しくなる中、銀行の将来モデルを考える上でのヒントとなる

  • オープンバンキング:金融機関が持つデータや機能を外部企業が利用して新サービスを生み出すオープンバンキングは、早くから導入されている国でも目立った活用事例がない。今後も注目される一方、銀行の競争基盤を大きく変えることはないと予測している

  • 生成AIによる生産性向上:フィンテック企業にとって、カスタマーサポートやデジタルマーケティングなど、生成AIの強みが発揮される機能は非常に重要だ。生成AI導入の影響は短期的には特に顕著だろう。生産性向上の面ではすでに大きな変革をもたらしており、今後はプロダクトイノベーションの側面でも活用されると考えられる

慎重さ、利益、成長の3つに焦点を当てる必要がある

レポートでは、このような新たな環境で成功するため、リスク管理とコンプライアンスを競争優位性とみなす慎重な姿勢や、上位4分の1の企業が達成している利益率の25%ポイント向上を目指すこと、エコシステム全体の持続的な成長のための条件設定がフィンテック領域に取り組む企業にとって重要であると解説しています。

BCGニューヨーク・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナーで、レポートの共著者であるDeepak Goyalは次のようにコメントしています。「現在フィンテック業界の成功の礎になっているのは、収益性とコンプライアンスです。これらは継続的な投資を呼び込み、事業を拡大し、持続性と企業価値を高めるために不可欠なものです」(ボストン発、2024年6月26日)

[注1] 時価総額などの企業価値評価額÷年間の収益額

■ 調査レポート

「Prudence, Profits, and Growth (Global Fintech 2024)」

■ 日本における担当者

緒方 賢太郎  マネージング・ディレクター & パートナー

BCG X でデジタル戦略のデザインをリードする。BCG 金融グループ、マーケティ ング・営業・プライシンググループのコアメンバー。

早稲田大学政治経済学部卒業。コロンビア大学経営学修士(MBA)。株式会社ジェ ーシービーを経て BCG に入社。その後、トランスコスモス株式会社で上席常務執行 役員を経て、BCG に再入社。

■ ボストン コンサルティング グループ(BCG)について

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。
https://www.bcg.com/ja-jp/ 

■QEDインベスターズについて

QED Investors is a global leading venture capital firm based in Alexandria, Va. Founded by Nigel Morris and Frank Rotman in 2007, QED is focused on investing in disruptive financial services companies worldwide. QED is dedicated to building great businesses and uses a unique, hands-on approach that leverages its partners’ decades of entrepreneurial and operational experience, helping companies achieve breakthrough growth. QED has invested in more than 200 companies, including 28 unicorns, across 18 countries. Notable investments include AvidXchange, Betterfly, Bitso, Caribou, ClearScore, Current, Creditas, Credit Karma, Flywire, Greensky, Kavak, Klarna, Konfio, Loft, Mission Lane, Nubank, QuintoAndar, Remitly, SoFi, Wagestream, and Wayflyer.

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・中林・吉田

Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

すべての画像


会社概要

URL
https://www.bcg.com/ja-jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都中央区日本橋室町三丁目2番1号 日本橋室町三井タワー 東京都中央区日本橋室町三丁目2番1号 日本橋室町三井タワー
電話番号
03-6387-2000
代表者名
秋池玲子、内田有希昌
上場
未上場
資本金
-
設立
-