2025年度日本経済学会賞授与
一般社団法人日本経済学会(会長:星岳雄 東京大学教授)は、令和7年度の「女性研究者奨励賞(日本生命賞)(第5回)」「石川賞(第20回)」「中原伸之賞(旧中原賞)(第31回)」の受賞者を以下のように決定し、2025年9月13、14日に弘前大学で開催された秋季大会において授賞式および受賞記念講演会を開催いたしました。
1)女性研究者奨励賞(日本生命賞): 橋田夕紀子准教授(ジョージア大学)
日本経済学会・女性研究者奨励賞(日本生命賞)は、日本生命保険相互会社の寄付によって、2020年に創設されました。本賞は、優れた経済学研究を行う若手女性研究者に対して授与されます。橋田夕紀子准教授は、環境経済学・資源経済学の分野で国際的に認められる優れた研究を行ってきたことが高く評価されました。
橋田夕紀子准教授は2017年にオレゴン州立大学において博士号を取得しましたが、それ以前はカーボン・クレジット市場アナリストや再生可能エネルギー・コンサルタントとして、日米欧の民間企業で約10年間、実践の現場を経験しました。その後、海外で研究活動を開始し、気候変動への対応、土地利用の変化、生態系の保護などについて、計量経済学を応用した研究成果を発表し、環境経済学者としての実績を積んできました。橋田准教授の研究は、学術研究として高く評価されているだけでなく、米国大統領経済報告に引用されるなど、政策立案や政策評価にも資するものです。
https://www.jeaweb.org/awards/awardsnissei

中央:橋田夕紀子准教授 右:星岳雄教授(会長、東京大学)
2)石川賞: 仲田泰祐准教授(東京大学)
日本経済学会・石川賞は、故石川経夫東京大学経済学部教授の日本経済分析への多大な貢献を記念して2004年に創設され、日本の経済・社会問題の解決に貢献する実証面や政策面での優れた経済学研究を行った50歳未満の経済学研究者に対して授与されます。仲田泰祐准教授は、ゼロ金利制約下での非伝統的金融に関する一連の研究に加えて、新型コロナ・ウイルスの感染拡大が経済活動に与える影響の分析により、政策立案に大きく貢献する研究を行ってきたことが高く評価されました。
仲田泰祐准教授は2012年にニューヨーク大学において博士号を取得しました。仲田准教授は、ゼロ金利制約下での望ましい経済政策に関する研究で国際的に高い評価を受けているだけでなく、一連の研究は日本における非伝統的金融政策の運営にも重要な含意を持つとして、国内研究者からも多く引用されています。
また、仲田准教授は、新型コロナ・ウイルス流行時に、感染対策と社会経済活動の両立のために「疫学マクロモデル」を駆使して、リアルタイムで社会経済活動への影響を分析しました。その分析結果は、政府のコロナ対策の各種会議にも提供され、日本のコロナ対策の議論に一石を投じました。
https://www.jeaweb.org/awards/awardsishikawa

3)中原伸之賞: 川合慶教授(東京大学)
日本経済学会・中原伸之賞は、中原伸之氏の寄付によって、1995年に創設されました。この賞は、国際的に認知される業績を挙げた45歳未満の経済学研究者に対して授与されます。川合慶教授は、産業組織論の実証分析において顕著な業績を上げたことが高く評価されました。
川合慶教授は2012年にノースウェスタン大学で博士号を取得しました。川合教授の研究は、これまでに類のない独創的な方法でデータと理論を組み合わせている点に大きな特徴があります。たとえば、公共事業の入札に関する詳細なデータを集め、初回入札時と再入札時の価格の変化を分析することにより、盗聴などの談合の直接の証拠がなくても、談合の存在を検出する方法を提示しました。
この他にも、選挙における候補者の集票力を推定する新しい方法を提示した研究や、資金の貸し手と借り手が直接取引を行う場合において、借り手の弁済能力を示す情報の役割を分析する研究などが、経済学分野で最も水準が高いとされる国際学術雑誌に掲載されています。
https://www.jeaweb.org/awards/awardsnakahara

3名の受賞者は経済学の発展に大きな貢献をしてこられた若手および中堅の経済学者で、現代の社会経済課題解決に対する示唆に富む研究を行っておられます。今後の経済学の発展、その知見を活かした施策の提案につなげるため、広くご紹介願います。
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