日本初の調査 金銭借入保証審査の不通過は日本人の3.7倍—外国人住民の金融格差が明らかに
一般財団法人リープ共創基金(REEP財団、所在地:東京都、代表理事:加藤徹生)は「外国人住民 金融排除白書」を発表。日本人との比較調査から保証審査通過率や適用金利等、金融排除の実態を明らかにします。
調査結果のポイント—保証格差に加え、1.3-2.0倍の金利格差

主な指標 |
外国人住民 |
日本人 |
差異 |
保証人/サービス申請率 |
65.4% |
24.7% |
2.6倍 |
保証審査不通過率 |
76.5% |
20.5% |
3.7倍 |
銀行からの平均借入金利(年) |
5.4% |
2.7% |
2.0倍 |
収入均衡処理後の金利格差 |
5.4% |
4.0% |
1.3倍 |
調査の結論と主要な分析—経済的条件の違いを考慮に入れても格差が存在
本調査の結果、外国人住民を巡る金融環境は日本人と比べ著しく制約があることが明らかになった。第一に金銭の借入時の保証人/サービス利用ができず、借入に至るケースが著しく限定されていた。加えて、第二に金銭を借り入れることができたとしても、金利面での格差が大きく、収入などの経済的条件を割り引いた上でも格差があると想定された。その主要な要因は、在留資格の期限の制約や曖昧性により、居住年数の予測や返済可能性が予測できないことであった。
なお、本白書では、日本に住む外国人のうち永住権を持つ者(永住者および特別永住者)を「永住者等」と表記し、永住者を除くその他の外国人住民を「外国人住民」と分類している。日本人という表記は日本国籍を持つものを広く意図しており、本調査では外国にルーツを持ちながら日本国籍を取得している場合も「日本人」と扱われる。
調査背景—若者人口の7.6%を占める在留外国人と金融アクセスからの阻害
在留外国人の日本の人口に占める割合は、2024年6月時点で総人口の約2.9%であり、若者人口(20歳以上40歳未満)の約7.6%を占める。東京都新宿区などの外国人の集住地域では、成人式参加者の約半数が外国人が占めるなどの変化も公表されている(総人口と若者人口の割合は総務省の人口推計2024年9月をベースに算出)。
日本の人口維持や労働の担い手の多くを外国人住民が担っている現状であるが、良き外国人住民に対して積極的に機会が与えられるわけではない。また、諸外国の先行研究からは、移住のためにこれまでの貯蓄の約半分を消費していると言われているが(BMO Financial Group, 2015)、日本においては、安定した職に恵まれた外国人住民であっても、金融アクセスから排除されており、職場の近くへの引越しの頭金や業務で活用するための免許取得など、小さな投資から阻まれていることが現実である。また、このような現実は日本に定住し、家族を築いた外国人住民のこどもたちにも同様に立ちはだかっている。
なお、在留外国人の金融アクセスに関する先行研究は、本白書の監修でもある小関隆志(2024,2021)や日本政策金融公庫(2021)などが存在するが、日本人と在留外国人の金利差や保証格差を明らかにしたのは本調査が初のものとなる。
白書の主な内容と調査概要ー金融アクセスへの基本ニーズとライフサイクル
本白書は日本人と外国人住民の金融格差はどの程度のものかを分析し、さらに、移住後の在留期間とライフステージの変化に応じた金融ニーズに加え、どの段階で金融アクセスからの排除が起きているのか、また、その結果に基づき、公正な金融アクセスを実現するとすれば、どのような領域から始めることが有望かを指し示した。本白書の基本的な構成は下記の通りである。
調査の結論
監修者解説
調査概要
金融排除・金融包摂とは
第1章 在留外国人の金融ニーズ
第1節 在留外国人の人口増加の動向
第2節 在留外国人の金融ニーズ
第3節 外国人事業者の金融ニーズ
金融排除の多様性とサバイバル活動
第2章 外国人住民をめぐる金融排除の構造
第1節 外国人住民の金融アクセスを妨げる構造
第2節 在留期限の更新と融資期間の制約
第3節 言語障壁
第4節 外国人住民の孤立
金融機関と外国人住民のコミュニケーションのあり方
第3章 日本人との金融格差とその要因
第1節 保証格差と在留資格
第2節 借入時の金利格差の検証
第3節 金利の決定要因
第4章 「良き外国人住民」への投資は可能か?
日本社会のあり方と金融包摂の選択肢
外国人労働者のキャリア開発は誰の問題か?
外国ルーツのこどもたちを誰が支援するのか?
結びに代えて
参考文献
また、本白書の分析の土台となったアンケート調査の概要は下記の通りである。加えて、本白書の執筆にあたってアンケート調査に加え、外国人住民へのインタビューを行っている。
(1)在留外国人を対象にしたアンケート調査の概要

調査時点 |
2022年9月2日から2022年9月6日 |
調査対象 |
GMOリサーチ株式会社が保有するインターネットモニター会員のうち、 (1)在留外国人かつ過去5年以内に借入経験がある者 (2)在留外国人かつ過去5年以内に借入を検討したが何かしらの理由で借入に至らなかった者 |
有効回答数 |
(1)個人として借入経験がある者 79人、法人として借入経験がある者 30人 (2)個人として借入を検討したが借入に至らなかった者 27人、法人として借入を検討したが借入に至らなかった者 18人 |
調査項目 |
・属性(性別、居住地、国籍、日本語能力、日本居住年数、在留資格、年収、料金滞納経験、銀行口座の有無、クレジットカートの有無) |
その他 |
・借入先は金融機関に限らず、家族や知人も含める。 ・アンケートの言語は平易な日本語と英語から選べるようにした。 |
(2)日本人を対象にしたアンケート調査の概要

調査時点 |
2023年7月10日から2023年8月10日 |
調査対象 |
GMOリサーチ株式会社が保有するインターネットモニター会員のうち、日本人かつ過去5年以内に借入経験がある者 |
有効回答数 |
日本人かつ過去5年以内に個人による借入経験がある者 158人 日本人かつ過去5年以内に法人による借入経験がある者 57人 有効回答率 79.6% |
調査項目 |
・基本属性(性別、居住地、年収、料金滞納経験) |
その他 |
・借入先は金融機関に限らず、家族や知人も含める。 |
以上のような格差を生み出す背景には、公的に日本在住が保証される期限と外国人住民が金銭の借入を希望する融資期間にギャップがあることが大きい。そして、日本における居住歴が短く、貯蓄も少なくなりがちな外国人住民は、借入時の保証人が見つからず、保証審査にも通らないなど、借入にあたっての障壁はさらに高くなる。外国人住民が日本社会から孤立した場合、この状況と格差に拍車をかけることになる。
本調査では地域に溶け込み、日本との共生の姿を自ら模索する「良き外国人住民」との出会いも大きかったが、そのような外国人住民に対する適切な支援の不在も浮かび上がらせる。REEP財団は本調査を手始めに金融包摂のモデル事例の創出を支援し、外国人住民を中心とする金融排除の当事者の包摂を強化し、金融を通じた社会的弱者の自立を促す環境の再構築を目指していく。
白書全文の先行ダウンロードの申し込みについて
「外国人住民 金融排除白書」全文のダウンロードをご希望の方は、以下のフォームより申し込みをお願いいたします。申し込み頂いた方にご登録頂いたメールアドレスに白書全文のPDFを送付いたします。
▶ 申し込みフォーム
https://4t5fu.share.hsforms.com/2ciUP3lz6Tpa_66qPwllcrw
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。