第5回環境シンポジウム「〜紀ノ川流域風土〜「風土と水の科学」〜」風、水、土を科学する ―いのちの根源を見つめ、生き抜く術(すべ)を探る―
自然の生態系循環メカニズムと人の暮らしの健全な共存関係を現場及び学際的視点から解き明かし、激甚災害の時代を生き抜く手法を感得する環境シンポジウムを和歌山県橋本市にて開催。
私たち、一般財団法人杜の財団、風土再生学会、天然温泉施設「ゆの里」は、下記の趣旨、開催概要のとおり「第5回環境シンポジウム」を開催いたします。
風土、そして水 ~人が人として生きる基盤を求めて~
私たちは、この日本列島に居てこそ感じられてきた四季の恩恵をごくあたりまえのものとして暮らしてきたのではないでしょうか。
異国の地でしばらくの時間を過ごした後、母国の地面に降り立ち、外の空気を胸に含んだ瞬間、ほっとするのはなぜでしょうか。五感を通して感じられるすべてに安心し身をゆだねたくなるその所以は、水の味、風の吹きかた、湿気、太陽の光の強さ、あるいは自分を出迎えてくれた人の作るあたたかい食事の匂いであったかもしれません。懐かしく親しみ深いそれらの感覚が立ち現れてくる根本に、日本の風土を見いだすことができます。風土とは、植生・気候、その根源である水の循環、そこに立脚する人の暮らしや文化、祈り、あるいはそれらの時間的、空間的な集積、言わば生きる基盤そのものと考えることができます。また、風土を形づくるこれらの要素をひそやかに、様々な姿でつないでいるのが、水です。風には湿気が含まれ、土は水を含んでこそ豊かになります。風、水、土は、自然の循環的なメカニズムが機能するうえで無くてはならない要素なのです。
本シンポジウムでは、自然生態系の回復技術「大地の再生®」を提唱する矢野智徳(一般財団法人杜の財団代表理事)と、文理融合型総合智としての「風土学(fudology)」の確立を目指す堀信行(東京都立大学名誉教授/風土再生学会会長)を中心に、多彩な分野の研究者・実践者が登壇いたします。


24年9月に東京で開催した第一回目を皮切りに、和歌山県橋本市神野々の温泉施設「ゆの里」(株式会社 重岡、代表取締役・重岡 昌吾氏)において第5回目を迎えることとなりました。私たちがこのような短期間に回を重ねる背景には、この日本列島にあたりまえに存在していた自然生態系すなわち風土が加速度的に失われゆく事態を目の当たりにし、これを健全な姿へ戻していくには日本社会の行動変容が短期間のうちにどうしても必要であるという危機感を強くしているからにほかなりません。生態系を侵害し、その根本摂理である水と大気の循環機能(「脈」機能)を破壊し続けたことによって、自然から”NO”を突き付けられているのが今日の状態であると考えることができます。私たちが目指す「風土再生」は、この「脈」機能を回復・保全したうえに人の社会が成り立つ、健全な自然生態系のあり方を取り戻そうとする営みです。
紀伊半島に鎮座する霊場・高野山は、強い岩盤を礎とし、澄んだ空気と新鮮な水をたたえ、山岳信仰の歴史と習俗のもとに修験者らが参詣道を往来する人流の要衝でした。その麓に位置する「ゆの里」のすぐそばを流れる一級河川・紀の川を形作っているのは、中央構造線と呼ばれる巨大な活断層です。災害への備えが叫ばれる今であるからこそ、人間社会にとってのリスクとされる活断層や河川が生態系にとっての母なる恵みの源である事実にも向き合うべき時に来たのではないでしょうか。風土の特性に由来する生活文化や伝承を見渡し、現代の暮らしの新たなあり方を模索することが、これからの時代を生き抜く力となると私たちは考えています。

「大地の再生®」では、「ゆの里」において、コンクリートやアスファルトで固められた敷地にたいして、地上および地下における「脈」機能を回復する施工を行ってきました。この技術を科学的に解釈することは、限られた敷地内での環境改善の成果を検証するだけにとどまらず、現代の都市計画のあり方を見直し、生態系機能をどのように回復し保全していくかを考える重要な手掛かりとなります。また、テクノロジーによって利便性や効率性が極致にまで達しつつある時代にあって、地上の全存在の源ともいえる水の大気、地上と地下、そして海にまで至るダイナミックかつ絶え間ない循環運動に改めて目を向けていきます。私たちの命と暮らしを包摂する水、そして自然の摂理から得られる恵みとは何か、多角的な視点から市民の皆様ともに考え、五感で感じる場を全3日間のプログラムを通して創造していきます。
風土からの声なき声——それは、これからを生き抜く私たちへのもっとも根源的な問いかけです。




※本シンポジウムは、市民参加型の学びと実践の場として企画されています。草の根の環境再生活動を支える起爆剤として、また、暮らしと自然のつながりを再発見する場として、どなたにも開かれています。
一般財団法人杜の財団
公式ホームページ https://morinozaidan.com/

風土再生学会
公式ホームページ https://www.fudosaisei.com/

天然温泉「ゆの里」
公式ホームページhttps://www.spa-yunosato.com

大地の再生®
公式ホームページ https://daichisaisei.net/

【本リリースに関するお問い合わせ】
一般財団法人杜の財団 事務局 飯島、田中
E-mail:info@morinozaidan.com
《シンポジウム開催概要》
・日時: 2025年6月12日(木)、13日(金)、14日(土)
・場所: 天然温泉「ゆの里」 (和歌山県橋本市神野々898)
https://www.spa-yunosato.com/access/
・主催: 一般財団法人杜の財団・風土再生学会・天然温泉「ゆの里」
・プログラム(予定 発表者敬称略)
● 6月12日(木曜日)
【発表1】堀信行「紀伊半島における冷・温泉の分布と地下構造のダイナミズム」
【発表2】矢野智徳「今、全国で問われる風土再生の鍵ー生態系脈循環機能と流域水脈の再生」
【発表3】 粟生田忠雄「生態系を育む不飽和領域の流体の運動」(仮)
●6月13日(金曜日)
【発表4】大北紘彰「暮らしの足元からはじまる環境再生 ~沖縄東村での10年の試み~」
小甲豪「やんばるの海から消えた藻場を再生する~止まらない赤土流出と海の環境再生に、流域の視点から取り組む~」
【発表5】 重岡昌吾「水と光の科学 アクアフォトミクスについて」
【発表6】 大倉正之助「音と響きと水と」&鼓を打つ~音魂体験~(大鼓ワークショップ) (仮)
【発表7】 井戸理恵子「鉱物の神と高野山」
【パネルディスカッション1 】
●6月14日(土曜日)
【パネルディスカッション2 】
【フィールドワーク 】(ゆの里敷地内の「大地の再生施工」箇所にて)
*12:00~夕暮れまで 神野々麦酒醸造所 有機アスファルト駐車場にて、 流域の産物の生産者さんたちが集う「流域風土市」を同時開催します!
*懇親会(6月13日シンポジウム終了後、別途税込5500円)
お申し込みは6/2(月)まで
ゆの里のレストランにて、ゆの里のお水と野菜を使った懐石料理をいただきながら、ゆの里の重岡社長、財団の矢野、学会の堀をはじめ、登壇者のみなさんの話を聞けたり、質問していただける時間を設けます。ゆの里の入湯券付き。
ご希望の方は、チケットのお申し込みを進める際に、あわせてフォームからお知らせください。
【参加申込み方法】
下記リンクよりご確認ください。
https://morinozaidan-yunosato.peatix.com/view
【登壇者 一覧】
大北紘彰(一般社団法人Sango執行理事)
小甲豪(海人)
井戸 理恵子(ゆきすきのくに代表、多摩美術大学非常勤講師、民俗情報工学研究家)
大倉 正之助(能楽師、大鼓奏者、重要無形文化財総合指定保持者)
重岡 昌吾 (株式会社重岡代表取締役)
粟生田 忠雄(風土再生学会副会長、新潟大学助教)
堀 信行(風土再生学会会長、東京都立大学名誉教授、地理学者)
矢野 智徳(一般財団法人杜の財団代表理事、造園家、環境再生医)

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像