ADX設計施工による環境共生型リゾート「MIRU AMAMI」新宿泊棟着工、奄美大島に2024春完成予定
世界自然遺産の豊かな森と共生するオリジナルヴィラを開発
■奄美大島の自然・新宿泊棟建築の背景について
新型コロナの行動制限や水際対策が緩和され、国内外から多くの観光客が奄美大島に訪れています。しかし同時に、観光客が過剰に増加し、観光地の自然環境や地域住民の生活に悪影響を与えるオーバーツーリズム(Overtourism)への危機感も高まり、オーバーツーリズムへの対処を含む持続可能な観光の実現については、世界各国における共通の関心事項となっています。
2021年7月、奄美大島・徳之島は沖縄本島北部・西表島とともに 「世界自然遺産」として登録されました。日本では5つ目の登録であり、特に、「生物多様性」の基準を高く評価された背景から、”奄美の森は奇跡の森である”とも言われています。実際に、奄美大島が位置する場所は、気象条件において生物地理区の境界線「渡瀬ライン」が位置しており、生物生息域の北限と南限、両方の境目となります。これによって多様な生物が共存する稀有の島となっており、国土の面積の0.2%に満たない奄美大島において、国内全体の生物種の約13%が確認されています。
MIRU COLLECTIONは、目に見えるものだけでなく、その背景にある地域の自然や文化的魅力を余すことなく表現するディスティネーションホテルとして、日本国内のみならず世界中から注目されるリゾートホテルグループです。中でも「MIRU AMAMI」は2020年のオープンからこれまで、地域の自然保全活用への参加や、環境保全のために特定のライセンスを持ったガイドツアーの提供など、奄美大島独自の自然や文化を守りながら発展させていくことに尽力してきました。
そこで、「森と生きる」をフィロソフィーとして掲げ日本各地の自然立地で環境配慮型建築を手掛けるADXと、「地域の自然を守るだけではなく、もっと豊かにしていく」ビジョンが一致したことから、今回の宿泊棟増築にあたって共に建設計画を進めるに至りました。
■奄美の森と共生する新たなヴィラを建築
従来のリゾート開発は、森やビーチを切り開く大規模な造成や、大量のコンクリートを使った基礎工事、建設現場での大量の廃棄物など自然環境への負荷が小さくありませんでした。一方今回建設するヴィラは、従来の開発とは一線を画し、自然環境への負荷を最小化したサステナブルな工法で、建築・開発を行います。
<独自の測量データ「森のカルテ」により、地形を生かした配置計画>
ADXでは、3D測量データや土中、水中から採取される生物由来のDNAを調査・分析し、森林地域が持つ多面的な価値を統合的に可視化、評価する「森のカルテ」というアセスメントを行っています。今回の計画時にも3D LiDARを用いた簡易的な調査を実施し、敷地内の地形をデータ化することで最適な配置計画を実現しました。
<亜熱帯海洋性の気候に合わせたヴィラを設計>
奄美大島は亜熱帯海洋性の気候に属しており、年間を通して高温多湿、台風・豪雨の常襲や塩害、シロアリの発生など建築物の風化作用が著しい特徴を示します。さらに、「MIRU AMAMI」が位置する芦徳地区にも多数の固有種や希少野生生物が生息しているため、生態系への十分な配慮が必要です。特に、建築物の中でも構造物による生息地の分断や日照条件等の微気象の変化は、野生動植物の生息・生育に影響を及ぼします。そこで今回「高床式独立基礎工法」を採用し、コンクリートの使用量を最小化することで土壌への負荷を軽減します。また、株式会社フランウッドと提携し、バイオ素材だけを用いたフラン樹脂加工技術により国産針葉樹をハードウッド化した革新的な資材を外壁材として使用、その他にも内装材に断熱効果の大きい炭化コルクを採用、害虫防除や駆除などのシステム開発を行う8thCAL株式会社と提携し建物のシロアリ対策を行うなど、原料・素材の細部まで徹底的にサステナブルな建築に取り組んでいます。
<パネル工法でヴィラ建設期間を1/3に短縮>
自然立地での建設施工においては、現地の資材・職人不足を補うために、一定程度遠隔地から材料を運搬したり、技術人材を派遣することが求められます。一方で、現地施工期間が長期化することにより環境負荷も問題視されています。そこで今回、床、壁、天井などの部材をパネルとしてあらかじめ工場で製造し、現場で組み合わせて建築するパネル工法を採用し、現地でのヴィラ建設期間を従来工法の1/3である約2ヶ月まで短縮します。
<奄美の地域文化や在来種を生かしたデザイン&ランドスケープ>
奄美大島には大小約200の集落があり、集落ごとに独特な文化や慣習を残しています。その伝統的な集落文化に敬意を表し、既存の「Sea Village」エリアの13棟と今回新築する「Forest Village」エリアの14棟をそれぞれの集落として表現、同じリゾート内でも趣の異なる滞在を楽しんでいただけます。また、奄美の在来種を中心とした植物をヴィラの周りだけでなく、屋上やテラス等にも植栽し、周囲の自然と一体となった森をつくり出します。この森が動植物に新たな生息地を提供することで地域の生物多様性に寄与することを目指します。加えて、植物の特徴を知ることができる情報と連携させ、「MIRU AMAMI」を訪れた観光客に奄美大島の自然の豊かさを伝える手段とします。
<長期的な環境モニタリングの実施>
今回は、計画・設計・維持管理段階で検討した環境配慮の取組が実際に効果を発揮しているかを検証するため、長期的なモニタリング調査を実施する計画としています。土中・水中のDNA調査、建築物のライフサイクルでの環境負荷を定量的に評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)調査等により、自然環境への影響を定量化・モニタリングします。
■建築概要
名称:(仮称) 「MIRU AMAMI」新宿泊棟
所在地:〒894-0412 鹿児島県大島郡龍郷町芦徳 800
アクセス:奄美空港から車で20分
敷地面積:3,487.61㎡
延床面積:539.91㎡
総戸数:14棟
構造:木造
設計:ADX
施工:ADX・中村建設
竣工:2024年4月(予定)
■MIRU COLLECTIONについて
MIRU COLLECTIONは、現代的で意識を高める旅を求めるトラベラーのためのライフスタイルホテルです。これまでNest at Nest Hotelsとして親しまれた私たちは、様々な意味を含む「みる」という日本語に想いを込め、ゲストの感性に語りかける唯一無二の旅体験と出会う新しい滞在の提案をいたします。自然や文化を引き出した思慮深い建築デザイン、快適で驚きのあるおもてなし。Miru Collectionからゲストへのお約束として、未知なる美しさに動かされた心が、赴くままに旅する最高の物語をサポートをいたします。
https://mirucollection.com/ja/home-2/
■株式会社ADX 会社概要
安齋好太郎率いる建築チーム。「森と生きる。」をフィロソフィーとし、自然と共生する建築を最重視し、自然に戻しやすい素材だけを使う工夫や建材のトレーサビリティの設計、さらには建築が増えるほど森が豊かになっていくリジェネラティヴな環境再生型の事業展開を目指す。設計・施工・プロダクト開発・森林地域における開発行為や環境に配慮したものづくりのコンサルティング等を行い、近年の代表プロジェクトに「五浦の家」「One year project」「K5」「SANU 2nd Home」「KITOKI」などがある。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社ADX info@adx.jp
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