【夫婦の出産意識調査 2022】「2人目の壁」の実感値が2014年以来過去最高値、75.8% ~「経済的な理由」が減少傾向も、「心理的な理由」が増加傾向に~
「理想の子どもの人数」が減少するきっかけは「結婚」と「出産」/「理想の子どもの人数が減少した」28.9%、「増加した」14.8%。減少が増加の2倍
公益財団法人1more Baby応援団(所在地:東京都港区、理事長:吉村泰典)は、日本から少子化問題をなくしたいという想いのもと、このたび、「夫婦の出産意識調査2022」を実施、その結果をご報告いたします。 本調査は2013年から調査を開始し、今年で10年目となります。今回は、既婚者2,955名に加え、40代で出産を経験した女性409名に対し、調査を実施しています。
*本リリースでは、単年の調査結果のグラフに調査対象者の説明がない場合は既婚男女2,955名の結果としています。経年推移の調査結果のグラフには、本年度の調査対象者数のみ記載しています。
*本リリース内のグラフの各数値は小数点第二位で四捨五入しているため、SAの調査結果であっても合計値が100%にならない場合がございます。
*本リリースでは、単年の調査結果のグラフに調査対象者の説明がない場合は既婚男女2,955名の結果としています。経年推移の調査結果のグラフには、本年度の調査対象者数のみ記載しています。
*本リリース内のグラフの各数値は小数点第二位で四捨五入しているため、SAの調査結果であっても合計値が100%にならない場合がございます。
【トピックス】
女性「『2人目の壁』は存在すると思う」78.6%、男性「『2人目の壁』は存在すると思う」68.0%
「『2人目の壁』は存在すると思う」の数値は同様の設問で調査を開始した2014年以降横ばいで推移していたが、本年は75.8%で過去最高値となった。また、男女間では10.6%の開きがあった。また、「2人目の壁」を感じる理由について、「経済的な理由」は減少傾向にあるものの、「心理的な理由」が増加傾向にあり、新型コロナウイルスの感染拡大など不安定な社会による影響もみられる。
※1「生活費や教育費に関連した家計の見通しや、仕事等の環境、年齢等を考慮し、第二子以後の出産をためらうこと」を指します
「理想の子どもの人数が減少した」理由は「体力面」34.7%、「収入面」33.2%
「理想の子どもの人数が減った」が「増えた」を大きく上回った。また、理想の子どもの数が減少するタイミングとしては「結婚した時」「子どもができた時」が上位を占めた。また、各タイミング別にみると、前者では収入面、後者では日常生活と子育ての両立に悩む方が多いことがわかった。
「今後出産しないと思う」理由は「経済的不安」が62.4%
一方、子どもがいない既婚女性は「心理的な不安」が62.1%
「今後出産する/したいと思う」の数値は昨年度から減少傾向にあり、本年度は過去最低値となった。また、「今後出産をしないと思う」理由は「経済的不安」が最も多く、新型コロナウイルス感染拡大などによる不安定な社会情勢の影響がみられる。一方、子どもがいない既婚女性では「心理的な不安」が最も多く、62.1%となった。
40代母親は、39歳以下母親と比べて、妊娠・出産・育児における心理的な不安が高い傾向にあることがわかった。
その理由は「家庭や子どもへの好影響」
2人以上の子どもを出産した方の幸福度は、2013年以降90%後半を推移しており、本年度も95.7%と高い数値となった。その理由は、「にぎやかになった」「子ども同士で遊べるようになった/成長した」など、家庭への好影響である傾向がみられた。
「子どもがいない」家庭は各項目において子どもがいる家庭よりも数値が低く、特に「親としての責任・覚悟」は子どもがいる家庭よりも15.0%以上低いことがわかった。
【本調査結果を受けて】
子育て世代の出産や子育てに対する意識を毎年定点的に把握することを目的とした本調査は、今年で10年目となり、一つの節目を迎えました。この10年間、待機児童問題をきっかけとした保育環境の改善、女性の就業率の向上や幼保無償化、育児休業給付金の支給率の引き上げなどが行われ、子育て世代を取り巻く環境は大きく変わりました。
また、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって生活様式が一変し、図らずも働き方改革が急速に進んだことによって、家族で過ごす時間が増えた方も多くいるのではないでしょうか。
このような状況の中で、子育て世代の意識はどのように変化したのでしょうか。「理想の子どもの人数」については、今年の調査で若干上昇したものの、10年間の推移を見てみると減少傾向にあります。また、2人目以上の出産を躊躇する「2人目の壁」を感じている人の割合は、今年の調査では過去最高となりました。また、子どもがいない夫婦の出産意向が、心理的な問題によって低いことも浮き彫りになりました。「2人目の壁」を感じる要因を見てみると、経済的な問題などは緩和されつつも高止まりし、一方では心理的な理由が増加傾向にあります。様々な制度が開始されつつも、子育て世代の意識の改善には大きく寄与していないことが分かります。その要因は、例えば女性の就業率が向上したものの子育て世代の女性は非正規雇用が多く賃金が低いことや、育休制度が改善しても今なお男性が利用し難い風土が残されていることなど、制度が活かされていない点が挙げられます。また、児童手当の特例給付が廃止されることが決定するなど、支援制度の継続性や不平等感に不安を抱え、長期的な安心感を得づらい子育て世代も多いのではないでしょうか。
今の子育て世代だけでなく、さらに若い世代の方々が安心して子どもを産み育てられる環境を提供するためには、全ての子どもが平等に、長期にわたって安心して利用できる制度の確立や、制度が活かされる風土の醸成が必要となります。子育てしやすい社会は、誰もが暮らしやすい社会であるとの認識の下、政府や自治体、企業、地域におけるさらなる取り組みが必要であると考えます。
公益財団法人1 more Baby応援団
専務理事 秋山開
【調査対象】
■既婚者 2,955サンプル
・対象:既婚女性20-39歳、既婚男性20-49歳(男性は妻が39歳以下かつ結婚14年以下)
・割付条件①:全国各都道府県均一回収(各県63名)
・既婚子なし/既婚子1人/既婚子2人以上 それぞれを均等回収
⇒47(都道府県数)×3(子ども条件)=141セルのそれぞれを21名ずつ、計2,955名回収
回収後①全既婚者における各都道府県の構成比、②既婚者の子どもの人数の構成比を国勢調査より算出しウエイトバックをかけた。
■40代での出産者409サンプルの条件
・(現在40代かつ40代で第一子出産:203ss)+(現在40代かつ40代で第二子出産:206ss)=2セル回収。
■調査方法:インターネット
本リリースでは、単年の調査結果のグラフに調査対象者の説明がない場合は既婚男女2,955名の結果としています。経年推移の調査結果のグラフには、本年度の調査対象者数のみ記載しています。
■調査実施期間
事前調査 : 2022年4月6日(水)~4月12日(火)
本調査 : 2022年4月8日(金)~4月11日(月)
■調査主体:公益財団法人1 more Baby応援団
■調査委託先:株式会社H.M.マーケティングリサーチ
【調査結果詳細】
「『2人目の壁』は存在すると思う」の数値はほぼ横ばいで推移していましたが、75.8%となった本年度は、同様の選択肢で調査を実施した2014年以降で最高値という結果となりました※2。<グラフ1>男女別に見ると、男性では68.0%、女性では78.6%の方が「存在すると思う/どちらかといえば存在すると思う」と回答しており、「2人目の壁」は女性にとってより深刻な課題である現状が浮き彫りになりました。<グラフ2>
※2 2013年の選択肢は「存在すると思う/存在しないと思う」。2014年∼2022年の選択肢は「存在すると思う/どちらかといえば存在すると思う/どちらかといえば存在しないと思う/存在しないと思う」
※3 2014年∼2022年は、「存在すると思う」=「存在すると思う」と「どちらかといえば存在すると思う」の合計値。
-「2人目の壁」を感じる理由、「経済的な理由」が減少傾向。一方、「心理的な理由」は増加傾向
「2人目の壁」実感理由の調査を開始した2014年からの推移を見ると、「経済的な理由」は緩やかな減少傾向にあることがわかりました。しかし、70%以上の方が不安を感じており、生活者にとっては依然重要な課題であることに変わりはないようです。一方、育児ストレスなどの「心理的な理由」は緩やかに増加しており、孤独な子育て環境や不安定な社会情勢が出産や子育てに影響を与えていることが予想されます。<グラフ3>
「理想の子どもの人数」は2013年以降、緩やかな減少傾向にあります。本年度は昨年から微増したものの、1.91人となり、2人を下回りました。<グラフ4>この傾向の原因を詳しく調べるため、「理想の子どもの人数」の変化(増減)について聞いたところ、これまでの人生の中で「増えた」が14.8%、「減った」が28.9%という結果となりました。<グラフ5>また、「理想の子どもの人数」が減少した理由は、「体力的に厳しいから」(34.7%)、「収入が低いから」(33.2%)が上位となりました。<グラフ6>
*「理想の子どもの人数」は、経済的な問題など外的要因を排除した上での「本当に欲しい子どもの人数」を表し、「実際に予定している子どもの人数」と切り分けて回答を頂きますが、本調査では過去10年間の結果から、何らかの経験や外的要因によって本来の「理想の子どもの人数」そのものが減少しているのではないかとの仮説のもと実施しました。
-結婚時に収入面、出産時に子育ての厳しさに直面し、「理想の子どもの人数」が減少する傾向に
きっかけ別に「理想の子どもの人数」の減少理由を見ると、「結婚時に理想の子どもの人数」が減少した方は「収入が低いから」(37.7%)、「将来も収入が上がる見込みがないから」(33.4%)といった、自身の収入に関わる不安が上位を占めました。<グラフ7>一方、「出産時に理想の子どもの人数」が減少した方は「体力的に厳しいから」(42.7%)の他、「出産後、想像以上に子育てに厳しい社会を感じたから」(36.7%)など、ワンオペ育児や仕事と子育ての両立を含め、日常生活において子育てする厳しさを減少理由に挙げる方が多いことがわかりました。<グラフ8>
以上から、「理想の子どもの人数」を考える際には「結婚」と「出産」という壁が存在し、前者では収入面、後者では日常生活と子育ての両立の厳しさに直面する方が多いことが伺えました。
「今後出産すると思う/したいと思う」の数値は調査開始以降、ほぼ横ばいで推移してきましたが、昨年は初めて50%を下回り、本年度は過去最低値の47.1%となりました。<グラフ9>全国への緊急事態宣言の発出など、新型コロナウイルスによる社会的な不安によって心理的負担が増加し、出産意向の数値に影響を与えていることが予想されます※4。また、「今後出産はしないと思う」という理由については「経済的不安(子育てや教育にお金がかかり、家計に不安を感じる)」と回答した方が最も多く、6割以上の方が金銭面に不安を抱えていることがわかりました。<グラフ10>
また、正規雇用者同士の夫婦であっても、57.5%が「経済的不安(子育てや教育にお金がかかり、家計に不安を感じる)」を理由に「今後出産はしないと思う」と回答しており、雇用形態に関わらず多くの夫婦が金銭面に悩みを抱えている現状が明らかになりました。一方、子どもがいない既婚女性は、心理的な不安が62.1%と最も高く、経済的な不安(56.1%)などよりも高い結果となっています。<グラフ11>
※4 緊急事態宣言が初めて全国に発出されたのは2020年4月16日。2020年の本調査期間は4月10日~4月16日であったため、2021年の調査にて初めて影響が出たと思われる。
年代別に「妊娠・出産・育児で大変だったこと」を聞いたところ、40代の母親は「年齢を考え、子どもに対して申し訳ないと思うことがあった」45.0%、「『高齢出産』と言われる機会が多く、嫌な気持ちになることがあった」35.2%、「子どもの友達の親は若い親が多かったので、居心地の悪さを感じた」27.6%といった項目が全体平均よりも19~30%ほど高く、その他の世代と比較して年齢を起因とする心理的負担が大きい傾向にあることがわかりました。<グラフ12>
「2人目の壁」を多くの方が実感している一方、2人以上の子どもを出産した方に対して「2人以上の子どもを出産して満足」と回答した方は10年間を通して90%台後半を推移しており、本年の調査においても95.7%となりました。<グラフ13>
※5 「満足している」=「とても満足している」と「やや満足している」の合計値。「不満を感じている」=「とても不満を感じている」と「やや不満を感じている」の合計値
-幸福度が高い理由は「家庭や子どもへの好影響」
本年度の調査において、「2人以上の子どもを産んで/育ててよかった」と感じる理由としては、「家族が多くなったので、にぎやかで楽しくなった」(66.0%)、「子ども同士(兄弟姉妹)で遊べるようになった」(62.4%)、「子ども同士(兄弟姉妹)で成長した」(55.9%)が上位となり、家庭や子どもへの好影響の観点から2人以上の子どもを出産して良かったと感じている方が多いことがわかりました。<グラフ14>
子育てをするにあたり「ご自身が親として十分と思うか」と質問したところ、「子どもなし」家庭では、すべての項目において「子ども1人」家庭、「子ども2人以上」家庭の数値を下回っていることがわかりました。<グラフ15>最も差が大きかった項目は「親としての責任・覚悟」で、「子ども1人」家庭と比較すると18.0%、「子ども2人以上」家庭と比較すると16.8%の数値の差がありました。「子どもなし」家庭では、「金銭面」、「教育面」などのその他の項目における不安があるため、親としての自信が醸成されず、「親としての責任・覚悟」の項目で「子ども1人」家庭や「子ども2人」家庭と大きな差がついたと考えられます。
【調査主体について】
公益財団法人1more Baby応援団
理想の数だけ子どもを産み育てられる社会を実現するため、結婚・妊娠・出産・子育て支援に関する情報提供及びその実現に必要な事業を行い、将来の活力ある社会環境の維持・発展のために寄与することを目的に活動。
「1more Baby応援団」ポータルサイトと公式Facebookページでは、出産に関するママ・パパの意識を把握するための調査結果や、「もうひとり、こどもが欲しい」という家族の想いを応援する情報を発信しています。
設立日:2015年1月15日(2017年10月公益財団化)
所在地:東京都港区高輪3丁目22番9号
電 話:03-6840-8836
理事長:吉村泰典
<活動内容・実績>
●二人目の不妊治療を応援するサイト「二人目不妊ウェルカム病院」公開 (2020年5月)
●ユネスコ「国際セクシャリティガイダンス」に基づいた妊娠・出産に関する知識啓発サイト「SEXOLOGY」公開 (2020年5月)
同サイトがキッズデザイン「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」部門、賞審査員長特別賞を受賞(2021年9月)
他、妊娠や出産、子育てや働き方に関するシンポジウムやセミナー、交流会を多数開催。
<出版物>
●18時に帰る ~「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方~
●なぜあの家族は二人目の壁を乗り越えられたのか?ママ・パパ1045人に聞いた本当のコト
*「1 more Baby応援団」ポータルサイト (http://1morebaby.jp)
*「1 more Baby応援団」Facebook (http://facebook.com/1morebaby)
- 1.「2人目の壁※1」を感じる方の割合が2014年以降最高値に
女性「『2人目の壁』は存在すると思う」78.6%、男性「『2人目の壁』は存在すると思う」68.0%
「『2人目の壁』は存在すると思う」の数値は同様の設問で調査を開始した2014年以降横ばいで推移していたが、本年は75.8%で過去最高値となった。また、男女間では10.6%の開きがあった。また、「2人目の壁」を感じる理由について、「経済的な理由」は減少傾向にあるものの、「心理的な理由」が増加傾向にあり、新型コロナウイルスの感染拡大など不安定な社会による影響もみられる。
※1「生活費や教育費に関連した家計の見通しや、仕事等の環境、年齢等を考慮し、第二子以後の出産をためらうこと」を指します
- 2.「理想の子どもの人数が減少した」が「増加した」の約2倍。結婚時と出産時に現実に直面
「理想の子どもの人数が減少した」理由は「体力面」34.7%、「収入面」33.2%
「理想の子どもの人数が減った」が「増えた」を大きく上回った。また、理想の子どもの数が減少するタイミングとしては「結婚した時」「子どもができた時」が上位を占めた。また、各タイミング別にみると、前者では収入面、後者では日常生活と子育ての両立に悩む方が多いことがわかった。
- 3.「今後出産すると思う/したいと思う」が10年間で最低値に。コロナ禍以降、減少傾向
「今後出産しないと思う」理由は「経済的不安」が62.4%
一方、子どもがいない既婚女性は「心理的な不安」が62.1%
「今後出産する/したいと思う」の数値は昨年度から減少傾向にあり、本年度は過去最低値となった。また、「今後出産をしないと思う」理由は「経済的不安」が最も多く、新型コロナウイルス感染拡大などによる不安定な社会情勢の影響がみられる。一方、子どもがいない既婚女性では「心理的な不安」が最も多く、62.1%となった。
- 4.40代母親は心理的な負担が大きい傾向に
40代母親は、39歳以下母親と比べて、妊娠・出産・育児における心理的な不安が高い傾向にあることがわかった。
- 5.2人以上の子どもを出産した方の幸福度は過去10年を通して高い傾向
その理由は「家庭や子どもへの好影響」
2人以上の子どもを出産した方の幸福度は、2013年以降90%後半を推移しており、本年度も95.7%と高い数値となった。その理由は、「にぎやかになった」「子ども同士で遊べるようになった/成長した」など、家庭への好影響である傾向がみられた。
- 6.「子どもがいない」家庭では「自分は親として十分ではない」と思っている方が多い
「子どもがいない」家庭は各項目において子どもがいる家庭よりも数値が低く、特に「親としての責任・覚悟」は子どもがいる家庭よりも15.0%以上低いことがわかった。
【本調査結果を受けて】
子育て世代の出産や子育てに対する意識を毎年定点的に把握することを目的とした本調査は、今年で10年目となり、一つの節目を迎えました。この10年間、待機児童問題をきっかけとした保育環境の改善、女性の就業率の向上や幼保無償化、育児休業給付金の支給率の引き上げなどが行われ、子育て世代を取り巻く環境は大きく変わりました。
また、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって生活様式が一変し、図らずも働き方改革が急速に進んだことによって、家族で過ごす時間が増えた方も多くいるのではないでしょうか。
このような状況の中で、子育て世代の意識はどのように変化したのでしょうか。「理想の子どもの人数」については、今年の調査で若干上昇したものの、10年間の推移を見てみると減少傾向にあります。また、2人目以上の出産を躊躇する「2人目の壁」を感じている人の割合は、今年の調査では過去最高となりました。また、子どもがいない夫婦の出産意向が、心理的な問題によって低いことも浮き彫りになりました。「2人目の壁」を感じる要因を見てみると、経済的な問題などは緩和されつつも高止まりし、一方では心理的な理由が増加傾向にあります。様々な制度が開始されつつも、子育て世代の意識の改善には大きく寄与していないことが分かります。その要因は、例えば女性の就業率が向上したものの子育て世代の女性は非正規雇用が多く賃金が低いことや、育休制度が改善しても今なお男性が利用し難い風土が残されていることなど、制度が活かされていない点が挙げられます。また、児童手当の特例給付が廃止されることが決定するなど、支援制度の継続性や不平等感に不安を抱え、長期的な安心感を得づらい子育て世代も多いのではないでしょうか。
今の子育て世代だけでなく、さらに若い世代の方々が安心して子どもを産み育てられる環境を提供するためには、全ての子どもが平等に、長期にわたって安心して利用できる制度の確立や、制度が活かされる風土の醸成が必要となります。子育てしやすい社会は、誰もが暮らしやすい社会であるとの認識の下、政府や自治体、企業、地域におけるさらなる取り組みが必要であると考えます。
公益財団法人1 more Baby応援団
専務理事 秋山開
【調査対象】
■既婚者 2,955サンプル
・対象:既婚女性20-39歳、既婚男性20-49歳(男性は妻が39歳以下かつ結婚14年以下)
・割付条件①:全国各都道府県均一回収(各県63名)
・既婚子なし/既婚子1人/既婚子2人以上 それぞれを均等回収
⇒47(都道府県数)×3(子ども条件)=141セルのそれぞれを21名ずつ、計2,955名回収
回収後①全既婚者における各都道府県の構成比、②既婚者の子どもの人数の構成比を国勢調査より算出しウエイトバックをかけた。
■40代での出産者409サンプルの条件
・(現在40代かつ40代で第一子出産:203ss)+(現在40代かつ40代で第二子出産:206ss)=2セル回収。
■調査方法:インターネット
本リリースでは、単年の調査結果のグラフに調査対象者の説明がない場合は既婚男女2,955名の結果としています。経年推移の調査結果のグラフには、本年度の調査対象者数のみ記載しています。
■調査実施期間
事前調査 : 2022年4月6日(水)~4月12日(火)
本調査 : 2022年4月8日(金)~4月11日(月)
■調査主体:公益財団法人1 more Baby応援団
■調査委託先:株式会社H.M.マーケティングリサーチ
【調査結果詳細】
- 「2人目の壁」実感値が2014年以降最高の75.8%
「『2人目の壁』は存在すると思う」の数値はほぼ横ばいで推移していましたが、75.8%となった本年度は、同様の選択肢で調査を実施した2014年以降で最高値という結果となりました※2。<グラフ1>男女別に見ると、男性では68.0%、女性では78.6%の方が「存在すると思う/どちらかといえば存在すると思う」と回答しており、「2人目の壁」は女性にとってより深刻な課題である現状が浮き彫りになりました。<グラフ2>
※2 2013年の選択肢は「存在すると思う/存在しないと思う」。2014年∼2022年の選択肢は「存在すると思う/どちらかといえば存在すると思う/どちらかといえば存在しないと思う/存在しないと思う」
※3 2014年∼2022年は、「存在すると思う」=「存在すると思う」と「どちらかといえば存在すると思う」の合計値。
-「2人目の壁」を感じる理由、「経済的な理由」が減少傾向。一方、「心理的な理由」は増加傾向
「2人目の壁」実感理由の調査を開始した2014年からの推移を見ると、「経済的な理由」は緩やかな減少傾向にあることがわかりました。しかし、70%以上の方が不安を感じており、生活者にとっては依然重要な課題であることに変わりはないようです。一方、育児ストレスなどの「心理的な理由」は緩やかに増加しており、孤独な子育て環境や不安定な社会情勢が出産や子育てに影響を与えていることが予想されます。<グラフ3>
- 「理想の子どもの人数」は10年間、緩やかに減少傾向。人生において「理想の子どもの人数が減少した」タイミングは「結婚」と「出産」
「理想の子どもの人数」は2013年以降、緩やかな減少傾向にあります。本年度は昨年から微増したものの、1.91人となり、2人を下回りました。<グラフ4>この傾向の原因を詳しく調べるため、「理想の子どもの人数」の変化(増減)について聞いたところ、これまでの人生の中で「増えた」が14.8%、「減った」が28.9%という結果となりました。<グラフ5>また、「理想の子どもの人数」が減少した理由は、「体力的に厳しいから」(34.7%)、「収入が低いから」(33.2%)が上位となりました。<グラフ6>
*「理想の子どもの人数」は、経済的な問題など外的要因を排除した上での「本当に欲しい子どもの人数」を表し、「実際に予定している子どもの人数」と切り分けて回答を頂きますが、本調査では過去10年間の結果から、何らかの経験や外的要因によって本来の「理想の子どもの人数」そのものが減少しているのではないかとの仮説のもと実施しました。
-結婚時に収入面、出産時に子育ての厳しさに直面し、「理想の子どもの人数」が減少する傾向に
きっかけ別に「理想の子どもの人数」の減少理由を見ると、「結婚時に理想の子どもの人数」が減少した方は「収入が低いから」(37.7%)、「将来も収入が上がる見込みがないから」(33.4%)といった、自身の収入に関わる不安が上位を占めました。<グラフ7>一方、「出産時に理想の子どもの人数」が減少した方は「体力的に厳しいから」(42.7%)の他、「出産後、想像以上に子育てに厳しい社会を感じたから」(36.7%)など、ワンオペ育児や仕事と子育ての両立を含め、日常生活において子育てする厳しさを減少理由に挙げる方が多いことがわかりました。<グラフ8>
以上から、「理想の子どもの人数」を考える際には「結婚」と「出産」という壁が存在し、前者では収入面、後者では日常生活と子育ての両立の厳しさに直面する方が多いことが伺えました。
- 「今後出産すると思う/したいと思う」が10年間で最低の47.1%
「今後出産すると思う/したいと思う」の数値は調査開始以降、ほぼ横ばいで推移してきましたが、昨年は初めて50%を下回り、本年度は過去最低値の47.1%となりました。<グラフ9>全国への緊急事態宣言の発出など、新型コロナウイルスによる社会的な不安によって心理的負担が増加し、出産意向の数値に影響を与えていることが予想されます※4。また、「今後出産はしないと思う」という理由については「経済的不安(子育てや教育にお金がかかり、家計に不安を感じる)」と回答した方が最も多く、6割以上の方が金銭面に不安を抱えていることがわかりました。<グラフ10>
また、正規雇用者同士の夫婦であっても、57.5%が「経済的不安(子育てや教育にお金がかかり、家計に不安を感じる)」を理由に「今後出産はしないと思う」と回答しており、雇用形態に関わらず多くの夫婦が金銭面に悩みを抱えている現状が明らかになりました。一方、子どもがいない既婚女性は、心理的な不安が62.1%と最も高く、経済的な不安(56.1%)などよりも高い結果となっています。<グラフ11>
※4 緊急事態宣言が初めて全国に発出されたのは2020年4月16日。2020年の本調査期間は4月10日~4月16日であったため、2021年の調査にて初めて影響が出たと思われる。
- 40代母親が大変だったことは「年齢を考え、子どもに対して申し訳ないと思うことがあった」で45.0%。全体平均と30.5%の差
年代別に「妊娠・出産・育児で大変だったこと」を聞いたところ、40代の母親は「年齢を考え、子どもに対して申し訳ないと思うことがあった」45.0%、「『高齢出産』と言われる機会が多く、嫌な気持ちになることがあった」35.2%、「子どもの友達の親は若い親が多かったので、居心地の悪さを感じた」27.6%といった項目が全体平均よりも19~30%ほど高く、その他の世代と比較して年齢を起因とする心理的負担が大きい傾向にあることがわかりました。<グラフ12>
- 2人以上の子どもを出産した幸福度は、10年間90%後半を推移
「2人目の壁」を多くの方が実感している一方、2人以上の子どもを出産した方に対して「2人以上の子どもを出産して満足」と回答した方は10年間を通して90%台後半を推移しており、本年の調査においても95.7%となりました。<グラフ13>
※5 「満足している」=「とても満足している」と「やや満足している」の合計値。「不満を感じている」=「とても不満を感じている」と「やや不満を感じている」の合計値
-幸福度が高い理由は「家庭や子どもへの好影響」
本年度の調査において、「2人以上の子どもを産んで/育ててよかった」と感じる理由としては、「家族が多くなったので、にぎやかで楽しくなった」(66.0%)、「子ども同士(兄弟姉妹)で遊べるようになった」(62.4%)、「子ども同士(兄弟姉妹)で成長した」(55.9%)が上位となり、家庭や子どもへの好影響の観点から2人以上の子どもを出産して良かったと感じている方が多いことがわかりました。<グラフ14>
- 「子どもがいない」家庭では「自分は親として十分ではない」と思っている傾向
子育てをするにあたり「ご自身が親として十分と思うか」と質問したところ、「子どもなし」家庭では、すべての項目において「子ども1人」家庭、「子ども2人以上」家庭の数値を下回っていることがわかりました。<グラフ15>最も差が大きかった項目は「親としての責任・覚悟」で、「子ども1人」家庭と比較すると18.0%、「子ども2人以上」家庭と比較すると16.8%の数値の差がありました。「子どもなし」家庭では、「金銭面」、「教育面」などのその他の項目における不安があるため、親としての自信が醸成されず、「親としての責任・覚悟」の項目で「子ども1人」家庭や「子ども2人」家庭と大きな差がついたと考えられます。
【調査主体について】
公益財団法人1more Baby応援団
理想の数だけ子どもを産み育てられる社会を実現するため、結婚・妊娠・出産・子育て支援に関する情報提供及びその実現に必要な事業を行い、将来の活力ある社会環境の維持・発展のために寄与することを目的に活動。
「1more Baby応援団」ポータルサイトと公式Facebookページでは、出産に関するママ・パパの意識を把握するための調査結果や、「もうひとり、こどもが欲しい」という家族の想いを応援する情報を発信しています。
設立日:2015年1月15日(2017年10月公益財団化)
所在地:東京都港区高輪3丁目22番9号
電 話:03-6840-8836
理事長:吉村泰典
<活動内容・実績>
●二人目の不妊治療を応援するサイト「二人目不妊ウェルカム病院」公開 (2020年5月)
●ユネスコ「国際セクシャリティガイダンス」に基づいた妊娠・出産に関する知識啓発サイト「SEXOLOGY」公開 (2020年5月)
同サイトがキッズデザイン「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」部門、賞審査員長特別賞を受賞(2021年9月)
他、妊娠や出産、子育てや働き方に関するシンポジウムやセミナー、交流会を多数開催。
<出版物>
●18時に帰る ~「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方~
●なぜあの家族は二人目の壁を乗り越えられたのか?ママ・パパ1045人に聞いた本当のコト
*「1 more Baby応援団」ポータルサイト (http://1morebaby.jp)
*「1 more Baby応援団」Facebook (http://facebook.com/1morebaby)
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