Quantinuum、量子ボリュームで過去最高値である8192を達成

よりシンプルに、 より早く、そしてより少ないエラーで。任意角度のゲートでH1の量子ボリュームを増加

新たな任意角度のゲート機能により量子ボリュームが8192まで増加。Quantinuumが以前から表明している「量子ボリュームを毎年1桁ずつ増加させる」という目標を達成。
※本報道資料は、Quantinuumが2022年9月27日に配信したプレスリリースの抄訳です
 

— Quantinuum (クオンティニュアム、以下Quantinuum)の社長兼COOであるTony Uttely氏は、先週コロラド州で開催されたIEEE Quantum Weekイベントの基調講演で、3つの大きな成果を発表しました。

これらの成果は、いずれも実用化を見据えた量子コンピューティングのエコシステム形成が加速していることを表しています。具体的な3つの成果の内容は次の通りです:
(i) Hシリーズハードウェアに新たな任意角度のゲート機能が搭載
(ii) System Model H1が量子ボリュームで新記録を達成
(iii) Quantinuumが開発・提供するオープンソースの量子ソフトウェア開発キットTKET(ティケット)が50万ダウンロード数を突破

今回の発表は、Uttley氏の「A Measured Approach to Quantum Computing」と題する基調講演の中で行われました。
これらの進歩は、Quantinuumが量子コンピューティング業界においてリーダーシップを発揮し続けていることを示す最新の事例です。

Uttley氏は「 Quantinuumは、量子コンピューティングが世界に与えるインパクトを加速させています」と述べています。さらに「我々は、SDKであるTKETを利用する開発者のコミュニティーを構築するだけでなく、ハードウェアとソフトウェアの両面で大きな進歩を遂げています」とコメントしています。

今回の8192という量子ボリュームの測定は、特に注目に値するマイルストンだと言えます。なお、Quantinuumが、同社が開発・運用しているイオントラップ型量子コンピュータ「 System Model H1, Powered by Honeywell 」で量子ボリュームの新記録を達成したことを発表するのは今回で今年2度目となります。

上図中のプロットは、Quantinuumによる量子ボリュームの測定値の伸びを示したものです。測定テスト毎にヘビー・アウトプットを観測する確率'h'を記載し、マーカータイプでシステムを識別しています。グレーの破線は、量子ボリュームを毎年1桁ずつ増加させるという当社の目標を示しています。

今回の記録達成の鍵となったのは、任意角度の2量子ビットゲートを直接実装する新しい機能です。多くの量子回路において、この新しい2量子ビットゲートの方法は、より効率的な回路構築を可能にし、より忠実な結果を導くことができます。

Quantinuumのコマーシャルオペレーション担当ディレクターであるBrian Neyenhuis博士は、「この新たな機能によって、様々なユーザーがメリットを享受できるでしょう。多くの場合、量子ビットとの相互作用がより短くなり、そのためエラーレートを下げることができます。当社のユーザーは、今まで以上に少ないノイズで計算を実行することが可能になるのです」と述べています。

また、これらの任意角度のゲートは、H1のトラップドイオンアーキテクチャの全体的な設計上の優位性のもとに成り立っている、と Neyenhuis博士は述べています。

さらに、「量子電荷結合素子(QCCD; Quantum-Charged Coupled Device )アーキテクチャでは、 量子ビット間の相互作用は非常にシンプルであり、少数の量子ビットに限定することができるため、相互作用を正確に制御でき、余計なクロストークの発生を心配する必要がありません」とコメントしています。

Quantinuumのオファリング・マネジメント担当シニアディレクターである Jenni Strabley博士は、「この新たなゲートデザインは、H1世代の効率を向上させるためのQuantinuumの3つ目の方法です」と述べています。

さらに、「Quantinuumの目標は量子コンピューティングを加速することです。そのために、我々はハードウェアをより良いものにし、アルゴリズムをより洗練させるよう努めています。そして今回我々はこの新たなゲート設計により、H1でアルゴリズムを今まで以上に効率的に実装することが可能となりました。」と述べています。

パワフルな新機能:任意角度のゲートに関する詳細情報

現在、研究者が操作できるのは、1量子ビットのゲート(1量子ビットの回転)か、完全にもつれ合う2量子ビットのゲートです。これらの構成要素だけで、あらゆる量子演算が原理的に可能です。

今回の新たな任意角度のゲート機能により、完全にもつれ合う2量子ビットゲートだけでなく、部分的にもつれ合う2量子ビットゲートも使用することが可能となりました。

Neyenhuis博士は、「システムの量子状態を、ほんのわずかなステップずつ発展させたいアルゴリズムは、数多く存在します。以前は、ある小さな時間ステップでほんの少しエンタングルメントが必要な場合、それをずっとエンタングルして、少し回転させ、それからほとんどずっと元に戻す必要がありました。今後は、この少しのエンタングルメントを自然に追加して、アルゴリズムを次のステップに進めることが可能です」と述べています。

Neyenhuis博士によると、この任意角度の2量子ビットゲートが自然な構成要素になるアルゴリズムは他にも存在します。その一例が量子フーリエ変換です。任意角度の2量子ビットゲートを用いると、2量子ビットゲートの数(および全体の誤差)が半分になり、回路の忠実度が劇的に向上します。研究者たちは、この新しいゲート設計を用いることで、過去の実験ではひどいエラーに陥ったような難しい問題を実行することが可能になります。

さらにNeyenhuis博士は、「任意角度のゲートにすることで、2量子ビットのゲート数が半分になることに加え、ゲートの振幅に比例して誤差も小さくなります」と述べています。

これは、特にノイズの多い中間スケールの量子アルゴリズムにとって、強力な新機能となります。Quantinuumの研究チームによるもう一つのデモンストレーションは、非平衡相転移を研究するために任意角度の2量子ビットゲートを使用するもので、その技術的な詳細はこちらのarXivで公開されています[https://arxiv.org/abs/2209.12889]

Neyenhuis博士は、「 NISQ領域で実行したいアルゴリズムにとって、これはより効率的な方法です」と述べています。さらに続けて、「この任意角度のゲートによって、回路全体の忠実度をかなり高めることが可能です。 また、不要なゲートを取り除くことで回路実行を高速化することができ、最終的に我々のマシンでジョブを実行する時間を短縮することができます」とコメントしています。

機械学習アルゴリズム、変分アルゴリズム、時間発展アルゴリズムに携わる研究者にとって、この新しいゲートは非常に有益であると考えられます。特に、他の量子系のダイナミクスをシミュレーションする際に、今回の進歩が役に立つでしょう。

ると言えます。なぜなら、他の”レゴブロック”を用いてわざわざ構築するのではなく、求めるインタラクションを自然に実行することが可能だからです。」と述べています。

量子ボリュームの新たなマイルストン

量子ボリュームの測定テストでは、任意の回路を実行する必要があります。量子ボリュームを測定する回路の各スライスで、量子ビットがランダムにペアリングされ、複雑な2量子ビット演算が行われます。 このSU(4)ゲートは、任意角2量子ビットゲートを用いてより効率的に構築することができ、アルゴリズムの各ステップにおける誤差を低減することが可能です。

上図中のプロットは、8192という値を記録した量子ボリュームの測定テストにおける各回路の個別のヘビー・アウトプットを観測する確率を示しています。青い線は累積平均ヘビー・アウトプット確率、緑の領域は新方式で計算した累積2シグマ信頼区間です。

H1-1の量子ボリュームが8192を達成できたのは、任意角度のゲートを実装し、エラーレートを下げ続けることができたからです。なお、Quantinuumが最後に量子ボリュームを増加させたのは2022年4月であり、その際はH1-2が性能を倍増して量子ボリューム4096を突破しました。  

今回の新たな性能向上で、QuantinuumのHシリーズは量子ボリュームの業界における測定記録を2年間で7回更新したことになります。Quantinuumは「量子ボリュームを毎年1桁ずつ増加させる」という目標を達成し続けています。

量子ボリュームとは、IBMが2019年に発表したベンチマークであり、ランダム化回路を用いた量子コンピュータの性能を測定するもので、現在業界全体で頻繁に利用されている指標です。

開発者の量子エコシステムの構築

また、Quantinuumは、TKETのダウンロード数が50万を超えるという新たなマイルストーンを達成しました。

TKETは、ゲート型量子コンピュータ上でプログラムを開発し、実行するための先進的なソフトウェア開発キットです。TKETを使えば、開発者は量子アルゴリズムを最適化することができ、NISQ時代において重要な計算リソースを削減することができます。

TKETはオープンソースであり、PyTKET Pythonパッケージを通じてアクセス可能です。また、Qiskit、Cirq、Q#などの主要な量子ソフトウェアプラットフォームと統合されています。なお、TKETは約1年前からオープンソースとして提供されています。

このような普遍的なアベイラビリティと、多くの量子プロセッサに対応できるTKETのポータビリティは、量子アルゴリズムの開発者のコミュニティを構築する上で非常に重要です。ダウンロード数には、複数のユーザーで構成される企業や学術機関が多く含まれています。

Quantinuum の CEO である Ilyas Khan 氏は、「TKET の正確なユーザー数は不明ですが、複数のプラットフォームを統合し、それらのプラットフォームのパフォーマンスを向上させる重要なツールを活用しているユーザーが、世界中で 100 万人に近づいていることは明らかです」と述べています。我々は、TKETが量子コンピューティングにおけるイノベーションを加速させ、民主化を促進することに貢献していることに感動を覚え続けています」と述べています。

任意角度の2量子ビットゲートなど、最近のQuantinuumの進歩はすべてTKETに組み込まれています。

Quantinuumの量子ソフトウェア責任者であるRoss Duncan博士は、「 TKETは進化するプラットフォームであり、新しいハードウェアの能力を活用し続けます。我々は、これらの新機能を、世界中で急速に増加しているTKETユーザーの手に渡すことに興奮しています。」と述べました。

量子ボリューム8192に関する追加データ

このマイルストーンにおける平均1量子ビットゲート忠実度は99.9959(5)%、2量子ビットゲート忠実度は完全接続量子ビットで99.71(3)%、状態準備および測定忠実度は99.72(1)%となりました。  Quantinuumチームは、標準的な量子ボリューム最適化技術を使用して、各90ショットの220回路を実行し、回路あたり平均175.2個の任意角2量子ビットゲートを得ました。

H1-1は、量子ボリューム8192ベンチマークにおいて、69.33%の確率でヘビー・アウトプットを出力し、95%信頼区間の下限値は68.38%で2/3の閾値をクリアしています。

クオンティニュアムについて 

クオンティニュアム(Quantinuum)は、Honeywell Quantum Solutions の最先端のハードウェアと Cambridge Quantum の最先端のミドルウェアおよびアプリケーションを併せ持つ世界最大の量子コンピューティング企業です。 

米国、欧州、日本の7つの拠点で、300人以上の科学者・エンジニアを含む400名以上の従業員を擁しています。 
科学主導・企業駆動(science led, enterprise driven)で、量子コンピュー ティングと化学、サイバーセキュリティ、金融、最適化などのアプリケーショ ンの開発を加速しています。エネルギー、物流、気候変動、健康などの分野で、 世界で最も差し迫った問題を解決するためのスケーラブルで商業的な量子 ソリューションを創造することに重点を置いています。 

クオンティニュアムのオープンソースのツールキット TKET は、世界有数の量子ハードウェアとシミュレータに対応しておりハードウェアに依存しない量子プログラミングを可能にします。サイバーセキュリティ向けの暗号鍵生成プラットフォーム Quantum Origin、量子計算化学および材料科学パッケージ InQuanto、量子自然言語処理および計算言語学ツールキット λambeq などの他のクオンティニュアム製品でも使われており、その性能向上に貢献しています。 

量子コンピュータ Model H1(Powered by Honeywell)は、世界最先端の量子デバイスであり、業界標準ベンチマーク Quantum Volume において 2048 を最初にクリアしました。クオンティニュアム社は、今後5年間、毎年、商用量子コンピュータの Quantum Volume を1桁ずつ増やしていくことを約束しています。 

Honeywell の商標は、Honeywell International Inc. のライセンスに基づき使用されています。Honeywell International Inc. は、この製品に関していかなる表明も保証も行いません。 本製品はクオンティニュアムによって製造されています。
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