GSK、医師を対象とした全身性エリテマトーデス患者さんに関する国際調査から日本の結果を発表 ~全身性エリテマトーデス患者さんの臓器障害リスクに関する課題が明らかに~

・新型コロナウイルス感染症の蔓延などにより、臓器障害のリスクが高まった
・臓器障害に関する患者さんと医師との対話は診断時に行われることが重要と示唆
・臓器障害発症のリスクを正確に予測・判断するためのデータやツールの必要性が示唆

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下GSK)は、世界7カ国(日本、米国、カナダ、中国、フランス、ドイツ、スペイン)のリウマチ専門医、腎臓専門医および内科専門医648名を対象に、ループス腎炎を有する患者さんを含む全身性エリテマトーデス(以下、SLE)患者さんの臓器障害および疾患修飾へのアプローチの実態を把握することを目的とした国際調査から日本の結果を発表しました。本調査では、SLE患者さんの臓器障害リスクに関する課題が明らかになりました。


 臓器障害は、腎臓、皮膚、心臓に多く発症しSLEの長期予後不良の主な要因であり(*1)、そのほとんどが診断から5年以内に発症することから(*2)、臓器障害をコントロールするためには、早期診断と早期治療が重要とされています。
 
 しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延などにより、多くの患者さんが診療の予約や最適な治療の機会を逃し、さらに一部の患者さんでは臓器障害の発症や増悪につながるなどの臓器障害のリスクが高まったと、世界の約半数(44%)の医師が回答しました。そして、日本においても、40%の医師が同様の回答をしており例外ではありませんでした。
 
 また、新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響以外にも、臓器障害リスクを高める要因が確認されました。
 
 臓器障害に関する患者さんと医師との対話は診断時に行われることが重要であると示唆
 日本において、4人に1人(24%)の医師が、患者さんに症状がなくても臓器障害が生じるリスクがあると認識している一方で、85%の医師が、診断後1年以上経過してから臓器障害のリスクを患者さんに伝えていること、また、2人に1人(46%)の医師が、患者さんから先に臓器障害について話をされるまで待つことが頻繁にあると回答しました。
 
 世界ループス財団事務局(Lupus Foundation of America)のコミュニケーション担当Vice PresidentであるMike Donnellyは、次のように述べています。
 「臓器障害に関して、SLE患者さんと医師は対話をしていますが、SLE患者さんの臓器障害が患者さんとその家族に及ぼす影響を真に軽減するためには、さらに多くの対話が必要です。そして、その対話は、診断時に行われるべきです。」
 
 本調査に回答した医師は、SLE患者さんの臓器障害リスクとその発症のタイミングについても熟知していますが、どの患者さんが最も臓器障害のリスクを抱えているかを判断する上での課題もあげています。
 
 SLE患者さんの臓器障害リスクの予測や進行抑制に役立つデータやツールの必要性が示された
 日本において、半数以上(64%)の医師は、重大な臓器障害リスクのあるSLE患者さんを簡便に特定できる方法を求めていると回答しました。また、2人に1人(43%) の医師が、SLEによる臓器への影響をモニタリングおよび測定することは困難であると回答し、3人に1人(76%)の医師が、現状の臓器の機能および障害のより正確な状況を示すバイオマーカーを特定したいと回答しました。
 
 医師が利用できる治療法についての情報が多ければ、現状の症状の緩和に努めながら、長期的な治療計画も立てることができ、短・長期の治療目標の両立の可能性があることが示唆された
 5人に4人 (88%)の医師が、臓器障害は、主に活動性の基礎疾患と標準治療薬によって引き起こされることを認識していると回答しました。一方で、48%の医師が、高用量ステロイドを使用するのはSLE患者さんに提供できる治療選択肢が限られているからと回答しました。そして、92%の医師が、生物学的製剤により臓器障害の進行を遅らせることが可能だと考えているにもかかわらず、54%の医師が、患者さんに免疫抑制剤およびステロイドを使用したが無効であった場合にのみ生物学的製剤を使用すべきと回答しました。
 
 SLEの病因およびSLEは修飾可能な疾患であるという見解に対して、医師の意見の統一性はみられなかった
 84% の医師が、SLEが複数の要因によって引き起こされていると回答し、また半数以上(66%)の医師が、この疾患の多様性と全身の様々な部位に起こる臓器障害により、疾患を根治することは不可能であると考えていることがわかりました。そして、4人に3人(63%)の医師が、疾患修飾薬の不足によりSLEの治療が困難になっていると回答していますが、別の研究では、炎症プロセスを阻害する疾患修飾薬によってSLEの症状を緩和できると示されています(*3)。
 
 ヒューストン大学ティルマン・フェルティッタ・ファミリー医科大学(University of Houston Tilman Fertitta Family College of Medicine)の腎臓専門医、医学部臨床教授で、ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine) 非常勤准教授のDr Rajeev Raghavanは、次のように述べています。
 「臓器障害は、SLEと共に生きる人々にとって非常に現実的なリスクです。この調査結果は、ツールやガイドラインの改善の必要性を強調しています。また、私たち医師が、診断時に臓器障害のリスクについてSLE患者さんの理解を深めるために行動し、そして、臓器障害リスクを積極的に低減する長期的な治療管理計画を患者さんと一緒につくることが重要です。」
 
 GSKのImmunology & Specialty MedicineグローバルメディカルエキスパートのDr Roger A. Levyは、次のように述べています。
 「SLEは、早期診断と早期治療によってより良く管理することができますが、臓器障害は、診断から5年以内に患者さんに影響を及ぼします2。今回の調査結果では、パンデミックから脱却する際に、臓器障害のリスクと短期および長期の治療目標との整合性を取りながら、患者さんと医師が積極的に対話することの必要性も示されました。」
 
 GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
 「このたびの国際調査で、日本のSLE患者さんの臓器障害リスクに対するアプローチの現状をより正しく理解し、SLEの治療環境のさらなる改善に寄与する課題創出の機会が得られたことを光栄に思います。今回の調査に加えて、GSKでは、ループス腎炎の既往を有するSLE患者さんの治療におけるエビデンスを創出する産学連携の取り組みも実施しており、今後も、患者さんおよび医療従事者の先生方に役立つ情報を提供できるよう注力してまいります。」
 
 国際調査の概要について
 この調査は、ループス腎炎を有する患者さんを含む SLE 患者さんの臓器障害および疾患修飾へのアプローチの実態を把握することを目的とした7カ国の国際調査(日本、米国、カナダ、中国、フランス、ドイツ、スペイン)です。調査対象は、ループス腎炎の既往のある患者さんを含むSLE患者さんの治療管理に精通しているリウマチ専門医、腎臓専門医、内科専門医です。
 
 調査期間:2022年7月~9月。各国サンプル数:648名: 日本(n=100)、米国(n=103)、カナダ(n=41)、中国(n=100)、フランス(n=102)、ドイツ(n=102)、スペイン(n=100)
 
 全身性エリテマトーデス(SLE)とループス腎炎(LN)について
 全身性エリテマトーデス(SLE:Systemic Lupus Erythematosus)は、完治が難しい慢性の自己免疫疾患で、全身の様々な場所、臓器に、多彩な症状を引き起こします。男女比は、1:9ほどで、女性に多く、特に20-40歳の女性に多いとされ、日本全国に約6~10万人ほどの患者さんがいると考えられています(*4)。
 
 ループス腎炎(LN:Lupus Nephritis)は、SLE患者の40~80%の患者さんでみられる重要な臓器病変であり、無治療では末期腎臓病に至ります。SLE患者さんにおいて、ループス腎炎の合併は生命予後の悪化につながるといわれています(*5)。経時的に変動するさまざまな症状を伴い、例としては関節の疼痛又は腫脹、極度の疲労、原因不明の発熱、皮疹及び臓器障害などがあります。LNは、SLEによって引き起こされる腎臓の炎症(腫脹又は瘢痕化)です(*6)。LNは末期の腎疾患に至る可能性があり、腎臓透析又は移植が必要となります。過去数十年間で診断・治療がともに改善しているにもかかわらず、LNはSLE患者において依然として予後不良の指標となっています(*7,*8)。LNの所見には、蛋白尿、血清クレアチニンの上昇、尿中に赤血球及び白血球がみられるなどがあります。
 
 疾患修飾について
 疾患修飾(Disease-modification)は、関節リウマチや神経変性疾患の領域において、医学的に、永続的な臨床効果を得ることを目的とし、疾患の根底となる病態に対して作用する治療として広く定義され始めています(*9,*10)。一方で、現時点でSLEにおける疾患修飾の共通概念は確立されていません。しかし最近では、SLEへの疾患修飾に関する記載が報告され始めました(*11)。
 
 GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報は https://jp.gsk.com をご参照ください。
 
 (*1) Kyttaris VC. Systemic lupus erythematosus: from genes to organ damage. Methods Mol Biol. 2010;662:265-83. doi: 10.1007/978-1-60761-800-3_13. PMID: 20824476; PMCID: PMC3153363.
 (*2) Mahajan A, Amelio J, Gairy K, Kaur G, Levy RA, Roth D, Bass D. Systemic lupus erythematosus, lupus nephritis and end-stage renal disease: a pragmatic review mapping disease severity and progression. Lupus. 2020 Aug;29(9):1011-1020. doi: 10.1177/0961203320932219. Epub 2020 Jun 22. PMID: 32571142; PMCID: PMC7425376.
 (*3) van Vollenhoven R, Askanase AD, Bomback AS, et al Conceptual framework for defining disease modification in systemic lupus erythematosus: a call for formal criteria Lupus Science & Medicine 2022;9:e000634.
 (*4) 難病情報センター ウェブサイト
 (*5)日本腎臓学会誌2018. ループス腎炎のエンドポイント60(5)601‒606( https://jsn.or.jp/journal/document/60_5/601-606.pdf
 (*6) National Kidney Foundation, Lupus and Kidney Disease (Lupus Nephritis).  Available at www.kidney.org/atoz/content/lupus
 (*7) Gordon C, Hayne D, Pusey C, et al. European Consensus Statement on the Terminology used in the Management of Lupus Glomerulonephritis. Lupus 2009;18:257-26.
 (*8) Waldman M and Appel GB. Update of the Treatment of Lupus Nephritis. Kidney International 2006;70:1403-1412.
 (*9) 2019 Oct 17;6:223. doi: 10.3389/fmed.2019.00223. eCollection 2019.
 (*10) Rheumatology.org;2021;1;Disease-modifying antirheumatic drugs (DMARDs).
 (*11) Geisen UM, et al. Ann Rheum Dis 2021;0:1–6. doi:10.1136/annrheumdis-2021-220272.

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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都港区赤坂1-8-1 赤坂インターシティAIR (会社受付 16階)
電話番号
03-4231-5000
代表者名
ポール・リレット
上場
未上場
資本金
20億6741万円
設立
1953年08月