「人材マネジメント調査2025」を発表

「人材の最適化」が進む企業は、業績も価値創造も好調。カギは“社内の流動化”

会社における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、これまでに実施してきた調査に続き、会社で人事責任者、または人事担当者を務める383名に対し、「人材マネジメント調査2025」を実施しました。

調査背景として、これまでの企業における人材マネジメントは、「量」の充足(採用)と「質」の向上(育成)という2軸で、様々な試行錯誤が行われてきました。しかし昨今、国内の労働力不足の加速により、人材の「量」の充足(採用)そのものが年々難しくなっています。

さらに、事業のライフサイクルが短期化し、企業は既存事業推進と新規事業創造の同時実現が求められています。必要となる人材も、「量」と「質」の両面で短期的に変化しており、事業間での人材の再配置などを示す「人材の流動」が求められます。

こうした背景を踏まえ、本調査は、現状における企業の人材マネジメントを把握し、今後の実践的なヒントを得ることを目的に企画されました。

【エグゼクティブサマリ】

Topic1:「業績向上」は順調。一方で、「新価値創造」・人材の「流動化」に課題

回答企業383社の項目ごとの平均値(5点満点)では「業績向上」に関する2項目はどちらも3.50*を上回り、「新価値創造」に関する3項目はいずれも3.50を下回る結果に

「人材の最適化」に課題感。なかでも「流動化」の値が低く、多くの項目で3.00を下回った

Topic2:「人材の最適化」が進む企業は、業績も価値創造も好調に。特に人材の「流動化」がカギ

「人材の最適化」の実現群と非実現群の差が際立つ結果に

「人材の最適化」を実現するためにはヨコ(事業間での人材リソースの最適化)とタテ(主要ポジションの適性把握と充足)の両軸で最適化を進める必要がある

Topic3:「人材の最適化」の実現群は「評価での行動・成果」、「異動での会社主導・従業員希望」を両立

人事施策方針においても「人材の最適化」の実現群と非実現群との差は顕著に

*5段階の選択肢による設問では、平均値が3.50以上の場合、ポジティブな回答(4・5)が概ね半数を超えたと解釈できます。一方、平均値が3.00未満の場合、ネガティブな回答(1・2)がポジティブな回答を上回っていると解釈できます。したがって、本調査においては、3.50以上を「高い水準」、3.00未満を「低い水準」と扱うこととします。

*詳細は調査レポート( https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000001421/ )参照ください。

1.  調査にあたり

本調査は、企業の人材マネジメントの結果と、それに影響を与える要因との関係性を明らかにすることを目的に、以下のような構造で設計しました。(図表1:調査構造)

まず、「人材マネジメントの結果」として、①業績向上、②新価値創造(新しい価値の創出)、③人材の最適化、の3つの認識を明らかにしました。③人材の最適化は、従来の採用による「人材獲得」と、育成などによる「活躍支援」に加えて、異動・配置による「流動化」から成るという仮説のもと、それぞれについて確認しました。

次に、「人材マネジメントの結果」に影響を与えている「人材マネジメントの状況」について、④人事施策方針の現状と今後、そして導入されている⑤具体的な人事施策、を確認しています。

各要素の関係性を分析することで、企業がどのような④人事施策方針や⑤具体的な人事施策を取れば、③人材の最適化が進むのかを明らかにしました。あわせて、③人材の最適化は、①業績向上や②新価値創造とどのように関係しているかを確認しました。

(図表1:調査構造)

2. 調査のポイント

【Topic1:「業績向上」は順調。一方で、「新価値創造」・人材の「流動化」に課題】

回答企業383社の項目ごとの平均値(5点満点)では「業績向上」に関する2項目はどちらも3.50を上回り、「新価値創造」に関する3項目はいずれも3.50を下回る結果に

・本調査では、回答者が自社の人材マネジメントの成果について、どのように捉えているのかを項目ごとに確認しました。(図表2:業績向上・新価値創造 全体平均)

その結果、既存の「業績向上」に関しては一定の手応えを感じている企業が多い一方で、新しい取り組みや価値創出といった「新価値創造」、および事業間での人材の再配置などを示す「流動化」については、課題を抱えている企業が多いことが明らかになりました。

自社に対する評価を要素別に確認すると「業績向上」に関する2項目の値(5点満点、以下同様)がどちらも3.50を上回るのに対し、「新価値創造」に関する3項目の値はいずれも3.50を下回る結果でした。これは、売上や顧客評価といった現在の成果は一定水準にあるものの、新たな価値創出や将来に向けた変革に関しては、十分に実現できていないと認識している企業が多いことを示しています。

(図表2:業績向上・新価値創造 全体平均)

質問 あなたが所属している会社について、各項目がどの程度当てはまるかお答えください。 (n=383)

数値は選択肢1~5の平均結果 選択肢1:そう思わない、2:どちらかというとそう思わない、

3:どちらともいえない、4:どちらかというとそう思う、5:そう思う、6:分からない/答えたくない

「人材の最適化」に課題感。なかでも「流動化」の値が低く、多くの項目で3.00を下回った

・続いて、「人材の最適化」についての自社に対する評価を確認したところ、全体的に企業の問題認識を感じられる結果となりました。(図表3:人材の最適化 全体平均)

なかでも[事業推進に必要な人材の最適化が実現できているか](No.6)という項目に対する値は、2.54と低く、企業の多くが「人材の最適化」の実現に至っていないと認識していることが明らかになりました。また、「人材獲得」「流動化」「活躍支援」の3つの要素別に確認すると、「流動化」に関する7項目の値が最も低く、多くが3.00を下回りました。なかでも、[社内異動により、事業推進に必要な人材を充足できている](No.12)や[事業縮小や拡大に合わせ、事業横断での人的リソースのシフトがうまくいっている](No.15)はともに2.60を下回り、多くの企業が事業環境に応じた人材の再配置に課題を抱えていることが示唆されました。

(図表3:人材の最適化 全体平均)

質問 あなたが所属している会社について、各項目がどの程度当てはまるかお答えください。 (n=383)

数値は選択肢1~5の平均結果 選択肢1:そう思わない、2:どちらかというとそう思わない、

3:どちらともいえない、4:どちらかというとそう思う、5:そう思う、6:分からない/答えたくない

【Topic2:「人材の最適化」が進む企業は、業績も価値創造も好調に。特に人材の「流動化」がカギ】

「人材の最適化」の実現群と非実現群の差が際立つ結果に

・次に、「人材の最適化」の実現状況に応じて企業を「人材最適化実現群」と「人材最適化非実現群」の2つに分類し、その違いを比較しました。

「人材の最適化が実現できている」と回答した「人材最適化実現群」は、「業績向上」「新価値創造」のすべての項目で3.50を上回りました(図表4:業績向上・新価値創造 群別比較)。

一方、「人材最適化非実現群」は「新価値創造」の3項目において3.00を下回りました。また、すべての項目で群間の差は統計的に有意でした。

(図表4:業績向上・新価値創造 群別比較)

「人材の最適化」の実現群と非実現群:「No.6 事業推進に必要な人材の最適化が実現できている」の選択肢で分類。

実現群(58社):「そう思う」 「どちらかというとそう思う」非実現群(192社) :

「どちらかというとそう思わない」 「そう思わない」統計的に有意差のある項目に印(**p<0.01)。

「人材の最適化」を実現するためにはヨコ(事業間での人材リソースの最適化)とタテ(主要ポジションの適性把握と充足)の両軸で最適化を進める必要がある

「人材獲得」「流動化」「活躍支援」に関する項目についても、「人材最適化実現群」の方がすべての項目の値が高く、なかでも、「流動化」に関する項目で大きな差分が見られました(図表5:人材獲得・流動化・活躍支援 群別比較)。

これらの結果から、「人材の最適化」を実現するためには、ヨコ(事業間での人材リソースの最適化)タテ(主要ポジションの適性把握と充足)の両軸で最適化を図っていくことがポイントと捉えられます。「人材の最適化」が進んでいる企業では、業績や新価値創造といった成果面でも良好な結果が見られており、流動性の高い人材配置が企業成長に寄与する可能性が高いことがわかります。

(図表5:人材獲得・流動化・活躍支援 群別比較)

「人材の最適化」の実現群と非実現群:「No.6 事業推進に必要な人材の最適化が実現できている」の選択肢で分類。

実現群(58社):「そう思う」 「どちらかというとそう思う」非実現群(192社) :

「どちらかというとそう思わない」 「そう思わない」統計的に有意差のある項目に印(**p<0.01)。

【Topic3:「人材の最適化」の実現群は「評価での行動・成果」、「異動での会社主導・従業員希望」を両立】

人事施策方針においても「人材の最適化」の実現群と非実現群との差は顕著に

・さらに本調査では、「人材の最適化」を実現している企業が、どのような人事施策方針をとっているのかについて確認しました(図表6:現状の人事施策方針 群別比較)。

その結果、実現群の企業では、「評価」「異動」「等級」に関する項目で、値が高い傾向にありました。なかでも「行動・プロセス」と「成果・結果」の両方を評価する方針や、会社主導と従業員の希望を両立させた異動方針をとっていることが特徴的です。具体的には、以下のような項目で値が高く、非実現群との差も顕著でした。

 ・[等級の格付けは、能力を重視している](No.1)

 ・[評価は、成果や結果を重視しつつ、行動・プロセスも見る](No.3~4)

 ・[異動は会社主導と従業員の希望の両立](No.7~8)

そして、「人材最適化」を実現している企業には、以下の特徴があることが分かりました。

①行動・プロセス評価と成果・結果評価を両立しつつも、成果・結果評価を重視する「評価」方針である。

②会社主導と従業員希望の異動を両立しつつも、従業員希望を反映させる「異動」方針である。

また、非実現群との有意差をふまえると、上記に加え、より能力を重視する「等級」方針であることも有効に機能する可能性があります。「評価」、「異動」、「等級」の方針は、いずれか一つのみで「人材の最適化」を実現できるものではないでしょう。それぞれの方針を適切に組み合わせることで、「人材の最適化」に向けた土台が整うものと考えられます。

(図表6:現状の人事施策方針 群別比較)

質問 あなたが所属している会社の「現在」の人事施策方針についてお答えください。
数値は選択肢1~5の平均結果 選択肢1:そう思わない、2:どちらかというとそう思わない、3:どちらともいえない、
4:どちらかというとそう思う、5:そう思う、6:分からない/答えたくない
実現群(58社):「そう思う」 「どちらかというとそう思う」 非実現群(192社) :「どちらかというとそう思わない」 「そう思わない」
統計的に有意差のある項目に印(**p<0.01)。

【調査結果から見えるこれからの人材マネジメント】

ここまで、383社のアンケート結果から、これからの人材マネジメントについて考察をしてきました。事業推進に向けた「人材の最適化」を測っていくためには、採用による「人材獲得」と育成による「活躍支援」に加えて、「流動化」に取り組むこと、また、「評価での行動・成果重視」、「異動での会社主導・従業員希望」を両立する人事施策方針がポイントになることが見えてきました。

今後ますます、労働力不足が加速する日本社会において、新しい価値を創造しながら事業推進をしていくために、事業横断のリソースシフト(企業が抱えるヒト・モノ・カネなどのリソースを、事業戦略や組織目標に合わせて戦略的に移動、配分、または活用していくこと)も含めた最適な異動・配置や、主要ポジションの適性把握と充足など、「人材の流動化」により取り組むことが寄与していくと考えます。

3. コメント

【調査担当コンサルタント】

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

技術開発統括部 コンサルティング部 マネジャー

青木 麻美(あおき あさみ)

昨今、弊社には「最適な異動配置」や「リソースシフト」といったテーマについてのご相談が増えてきております。事業に必要な人材を確保・充足していくうえで、社内人材の流動化が今後より重要なテーマになるのではないか、という仮説を持ちました。

そこで今回の調査では、企業の人材マネジメントを、採用による「人材獲得」、育成による「活躍支援」、そして社内人材の「流動化」の3つに分類し、それぞれの取り組み状況や効果を明らかにすることで、人材マネジメントの実践に役立つヒントを得ることを目的として実施しました。

今回の383社の調査結果から、「人材獲得」や「活躍支援」に比べて、「流動化」への取り組みが十分に進んでいないと認識している企業が多いことが明らかになりました。また、「人材の最適化」が実現していると回答した企業群と、そうではない企業群を比較することで、「人材の最適化」を進めるためには、「流動化」への取り組みが重要であることも分かりました。

国内の労働力不足が加速する中、企業間の採用競争は一層激化しており、採用による「人材獲得」の難度は高まっています。そのような状況下で、「流動化」をいかに進めていくかが、ますます重要になってきていると考えます。

また、調査結果から、「人材の最適化」を実現している企業群の方が、そうでない企業群と比較して、異動方針において「従業員の希望」をより反映していることが分かりました。「流動化」に取り組むにあたっては、異動・配置において「会社主導」と「従業員の希望」の双方を両立させる方針で、人事施策を設計・運用していくことが重要です。

実際に、キャリアドック(定期的にキャリアコンサルティングを受けるなどのサポートにより、個人のキャリアをより良くするための仕組み)等のキャリア支援制度を導入し、従業員のキャリア自律を促進することで、希望に基づいた職務選択を可能にする企業は増えています。一方で、事業環境に応じた必要人材の計画的な配置や、部門をまたぐリソースシフトの推進も、持続的な事業運営や発展に向けて、より重要になってきています。

これらの取り組みを統合し、最適な異動・配置の実現や、主要ポジションにおける適切な人材の把握・充足を図ることが、今後の企業の発展に寄与すると考えます。

4. 調査概要

【リクルートマネジメントソリューションズがこれまでに実施した関連調査】

・「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査」(第1回第2回第3回

・「働く人の本音調査2024」(第1回第2回第3回第4回

・「働く人のリーダーシップ調査2024」(第1回第2回

リクルートマネジメントソリューションズについて

ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。

●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス

また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」「HR Analytics & Technology Lab 」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。

※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp

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会社概要

URL
https://www.recruit-ms.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区芝浦3-16-16 住友不動産田町ビル東館4F
電話番号
0120-878-300
代表者名
山崎 淳
上場
未上場
資本金
1億5000万円
設立
2005年12月