2024年度優良企業に株式会社東京足袋本舗(靴下卸商)が選出される。価格競争が厳しい業界の中で、どのように業績を上げてきたのかに迫る。
株式会社東京足袋本舗(社長安藤弘)は、東京商工リサーチ(以下TSR)が推奨する2024年度の優良企業に選出された。TSRの行っている企業信用調査を通じて、「経営者能力」「成長性」「安定性」「公開性・総合評価」から総合的に点数が算出される「TSR評点」において、日本企業の上位8%にランクインする優良企業に選ばれた。
好調な業績と今後の展開に迫る。
当社は創業75年の会社になりますが、創業から60年間は中部地区のお客様との商売をさせて頂いておりましたが、現在は全国の量販店様を中心とした商売をさせて頂いております。昔は量販店への納品メーカーそれぞれに強みがあり、商売がすみ分けされていた時代があったようですが、近年はメーカーそれぞれの特徴が薄まってきており、価格競争が非常に激化しております。提案商品が同質化されてきてしまったことによる価格重要度が高まり、利益を削った企業への発注が増えるといった図式です。無理をしているメーカーほど重宝され、一定基準の売上を確保する為に、利益を削ってでもやるかやらないかという選択をしているというのが最近の商売の特徴でした。いわゆる我々を含めたメーカーが昔より弱くなってしまったのです。
そこへ新型コロナウィルス感染症が蔓延し経済が大きなダメージを被ったわけですが、我々も当初はピンチでしかなかったです。しかし、従来の商売に囚われていてはいけないと弊社は自社企画のマスクをいち早く展開させて頂きましたが、それが当初飛ぶように売れました。一日何本ものコンテナが入庫し、その日中に全部出荷という状況でした。今考えても恐ろしい状況でしたが、世の中からマスクが無くなり、それにいち早く対応できたからだと思います。
コロナ禍で学んだことは、今まで我々はお客様が求めるものを企画してきましたが、それは消費者が本当に欲しいと思うものなのだろうかということです。商売の基礎基本ですが、消費者が本当に欲しいと思うものを世の中に出す必要があるのだという事を再認識致しました。必要な時に、必要な価格で、必要な量を供給していく事が我々の役目なんだと改めて気付かされました。
それ以降、最近は社員が本当に世の中が必要としているものを企画するようになってくれていますね。我々の業界は皆、売れているものを探しています。そうではなくて、本質は世の中で需要があるものを探すことだと思います。売れているというのは、既に過去の事であり、売れるものは未来のことです。皆が過去にとらわれて価格競争になってしまっている気がするんです。こういったことをコロナ禍の販売で一番感じた部分ですね。
又、企業は存続することが一番難しい部分だと思います。継続的な利益を上げなければ当然企業としては存続していけません。商品の粗利を上げることも利益を残す手段の一つですが、粗利は経費を基に算出される自社都合の理想であり、現在の商流及びお客様の要望に基づいて商売していく上で、そもそも利益が出ない構造になってしまっていては、商売を存続することができなくなってしまいます。私共は商品の仕入単価は勿論のことですが、会社で実行されているすべてのパーツを分解して、無理・無駄・ムラがないかという検証をしてきました。我々が商売をさせて頂く上で、何が必要で何が不必要かの検証の基に、色々な方のご協力を頂きながら、業務フローであったり、仕組みの変革は出来てきた部分ではあります。その部分が10年前と現在の当社では大きく変わった部分だと思います。又、この部分を継続してやっていくことにより社員の意識も大きく変わりましたね。今では、必要な経費と不必要な経費、必要な時間と不必要な時間を理解してくれています。しかし、企業規模によってやるべきことが変わっていきますので、常に改革と検証を継続していかなければならないと思っております。
組織は風土が大事なんだと思います。何でこのような判断をしたのか、何でこんなことが理解できないのかと以前は不満を抱えていましたが、実は会社の方に問題があって、やってほしいことを会社の常識にしてしまえば良いと思いました。無関心だったことに関心をもってもらう、何故何故を追求してきた結果、今ではそれが、少しは会社の風土になってきたのかもしれません。
■業績の拡大と共に、人材の確保が難しくなっているようですが?
まさしくその通りで、人材は宝です。人材によって会社の業績は大きく変わってきますし、やれることの範囲が限られてきます。特に繊維業界へ求人の応募は年々少なくなっているようです。しかし世の中から衣料品が無くなることはありません。業界に優秀な人材が集まるようにしなければなりません。私共は今までメディアへの露出をほとんど行ってきませんでしたし、人材確保において自ら考えて行動することをしてきませんでした。これは私自身が待ちの経営をしていたと大いに反省しております。そういった意味では、こういった取材にも積極的に応えていきたいと考えております。
又、本年から専門学校さんとの産学連携を始めることになりました。これは商品の企画から販売までを授業の一環として行っていくというものです。専門学校はアパレルビジネスの受講希望の生徒が年々減ってきていると伺いました。まさに危機ですね。専門学校としてはビジネスのリアルな姿を授業で体験出来る。当社としては学生さんに商売の魅力を感じて頂き、人材の確保に繋げることができるという両者ハッピーになれるものです。学校とタイアップすることで長期的に優秀な人材を確保していきたいと思っております。
■今後の会社の方向性をどのように考えておられますか?
先程も申し上げた通り、現在の私共の環境は、どこかで売れている商品を真似て次シーズン展開する。隣の店がこの商品をやっているから当社もやらなければならないといったような、皆が同じ商品を造り始め価格競争になっていくという、デフレの象徴のような環境です。皆が利益の上がらないレッドオーシャンに突っ込んでいっております。しかし世の中の生活スタイルは多様化しており、昔と違い皆とおなじものを持つことが安心という時代でもないと思っております。そういった意味においては皆が同じ商品を作り続けた結果、消費者一人ひとりにおいては、本当に欲しい商品がなくなってしまっているのではないかと思ってしまいます。まさに「これがいい!」でなく「これでいい」となってしまっていると感じております。商売はそもそも、誰かの生活が豊かになる。誰かが便利になる。誰かの満足の対価としてお金を頂くものだと思っております。現在は自己都合の商品が多くなっています。消費者のニーズと企業のサービス・商品をマッチングすることが商売の本質であり、私共は今後その基礎基本に立ち返った商売をしていく必要があると思っております。
本年、当社は第一段として「LOVESOX(ラブソックス)」というブランドを立ち上げました。これを皮切りに次なる新しいブランドを世の中に出していき、消費者のニーズとのマッチングを進めていきたいと考えております。私共は今でも弱者です。弱者なりの行動が大事だと思っております。
当社の本年のスローガンは「自分以外の誰かのために」というものです。私共の会社は、すべてのお客様、取引先様、仕入先様、従業員のおかげで商売をさせて頂くことが出来ていると思っております。全ての仕事が自分自身の為ではなく、自分以外の誰かの為になるような仕事であるべきだと考えております。又、常に謙虚であるべきだと思っております。私共に関係する全ての方に感謝の想いを持ち、従業員一同邁進させて頂きたいと思っております。
創業から75年の月日が経ち、躍進しようとする株式会社東京足袋本舗。社員の平均年齢は何と30歳だという。社内の雰囲気も入った瞬間に分かるほど活気に溢れている。行動の本質を考え、実行するしようとする姿勢は従業員全体に波及しているように感じた。同社の活躍は、まだまだ止まりそうにない。
(企業インタビュー一部抜粋)
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