決定論的エンジニアリングによるAIへの信頼性構築

MathWorks Japan

ソフトウェア・ディファインド・ビークル (SDV)のプログラムが進化する中、自動車開発は大きな転換期を迎えています。機能更新のサイクルが短縮され、システム間の相互作用がますます高度化する一方で、安全性、信頼性、長期的な保守性に対する厳格な要件を満たすことがこれまで以上に重要になっています。こうした環境の中で、生成AIはすでにエンジニアリングのワークフローに組み込まれ始めています。開発スピードの向上に貢献する一方で、非決定論的な振る舞い、物理特性への理解不足、トレーサビリティの制約といった特性から、安全性が重視されるシステムへの直接的な適用は難しいとされています。生成AIのアウトプットを制約なく導入した場合、検証、認証、トレーサビリティの確保が大きな課題となります。

モデルベースデザインは、決定論的な実行、実行可能な仕様、物理法則に基づくシミュレーションを通じて、この様な課題に対応します。MathWorksはこれらの強みを統合し、生成AIによる支援機能をモデルベースデザインのツールに直接組み込むことで、ワークフローの高速化と、自動車ソフトウェアに求められる長期的な信頼性および認証要件の両立を実現しています。

信頼の基盤としてのシミュレーション 

生成AIを活用したエンジニアリングにおいて、信頼性の基盤となるのがシミュレーションです。シミュレーションは、システムの振る舞いを早期かつ繰り返し検証できる環境を提供します。モデルベースデザインでは、継続的な開発パイプラインの中で閉ループ・シミュレーションを実行でき、生成AIが関与した成果物であっても、ソフトウェアが実機に到達するはるか前の段階から仮想環境において継続的に検証することが可能です。 

閉ループ・シミュレーションは、不安定性、タイミングの問題、飽和、積分誤差など、ソフトウェア、ハードウェア、物理ダイナミクスのリアルタイムな相互作用によって初めて顕在化する欠陥を明らかにします。コードのロジックを単体で検証する従来のソフトウェアテストとは異なり、シミュレーションは現実的な運用条件下で要求仕様に対するシステム全体の挙動を検証し、安全性や性能に直結する問題をより早い段階で検出できます。 

先進的な組織では、「シフトレフト」は一度きりの取り組みではありません。仮想検証が継続的インテグレーションと継続的デリバリー (CI/CD) パイプラインに直接組み込まれ、あらゆる変更に対して自動ビルドやシミュレーションが実行されます。代表的なシナリオや判定基準に対してモデルを常時評価することで、検証は断続的な作業ではなく、継続的な活動となります。

進化するE/Eアーキテクチャに対応するスケーラブルな開発 

自動車の電気・電子(E/E)アーキテクチャは、ECU中心の構成から、ゾーン型および集中型のコンピューティングプラットフォームへと移行しています。ソフトウェアは特定のハードウェアに縛られず、小規模なコントローラから高性能な車載コンピュータに至るまで、異種混在の計算資源上で信頼性高く動作し、可搬性と拡張性を備える必要があります。 

モデルベースデザインは、システムの振る舞いやソフトウェアの意図をハードウェア実装から分離することで、この要求に応えます。エンジニアは、信頼できる「真実の情報源」となる実行可能なモデルを構築します。これらのモデルからは、GPU、DSP、NPUなどのハードウェアアクセラレータやAI推論エンジンを含む、さまざまなプロセッサやOS向けの量産対応コードを生成できます。このアプローチにより、バーチャルセンサのようなAIベースの機能をシステムレベルで開発・検証でき、ターゲットごとのアルゴリズム再設計を最小限に抑えながら、プラットフォーム間の効率性と一貫性を高めることができます。

 モデルベースデザインによるコラボレーションの強化 

複雑性が増す中で、エンジニアリング組織には協業のあり方そのものの変革が求められています。シミュレーション、仮想化、自動検証をCI/CDワークフローに直接組み込むことで、ソフトウェア、AIモデル、ハードウェアアクセラレーション戦略それぞれについて、迅速な反復が可能になります。モデル中心のアプローチは、堅牢性、安全性、長期的な保守性を維持しながら、ソフトウェア・ディファインドかつAIドリブンの車両開発において、組織の俊敏性を高めます。

 決定論的ワークフローへのAI統合 

自動車開発においてAIが最も効果を発揮するのは、決定論的なモデリングフレームワークの中に組み込まれた場合です。モデルベースデザインツールでは、生成AIが生成したコンテンツは、既存のインターフェース、データ定義、アーキテクチャ上の制約に自動的に紐付けられます。Model Context Protocol(MCP)の機能により、厳密性、再現性、認証対応力を損なうことなく、AIによる支援を活用できます。 

長期的な保守性と認証対応には、決定論的な挙動、透明性の高い監査証跡、ライフサイクル全体を通じて蓄積される検証エビデンスが不可欠です。モデルベースデザインは、要求仕様、モデル、テストスイート、生成コードを体系的に結び付けることで、これらを一貫した形で実現します。継続的なシミュレーションにより、検証データは開発の最終段階だけでなく、開発プロセスの各段階で継続的に生成されます。生成AIが生成した成果物も同じワークフローに従うことで、この構造を引き継ぎます。その結果、生産性の向上が安全性、品質、コンプライアンスの犠牲となることなく、生成AIを大規模に活用できるようになります。

 結論 

生成AIとモデルベースデザインは、信頼性、安全性、エンジニアリングの厳密さを維持しながら、自動車ソフトウェア開発を加速させるための体系的な道筋を示します。モデルベースデザインは、決定論性、物理法則に基づく検証、トレーサビリティを提供し、生成AIはその枠組みの中で効率化と迅速な反復を支援します。

この組み合わせにより、システム挙動への洞察をより早期に得られ、多様なハードウェアアーキテクチャへの展開が可能になります。モデル中心のアプローチは、エンジニアリングチーム間の一貫したコラボレーションを促進し、グローバル規模のプログラムにおける再利用性と整合性を高めます。生成AIを活用したモデルベースデザインは、堅牢で認証可能な自動車システムを開発するための、スケーラブルで信頼性の高い基盤となります。

著者について

宅島 章夫

MathWorks Japan アプリケーションエンジニアリング部(自動車業界担当) 部長

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上場
未上場
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設立
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