実圃場におけるワインブドウの小さな花を高精度にカウンティングするAIの研究開発に成功
静岡大学の峰野研究室ではヤマハ発動機と連携し、屋外の農地で栽培されるワインブドウの多数の小さな花を高精度にカウンティングするAI(人工知能)の研究開発に成功しました。
高品質なワインブドウの収量を生育の早い段階で見積もるには、開花の段階でどれだけの花が咲いているのか把握することがとても重要なことでした。また、多く結実させると品質が落ちる可能性があるため、余分な花を取り除く作業も高品質なワインの生産には欠かせない作業でした。
峰野研究室ではヤマハ発動機と連携し、ワインブドウ圃場(図1)で高精細カメラを搭載した小型移動車両を用いて照明をあてて夜間に撮影された動画から、ワインブドウの多数の小さな花を高精度にカウンティングする技術を研究開発しました。
具体的には、オーバーラップするようなパッチ画像を切り出してまずは花を含む領域を特定し、次のステップで個々の花を検出するという2ステップで処理を行います(図2)。
特に、様々な加工を加えてデータ量を増幅し精度を向上させる技術を推論時にも適用することで、夜間に撮影された薄暗い画像やぼやけた画像でも高精度な検出を実現しました(図3)。
メルロー、ソーヴィニヨン・ブラン、ジンファンデルといった異なるワインブドウ品種であっても、既存技術では75%程度だったカウンティング性能を90%まで向上させることに成功しました(図4)。
本技術は、ワインブドウの花だけでなく、複雑背景下でも多数の小さな部位を高精度にカウンティングする用途に応用できます。今後、本技術の実用化を目指し、長年の経験と勘に基づいて習得したノウハウの効率的な継承や、AIとの協働による負担軽減、持続可能な地域社会の実現を目指していきます。
本研究成果は、Computers and Electronics in Agriculture 誌に掲載されました。
(https://doi.org/10.1016/j.compag.2022.107088)
【論文情報】(先行Web公開日:2022年6月2日)
掲載誌:Computers and Electronics in Agriculture (Impact Factor: 5.565, Q1, Acceptance Rate: 18%)
論文タイトル:Deep Learning-based Accurate Grapevine Inflorescence and Flower Quantification in Unstructured Vineyard Images Acquired Using a Mobile Sensing Platform
著者:Umme Fawzia Rahim(静岡大学 創造科学技術大学院 博士課程2年), 内海智仁(ヤマハ発動機 技術・研究本部), 峰野博史(静岡大学 学術院 情報学領域)
DOI:https://doi.org/10.1016/j.compag.2022.107088
※本研究は、JST創発的研究支援事業の支援を受けて実施されました。
研究課題名:マルチモーダルフェノタイピングによる適応型情報協働栽培手法の確立研究代表者:峰野博史
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