バイオレットライト透過眼鏡の装用で強度近視が改善(症例報告)

─保存的治療で強度近視が改善・眼軸長が短縮した症例―

                                   

 株式会社 坪田ラボは、慶應義塾大学医学部眼科学教室との共同研究を基にしたバイオレットライト技術ならびに特許を用いた近視進行抑制のための医療機器開発に取り組んでおります。

 このたび、当社代表取締役の坪田一男は、慶應義塾大学医学部眼科学教室・光生物学研究室(主任研究員:栗原俊英専任講師)の鳥居秀成専任講師、大藤嘉子助教らと、バイオレット透過眼鏡の装用により、脈絡膜(※1)が肥厚、眼軸長(※2)が短縮し、強度近視が2年間で徐々に改善傾向となった4歳男児の症例を世界で初めて報告しました。

 日本を含む世界各国で近視人口が増加しており、世界の近視人口は2050年には約50億人、強度近視の人口は約10億人になるという予測が報告されています。近視の進行を抑制する方法はこれまで複数報告されてきましたが、近視を改善するにはオルソケラトロジーなどのコンタクトレンズによる保存的治療や、LASIK等の外科的な屈折矯正手術が必要であり、さらにそれらは対症療法であるため根本治療ではありませんでした。また、眼鏡装用により近視度数を改善させることはこれまでは困難と考えられてきました。

 今回の症例報告は、バイオレットライト透過眼鏡装用下で屋外活動を奨励したことにより、強度近視が改善する可能性を示唆した報告となります。

 当社代表取締役の坪田は、「眼鏡が持つ“視力矯正”という根本的な役割を『近視の進行そのものを抑制するソリューション』へと拡大させる大いなる一歩ではないか。今後は症例を増やし、サイエンスに基づいた革新的な医療機器開発の可能性を拓いていきたい」と語っています。

 本症例報告は、2020年12月19日(米国時間)に、『American Journal of Ophthalmology Case Reports』に掲載されました。

1.研究の背景と概要
 日本を含む世界諸国で近視人口が増加しており(Holden, B. A. Ophthalmology. 2016, Yotsukura E. et al. JAMA Ophthalmol. 2019)、近視対策は喫急の課題となっています。近視進行を抑制する屋外活動を構成する因子のうち、我々は、屋外環境に豊富に存在する波長360-400nmのバイオレットライトに着目し、眼軸長伸長および近視進行の抑制に寄与している可能性を報告(Torii H. et al. EBioMedicine. 2017, Torii H. et al. Sci Rep. 2017)してきました。通常の眼鏡はUVカット機能によりUVと同時にバイオレットライトまでカットされてしまうことが多いため、我々はバイオレットライト選択透過レンズ(図1)を開発、既に市販されています。

図1 バイオレットライト透過眼鏡の分光透過曲線

青実線は、バイオレットライト透過眼鏡が透過する光の波長と透過性を示しています。
通常の眼鏡ではバイオレットライトは透過しませんが、バイオレットライト透過眼鏡では波長360-400nmのバイオレットライトが透過することがわかります。

2.研究の成果と意義・今後の展開
 今回の4歳男児の症例は、初診時から両眼とも-5Dを超える強度近視であり(図2)、不同視弱視(※3)も合併した症例になります。

図2 左右両眼の屈折値(A)および眼軸長(B)の2年間の経過
バイオレットライト透過眼鏡を装用してから、バイオレットライトを透過した左眼で近視が改善し(A)、眼軸長が短縮(B)しました。1日6時間遮蔽した右眼ではバイオレットライトがあまり透過せず、近視が進行し、眼軸長が伸長していきました。

  通常不同視の症例では両眼とも近視が進行していくことが既に報告(Deng L. et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014, Lum E. et al. Clin Exp Optom. 2018)されています。本症例では、近視性不同視弱視の治療として6時間/日の健眼(右眼)遮蔽(※3)に加え、バイオレットライト透過眼鏡を装用、最低2時間/日を屋外で過ごしてもらうことで左右の眼が治療のためそれぞれ異なる光環境にさらされることになったことがポイントになります。

図3 4歳男児の眼底写真
前眼部・中間透光体に明らかな異常所見はみられませんでしたが、眼底はこのように4歳ですでに両眼とも豹紋状眼底を認めました。

  バイオレットライト透過眼鏡装用開始から2年後、遮蔽によりバイオレットライト透過が少なかった右眼では脈絡膜厚4.9μm肥厚(図4)、眼軸長0.85mm伸長、-1.02Dの近視進行(調節麻痺下等価球面値、図2)を認めたのに対し、バイオレットライトをより透過した左眼では脈絡膜厚115.7μm肥厚(図4)、眼軸長0.20mm短縮、+1.88Dの近視改善(調節麻痺下等価球面値、図2)を示しました。バイオレットライト透過眼鏡装用と1日2時間以上の屋外活動の奨励により脈絡膜が肥厚、眼軸長が短縮し、強度近視が2年間で徐々に改善した症例として、世界初の報告をいたしました。今後は症例数を増やして検討していく予定です。

図4 光干渉断層計で測定した左右眼の脈絡膜厚(白矢印)
バイオレットライト透過眼鏡装用開始よりそれぞれA;4カ月、B;24カ月経過した時点の左右両眼の脈絡膜厚を測定すると、右眼は4.9μm肥厚したのに対し、左眼は115.7μm肥厚と、大幅な変化を示しました。

3.特記事項
 本研究は 公益財団法人 武田科学振興財団「2018年度 医学系研究助成(臨床)」の支援によって行われました。

4.論文
 英文タイトル:Axial length shortening in a myopic child with anisometropic amblyopia after wearing violet light-transmitting eyeglasses for 2 years
タイトル和訳:バイオレットライト透過眼鏡を2年間装用した後、眼軸長が短縮した近視性不同視弱視・強度近視の1例
著者名:大藤嘉子、鳥居秀成、四倉絵里沙、森紀和子、栗原俊英、根岸一乃、坪田一男
掲載誌:American Journal of Ophthalmology Case Reports
DOI:10.1016/j.ajoc.2020.101002

※1 網膜の外側にある膜を脈絡膜といい、強度近視では薄く、正視などの非近視眼では厚いことが知られている。脈絡膜が厚いことで近視進行に対し保護的に働くと考えられている。

 ※2 眼の奥行きを眼軸長といい、眼軸長が伸びることで近視が進行すると考えられている。

 ※3 不同視とは両眼の屈折異常の程度が異なるものであり、おおむね1.5~2.0 D以上の差を不同視として扱う。また不同視弱視は、片眼に強度の屈折異常がある不同視が原因で、屈折異常の強い方の眼の視力が低下しているものである。何もしないと屈折異常の強い方の眼は使われないため、屈折異常が軽い方の眼を遮蔽(健眼遮蔽)して治療を行う。

利益相反:有
株式会社坪田ラボの代表取締役を務めております坪田は、本論文の著者の一人です。
バイオレットライトの近視進行抑制については、鳥居・栗原・根岸・坪田が発明者である特許が国際的に出願されており(WO2015/186723)、日本(第6085722号、第6677382号)を始め、米国(10133092、10823982)、中国(106413643)、台湾(I704908)で既に登録されています。
また、バイオレットライト選択透過レンズについては、鳥居・栗原・坪田が発明者としてジンズホールディングスと共に特許を国際的に出願しております(WO2017/090128)。日本(第6629343号)とシンガポール(11201804325X)、そして米国(10866433)で既に登録されております。

会社概要
会社名 株式会社 坪田ラボ
設立日 2015年2月19日
資本金 201,553,000円
創業科学者・代表取締役社長 坪田一男(慶應義塾大学医学部眼科学教室教授)
所在地 〒160‐0016 東京都新宿区信濃町34番地 トーシン信濃町駅前ビル304
電話 03‐6384‐2866
Web https://tsubota-lab.com/

【本リリースのお問い合わせ先】
株式会社 坪田ラボ
〒160-0016 東京都新宿区信濃町34番地 トーシン信濃町駅前ビル304
電話 03-6384-2866
e-mail  inquiry@tsubota-lab.com
担当 近藤、方波見

本リリースの発信元

株式会社 坪田ラボPR事務局

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電話 03-6456-4017      Fax 03-6456-4025
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